見ろよ みんな
“希望と栄光の国”だ
目次
作品メモ
『長距離ランナーの孤独』では「エルサレム」 、『八十日間世界一周』では「ルール・ブリタニア!」と、BBCプロムスの最終夜で歌われる愛国歌を図らずもチェックしてきましたが、こうなったらもう「威風堂々」でしょ……ということで、『ブラス!』です。
『八十日間世界一周』でも書きましたが、今年は新型コロナ禍でさすがにホールでの大合唱は無理。
アルバート・ホールへは人を入れずに演奏会そのものは開催して、放送やネットで楽しめるようになっているようです。
https://www.bbc.co.uk/events/e3pd2m
9月12日の夜8:00ということで、日本時間ではまさに今夜……といいますか、明日日曜の4:00から。
「威風堂々(希望と栄光の国))」ももちろん演目に入っています。
……と地球の裏側で宣伝したところで、『ブラス!』に戻りますと、ちょっと意外ですが、設定年代としては90年代。
いわゆるイギリス炭坑ものでは、『パレードへようこそ』や『リトル・ダンサー』が1984年の炭鉱ストを振り返った映画なら、こちらは制作年度にごく近い出来事。
セリフでサッチャーの名前も出てきますが、サッチャーはすでに役目を終えて辞任している時代ですね。
組合の集会でも「84年はこんな弱腰じゃなかった」というセリフがあり、いよいよ労働者側が追い詰められているのがわかります。
舞台となる街やブラスバンドにはモデルがあり、バンドはサントラにも参加しているとのこと。
もちろん予備知識なしで見ても十分理解できますし、厳しい現実を描いている一方で、娯楽性や通俗性もほどよくブレンドされていて、すんなりドラマの世界に入っていけます。
やはり語り口は大事ですね。
とはいえこの↓予告篇はコメディに傾きすぎて、ちょっと違うような気も……
キャスト&スタッフ
リーダーとしてバンドをたばねる指揮者ダニーにピート・ポスルスウェイト。ラストの表情は胸に迫ります。
アルト・ホルン担当のアンディにユアン・マクレガー。まだまだ若いですね。
ダニーの息子でトロンボーン担当のフィルに『主任警部アラン・バンクス』のスティーブン・トンプキンソン。
ユーフォニアム担当のハリーに『ダウントン・アビー』のカーソンさんことジム・カーター。
チューバ担当のジムに『名探偵ポワロ』のジャップ警部でおなじみフィリップ・ジャクソン。
……と現在映画やドラマに大活躍の面々が揃っていたことにあらためてビックリ。
そしてバンドの紅一点、地元出身でダニーの親友アーサーの孫娘グロリアにタラ・フィッツジェラルド。祖父から譲られたフリューゲル・ホルンを持参してバンドに参加しますが、どうやら街へは何か目的を持ってやってきた模様……。
製作スティーブ・アボット、監督・脚本マーク・ハーマン、撮影アンディ・コリンズ、音楽トレヴァー・ジョーンズ。
威風堂々
ラストの「威風堂々」は、BBCプロムスの最終夜の鉄板プログラム。
実は『ブラス!』では「エルサレム」も0:58頃、美容院でオカマかぶったマダムたちが会話する場面でうっすらかかっています。
ダブル愛国歌映画♪♪
原曲はエルガー作曲の↓
これに歌詞が付くと↓
プロムスでは、AメロBメロ部分(バース、ブリッジ)でみなさんリズムをとってヒョコヒョコ膝を曲げるのがかわいらしいです。
そこでエネルギーを貯めて、サビ部分(文字通りのコーラス)で声を張り上げようということでしょうか。いったい誰が始めたんでしょうね 🙂
そして、必ずアンコールでもう一度歌うというお約束もあり、きっと今夜も、例年とは形が違えど盛り上がることと思います。
BBCプロムス 2014
エルガー卿ご本人 1931
あたしンち 2002
ロケ地
IMDbでは、
King Street, Delph, Saddleworth, Oldham, Greater Manchester, England, UK (the brass bands march through the street during the heats of the contest)
Birmingham Town Hall, Birmingham, West Midlands, England, UK (Brass band finals, interior shots. The Town Hall was used as a substitute for the Royal Albert Hall for the interior shots.)
