子供のいない惑星
作品メモ
『ブラインドネス』に続けてジュリアン・ムーアのSFものをもう一本。
これでいったん彼女の出演作のチェックはおしまい。
今まで扱ってきたのはこういった作品です。 → タグ「ジュリアン・ムーア」
人類が生殖能力を失った近未来。
多くの国が崩壊していく中、不法移民の流入をせきとめてかろうじて体制を維持しているイギリスを舞台に、とある重要人物を守りながら目的地に送り届けようとする男の姿を描きます。
主人公の役人セオ・ファロンにクライヴ・オーウェン。
ジュリアン・ムーアは彼の元妻ジュリアン役。今や反政府組織の一員となっている彼女から、ある人物のために通行証を調達してほしいと頼まれます。従兄弟の文化大臣を通じて通行証は取得できたものの同行が必要となり、彼はその人物やジュリアンらとともに危険な旅に出ることに……
子供が生まれない未来という設定は、小説ではブライアン・オールディスの『グレイベアド(子供のいない惑星)』とどんぴしゃ重なります。
映画では『赤ちゃんよ永遠に』あたりが(設定は真逆ですが)近い線かも。
汚れてすさんだ街並みと妙に小綺麗な部屋との対比は、『ソイレント・グリーン』なども連想できるかもしれません。
夢もチボーもなくなった人々をのせて破滅へと向かっている社会を、ハンディカメラがリアルに切り取ります。
時には何分にも及ぶ長回しを使ったり、うまくVFXをトッピングしたりして、映画は主人公の身の回りで起きる混沌とした出来事を、そのまま観客に提示しようとします。
閉塞感たっぷりの内容と暗くすさんだ映像……見て爽快になるような類いの映画ではありませんが、映像はなにげに凄いことをやっていて、それだけでも一見の価値は十分にあるのではないでしょうか。
個人的にはとても気に入っている一本です。
原作はP.D.ジェイムズの『人類の子供たち』。
監督アルフォンソ・キュアロン、撮影エマニュエル・ルベツキ。
出演は前述の2人の他、セオの旧友ジャスパー役としてマイケル・ケイン。
これはクレジットを見なければ誰だかわかりませんでした。
ネタばれ的メモ
ロケ地
ロケで撮影された場面も巧みにVFXが織り込まれ、現代と似ているようで非なる近未来世界をうまく作り上げています。
ロンドンの街角
ロンドン、2017年11月16日。
いきなり大変なことになるのは、IMDbのリストにあるFleet Street。
具体的には、現在Chilangoというメキシコ料理店が入っているところ。
ニュース映像(13/4/7追記)
コメント欄でmilouさんから情報寄せていただきました(13/4/6付)。
いつもありがとうございます♪
ニュース映像のブエノスアイレスはホンモノのようで、かろうじて写っているオベリスクはこちら。
©1998 milou アルバム「南米」から |
milouさんから画像も提供していただきました。
このアングル、どんぴしゃですね♪
撮影は1998年とのことです。
©1998 milou アルバム「南米」から |
©1998 milou アルバム「南米」から |
こちらはIMDbのリストにあるPuerto Madero。
参考画像としてどうぞ。
©1998 milou アルバム「南米」から |
こちらは参考……というよりはおまけのお楽しみ画像。
ブエノスアイレスの丸ノ内線。
©1998 milou アルバム「南米」から |
その車内。
エネルギー省
カマボコ型天井の建物。
Natural History Museumかと思いましたが、違いました。
調査中。
駅
ジャスパーに会いにやってきた駅は、IMDbのリストにあるこちら。
This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NoDervs 2.0 Generic License.(CC BY-ND 2.0)
路線はIMDbのリストにある、Watercress Line。
※2013/4/7追記
この駅についてコメント欄でmilouさんが詳細に情報を寄せてくださいました(13/4/6付)。
ぜひご覧ください♪
アパート群
0:11頃。
不法入国者の取り締まりがあったという設定でしょうか。
建物の前では人々が檻に入れられ、上階からは荷物が次々放り出されています。
場所はIMDbのリストにある、こちら。
Ravenscroft Street, Bethnal Green, London, England, UK
連れ去られるところ
献花が寄せられていたのは(最年少者が死んでしまった)アルゼンチン大使館の前という設定でしょうか。
場所は調査中。
連れて来られたところ
ジェニファーと対面したのはIMDbのリストのこちら。
Dockside Buildings, Chatham Historic Dockyard, Chatham, Kent, England, UK
This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NoDervs 2.0 Generic License.(CC BY-ND 2.0)
降ろされたところ
高架の脇。
IMDbのリストにあるこちら。
Cable Street, Whitechapel, London, England, UK
ロールスロイスが進む街並み
0:17頃。
ロールスロイスが走っていくロンドンの街並み。
黄色いポンチョの団体がデモを行っていたトラファルガー広場を通り抜け、アドミラルティ・アーチをくぐって、ザ・モールを西へ。
IMDbのリストではこちら。
