『薔薇の名前』 The Name of the Rose (2019)

Der Name der Rose. Klappschachtel inkl. Digi-Pack

ペニテンツィアージテ!

作品メモ

ひとつ前のエントリー『ホワイト・ドラゴン』はAXNミステリーお得意のミニシリーズ一挙放送でしたが、こちらも同じく昨年(2019年)の一挙放送組。
ウンベルト・エーコによる世界的ベストセラーの映像化で、1986年の映画版は当サイトではすでにエントリーがあります。
 → 『薔薇の名前』 Der Name der Rose (1986)

薔薇の名前〈上〉 薔薇の名前〈下〉

 

確か日本での映画公開時には翻訳本は未刊行で、当時「この作品はウンベルト・エーコによる世界的ベストセラーの映画化で……」などと偉そうに言いながら、実は原作を読んだことがないのはもちろん、エーコのエの字も知らなかった日本人のなんと多かったことか。
私もそのひとり 😆
それではアカンと後に翻訳本が出たときにさっそく読んでみましたが、まあハードカバーの上下2巻、長い重い高い。
知的興奮は得られたものの、果たして素養がないままホントに内容をきちんと理解できたのか、はなはだ疑問です。

今回久々に読み返してみましたが、サルヴァトーレ火あぶりにならないじゃん、とか、記憶が映画と混濁してました。

このドラマ版は、昨年(2019年)制作されたばかりの全8話のミニシリーズ。
製作はイタリアの11 Marzo Film、Palomar、Rai Fictionと、ドイツのTele München Group (TMG)。
欧米各国の俳優が出演し、セリフは英語。

日本では、NHK BS4Kで2019年12月8日から毎週日曜日に放送。

AXNミステリーで2019年10月12日(土)と2020年1月2日にそれぞれ一挙放送。

7時間近い尺に、予算も手間もたっぷりかけて、ドラマとしては質量ともに十分の内容。
キャラクター配置やストーリー展開、謎解き部分などほぼ原作通りとなっていますが、一部原作にはないキャラや場面も登場。
オリジナリティを出そうとしているのかもしれませんが、そのあたりは評価が分れるところかもしれません。

 
 
 

登場人物

似たような装束の修道僧が第1話でちゃっちゃっと紹介されてしまうので、後々混乱します。
次回鑑賞するときの自分用の手助けに、こちらでちゃっちゃっとまとめ。

師匠と弟子

バスカヴィルのウィリアム(Guglielmo da Baskerville)/ジョン・タートゥーロ
イングランド人のフランチェスコ会修道士。かつて異端審問官であったことがあり、ベルナール・ギーとはいろいろあった模様。
「バスカヴィル」はまあバスカヴィルの犬からでしょうか。シャーロック・ホームズ同様、推理を披露して周囲を驚かせてはぐふふんとなるタイプ。
ジョン・タートゥーロは抑えた演技がまさにいぶし銀、個人的には映画版のショーン・コネリーよりしっくり。
メルクのアドソ(Adso da Melk)/ダミアン・ハードン
ベネディクト会の見習い修道士。映画版、ドラマ版での語り手。
神聖ローマ帝国軍の将軍の息子で、原作では修行のため親がウィリアムに預けたという設定。ドラマでは父親は息子に戦場で戦うことを求めるものの、息子は鎧を脱ぎ修行の道を選ぶ……という風に少しアレンジ。
「アドソ」はまあ「ワトソン」でしょうか。
ドイツ人という設定で、演じたのもドイツの新人くん。映画版ではクリスチャン・スレーター。

