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『まぼろしの市街戦』 Le Roi de coeur (1967)

まぼろしの市街戦 [DVD]

カミソリにはシャボンがつきもの

鑑賞メモ

ひとつ前のエントリー『彼女のアリバイ』から、ジョルジュ・ドルリューつながりです。

ドルリューはトリュフォー監督とのコンビで有名ですが、フィリップ・ド・ブロカ監督も忘れてはなりません。
『リオの男』『カトマンズの男』などで素敵な曲を書いていますが、作品のインパクトからして1本あげるとなるとやはりこの『まぼろしの市街戦』でしょう。
ドルリュー特有のほんわか暖かい音楽がおとぎ話のような映画の雰囲気によくあっていました。

『まぼろしの市街戦』を最初に観たのは70年代か80年代のテレビ放映でした。
見始めるとその不思議な世界にたちまち引き込まれ、ジュヌビエーブ・ビジョルドの可憐な美しさとともに記憶にしっかりと刻まれたものです。

当時のテレビ放映ですから吹き替えでしたが、イギリス軍に通じているレジスタンスの床屋が合い言葉として使っているセリフが一風変わっていて、 たしかこんなんでした。

カミソリにはシャボンがつきもの

ずいぶん後で、アメリカAmazonでDVDが出ていることを知り、たまらずゲットしました。
英語タイトルは”King of Hearts” 音声はフランス語で字幕は英語。

例の合い言葉のところをチェックしてみましたが、 英語字幕はこんなんでした。

The mackerel likes frying.

肝心のフランス語音声は、こんなんでしょうか(推定)

Le merlan aime la friture. …… メルラン(鱈・タラ)はフライが好き

どっちにしろカミソリもシャボンも関係ないっす。
なんだったのでしょう、あの吹き替えは。

日本では2003年にとうとうDVD化されました。
なんとその問題?の日本語吹き替え付きらしいのです。
テレビ放映でこの映画を知った身としてはぜひとも買わなければいけなかったのですが、ためらっているうちについ買いそびれ入手困難に。
今やプレミア価格となっています。

アメリカ盤も同様に値段が跳ね上がっていて、そういったところからもカルトな人気を感じさせるのでした。

※付記(2010年5月)

まぼろしの市街戦 [DVD] 2010年5月に再発売です。
ぐっと入手しやすくなりました。

※2013/4/30追記
フランス式絵札 milouさんからコメント欄に関連してトランプの画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)

©milou

ロケ地

40年も前の映画にロケ地もなんもないよ~と思いましたが、IMDbに

Senlis, Oise, France
(insane asylum and town square scenes, Senlis is 55 km north of Paris)

とありましたので探してみたら見つけることができました。
さすがロングライフなヨーロッパの街 😉

サンリスについてはこのエントリーの下の方に簡単にまとめておきました。
まずは個別の撮影場所をどうぞ↓

ドイツ軍が爆弾を仕掛けた広場

大きな教会と時計台にはさまれた広場。
物語の多くの部分がここを舞台にしていますが、 教会がとても特徴的ですね。

309600719_5a204536a3.jpg サンリス・ノートル・ダム大聖堂 La Cathédrale Notre Dame de Senlis

マップはこちら↓

  • Google Maps↓ (※14/4/3 SVに変更)

広場は聖堂の南側です。
聖堂の向かい側にあるはずの時計台は見当たりません。
その右隣にあるはずの床屋さんなどのお店もなくなっているようです。
(その分広場が広くなっています)
何十年かの間に撤去されたのかもしれませんが、もしかすると撮影セットだったのかもしれません。

※追記
ヘプバーンの『いつも2人で』(1967)にもこの場所が登場していました。  → 『いつも2人で』
やはり床屋さんなどのお店は見あたりません。

※2013/4/30追記
milouさんがコメント欄で詳しく考察してくださっています。
そちらもぜひご覧ください。

※2014/04/03変更&追記
この広場、いつのまにかSVが使えるようになっていたので、そちらに変更しました。
移動もできますし、ぐるりと周囲を見ることもできます♪

もうひとつの教会

1人がふらふらと入っていったら中ががらんどうで、ちゃっかり司祭になりすましてしまったところ。
その後彼らが集まる場所にもなりました。

旧サン・ピエール教会  Église Saint-Pierre

799px_Senlis_____glise_Saint_Pierre.jpg

右の画像はWikimedia Commonsから。
(Author : Françoise Malou )
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Senlis_-_Église_Saint_Pierre.jpg

マップはこちら↓

  • Google Maps
  • Google Maps(SV) (14/4/3追記) 開くとおわかりの通り、上の大聖堂の東側のすぐ近くです。

799px_Senlis___general_view_002.jpg 右の画像は大聖堂の西側から撮られたもの。
Wikimedia Commonsから。 Author : Françoise Malou )

