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『カンタベリー物語』 I racconti di Canterbury (1972)

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作品メモ

『奇跡の丘』『豚小屋』と、シチリア島のエトナ火山で撮影されたパゾリーニ監督作品をチェックしてきましたが、この『カンタベリー物語』もまた同じ。
ネタバレっぽいですが書いてしまえば、ラスト近くの地獄の場面で登場しています。
よほどこの場所が気に入った、とかいうことではなくて、単にこれだけの荒涼たる景観は他ではなかなか得られないのでついつい利用、ということと思いますが、これまで以上にリキがはいっていて、掉尾を飾る?にふさわしい、はっちゃけた描写となっています。

『デカメロン』から始まる「生の三部作」 “Trilogia della vita” の2本目。
この後『アラビアンナイト』、遺作『ソドムの市』と続きます。

原作はジェフリー・チョーサーによるイギリス文学の古典『カンタベリー物語』W
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カンタベリーへの巡礼途中で出会った人々が、退屈しのぎに一人ずつ皆にお話を聞かせるという趣向で、つまりは中世英国版すべらない話ですね(違)。
原作では24篇の物語が含まれ、序文やつなぎの部分をチョーサー(一人称で登場)が記してまとめあげるという構成。
映画ではそこから8つの物語をピックアップして映画化しています。

原作を久々にさらっと読み返してみましたが、強調したいのは原作は決して映画のように下ネタばかりではないということ(笑)。
そりゃたしかにそういった描写が出てくることは確かですが、一方で高邁な話もあり歴史物語もありで、身分や職業が異なる様々な語り手がそれぞれのバックボーンに応じて紡ぎ合うバラエティに富んだ物語世界となっています。
どうも監督、原作からお下劣ネタばかりを喜んで集めたような疑惑も。中学生か 😇

おかげで画面には、男女を問わず裸体があっけらかんと行き交い、色と欲がたっぷり乗った人間喜劇がドタバタと繰り広げられ、その大らかさは、なるほど「生の三部作」と呼ぶのにふさわしいエネルギーが満ちているような。
一方で陽の世界だけではなく、時折陰の部分が黒々と顔をのぞかせることがあり、それもまたパゾリーニ監督の持ち味ではないかと思ったりしました。

キャストでは、チョーサー役にパゾリーニ監督本人が出ているのが目に付きます。
その他エピソードごとの気になる出演者は、「エピソード&ロケ地」でメモっておきました。

監督脚本、そしてチョーサー役にピエル・パオロ・パゾリーニ。
撮影トニーノ・デリ・コリ、音楽エンニオ・モリコーネ。

エピソード&ロケ地

IMDbでは、

Battle Abbey, East Sussex, England, UK (merchant’s tale: hall interior)
Chipping Campden, Gloucestershire, England, UK (pardoner’s tale: village)
Grange Barn, Coggeshall, Essex, England, UK (pardoner’s tale: inn)
Mount Etna, Catania, Sicily, Italy (hell sequence)
Hastings, East Sussex, England, UK
Lavenham, Suffolk, England, UK (as Bath in the Wife of Bath tale)
Rye, East Sussex, England, UK
Wells Cathedral, Wells, Somerset, England, UK exteriors at Vicar’s Close: January chooses May for his wife)
Layer Marney Tower, Tiptree, Colchester, Essex, England, UK (Perkin pilloried)
St. Thomas a Becket Church, Fairfield, Romney Marsh, Kent, England, UK (pardoner’s tale: the three friends meeting Death)
Bath, Somerset, England, UK
Cambridge, Cambridgeshire, England, UK
Canterbury, Kent, England, UK (pyre in the Cathedral’s cloister)
Maidstone, Kent, England, UK
Rolvenden, Kent, England, UK (windmill)
Safa-Palatino, Rome, Lazio, Italy (indoor scenes)
St Osyth, Clacton, Essex, England, UK (merchant’s tale: Sir January’s tower and garden)
Warwick, Warwickshire, England, UK
Bradford-on-Avon, Wiltshire, England, UK
John Webb’s Windmill, 19 Bolford Street, Thaxted, Dunmow, Essex, England, UK (The Summoner and the Devil scene with the broker filmed here)
Tiptree, Colchester, Essex, England, UK
Fairfield, Romney Marsh, Kent, England, UK
Thaxted, Dunmow, Essex, England, UK