Trafalgar Square, St James’s, London, England, UK
Admiralty Arch, The Mall, St. James’s, London, England, UK
The Mall, St. James’s, London, England, UK
※13/1/31追記
©milou アルバム「ロンドン」から |
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
©milou アルバム「ロンドン」から |
©milou アルバム「ロンドン」から |
ARK OF ARTS(外観)
この流れで行けば向かった先は当然バッキンガム宮殿……と思いきや、やってきたのはこちら。
バタシー発電所W
Battersea Power Station, Battersea, London, England, UK
映画では”ARK OF ARTS”という名称。いろいろな美術品を保護している場所という設定のようですね。
カメラ位置は対岸かと思われますが、手前の橋を含めてかなりVFXが加えられています。
This work is licensed under a Creative Commons Attribution 2.0 Generic License.(CC BY 2.0)
IMDbのTriviaによると、橋は” a bridge over the M3 roadway in Surrey”だそうで、実在の場所を合成していることになります。
※13/1/24 追記
©2000 milou アルバム「ロンドン」から |
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影は2000年とのことです。
©2000 milou アルバム「ロンドン」から |
こちらは2002年とのことです。
南側の高架線から電車の窓越しに撮られたものでしょうか?
※13/1/31追記
「パリからのユーロスター
からの写真です。当時はウォータールー駅発着で現在のセント・パンクラス
移転後は見えないはず。」といただきました。
ARK OF ARTS(内部)
車が入ってきたところはここで撮影。
テート・モダンW
Tate Modern, Bankside, Southwark, London, England, UK
こちらの建物も元は発電所だったようですね。
映画ではあれこれVFXを加えているようです。
This work is licensed under a Creative Commons Attribution 2.0 Generic License.(CC BY 2.0)
「ゲルニカ」の部屋の窓の外でブタが浮かんでいるのは、このジャケットから。
※13/1/24 追記
©2002 milou アルバム「ロンドン」から |
こちらもmilouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影は2002年とのことです。
©2002 milou アルバム「ロンドン」から |
これは映画に登場した入口部分の逆を向いた状態ですね。
©2002 milou アルバム「ロンドン」から |
上階窓からミレニアム・ブリッジ、セント・ポールを見たところ。
©milou アルバム「ロンドン」から |
※13/1/31 追記
milouさんから画像を追加提供していただきました。
ミレニアムブリッジのテイト・モダン方面。
もしかするとバタシーの正面はこの橋を加工追加したのかも??
©2009 milou アルバム「スペイン」から |
こちらはゲルニカ。
ピカソのオリジナルではなく、実際のゲルニカの街にある壁画。
撮影は2009年とのことです。
©2009 milou アルバム「スペイン」から |
バスク語での表記は”GERNIKA”のようですね。
※18/11/13追記
milouさんがこの時の旅行記を4travelにアップされていますので、ぜひそちらもご覧ください。
4travel > milouchatさんのトラベラーページ
牛追いと海バスク (ゲルニカ編)
ドッグレース
IMDbのリストにあるこちら。
Wimbledon Dog Track, Plough Lane, Wimbledon, London, England, UK
バス停のすぐ裏手に見える建物から考えて、セオが出てきたのは北東側。
となると、背景の高層団地はすべてVFXの産物と言うことになります。
歩道橋
0:24頃。
バスを降りてジュリアンと渡るところは、おそらく鉄道をまたぐ跨線橋かと思われますが、調査中。
渡った後の場面(=クルマに乗り込むところ)が同じ橋かどうか不明。
※16/1/6追記
『1984』(1984)のロケ地をチェックしていて判明しました。
ロンドンのCheshire Streetのこちら。
渡った先も同じ場所。
- Google Maps(SV) ……通りから見た跨線橋
- Google Maps(SV) ……跨線橋の上
- Google Maps(SV) ……渡った先
- Google Maps(SV) ……同・振り返って
『1984』では、古道具屋がある通りとして登場していました。
荒廃した町
バスでやってきた海辺の町。武装集団が闊歩し、混乱を極めています。
設定としてはおそらくBexhill。
この荒廃した町の撮影(前半)はIMDbのリストにあるこちらとその周辺のようです。
Powis Street, Woolwich, London, England, UK
