目次
作品メモ
ひとつ前のエントリー『ミクロの決死圏』とほぼ同時期、60年代半ばのSF映画。
SFといってもそこはゴダール、特撮やセットを使ったりはせずにモノクロのカメラだけで勝負。パリの街並みを星雲都市アルファヴィルに見たて、そこで展開する不思議な冒険を描いていきます。
「アルファヴィル」とは、alpha + villeで「α都市」。
アルファ60という巨大コンピューターシステムに管理されているのですが、それに関わっているらしい教授を探し出すためにやってきた探偵が主人公。
行く先々でアルファヴィルの奇妙な世界を目の当たりにし、身の危険を感じながらも、少しずつ調査を進めていきます。
全体の語り口がハードボイルド探偵ものを倣っているのが特徴で、不思議な美女と知り合い、最後は……という展開を見ても、『ブレードランナー』をすぐに連想できます。まあ産みの親とまで言えないにしても、けっこう近い親戚ぐらいの関係はありそうですね。
さらに親戚関係をたどれば、容易に『ラ・ジュテ』(1962)に行き着くかと思います。
主人公のハードボイルドな探偵レミー・コーションにエディ・コンスタンティーヌ 。
教授の娘ナターシャ・フォン・ブラウンにアンナ・カリーナ。
先に潜入していたものの消息を絶っていた同業者アンリ・ディクソンにエイキム・タミロフ。
ここまでが最初にクレジットされるメインのキャスト。
他に、ホテルで朝食を持ってくるボーイに、ジャン・ピエール・レオ。端役出演というよりはカメオでしょうか。
監督・脚本ジャン=リュック・ゴダール。
製作アンドレ・ミシュラン、撮影ラウール・クタール、音楽ポール・ミスラキ。
カメラ
探偵がせっせと使うコンパクトなカメラ。
サイズと時代を考えると、おそらくハーフ判かと思います。
オリンパスペンかと思いましたが違ったようで、引き続き調査中。
※12/11/9追記
コメント欄でmilouさんから情報寄せていただきました(ありがとうございます♪)。
AGFA ISO RAPID IFとのことです。コメント欄もご覧ください。
ロケ地
IMDbでは、
EDF building, Paris 12, Paris, France (computer center)
Esso tower, La Défense, Hauts-de-Seine, France
Paris 12, Paris, France
Paris 9, Paris, France
Paris, France
Scribe Hotel – 1 Rue Scribe, Paris 9, Paris, France (Lemmy Caution’s hotel)
と、パリ市内やラ・デファンスがロケ地。
ゴダールとなるときっとマニアックなサイトがあってロケ地も細かく解明されているかもしれませんが、ここではおかまいなしに、例によってウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしていきました。
答え合わせはしていませんので、間違っていたらごめんなさいです。
OPの鉄橋と道路
列車が走る鉄橋。
主人公の車はその下をくぐってやってきます。
橋はビル・アケム橋(Le Pont de Bir-Hakeim)W。
カメラ位置は橋の北東側。
©2006 milou アルバム「パリ」から |
※12/11/9 追記
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影は2006年とのことです。
こちらはエッフェル塔からの眺め。
映画とは方角は逆ですが位置関係がよく分かります。
©2006 milou アルバム「パリ」から |
映画のカメラ目線とはちょうど逆、橋直下の中の島からPassy方面を見ています。
©2006 milou アルバム「パリ」から |
Voie Georges Pompidou からエッフェル塔方面を見ているアングル。
©2006 milou アルバム「パリ」から |
ご参考までに、橋の下。
ホテル
IMDbでは”Scribe Hotel – 1 Rue Scribe, Paris 9, Paris, France”とありますが、映像を見る限りこちらのように見えます。
つまりScribe Hotelではなく、Intercontinental Paris Le Grand Hotel。
ホテルに入る時に反対側の建物が写りますが、現在ANAやNESPRESSOの看板が見える建物と一致しますので、ホテルはその向かい側、つまりここで間違いなさそう。
主人公の車がやってくるのは、Rue Scribeを北から。