修道院

フォッサノーヴァのアッボーネ(Abate Abbassano da Fossanova)/マイケル・エマーソン
修道院長。アデルモの死をウィリアムが見事に分析してみせたことから、教皇使節団が来る前に事件を解決するよう依頼。しかしなぜか文書館への立ち入りは許さない。院長になる前は文書館長だった。
演じたマイケル・エマーソンは当サイト的には『パーソン・オブ・インタレスト』のフィンチ役でおなじみ。オープニングクレジットでは”The Abbot”として最後にクレジット。
レミージョ・ダ・ヴァラージネ(Remigio da Varagine)/ファブリツィオ・ベンティヴォーリオ
厨房係。
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かつて異端のドルチーノ派に加わっていたことを秘密にしている。ドラマ版では、ドルチーノとマルゲリータの娘アナを守ると約束しているが……
サルヴァトーレ(Salvatore)/ステファノ・フレージ
厨房係(レミージョ)の助手。修道院の外にある製紙場で紙を作っている。映画版ではロン・パールマンの当たり役。
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レミージョ同様かつて異端のドルチーノ派に加わっていた。
マラキーア・ダ・ヒルデスハイム(Malachia da Hildesceim)/リチャード・サンメル
文書館長。
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伝書鳩を飛ばしていたのがこの人物で、ベルナール・ギーに修道院内の情報を送っていた。5人目の被害者となる。
ベレンガーリオ・ダ・アルンデル(Berengario da Arundel)/マウリツィオ・ロンバルディ
文書館長補佐。文書館へ入れるのは、館長と補佐の2人だけ。
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E1でアデルモの死を嘆き悲しんでいる。実はアデルモとただならぬ関係にあった。沐浴所の浴槽に沈み、3人目の被害者となる。ヴェナンツィオ同様指先と舌が変色していた。
セヴェリーノ(Severino da Sant’Emmerano)/ピョートル・アダムチク
薬草係で施療院を管理。薬草というと「修道士カドフェル」みたい 🙂
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ウィリアムの指示のもと、ヴェナンツィオの遺体を解剖。
E6(原作の第五日)ウィリアムに奇妙な書物のことを知らせた後、施療院で渾天儀(こんてんぎ)によって撲殺(4人目の被害者)、その場にいたレミージョが捕らえられる。
アデルモ(Adelmo)/レオナルド・パッツァーリ
細密画家。最初の被害者で、ウィリアムたちが到着する前に、塔の下で変死体となって発見。写字室の本に奇怪な絵を残している。
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ベレンガーリオとはただならぬ関係だった。
ヴェナンツィオ・ダ・サルヴェメック(Venanzio da Salvemec)/グリエルモ・ファヴィラ
ギリシャ文学が専門で、アリストテレスを研究。眉毛が濃い。
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2日目の朝、豚小屋で血の樽の中に逆さになっているのを発見される。2人目の被害者。指先と舌が変色していた。ウィリアムの調査で、文書館で毒殺されて豚小屋まで運ばれたことが明らかになる。
ベンチョ・ダ・ウプサラ(Bencio da Uppsala)/Benjamin Stender
修辞学と飾り文字の研究家。金髪の若者。
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ベレンガーリオがアデルモと何かをやりとりし親密になっているところを目撃。ヴェナンツィオも見ているはず……。
アリナルド・ダ・グロッタフェッラータ(Alinardo da Grottaferrata)/Roberto Herlitzka
最長老の修道士。
ホルヘ・ダ・ブルゴス(Jorge da Burgos)/James Cosmo
盲目の長老。修道院きっての博識な学者。
ニコーラ・ダ・モリモンド(Nicola da Morimondo)/Fausto Maria Sciarappa
ガラス細工僧
アイマーロ・ダ・アレッサンドリア(Aymaro da Alessandria)/Max Malatesta
写字生の長。ちょっと見ピート・ポスルスウェイト。

フランチェスコ会とドミニコ会

ミケーレ・ダ・チェゼーナ(Michele da Cesena)/Corrado Invernizzi
フランチェスコ会総長
ベルナール・ギー(Bernardo Gui)/ルパート・エヴェレット
フランス人のドミニコ会修道士。異端審問官として多くの異端者を火刑に処し、恐れられている。ドラマでは、使節団長として後から到着。
ルパート・エヴェレットは久々に見た感じ。タイトル前にタトゥーロに続いて2番目にクレジット。

村人他

娘(La Ragazza, The Girl)/アントニア・フォタラス
アドソたちが修道院へ向かう途中で出会ったオクシタン地方の娘。戦争で村や家族をなくし、ひとり修道院の近くの森の中で暮らしている(その割にはいつもこぎれい……)。言葉は通じず、アドソとは身振り手振りでやりとりする。
ネタばれにつき折りたたんでいます。クリックで開閉します。
娘はドラマ版ではE1の早々に顔を見せていますが、原作では3日目の終わりにようやく登場。彼女の運命は、原作、映画、ドラマ、それぞれ異なります。
アナ(Anna)/
ドラマ版オリジナルのキャラ。ドルチーノの娘という大胆なアレンジで、両親をベルナールにより殺されて以来彼を親の敵としてつけ狙っている。レミージョとは顔見知り。
ドルチーノ(Fra Dolcino)/Alessio Boni
異端とされるドルチーノ派を率いていた。ドラマのスタート時点で、既にギーによって処刑されている。
マルゲリータ
ドルチーノの妻。ドラマのスタート時点で、既にギーによって処刑されている。