Barnsley, South Yorkshire, England, UK
Birmingham, West Midlands, England, UK
Doncaster, South Yorkshire, England, UK (Hatfield Colliery)
Grimethorpe Colliery, Grimethorpe, Barnsley, South Yorkshire, England, UK (colliery entrance where Danny collapses)
High Street, Grimethorpe, Barnsley, South Yorkshire, England, UK (‘In Cod We Trust’ fish and chip shop and Spar supermarket)
Halifax, West Yorkshire, England, UK
National Coal Mining Museum, Caphouse Colliery, New Road, Overton, Wakefield, West Yorkshire, England, UK (pit-head showers)
Piece Hall, Halifax, West Yorkshire, England, UK (Brass band heats)
Royal Albert Hall, South Kensington, London, England, UK (Brass band finals, exterior shots only)
West Yorkshire, England, UK
British Waterways Wharf, Friars Gate, Doncaster, South Yorkshire, England, UK
Saddleworth, Oldham, Greater Manchester, England, UK
Oldham, Greater Manchester, England, UK
Overton, Wakefield, West Yorkshire, England, UK
Wakefield, West Yorkshire, England, UK
London, England, UK
Rotherham, South Yorkshire, England, UK
South Yorkshire, England, UK
設定では、1992年。イングランド北部ヨークシャー地方、炭坑の町グリムリー(Grimley)。
例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
炭鉱
Doncaster, South Yorkshire, England, UK (Hatfield Colliery)W
- Google Maps
- 53.5934,-1.0145
グロリアの部屋
タイトルバックで、男たちのクルマとすれ違うように入っていくバス停裏の建物。
建物はすでになく更地になっています。
High Street, Grimethorpe, Barnsley, South Yorkshire, England, UK
- Google Maps(SV) ……クルマが右折
- 53.575515, -1.380510
演奏競技会
0:33
King Street, Delph, Saddleworth, Oldham, Greater Manchester, England, UK (the brass bands march through the street during the heats of the contest)
- Google Maps(SV)
- 53.5675409,-2.0235793
映画にあるように、実際にブラスバンド競技会が行われる場所のようですね。
川縁で演奏していたのは、同じ通りのこちら↓
- Google Maps(SV)
- 53.568295,-2.023915
ビールを飲んで休憩していたのは、すぐ近くのここ↓
In Cod We Trust
High Street, Grimethorpe, Barnsley, South Yorkshire, England, UK (‘In Cod We Trust’ fish and chip shop and Spar supermarket)
グロリアの宿の右隣のブロック。現在パン屋さん。
ホール外観
外観は設定通り本物のアルバート・ホール。
Royal Albert Hall, South Kensington, London, England, UK (Brass band finals, exterior shots only)
DVDのジャケットにもなっている集合記念写真は、北側からパチリ。
こちら↓は以前milouさんから提供していただいた画像です。
撮影は1980年12月ということで、映画よりずっと前ですね 🙂
ホール内部
こちら↓で撮影されているようですし、実際こちらと同じ内装をショットによっては確認できました(特にステージ周辺でカメラが動くようなショット)。
ただ実際にアルバート・ホールの内部で撮影したショットもあるように思えます。
Birmingham Town HallW, Birmingham, West Midlands, England, UK (Brass band finals, interior shots. The Town Hall was used as a substitute for the Royal Albert Hall for the interior shots.)
こちら↓は本物。
資料
更新履歴
- 2020/09/12 新規アップ
コメント
威風堂々第1番のトリオに入る前の小節の裏拍で、イギリス人の演奏では必ず誰かが洒落てアクセントにポンと入れますね、バスーンでポンと吹いたり、小太鼓が小さく叩いたり。プロムスでの小さな楽しみです。 国は違いますが、あのモーリス・アンドレもフランスの炭坑バンド出身らしいですね。そんなことを考えながらこれも20年ぐらい前にラッパのお姉さん見たさに借りてきました。本題と全く関係なくてすみません。
hachiroさん、こちらでもコメントありがとうございます。
今年のBBCプロムスは普通に観客を入れて行うみたいですね。イギリスはこのまま突っ走るようで、ある意味日本の参考にとてもなりそうです。もちろん良い方に向かって終息してくれれば何より。いくら「居ながら」な自分でも、そろそろ長距離のお出かけがしたいです。(結局この連休も家でゴロゴロしていました)