泊まった部屋は、窓の外に見える建物から判断して、南側のBd de Capucines に面した部屋(西寄り)と思われます。
©1986 milou アルバム「パリ」から |
※12/11/9 追記
こちらもmilouさんから画像を提供していただきました。
映画とは反対のオペラ座前広場から、Cafe de la paix (Bd.de Capcines) 方面。
撮影は1986年とのことです。
ホテル内部や部屋、ホテル周辺についてmilouさんからコメント欄で詳しく情報寄せていただいています。
ぜひそちらもご覧ください。
郵便電話局(12/12/05追記)
0:18頃。
コメント欄でmilouさんから情報が寄せられています。
こちらの郵便局とのこと。
13 Rue d’Anjou,75008
確かに入口の形や中に見える階段は映画に登場したものと同じようですね。
©1977 milou アルバム「パリ」から |
参考画像として、同じ様に電話帳(BOTTIN)が並んでいる郵便局の写真を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影は1977年とのことです。
一般意味論研究所
0:31頃。
INSTITUT de SEMANTIQUE GENERALE
湾曲した天井が目を惹きますが、場所は調査中。
「発光放射線大通り14番地」にあるようです……
丸いビル(12/11/9追記)
0:39頃。
ナターシャに連れられ、フォン・ブラウンに会いに来たところ。
円形の外観と下の方の大きな窓が特徴的。
これはコメント欄でmilouさんから情報を寄せていただきました(ありがとうございます♪)。
現在ラジオ・フランス本部、当時ORTF(フランス放送協会)Wのビル。
カメラ位置はおそらく建物の南西側。
©2006 milou アルバム「パリ」から |
※12/12/19 追記
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影は2006年とのことです。
「Bir-Hakeim あたりの高架メトロから撮ったもの」とのことです。
四角いビル(12/11/9更新)
0:46頃。
丸いビルから拉致された探偵が連れてこられた四角いビル。
0:23頃の夜景、1:20頃の外観もこれ。
0:59頃のロビー(外にクレーン)、1:24頃のロビーと玄関前もここのように見えますが未確認。
外観はおそらくIMDbのリストにあるこちら。
Esso towerW
La Défense, Hauts-de-Seine, France
1991年に解体されていて、現在Cœur DéfenseWが建っています。
位置はラ・デファンスのここ。
画像としてはたとえば↓
- http://www.skyscrapercity.com/showthread.php?p=51253985
“ESSO”と屋上に出ている11階建ての長方形のビル。
設定上はこれがアルファ60のビルのはずですが、窓からの眺め(0:52頃)はここではないような?
“団地”
タワー型の高層マンション。実は長期洗脳病院。
1カットだけ写ります。
調査中。
フォン・ブラウンの家(12/11/9追記)
中央官邸。南圏原料駅の裏。
調査中。
カーチェイス(12/11/9追記)
調査中。
これは粘れば場所がわかりそう。
ロケ地マップ
※17/1/15追記
パリが舞台となるサスペンス映画をまとめてみました(随時更新します)。
資料
更新履歴
- 2017/01/15 「ロケ地マップ」に「パリが舞台のサスペンス映画」追加 画像のリンク先をPicasaアルバムからGoogleアルバムアーカイブへ変更
- 2014/11/28 「ロケ地マップ」追加
- 2014/04/22 milouさんの画像をPicasaウェブアルバムに切替
コメント
意外なことにネットを探してもロケ地に関する情報がほとんどなかった。
しかしずっと前にどこかで得ていた情報では、
☆ホテルは(指摘どうり)Le Grand Hotel。部屋番号もどこかにメモしたはずだが分からない。
アルファ60のビルは Maison de Radio France(ORTF)
ともかく屋外シーンはほとんどが夜で判別しにくいのだが
★まずホテルはMovie Locations のサイトでもimdb 同様Scribe としている。
しかし丸写しでまったく検証していないのは明白。
なぜなら車が到着するときバックにはAmerican Express のネオンが見える。
画面左にはTWAらしき航空会社の事務所、そして車は道路左側のホテルに入っていく。