大聖堂前の広場は建物の陰に隠れています。
奥に見えるのが旧サン・ピエール教会。
その右側にそびえているのが、主人公が鐘を鳴らした鐘楼。

というわけで、街なかの距離感や位置関係が映画にそのまま表れているような感じですね。
カット割りや編集でまるきり別な場所を作り上げる……というのではなくて、街をそのまま映画の中で生かしているようです。

※2014/06/07追記
この教会とその前の広場は実写映画版『ベルサイユのばら』にも登場していました。 → 『ベルサイユのばら』

病院入り口(13/4/30追記)

コメント欄でmilouさんから情報寄せていただきました。
(いつもありがとうございます♪)

サンリス

Senlis (サンリス) ですが、IMDbにもあるように、パリの北50kmほどのところにあるコミューンです。

こちら↓がたぶん公式サイトだと思います。
http://www.ville-senlis.fr

市街図はこちら
http://www.ville-senlis.fr/menu-in/main.html?menu=3&ssmenu=2&sssmenu=1
上の方の”Téléchargez le plan de Senlis au format Adobe Acrobat Reader (.pdf)”でPDFファイルを見られます。

またCinémaというページにロケに利用した映画のリストがありました。
http://www.ville-senlis.fr/menu-in/main.html?menu=2&ssmenu=6&sssmenu=1

  • Philippe de BROCA , fidèle à Senlis pour y avoir tourné Cartouche en 1961, Le Roi de Coeur en 1966, L’incorrigible en 1975
  • Édouard MOLINARO montre le même attachement à Senlis après y avoir réalisé Manon Roland en 1989, Une femme abandonnée en 1992, Nora en 1999
  • Jean COGGIO s’est plu à réaliser Le Bourgeois Gentilhomme en 1981, Le journal d’un fou en 1987, Le mariage de Figaro en 1988
  • Nina COMPANEEZ a donné vie aux rues pavées de la vieille ville dans les scènes de La grande cabriole en 1988, L’allée du Roi en 1996
  • Roger HANIN tourne et joue Train d’enfer en 1984, Soleil en 1996 et plusieurs scènes des séries Navarro et Maître Da Costa
  • Yves BOISSET fixe sur la pellicule les vues de Senlis pour les films R.A.S. en 1973, L’affaire Seznec en 1991
  • Alain CORNEAU attire l’attention des spectateurs dans le préambule du Nouveau Monde en 1994 par un impressionnant travelling dans les rues et sur les habitations de la vieille ville.

資料

関連記事

ジョルジュ・ドルリュー

更新履歴

  • 2014/06/07 「もうひとつの教会」で『ベルサイユのばら』へのリンクを追加。
  • 2014/04/03 「ドイツ軍が爆弾を仕掛けた広場」「もうひとつの教会」でSVが使えるようになっていたので変更と追加。

コメント

  1. milou より:

    病院の入り口発見。
    Place Saint-Maurice とRue du Puits Tiphaine の交差したところの突き当たり。ただし門は金属のグリルではない。

    確かに床屋のあった一画の3軒は現在では消えていて翌年の『いつも二人で』でも存在しないならオープンセットの可能性も否定はできないが内部はともかく敢えて大がかりなセットを組む必要もなく現在は建物は2つだが消えた部分が道路ではなく左端にある真新しいビストロの敷地部分として一段高くしたテラス席なので1年の間に取り壊されたのでは、と思ったのだが…

    最初に爆弾を仕掛ける時計台の場所が、まさにビストロのあるあたりになってしまうが床屋は左の角で時計台が建つ余地はない。さらに綱渡りの場面などから見ると時計台の建物がいかにもくっつけたような変な角度で建っているし手前の建物群も合わない。恐らく由緒ある立派な仕掛けの時計台が撤去されたとは考えにくいので時計台やあとで使う床屋の右隣の建物のバルコニーなど、やはり一画すべてがオープンセットかもしれない。しかしそうであるなら床屋の左角に時計台を置いたままで撮影の都度移動させる必要もないはずで、すっきりしない。

    なお大昔に劇場で見たときはアラン・ベイツが裸で門の前で立つところで終わった記憶があるのだが、2009年のBS版では部屋の中でブリアリが意味深な台詞を言って終わるが音楽がエンドマークまで続くので、多分裸の印象が強かったため後ろの部分は記憶にないのだろう。

    原題のLe Roi de coeur とは(トランプの)ハートのキング(なぜ英語題はハートが複数?)のことで病院に逃げ込んだときトランプの家を作っていて恐らくは目の前にあったハートのキングとして自己紹介したことで王様として扱われることになる。フランス式トランプの絵札はKing,Queen,Jack ではなく Roi,Dame,Valet になっている。

    サンリスに行ったことはないが同じくブロカ監督、ビジョルド主演の『ベルモンドの怪盗二十面相(75)』や『セラフィーヌの庭(08)』の舞台でもあり行きたいと思っている。そうそう、『まぼろしの市街戦』の最初の方でアドルフ(・ヒトラー)が出てくるが演じているのはブロカ自身です。