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

第1話・貿易商人の話

原作では10番目の話。

登場人物
  • サー・ジャニュアリ / ヒュー・グリフィス ……妻をめとろうと思い立った老騎士
  • メイ / ジョゼフィン・チャップリン ……若い新婦
  • ダミアン ……小姓。メイの浮気相手
  • プルートー ……妖精の王
  • プロスペリーネ(Prosperine) / エリザベッタ・ジェノヴェーゼ ……妖精の女王。原作ではプロセルピーナ(Proserpina)。演じた女優さんは、「生の三部作」皆勤賞。
城のホール

0:08

Battle Abbey(バトル修道院)W, East Sussex, England, UK (merchant’s tale: hall interior)

城の塔

0:09
ティルトダウンの後ジャニュアリが出てくる塔↓

St OsythW, Clacton, Essex, England, UK (merchant’s tale: Sir January’s tower and garden)
St Osyth’s PrioryW

  • Google Maps(SV)  ……足場が組まれて隠れている
  • 51.799745, 1.07602148

こちらの↓画像は映画とは反対の北側からの眺め。

メイを見初める通り

ジャニュアリが城(前項目)から出てきて眺める通り。
塔とは全然別の場所で、塔(の前にいるジャニュアリ)とこの場所を編集で組み合わせていることになります。

Wells Cathedral, Wells, Somerset, England, UK exteriors at Vicar’s CloseW: January chooses May for his wife)

庭園

0:17
ジャニュアリ自慢の秘密の庭。
モコモコと大きく選定された木が並んでいるのが特徴的。
なぜかすっぽんぽんの若者たちがうろうろしていますが、妖精の王と女王と笛吹きです。

撮影場所は、IMDbのリストには見当たりませんが、こちら↓ではないでしょうか?

Packwood HouseW
Packwood Ln, Solihull B94 6AT
https://www.nationaltrust.org.uk/packwood-house

これ↑ですと今いち樹木の大きさがつかめませんが、中央をトリミングしてみますと↓なんとびっくりサイズ。

なお0:19でメイを連れてくる場面は、「塔」や次の「城門」と同じくSt Osyth’s Prioryの庭(塔の南側)。
「通り」と同じく、違う場所を編集で一緒のように見せています。

城門

0:20
「塔」と同じくこちら↓のゲートハウス。

St Osyth’s PrioryW

第2話・托鉢僧の話

原作では7番目の話。

登場人物
  • 召喚吏[1]桝井氏訳 ……The Summoner。IMDbではThe Spy、Wikipediaでは刑事。宗教裁判に召喚すると脅しては賄賂を受け取っています
  • 悪魔 / Franco Citti ……演じた俳優さんは「生の三部作」皆勤賞
中庭

0:31
火刑が行われるところ。

カンタベリー大聖堂Wの回廊でした。

Canterbury, Kent, England, UK (pyre in the Cathedral’s cloister)

老女がいた風車

0:38

John Webb’s WindmillW, 19 Bolford Street, Thaxted, Dunmow, Essex, England, UK (The Summoner and the Devil scene with the broker filmed here)

最初のカットで右側に見える教会は↓

St John the Baptist, our Lady and St Laurence, Thaxted

第3話・料理人の話

原作では4番目の話。わずか数ページで、おそらく未完に終わっています。

登場人物
  • パーキン / ニネット・ダボリ ……パゾリーニ監督の常連さん、ここで登場。もちろん「生の三部作」は皆勤賞。
晒し者

0:52
パーキンが晒し者になるところ。

Layer Marney TowerW, Tiptree, Colchester, Essex, England, UK (Perkin pilloried)

第4話・粉屋の話

原作では2番目の話。
底抜けにくだらなくてアホらしいが故に記憶に残ってしまう内容。原作では騎士による高貴な話の後に置かれているので、よけいギャップを楽しめます。
最後のすっ飛び方はダチョウ倶楽部もかくやの素敵なリアクション、そしてたたみかけるようにドリフのたらい落としが続きます 😇