リッツ同様、玄関まで5メートルぐらいあり車は左にカーブして玄関前まで行く。
玄関奥には階段が見えている。
ところが(こちらも多くの映画に登場する)Scribe はそもそも道路右側にあり特徴的な
アールヌーヴォー風のひさしを持つ玄関は2メートルもなく車を乗り入れる作りではない
(ホテル内には駐車場すらない)。ちょっと調べれば変だなと気づくはずなのだが…
外の狭いバルコニーの金網の模様が現在もまったく変わっていないことがSVで確認できる。
窓の向かいでSAMARITAINE と読めるビルがあるが、かの有名なかっての百貨店ではない。
部屋はパリ三越右隣の店の向かいぐらいですかね。
映画では344号室というが現在は4桁のようである。現在のフロントは映画と逆で半円形に張り
出しているが、もしかしたら超高級ホテルに見せないための偽装かもしれない。
大広間などは今もあまりかわってないようだが。
★カリーナと意味論研究所に行ったあとフォン・ブラウンに会いに行く。
なぜか入ったあとの39分あたりで円形の外観が映るのがORTF。84分あたりのセーヌに面した
ガラス張りの玄関を出る場面でも確認できる。
いくつかの資料でアルファ60のビルをORTFとしていたが内部のエレベーターは
はSS(地下)から11階(日本式12階)まであり疑問が残るので
内部はEsso だろう。Barbes にあるEDFビルは外から見る限り連想できる場面がない…。
ドアが延々と続く小部屋もORTFだというが『アメリカの伯父さん』で確認すると
廊下はわずかだがアールのある孤形で直線ではないので疑問が残る。
★車を途中で降りて一人で入って電話するのはPTT(郵便・電話局)だが場所は不明。
★カメラは43分あたりで一瞬だが画面いっぱいになる。それではっきり分かるが
機種はAGFA ISO RAPID IF(Fはフラッシュ付き)ハーフではありません。
発売が65年なのでメカオタク、新しいモノ好きのゴダールらしいですね。
http://www.thecamerasite.net/03_Folder_Cameras/Pages/agfasol.htm#imat
★背の高いビルはHLM(低所得者用高層住宅?)とのみ言っているが。
画像検索して似たものはあったが片面が違うし場所も不明。
http://jp.fotolia.com/id/31785463
milouさん詳細コメントありがとうございます。
カメラまで調べていただいて恐縮です。以前持っていたのに似ていたので、もしやと思いましたが違ってました。
寄せていただいた情報、画像など照合して今夜にでもアップさせていただきますね。もう少しおまちください。m(__)m
milouさん、画像アップさせていただきましたが、眠くなってきたので後は明日以降にします~
少し追加しました。
建物は思わせぶりなカットも入っているので、設定上どれが何なのかよくわからないですね。
この映画こんなにちゃんと見たの初めてかもしれません(笑)。
郵便局とプールについて。
今日『60年代ゴダール――神話と現場』という本を立ち読みしたら撮影時の文章にいくつかのロケ地が出ていた。
途中立ち寄る郵便局は13 Rue d’Anjou,75008 で一見映画のガラス張りのイメージと一致しないが出て行くときに見える入り口のアーチの角度は同じなので多分ほとんど変わっていないと思われる。さらに正面入り口左に2階へ上がる階段も外からかすかに見えている。
プールの方は 34 Boulevard Carnot らしい。現在もプールとして営業しているが映画のような室内プールではないので確証は取れない。
http://www.nageurs.com/piscine-roger-le-gall
いずれにしろ、室内などは予想外に多くのビルを使っているようです。
プールの訂正です。間違った航空写真を見てしまいました。
このプールは屋内プールだけのようです。
映画では地下ですが、何となくここも1階は受付と脱衣室やカフェ(??)で
プールは地下のような気がします。2面あり恐らく昔からあるのが
(映画と同じ)25メートルで地下に、50メートルが1階で
新設されたドームの下だと思います。
プールの出てくるフランス映画も結構あるが記憶にあるのは室内プールばかりですね。
ちなみに僕自身はリヨンでプールに行きましたが、そこは川沿いの屋外でした。
milouさん、遅くなりましたが郵便局の項目追記しました。
画像もありがとうございます。
『60年代ゴダール――神話と現場』、使えそうなので買おうかと思ってAmazonで値段見たら腰抜かしました。