記事内の商品画像には広告リンクが含まれています

『スタークラッシュ』 Starcrash (1978)

B01BGK8FCC

作品メモ

『奇跡の丘』『豚小屋』『カンタベリー物語』と、シチリアはエトナ火山を撮影に利用したパゾリーニ監督作をチェックしてきましたが、さすがに3本続けると胸焼け起こしそうになったので、箸休め?の1本。

IMDbで、Mout Etnaで撮影された映画のリストを見ていたらこちらのタイトルがありましたので、思わずエントリー。

『スタークラッシュ』は日本未公開のSF映画。
1978年という製作年度と「スターなんとか」というタイトルだけで、どこぞやの映画をアレしたなんちゃって企画ということがわかります。
当時あれこれビジュアルが出ていたような記憶もありますので、おそらく劇場公開する気まんまんで買い付けていたのかと思いますが、結局はビデオスルー&TV放映。
最初に見たのはVHSでだったと思いますが、まあそのくらいの扱いで十分かな、と思える内容ではありました。

美しきヒロインが宇宙狭しと大活躍し悪をやっつけ平和をもたらすという典型的なスペースオペラ。
残念ながら、コンセプトやストーリー、特撮、演技などどれをとっても、「う~む」な仕上がり。
同じヒロインものでも、『バーバレラ』があえてキッチュでポップな路線を狙ったのに対し、『スタークラッシュ』は大真面目にスペオペを作ろうとして、力足らずでスベってしまった観もあります。
この場合の「力」とは、作り手の才能なのか、予算なのか、それともその両方なのか……

それでもばっさり切り捨てる気になれないのは、作り手のSF特撮映画への偏愛が随所に感じられること。
特に巨人像や剣士といったダイナメーションのシーンはハリーハウゼンへのオマージュが明らかに見て取れ、こーゆーのやりたかったのだろーなーと、つい温かい眼差しとなります。
細かいところでは、冒頭の宇宙船の名前がマレイ・ラインスター[1]アメリカのSF作家、乗員がブラッドベリー少佐(Major)[2]おそらくレイ・ブラッドベリから、目的の星はアラキス[3]『デューン/砂の惑星』の舞台の星と、わかる人にはわかるうれしいネーミングが続きます。
きっと作り手は、「SF映画ブームだから便乗していっちょ当てたろ」ではなく、「SF映画ブームが来たから、俺たちの企画もやっと通る」と喜んだ純粋なSF特撮映画好きなのではないかと、そんな風に良きに解釈しております。
少なくとも『ブラックホール』や『スペース・サタン』あたりよりは印象は悪くないような(これでは褒めてない……)

あれこれ残念なところが見受けられるこの映画、そのまま埋もれるかと思いきや、今ではBlu-rayは出ていますし、先程調べたらAmazon Prime Videoでも見放題で見られるようで、なんともうれしいことです。

https://www.amazon.co.jp/dp/B07ZDJBL7G

アマプラ会員の方はぜひ……とまでは言いませんが、ご興味がおありでしたらどうぞ。 エトナ火山が出てくるのは0:48頃です。

キャスト&スタッフ

真面目にリストを作るほどの映画ではないとわかってはいますが、ついいつものクセで……😇

ステラ・スター(Stella Star)/ キャロライン・マンロー
お尋ね者の密輸業者。«Stella»はイタリア語で「星」つまり「星星」さん。 ⇒ IMDb Photo
キャロライン様はなかなか日本人にはいない(当たり前)肉食系のお顔ですが、個人的には『シンドバッド黄金の航海』の可愛らしくも艶っぽい姿にかなりドキドキしました。
70年代から80年代にかけて、SFやホラーものに引っ張りだこだった思います。『007 私を愛したスパイ』(77)あたりでだいぶメジャーになってきたと思いますが(ボンドガールはバーバラ・バックで2番手ぐらいの役)、実はその10年前『007 カジノ・ロワイヤル』(67)にもちょびっと出ています。
アクトン(Akton) / マージョ・ゴートナー
ステラの相棒。外観はヒューマノイド。地球人ではなく、いろいろと不思議な能力を持っています。そのあたりの説明は一切ないという設定の潔さ(ご都合主義ともいう)。 ⇒ IMDb Photo
演じた俳優さん、顔かたちといい髪型といい、なんとなく『アメリカン・ヒーロー』のウィリアム・カットに似て見えますが、別人。
エル(Elle) / ジャド・ハミルトン
ステラたちを追う帝国宇宙警察のロボット警官。 ⇒ IMDb Photo
中の人はどんなお顔か見えませんが、IMDbにやたらくわしいbioがあります。
「1967年The T-Bonesというバンドで来日したことがある」とか、「放射線遮蔽コンクリートの特許をとった」とか、なかなか面白い内容。
誰が書いたのかと思ったらご本人でした。 😉
ソアー(Thor) / ロバート・テシア
帝国宇宙警察チーフ。エルのボス。Amazonの創業者に似ているが肌は緑色。 ⇒ IMDb Photo
演じたロバート・テシアは、『ロンゲスト・ヤード』禿頭とくとうの力自慢ですね。
銀河皇帝 / クリストファー・プラマー
どこぞやの映画と異なり、こちらの銀河皇帝は平和を希求する良い人。
こんな映画にこの人が?というクリストファー・プラマーですが、長いマントを翻して、まんざらでもなさそうに格調高く演じています。
正面からのショットが多く、涼しい眼差しをこちらに送ってきて、なんだか今にも「エーデル・ワイス」を歌い出しそう♪ ⇒ IMDb Photo
サイモン王子 / デビッド・ハッセルホフ
銀河皇帝の一人息子。ルックス良し性格良しで、育ちの良さがにじみ出ています。
デビッド・ハッセルホフと言えば『ナイトライダー』(1982-)ですが、その数年前の姿を拝めます。 ⇒ IMDb Photo
コレリア / ナディア・カッシーニ
いわゆるアマゾネスの女王。あまり強くなく、部下はもっと強くない。 ⇒ IMDb Photo
ザース・アーン伯爵 / ジョー・スピネル
宇宙の支配を目論む悪者。どこぞやの映画のように、巨大で強力な破壊兵器を準備しているようです。 ⇒ IMDb Photo
字幕では「カウント」となっていますが、「Count」は「伯爵」と訳した方がカッコいいのでは?
それはさておき、演じた俳優さんは強面専門。『ロッキー』でロッキーにカツを入れてたガッツオ(すみません、このダジャレ気に入ってるので15年ぶりにまた使ってしまいました……)

