『ラ・ジュテ』 La jetée (1962)

ラ・ジュテ -HDニューマスター版- [DVD]

作品メモ

28分の短編。モノクロの静止画とナレーションから構成された異色のSF。

お話は主人公の記憶に刻まれた少年時代の出来事から始まります。
家族で遊びにきた空港の送迎台(jetée)。
そこで見たのは美しい女性と、ばったり倒れるひとりの男。
何が起きたのかまではわかりませんが、主人公はずっとその時の記憶にとらわれることになります。
その数年後第三次世界大戦が勃発、パリをはじめ世界中が灰燼に帰します。
放射能を避けるため地下での生活を余儀なくされた人類。
科学者たちは、時間の穴を利用して過去や未来から物資とエネルギー源を調達しようとして、実験を重ねています。
ところが実験台に使われた捕虜たちは次々死亡または錯乱。
どうやら時間を越える行為は人間の意識に重大な悪影響を及ぼすようなのです。
過去に執着している者ならその影響が少ないだろう……ということで選ばれた主人公。
時間を遡り、とうとう空港で見たあの女性とめぐり逢うことができたのですが……
といったお話。

全編モノクロの静止画で構成されているのが特徴で、「フォトロマン」と称していたようです。
日本映画ですと『忍者武芸帳』(1967)みたいなものでしょうか(汗)。
映画論的、あるいは映画史的な位置づけやら評価やらは知りませんが(いつもそんなの無関係に映画楽しんでます)、スタイリッシュでクールな表現はとても半世紀前のSF映画とは思えず今なお鮮度ばっちり。
語り口だけでなく、SFとしてのアイデアもなかなかのもので、脳内であれこれ補完して楽しむこともできそうです。
かといって同じ手口で似たようなSFをまた作ったとしても二番煎じのそしりは免れないので、言い方は悪いですが最初にやったもん勝ち、空前絶後の1本と言えるかもしれません。

出演は、主人公の男にダフォ・アニシ(Davos Hanich)、女にエレーヌ・シャトラン(Hélène Chatelain)、科学者にジャック・ルドゥー(Jacques Ledoux)。
IMDbを見る限り3人とも映画出演はこれ1本。もしかすると皆さん演技の経験がないのかもしれませんが、台詞もないし静止画なのでまったく無問題。
監督・脚本クリス・マルケル。今年(2012年)7月に91歳で亡くなっています。
製作アナトール・ドーマン、撮影ジャン・チアボー、音楽トレヴァー・ダンカン。

テリー・ギリアム監督の『12モンキーズ』のお役に立っていますが(”INSPIRED BY THE FILM ‘LA JETÉE’ WRITTEN BY CHRIS MARKER”とクレジット有り)、『12モンキーズ』公開時にはこちらはほとんど見ることはできなかった……といいますか、タイトルそのものが知られていなかったような。
今ですとDVDが発売&レンタルされているようなので簡単に鑑賞できるのがうれしいところ。
一度は見ておく価値はあると思いますので、未見の方はぜひどうぞ。

ロケ地

IMDbでは、

Orly Airport, Orly, Val-de-Marne, France

とこれだけ。

空港

ナレーションでも言っているように、オルリー空港。

Orly Airport, Orly, Val-de-Marne, France

送迎デッキのあたりは映画の頃とは少し造りが違っているようです。

こちらはWikimedia Commonsにあった画像。
1965年とのことで映画の雰囲気に近いですね。
左奥の送迎デッキが撮影に使われたところのようです。マップ上では西側の端。

Photo from Wikimedia Commons (public domain).

 

地下(参考・12/11/15追記)

milouさんからコメント欄に関連して下水道の画像を提供していただきました。
撮影は1978年とのことです。

なるほどかなり映画に近い雰囲気ですね。

公園

彼女と一緒に散策するところ。
2人の場面は、並木道や庭園、博物館などを含めてこのエリアで撮影されているようです。

パリ植物園(Jardin des Plantes de Paris)W

並木道の参考画像。
2本ありますが、どちらのどの位置かまではわかりません。

※2012/11/15追記
milouさんから画像を追加提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
セーヌ川寄りの正門(?)から入ってすぐのラマルク像から見たところ。
撮影は1990年。 この両側が並木道ですね。