マリカが居た広場
ここは場所を特定できませんでした。
後の方の市街戦の場面のセットかもしれません。
出産した建物のスロープ
1:20頃。
出産の翌日、建物から出たときに通ったスロープはこちら。
この建物の内部の画像もネットで見ることができましたが、映画に登場したものと一致していますし、窓から向かいの建物が見えますので、出産の場面も実際にこの建物の上の方の階で撮られたものと思われます。
街路
スロープを上がって通りに出た後は、そのまま左に曲がり、武装集団の流れにさからうようにPowis St.を東へ進んでいきます。
角の建物
マリカの仲間がいる”BANK”。
撮影場所は、Powis Stを数ブロック進み、Calderwood St.に右折して1ブロック目の三叉路。
市街戦
1:24以降。
ボートに乗るために移動するセオたちが巻き込まれる市街戦。
設定では上記と同じ町なのでしょうけど、撮影は別の場所のようです。
おそらくIMDbのリストにあるこちら。
RAF Upper Heyford, Oxfordshire, England, UK
この場面の6分以上に及ぶ長回しは圧巻でした。
水路
調査中。
ロケ地マップ
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資料
関連記事
ジュリアン・ムーア
- 『めぐりあう時間たち』 The Hours (2002)
- 『ゆりかごを揺らす手』 The Hand That Rocks the Cradle (1992)
- 『エデンより彼方に』 Far from Heaven (2002)
- 『エボリューション』 Evolution (2001)
- 『ケミカル・シンドローム (SAFE)』 Safe (1995)
- 『サバイビング・ピカソ』 Surviving Picasso (1996)
- 『シッピング・ニュース』 The Shipping News (2001)
- 『トゥモロー・ワールド』 Children of Men (2006)
- 『ハンニバル』 Hannibal (2001)
- 『フォーガットン』 The Forgotten (2004)
- 『ブラインドネス』 Blindness (2008)
- 『42丁目のワーニャ』 Vanya on 42nd Street (1994)
更新履歴
- 2018/11/13 「ARK OF ARTS(内部)」追記
- 2016/01/06 「歩道橋」追記
- 2014/05/29 milouさんのゲルニカの画像をリンク修正。
- 2014/04/20 milouさんの画像をpicasaウェブアルバムからのリンクに切替
コメント
☆imdb のリストではブエノスアイレスの2カ所が出ているが、そんな場面の記憶はないので見直すと…
何のことはない冒頭の“BCC”のニュース映像の中。こんなものまでロケ地に入れていいのか、とも思うが堅いことは言わない。
しかしブエノスアイレスには98年に行ったがオベリスクなんてどこに?
よく見るとディエゴのアップ、後ろに塔にも見えないほど少しだがオベリスクの角が見えている。
リストのもう1つ、Puerto Madero は判別できないが場所は東部の海、といっても河口だからかRio de La Plata になっているが運河(?)沿いの洒落たレストランなどが並ぶ遊歩道のある地域で何隻かの帆船が停泊している。僕はFragata Presidente Sarmiento とFragata Libertad の船内を見学した。
ちなみにこの場面。後ろにも(映画の観客のために設置した?)TVがあるのに近くの数名を除き、ほぼ全員が前のTVを注視している。そして誰も注文する気配はないし何人かはすでに手に飲み物を持ったまま立っていてセオが店を出るのも一苦労。商売の邪魔だね。
☆ジャスパーに会いに来た駅は Alresford Station で問題ないが映画で駅として使われているのは駅舎ではなく東の端にある建物…
だと思ったがSVをよく見ると、いかにも駅舎らしい右側の建物にThe Old Goods Shed And Tourist Information らしき看板があり入り口には左への矢印で Please Purchase Tickets From Main Station とあるので、やはり駅舎は左側で正解だった。
ちなみに右側の建物はミーティングなどに利用できディナーまで用意されるfunction room で、さらにホテル代わりのSLに60人以上泊まれるという面白い駅。
文字は読めないがブループラークも付いている。そしてこの路線では撮影用にSLを走らせることが可能で多くの作品に使われている。例えば『ダブルチェイス/俺たちは007じゃない(90)』ではオリエント急行として走らせている。もちろん『トゥモロー・ワールド』も撮影リストに含まれていた。
http://www.watercressline.co.uk/article.php/23/corporate-hire
milouさん、コメントと画像ありがとうございました。
オベリスク、全然気づきませんでした。といいますか、DVDで見返しても最初はわかりませんでした~
ブエノスアイレスも行かれたことがあるのでしたね。羨ましいですね。
ウォン・カーウァイ、いつかエントリー作りますので、ぜひご協力ください。
丸ノ内線は面白いので映画とは全然関係ありませんでしたが掲載させていただきました。
こういうネタも大歓迎ですのでまたよろしくお願いします。