『赤ちゃんよ永遠に』 Z.P.G. (1972)

映画スチール 「赤ちゃんよ 永遠に」白黒9枚

作品メモ

ひとつ前のエントリー『トゥモロー・ワールド』に似た雰囲気の近未来SF映画。
人口抑制のため子供を産むことを禁じられた未来社会で、隠れて出産した夫婦を描きます。

原題の”Z.P.G.”は”Zero Population Growth”の略。つまり人口増加ゼロ。
実際に映画で描かれるのは、増加ゼロどころか、いっさい妊娠出産まかりならぬというキビシイお達しが出た社会。
これだと人口抑制ではなくあっというまに人口減少ではないかと思われますが、そのくらい未来の地球は食糧危機やら資源枯渇やら環境汚染でキビシイ状況になっているわけです。

市民は、出産と育児の喜びを赤ちゃんロボットでまぎらわすほかありません。
これがビデオタイトル『赤ちゃんよ永遠に/SFロボットベイビーポリス』につながっているわけですが、なんだか凄いサブタイトル\(◎o◎)/

そんな状況で、あえて密かに出産、子育てを始めたマクニール夫婦に、オリヴァー・リードとジェラルディン・チャップリン。
やっかいな隣人ボーデン夫妻にドン・ゴードンとダイアン・シレント。
監督マイケル・キャンパス。

最近某大国の大気汚染が話題になっていますが、日本でも70年代には大都市で光化学スモッグが発生。交通量が多い場所では歩いていて目がちかちかしたものです。
映画で描かれるスモッグだらけの都市は、未来と言うよりは過去を連想してしまうかもしれません。
ローマクラブの「成長の限界」が1972年。
第一次オイルショックが1973年。
『ソイレント・グリーン』も1973年……

SF的なビジュアルはちゃっちいところもありますが、時代の空気が感じられるディストピアSFの一本として記憶に残ります。
なぜかキネマ旬報データベースに見当たりませんが、確か劇場で見た記憶があるので公開されたことは確か。 DVDはこれまで出ていないようです。
今回はレンタル落ちVHSにてのチェック。

詳しい物語

今ではなかなか見る機会に恵まれないかもしれませんので、もう少しストーリーをご紹介。
実はロケ地情報が全く無いので、そのかわりストーリー紹介に比重を置きました。
DVD化の願いをこめて……
(ラスト以外はネタばれありますのでご注意を)

長いので折りたたみ。クリックすると開きます。

近未来のとある大都市。
市内はスモッグにおおわれ、外出時には『アバター』のようなマスクをつけなければなりません。
上空ではアロマボールに尻尾をつけたような可愛らしい乗り物がゆっくりと飛び回っています。
もちろんそんなんで空気をきれいにしようというわけではありません。
政府からのお知らせをスピーカーで告げて回っているのでした。
「ご家庭でいらなくなった古新聞……」とか「宇宙都市があなたを待っている」的イントネーション。
そう、このあたりの雰囲気は『ブレードランナー』にとても似ています。もちろんこっちが先。

今日のお知らせは世界連邦会議の決議を大統領が直々に伝えるもので衝撃的な内容でした。
「これ以上の人口増加を抑えるため、妊娠出産は禁止。妊娠は重大な罪として死刑をもって処罰」

それから何年後のことでしょうか。
どうしても子供がほしい夫婦は、ベビーランドというところで幼児ロボットを調達するようになりました。
建物内に書かれている標語が”A BABY IS FOREVER”(赤ちゃんよ永遠に)。
さんざん並ばされたあげくようやくご対面できたこのロボットベイビー、可愛らしいと言うよりはチャッキーみたいで不気味。 動きもぎこちなくて、日本のからくり人形の方が良く出来ているような気がします。
とても耐えきれず、妻キャロルは夫ラスを連れて行列から離れるのでした。

レストランに寄りますが、そこではお洒落な音楽が流れているものの、人工的に味付けされたチューブ入りの食料を黙々と喉に流し込むだけ。味気ないことこの上ありません。
『ソイレント・グリーン』のいちごジャムはとてもおいしそうでしたね。

2人は勤務先である博物館にやってきます。
絶滅した動物が展示されているこの博物館。
人気物件のようで、ここでも行列を作らないとなかなか中へは入れません。
2人はここで、来場者に昔の暮らしを見せるライブショーに出演しているのでした。
題して「1971年回顧展」。
一緒に演じているのが、ボーデン夫妻。
こちらの妻はすでにロボットの赤ちゃんを持っていますが、うまく愛せないため、テレビ電話でカウンセリングを受けたりしています。

外では一騒ぎ。
群衆が赤ちゃんを抱いた夫婦を取り囲み、ヘリコプターが透明の半球ドームを運んできて、夫婦+赤ちゃんの上にすっぽりかぶせます。
何かと思えば公開処刑。人類に対する重大な罪を犯した不届き者を、そのまま窒息死させるようです。
衆人環視の中、赤ちゃんごとというありえなさ。
密告者は食料チケットをゲットできるという、いやな渡世です。

ここらへん、若者が死んだだけで全員が悲しみにくれた『トゥモロー・ワールド』とは正反対の雰囲気。
設定が真逆なだけあって、人々の心理も真逆のようです。

妊娠しないように、各家庭にボタンひとつで処置ができる装置が設けられているという徹底ぶり。
それならいっそ「男子はすべて強制パイプカット」とか思うのですが、そのへんの描写はありません。
もしかすると、「断種」という優生学的タブーがからんでいるからぼやかしたのかも?
そのかわり、簡易中絶装置や産まれてしまった子供の処刑はOKという、めちゃくちゃな社会となっております。