認識票

考える人的ポーズの主人公と子供。
彼女が彼の認識票に気づくところ。

柱や窓の形から、場所は公園の南西にあるこちらの建物。入口向かって右側ではないかと思われます。

La galerie de Minéralogie et de Géologie (鉱物地質ギャラリー)W

建物は自然史博物館(後述)のひとつ。
動物の剥製がある建物の南側に位置。

切り株

2人で指さす場面。
映画では普通に屋外に置かれてありましたが、現状はこう↓なっているみたいです。

こちらはmilouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
そのものずばり映画に登場した切り株……といいますか輪切り……といいますか年輪。
撮影は2000年とのこと。
「自然史博物館のあるJardin des plant を歩いていて 何気なく事務所のような建物に入ったらロビーに 飾られていたのです。別に展覧会とかじゃないただの飾り。」
とのことで、かなり貴重な写真ですね。

こちらは一緒に提供していただいた参考画像。
いちばん東側にある古生物ギャラリーの正面入り口。

Galeries de Paléontologie et Anatomie comparée

自然史博物館

50日目、剥製の動物を見学したところ。

Muséum national d’histoire naturelle (国立自然史博物館)W
http://www.mnhn.fr/le-museum/

博物館の建物はパリ植物園の西側と南側にいくつか並んでいるようですが、剥製が展示されていた広いホールがあるのは、西側のGrande Galerie de l’Évolution(進化の大ギャラリー)。

今も展示されているキリンさんたち。

展示の仕方は少し変わってきているようですが、建物は同じ。
おそらく他の剥製の展示室も同じ建物の中で、中央の吹き抜けの周囲に配置されているものと思われます。

ご参考までに、現時点(12/11/9)での館内のマップ(PDF)の直リンクはこちら。

http://www.mnhn.fr/museum/front/medias/lieu/29952_PLAN_GGE-FR-2010-BD5.pdf

この博物館の場面は時間をたっぷり使っていて不思議な魅力に満ちていました。
最近の『ノウイング』(2009)や当サイトでも取り上げた『ミラクル・マイル』(1988)など、破滅もののSFはこういった博物館と相性が良いみたいですね。

資料

更新履歴

  • 2014/04/22 milouさんの画像をPicasaウェブアルバムに切替。

コメント

  1. milou より:

    これは難しいですね。確かに大半はJardin des Plantes 内だと思われるが
    SVとかがないので公園内のどこかの推測はできても決め手がない。

    最初の廃墟にしても実際の爆撃や地震の写真なのか(凱旋門のように)
    修正したものか分からないしパリ以外の写真も多いはず。

    一番最初の廃墟、左にドーム真ん中にエッフェル塔、右に教会らしき尖塔
    が見えエッフェル塔が少し奥にあるようだ。
    エッフェル塔の向きからみて左手のドームはアンヴァリッドでルーブルあたりから
    見ているはずだが右手の尖塔が分からない。手前に見えるはずのセーヌも見えない。
    距離感は合わないが逆にエトワール方面から見ても、やはり尖塔が見つからない。

    いくつかの彫像も簡単に分かるかと思ったが画像検索してもこの映画しか出てこない。

    映画の設定はシャイヨー宮の地下だがパリの下水道は見学ツアーがあるほど有名で
    (僕も78年に行った)撮影には困らないだろう。Youtube にも色々あるが
    地上と同じ青い道路標識が付けられているので迷子にならない???

    ちなみに、この映画にも思い出がある。
    初めて見たのは1967年。どこからか忘れたが16ミリフィルムを借りて上映会を開いた。
    もちろんビデオなんてない時代、上映時に映写機から直接音をテープに録音した。
    (今なら著作権侵害?)。このときすでに一瞬だけある動きに気づき興奮したものです。

  2. inagara より:

    milouさん、コメントと画像のご提供ありがとうございました。
    遅くなりましたが、画像アップさせていただきました。
    廃墟や彫像の写真はチェックが難しそうで早々に諦めてしまいましたが、粘ればある程度は解明できるかもしれませんね。
    最初にご覧になったのが67年とは凄いです。16mm版があったというのも凄いですが。
    (そういえば昔は上映会といったら16mmでしたね)

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