ロケ地

IMDbでは、

Castello di Roccascalegna, Roccascalegna, Chieti, Abruzzo, Italy
Parco Archeologico del Tuscolo, Monte Porzio Catone, Rome, Lazio, Italy
Parco Naturalistico Archeologico di Vulci, Montalto di Castro, Viterbo, Lazio, Italy
Perugia, Umbria, Italy
Cinecittà Studios, Cinecittà, Rome, Lazio, Italy
Basilica di Santa Maria in Cosmedin, Rome, Lazio, Italy
Castello Orsini-Odescalchi, Bracciano, Rome, Lazio, Italy
Gole di Fara San Martino, Parco Nazionale della Majella, Fara San Martino, Chieti, Abruzzo, Italy
Bevagna, Perugia, Umbria, Italy
Eremo di Santo Spirito, Roccamorice, Pescara, Abruzzo, Italy
Manziana, Rome, Lazio, Italy

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

修道院

E1では0:15頃に最初のショット。
以後シリーズ通して主な舞台となります。
設定では、北イタリア山中のベネディクト会修道院。
名前は原作でも伏せられています。

全景

撮影はチネチッタスタジオでのセット撮影にVFXをトッピング。
セットがあったのは、スタジオのこの位置↓

Google Earthでこの位置を表示し、時間スライダーで2018/8/8までさかのぼると、セットの様子を見ることができます。
もちろん外側だけで中身はない作りですが、それでも堂々たる規模で、しっかり予算と気合いが入ったシリーズであることが伺えます。

東側にある道路(ライモン・シントゥ通り Via Raimondo Scintu)のSVで2018年6月のものを見ると、建設中のセットの様子を少しだけ覗くことができました。
足場の左側の方で湾曲した壁が作られていますが、これが文書館の塔。
また中央の奥手に上部がグリーンで覆われている建物が見えますが、これがメインの建物(聖堂や回廊があるという設定)。特徴的な外壁も見て取れます。
グリーンの部分から上をCGでこしらえるのでしょうね。

 
 
 

というわけで撮影用のセットまでSVや空撮に収められているという、さすがチネチッタなのでありました。

聖堂(内部)

E1(0:19 0:28) E2(0:19) など幾度も登場。

Basilica di Santa Maria in Cosmedin(サンタ・マリア・イン・コスメディン教会)W, Rome, Lazio, Italy

By Livioandronico2013
via Wikimedia commons
(CC BY-SA-4.0)

「真実の口」があるところですが、このドラマではもちろん登場しません。

回廊

E1(0:36) E2(0:36) E4(0:32) E5(0:19) など。

Abbazia di Santa Maria di ValdiponteW

By Paolo Monti
via Wikimedia commons
(CC BY-SA-4.0)

皇帝軍の司令部

E1(0:06)他

トスカーナにある皇帝軍の司令部という設定。
断崖の上でロックオンした猫のように身構えている城は、こちら↓

Castello di Roccascalegna(ロッカスカレーニャ城)W, Roccascalegna, Chieti, Abruzzo, Italy

By Zitumassin
via Wikimedia commons
(public domain)

火刑の広場

E1(0:11)
回想でベルナール・ギーがドルチーノ派を火刑に処した広場。
フィレンツェという設定ですが、撮影はペルージアの中心のこちら↓

Perugia, Umbria, Italy
Piazza IV NovembreW

By Greymouser
via Wikimedia commons
(CC BY-SA-2.0)

野外劇場

E1(0:13)

「娘」と出会った野外円形劇場。
北イタリア、アルプス地方という設定ですが、撮影場所はIMDbのリストのこちら↓

Parco Archeologico del Tuscolo, Monte Porzio Catone, Rome, Lazio, Italy

TusculumWという町(ローマの南東20km)の遺跡のようです。

By Luiza Serpa Lopes
via Wikimedia commons
(public domain)

渓谷

E3(0:21)
アンが追われるところ。

Gole di Fara San Martino, Parco Nazionale della Majella, Fara San Martino, Chieti, Abruzzo, Italy
Abbazia di San Martino in ValleW

By Pietro
via Wikimedia commons
(CC BY-SA-4.0)

資料

更新履歴

  • 2020/03/03 新規アップ

『薔薇の名前』 The Name of the Rose (2019)” への2件のコメント

  1. 全くの余談ですが、1990年頃に而立書房から
    『バラの名前』解明シリーズという本があり
    ゾッキ本扱い(?)で安く並んでいました。
    僕が昔 買ったのは 5冊目の『バラの名前 便覧』ですが、
    シリーズは (帯によると)
    映画 『バラの名前』以下、…百科、…探索、…後日談、
    …便覧 (ここまで既刊)、近刊として
    …とボルヘス、…饗宴、…史談、…精読、…奏鳴、
    と全 10冊だが、検索しても出てこないので
    …饗宴、以後は出ていないと思われる。
    Amazon では 2000円以上しているが…

  2. milouさん、コメントありがとうございます。
    社名からして難しい本出していそう……
    この小説ちゃんと理解しようと思ったら、そういった解説本は手元に必要かもしれませんね。
    「精読」とか細かそうですが、「奏鳴」はなんだかわからず逆に中身が気になります……

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