その中で主人公夫婦は隠れて妊娠出産という道を選びます。
昔の防空壕跡を隠れ家にすると言うわびしさ。
もちろん産婦人科医院などありませんから、自力での出産が大前提。
図書館で操作を間違えたフリをして出産のビデオを見たりして、研究に余念がありません。
この場面、フィルムNo.419の「プレモントレ修道会」からの流れで、No.418の「早産」を見ていますが、”Premontres”と”premature”ですので、このビデオライブラリー、アルファベット順なのかもしれません。
ただ”p”で400本程度ですから、大した収集量ではないかも。   

無事出産後は、かつて妻をとりあげてくれた老医師の力を借りながらなんとか赤ちゃんを育てていた2人ですが、よりによってリアルな赤ちゃんに執着していたボーデン夫妻に見つかってしまいます。
「密告しないから世話させて」というボーデン夫妻の要求はエスカレートしていき、耐えがたいものに。
これ以上の関わり合いを断ると、逆ギレした夫妻は2人を密告。
たちまち群衆に取り囲まれ、空からドームが降りてきます。
万事休すと思いきや、地面を掘り始める2人。
実はこの日に備えて、あらかじめ広場の下に穴を掘っていたのでした。
首尾良く地下道に脱出した2人。
用意していた手こぎボートで地下水道から大海原に出ていきます。
このあたり、『トゥモロー・ワールド』でそっくり再現されていますが、これはもうオマージュでしかないでしょう。

この先果たして2人と赤ちゃんの運命や如何に??

ロケ地

IMDbでは、

Copenhagen, Denmark

え~、コペンハーゲンロケ??
とても意外です。

ご覧になった方はおわかりの通り、都市は模型+スモッグもくもくで表現されていて、ロケ地もへったくれもありません。
それでも何ヶ所か気になる場所がありますが、手掛かりがなく、ロケ地情報はゼロです。すみません……

ベビー・ランド

モノクロ基調のメタリックな内装。
まったく手掛かり無し。

博物館

丸い回廊のような造りで、中庭側がガラス張り。
これも手掛かり無し。

海岸

資料


『赤ちゃんよ永遠に』 Z.P.G. (1972)” への4件のコメント

  1.  はじめての書き込みで大変失礼言申し上げます。

     ずいぶん以前に何かの解説で読んだのですが、たしか冒頭の「ベビー・ランド」がコペンハーゲンのどこだかのショッピング・センター内で撮影されたとあったのを記憶しています。ショッピング・センターと言えば、マイケル・ヨークとジェニー・アガターの”Logan’s Run”もどっかのショッピング・センターを使ってましたよね。
     それから、映画全体にデンマークの老舗家具メーカー”KADO”が協力しています。

     当時小6だった1975年2月に日曜洋画劇場で放映された際、初観賞でした。画面から漂うムーディーな感じ以上に音楽に痛く魅了されてしまいました。ジョナサン・ホッジという作曲家はこのほかにも英国作品を何本か担当していますが、これといって印象的な他作品はありませんでした。

     その後、この映画を何度か観ていろいろ追っかけるうちに、ミニチュア特撮が私の敬愛する英アンダーソン作品の常連で、007シリーズも6本を手掛けたデレク・メディングスであること(空中を浮遊する広告塔円盤みたいなのが「007 ムーンレイカー」の宇宙ステーション中心部にそっくり!)や、製作があの「小さな恋のメロディ」の英サジタリウス・プロダクションであることが分かりました。

     最後の海岸線がもっとも気になるところですが、本当にどこなのか今になってとても知りたくなってきました。

  2. Barry Gray さん、いらっしゃいませ。
    詳しい情報ありがとうございます。

    ショッピング・センター、あり得そうですね。登場場面が短いので、探すのは難しいかもしれませんが。
    Logan’s Runは以前エントリー書きましたが、おっしゃるとおりショッピングセンターのようでした。
    こういう空間は、きっとこの手の映画に向いているのでしょうね。

    > 空中を浮遊する広告塔円盤みたいなのが「007 ムーンレイカー」の宇宙ステーション中心部にそっくり!

    これすごいです、全然気づきませんでした。さきほど映像確認して、ウケてしまいました 🙂
    『ムーンレイカー』の方がずっと後ですから、このデザインのアイデアを温めていたのでしょうか。
    確かにアンダーソン作品的雰囲気もありますね。

    この映画でレスがつくとは思っていなかったのでうれしいです。
    なんとか一つでもロケ地が解明できるように、手がかりは少なくてもまたチャレンジしてみようと思いました。

  3. 残念!!
    この作品は題名を知っているだけで見てなかったがコペンハーゲンだとして “丸い回廊のような造り” に、もしや…と思いつく建物がありネットで全編見れたのでチェックしようと思ったが肝心の建物の内部の画像がほとんどなく少し似た部分はあったが判断できない。
    そして残念なことにWikiを見ると、建物自体の着工が88年だった。
    そんなわけで結果的に無関係な建物だがそれはティコ・ブラーエ・プラネタリウム。
    ちなみに僕は93年に訪れSolar System の大きなポスターとボールペンを買ったがプラネタリウムを見たかどうかの記憶もなく内部の写真もない。

  4. milouさん、調査ありがとうございます。
    プラネタリウム、惜しいですね。良い感じの?曲がり方が確かに映画に似ていますが……
    (そういえばティコ・ブラーエはデンマーク人だったのですね)

    私も画像やGoogle Earthやらでいろいろ探してみましたが、「もしや?」と思っても新しい建物だったりして、まだ見つけられないでいます。

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