  2. inagara より:

    milouさん、毎度ありがとうございます。
    本文の方に反映させていただきました。

    ラストは昔テレビで見たときの記憶でも裸で立っているところで終わっていましたが、実際にはきっとちゃんと最後まで放送されていたのでしょうね。
    でもこの映画を人と話すとき、「オチがいいですよね~」といったら、間違いなくお互い裸で立っている場面を想定していると思います。

    > 『まぼろしの市街戦』の最初の方でアドルフ(・ヒトラー)が出てくるが演じているのはブロカ自身です。

    これ知らなかったです。メモメモ(..)〆~

  3. ほりやん より:

    なつかしい合い言葉ですね。この映画の吹き替え当時は、フィッシュ&チップスが日本でそれほど知られていなかったと思うので、「タラはフライが好き」と訳しタラ、なんじゃそれと揚げ足を取られることを怖れたプロデューサー氏は、「原語と異なる訳にしたいのですが…、アイムソーリー、ヒゲソーリー」と、まぶしい紫外線のもと翻訳者に謝ったことでしょう。

    (床屋さんは、どこや? 時計台は?)

    IMDbが更新されていて疑問が、とけぃました。

    Place Notre Dame, Senlis, Oise, France
    (hairdresser shop, clock tower set, and blockhaus)

    (なぜ英題はハートが複数?)

    Oxford Advanced Learner’s Dictionary を引くと、

    hearts [pl] one of the four sets of cards in a pack of cards, with red heart symbols on them

    とあり、例として、the queen of hearts

    カードの場合、複数で使うのが慣用みたいですが、なぜ複数なのか教えてくれません。
    そこで、ChatGTPに聞きました。

    This pluralization is likely due to the fact that each suit consists of multiple cards, and when discussing them collectively, using the plural form makes sense. For example, when discussing the “hearts suit,” you’re referring to all the cards in that suit, not just a single card. Therefore, “hearts” is the plural form used to describe the suit as a whole.

    「おーん、ハートも13枚あるやん、おれもTigersの監督やん、おんなじことちゃうかな、おーん」

    ピア・デゲルマルクに続く女優の綱渡りシリーズ第2弾は、ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド。残念ながら彼女は渡っていないようです。「わたしにはできません Je ne・・・」と言って、びぇーと泣いたに違いありません。

  4. 居ながらシネマ より:

    ほりやんさん、コメントありがとうございます。
    「まぶしい紫外線」がダジャレだということに気づくのに2週間かかってしまいました。
    (すみません、環境変動モード中なので、サイトのメンテになかなか時間を割けないでいます……)
    まあ映画を知らない人に「まぼろしのしがいせん」と言ったら、目には見えない「幻の紫外線」の方に変換されてしまうかもしれませんね。

    綱渡り、俳優さんが落っこちちゃったらそれまでなのでスタントさんとなるのは仕方ないとして、リアルで結構高いところを渡っているように見えます。
    久々に再生して見ましたが、高いところが苦手なので、その場面太もも内側がきゅんきゅんしました。
    でも『ザ・ウォーク』とかは思ったより怖くなかったので、どうせVFXだからとどこかで脳が補正してしまっているんでしょうね

  5. はいしえら より:

    冒頭の方で、召使(?)に頭をカミソリで剃らせている禿頭のドイツ軍大佐が、ブロカとの名コンビで知られる脚本家ダニエル・ブーランジェです(ブロカのヒトラー役同様、冗談キャスティングかもしれません)。ブーランジェは小説家としても活躍したそうですが、自分の知る限り、邦訳された作品は文春文庫『Sudden Fiction 2』に収められた文庫で7ページの短編「靴ならし」のみです。晩年のブーランジェの住まいはサンリスだったそうですから、前からこの街を知っていて、ロケ地としてブロカに勧めたのか、あるいは撮影後にこの土地が気に入って住み始めたのかもしれません。以上、無駄な情報を。

  6. 居ながらシネマ より:

    はいしえらさん、コメントありがとうございます。
    ダニエル・ブーランジェは今の今まで気づいていませんでした。
    最後相討ちになるカットではアップでヘルメットがとれるので、後頭部で本人確認しました(汗)。
    コマ送りしていて気づきましたが、ここで転がった拍子に脱げたように見せかけて、実は自分でヘルメットをはじきとばしてますね。
    貴重な情報を上書きするようなそれこそ無駄な情報ですみません……

    好きな映画にコメントいただけると、嬉しいものですね 🙂
    もうすっかり自分で書いた内容を忘れていましたが、記事で挙げた『リオの男』『カトマンズの男』なども大好物ですので、そのうち新規アップするかもしれません。
    そんなこんなで気ままにやっているサイトですので、またどうぞいつでもお気軽にお立ち寄りください。

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