登場人物
  • ジョン / Michael Balfour ……大工 
  • アリソン / Jenny Runacre ……その妻
  • ニコラス ……下宿人。スキあらばアリソンに手を出す
  • アプサロン ……アリソンを狙う若者

第5話・バースの女房の話

原作では6番目の話。他の話者が三人称的に語るのに対し、彼女は自分自身のことを語ります。原作では結婚観や貞節、年齢のことなど結構真面目に持論を展開しますが、映画では序盤の性生活の部分だけが抽出され、あくまで艶笑噺として映像化されています。

登場人物

バースの女房 / ラウラ・ベッティ ……5番目の夫に腹上死されたばかり。今度の夫は若い学僧で期待値アゲアゲとなるが……
ジェンキン / Tom Baker ……6番目の夫となる学僧。ぐっと年下だが、本ばかり読んで女房を満足させられない

住まい

1:09

設定はバース。撮影はこちら↓

Lavenham, Suffolk, England, UK (as Bath in the Wife of Bath tale)

住まいの外観として登場したのは↓

Lavenham GuildhallW

この物件、『バリー・リンドン』で旅籠として登場しています。

祭りの風車

1:14

Rolvenden, Kent, England, UK (windmill)

Rolvenden WindmillW

結婚式の教会

1:17
調査中

第6話・家扶の話

原作では3番目の話。「粉屋の話」の次に置かれています。家扶は大工なので、大工の女房を寝取る内容だった「粉屋の話」は面白くなく、今度は粉屋の家族を寝取る話で混ぜっ返そうとします。
家扶[2]桝井氏訳(The Reeve)は、Wikipediaでは「親分」。

登場人物
  • ジョン ……学生
  • アレン ……学生
  • シムキン ……粉屋。粉や穀物を平気でピンハネする。
  • その女房
  • その娘
大学

1:20
最初のショット、建物を捉えながら左へパンする場面。
ケンブリッジですね。

Cambridge, Cambridgeshire, England, UK
Great Gate, St John’s College
St Johns St, Cambridge CB2 1TW

第7話・免罪符売りの話

原作では14番目の話。

登場人物
  • 3人組 ……酔っては狼藉をはたらく若者たち
  • 老人
旅籠

1:33
DQNたちが好き放題やらかすところ。

Grange BarnW, Coggeshall, Essex, England, UK (pardoner’s tale: inn)
https://www.nationaltrust.org.uk/grange-barn

旅籠のある村。

Chipping CampdenW, Gloucestershire, England, UK (pardoner’s tale: village)

  • Google Maps(SV) ……最初のショット(カメラ東向き)
  • 52.0502768,-1.7817956
ぽつんと建つ教会

1:39
老人がいたところ。

St. Thomas a Becket Church, FairfieldW, Romney Marsh, Kent, England, UK (pardoner’s tale: the three friends meeting Death)

毒を手に入れるところ

旅籠のある村 Chipping Campden のマーケットホール。

第8話・召喚吏の話

原作でも8番目の話。その前が「托鉢僧の話」で小悪党の召喚吏が悪魔に連れて行かれてしまうオチだったため、こんどは召喚吏が托鉢僧をおとしめるような話をしてやり返しています。
映画では「托鉢僧の話」は第2話なので、そのつながりは薄れていますね。
ラストの地獄巡りは映画オリジナル。

登場人物
  • 托鉢僧
地獄

Mount Etna(エトナ火山)W, Catania, Sicily, Italy (hell sequence)

ピンポイントで場所を探し当てるのは無理そう。

『奇跡の丘』、『豚小屋』に続いてエトナ火山が三たび登場。
この場面だけイギリスではなくイタリアでの撮影となります。

エピローグ

原作では24話「教区司祭の話」に追記された「チョーサーの撤回」に相当。

大聖堂

御一行が無事?到着したのは、こちら↓

カンタベリー大聖堂W

資料

更新履歴

  • 2022/05/11 新規アップ

References

References
1, 2 桝井氏訳

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