監督脚本(共作)ルイジ・コーツ(ルイジ・コッツィ Luigi Cozzi)。
テーマ曲だけで泣けてしまう催涙映画『ラストコンサート』(76)の監督さんですが、あの映画のヒロインも「ステラ」でした。

撮影ロベルト・デットーレ、ポール・ビーソン。
特撮アルマンド・ヴァルコーダ。

音楽はなんとジョン・バリー。
クリストファー・プラマー同様「こんな映画にこの人が」ですが、こちらの↓メインテーマなど、たしかにジョン・バリー節となっています。

イントロは目をつぶって聴くと、007シリーズにも聴こえます。
40秒からのテーマの出だしは『ハイ・ロード』と同じですね。
こちら↓はサントラCD。

B001OBM3BS

あっと、ジャケット右側にどこかで見たことがあるような宇宙船が描かれていますが、気にしてはいけません。
どうせ本編では出てきませんので。

ロケ地

IMDbでは、

Mount Etna, Catania, Sicily, Italy
Bari, Apulia, Italy
Swiss Alps, Switzerland
Cinecittà Studios, Cinecittà, Rome, Lazio, Italy (studio)
Tropea, Italy

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

海岸

0:24

シャトルで着陸して、宇宙船の残骸を見つけたところ。
まもなくそこがいわゆるアマゾネスたちの星であることがわかります。 IMDb Photo

シャトルの着陸シーンはなかなか良くできていたと思いますし、宇宙船のノズルのセットも頑張っていたのではないでしょうか? IMDb Photo

撮影は、IMDbのリストのこちら↓

Tropea(トロペーア)W, Italy

具体的には、こちらの浜↓

その後、青銅の巨人(『アルゴ探検隊の大冒険』でおなじみ)ならぬ、ステンレスの女神像みたいなのが襲ってくる海岸は、東へ少々移動してこちら↓

Oasi Beach
Scogli di Riaci

岩山に伸びている砂州部分は、マップではこのようにマークされています。

Lido Arcobaleno Riaci

参考までに、こちら↓はお懐かしや、『アルゴ探検隊の大冒険』の青銅の巨人。

B08YYHV37W

なぜ15年以上後の映画の方がダイナメーションの動きが悪いのか、疑問は尽きません。

氷と雪の惑星

こちら↓でしょうけど、撮影場所は探しようがありません。

Swiss Alps, Switzerland

火山の惑星

0:49
「全銀河で最も強力な攻撃」をゆるゆるとすり抜けた後、やってきた火山の惑星。
いちおうディモンディア星という名前があります。

Mount Etna(エトナ火山)W, Catania, Sicily, Italy

パゾリーニではヨーロッパ中世の原野とか地獄の景色でしたが、今度は宇宙のどっかの惑星……ということで、使われ方がバラエティに富んでいますね。

似たような景色ばかりなので、撮影場所はピンポイントでは難しいかも。
SVも画像も雰囲気観賞用です。

この場面も、不時着した宇宙船のセットは頑張って作っていたと思います。

この後謎の原始人たちにステラは捕まってしまいますが、そこで仮面を付けた謎の男(実はサイモン王子)に助けられます。
この仮面、『シンドバッド黄金の航海』を思い出します。
製作原案ダイナメーションがレイ・ハリーハウゼンで、ヒロインはキャロライン・マンローでした。

資料

更新履歴

  • 2022/05/16 新規アップ

References

References
1 アメリカのSF作家
2 おそらくレイ・ブラッドベリから
3 『デューン/砂の惑星』の舞台の星

コメント

タイトルとURLをコピーしました