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『大海獣ビヒモス』 Behemoth the Sea Monster (1959)

大海獣ビヒモス [DVD]

そして主は言った
見よ ビヒモスだ

作品メモ

ひとつ前のエントリー『原子怪獣現わる』と同じく、ユージン・ルーリー監督による怪獣映画。
やはりストップモーションアニメを使用した白黒映画ですが、英米合作ということで今度はロンドンが巨大生物に襲われます。

日本では劇場未公開。
DVDのパッケージには「20年以上前に50分程度のカット版が地方TVで放送されたのみの幻の作品」とあります。
「20年以上前」と言われたって、何年が起点なのか書かれていないので、いつ頃なのかわかりゃしません……

イギリスの漁村で、漁師が大やけどを負い不審死する事件が起き、さらに大量の死魚が打ち上げられるところから始まるこの映画。

僻地での異様な事件 → 科学者登場 → 怪獣チラ見せ → 怪獣いったん姿を消す(移動) → 再上陸して都会で大暴れ → 通常兵器ではなすすべなし → 新兵器にて退治

……といった怪獣映画の基本形をしっかりふまえた内容となっています。

出演は……
アメリカの科学者スティーブ・カーンズ博士にジーン・エヴァンス。
イギリス原子力研究所の所長ジェイムズ・ビックフォード教授にアンドレ・モレル。
オタク度数が一番高い自然史博物館の館長サンプソンにジャック・マクガウラン。
漁師の娘ジーンにリー・マディソン。
その彼氏っぽい漁村の若者ジョンにジョン・ターナー。

スタッフは……(カッコ内は日本盤DVD=おそらくアメリカ公開版でクレジットなし)。

監督ユージン・ローリー(とダグラス・ヒコックス)、撮影ケン・ホッジス(とデスモンド・デイビス)、音楽エドウィン・アストリー。
特殊効果は、ジャック・ラビン、アーヴィング・ブロック、ルイス・デウィット、ウィリス・オブライエン、ピート・ピーターソン。

 
 
 

ビヒモス

「ビヒモス」は、最初の犠牲者が言い残した言葉で、聖書に描かれた海獣のこと。 → ベヒモスW
たびかさなる核実験によってまき散らされた放射性物質が、食物連鎖によって集積され、とうとうパラエオサウルスという恐竜が強力な殺傷能力とともに変異してよみがえったという設定です。

誕生についてのSF考証的なことは『原子怪獣現わる』や『ゴジラ』の後だとさほど独自性を感じられませんが、「なぜロンドンを目指すのか」について合理的な説明がされているのは目を引きますし、「いかに退治するか」についてもちょっとドキっとするようなアイデアがとられていて、妙に記憶に残ります。

ユージン・ローリー

劇場用映画の監督としては以下の4本だけで、見事に特定のジャンルに偏っています。

ところが美術監督やプロダクションデザイナーとしてのフィルモグラフィーをひもとくと、堂々たるラインナップで、とたんに印象が変わります。

  • 『ブロンコ・ビリー』 Bronco Billy (80)
  • 『ジャワの東』 Krakatoa: East of Java (68)
  • 『バルジ大作戦』 Battle of the Bulge (65)
  • 『裸足のキッス』 The Naked Kiss (64)
  • 『ライムライト』 Limelight (52)
  • 『河』 The River (51)
  • 『ゲームの規則』 La Regle du Jeu (39)
  • 『獣人』 La bête humaine (38)
  • 『大いなる幻影』 La Grande illusion (37)

IMDbやWikipediaの記述をまとめますと、ウクライナ生まれのフランス人。
もともとジャン・ルノワール監督とよく組んでいて、同監督が大戦を逃れてアメリカへ移った際、同じように渡米したようです。
初監督作品『原子怪獣現わる』が大ヒットしたため続けて同様の映画を撮りましたが、さすがに嫌になってしまったのか、監督業はそれで打ち止め。

『ジャワの東』でアカデミー賞視覚効果部門ノミネート。
同映画でカメオ出演している他、なぜか『ブレスレス』(83)にちょっと出ているみたいですが、未確認。

あまり関係ありませんが、この『ジャワの東』、IMDbのローマ字タイトルが”Jawa no azuma”になっていて吹きました 😉

ウィリス・オブライエン

ストップモーションアニメは、ウィリス・オブライエンとピート・ピーターソン。

英語版Wikipediaによると、特殊撮影を請け負ったジャック・ラビンなる人物が、ウィリス・オブライエンに5千ドルという低予算で下請けに出したとのこと。
この頃はもう弟子のレイ・ハリーハウゼンの時代。
ウィリス・オブライエンにとって、活躍の場が限られてしまっていた晩年のお仕事となります。

フィルモグラフィーを見たら、意外にも最後の作品は『おかしなおかしなおかしな世界』(63)のようです。
はしご車がびよ~~~んとなるあの場面ですね。
映画の完成を待たずして、亡くなったとのことです。

ロケ地

IMDbでは、

London, England, UK
Looe, Cornwall, England, UK
Plady Beach, Looe, Cornwall, England, UK (rocky coastal scenes)
Polperro, Cornwall, England, UK (harbor scenes)
Talland Bay, Polperro, Cornwall, England, UK (sstablishing shot, funeral service)
National Studios, Borehamwood, Hertfordshire, England, UK

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

漁村

コーンウォール地方のルー村という設定。
実在の村で、IMDbのリストにも載っています。

Looe, Cornwall, England, UK

少なくとも岩場はこちらで撮影されているようです。

Plady Beach, Looe, Cornwall, England, UK (rocky coastal scenes)

このあたり↓でしょうか

埋葬の場面の俯瞰ショットは、4kmほど西に離れたこちら↓

Talland Bay, Polperro, Cornwall, England, UK (sstablishing shot, funeral service)

漁港

0:17

Polperro, Cornwall, England, UK (harbor scenes)

科学者たちがやってきた防波堤は、上記俯瞰ショットから1km少々西側のこちら↓

60年近く前の映画ですが、何も変わっていません。

地元の医師の家からの眺め

フェリー乗り場

FERRY APPROACH S.E.18と標識が出ています。
おそらくこちら↓

Google Earthの時間スライダーで1945年12月にさかのぼることができます。
昔は現在のようにぐにょっと曲がっているのではなく、現在の位置から百数十メートル東側のあたりから川に向かってまっすぐ伸びていたようです(ロケ地マップに大ざっぱな形を入れておきました)。

上陸

警戒している2人の警官の背後にタワーブリッジが見えます。

パニックシーン

お約束のパニックシーン。
判定がむずかしいですが、上陸後1:01頃のショットで”BRAITHWAITE & DEAN LTD”と看板が出ている細長いビルは今でも残っています。

その直後、やや左カーブした通りの奥を見るショットで、中央に写っているのがその建物。
その建物から奥は合成用にマスクを切られています。
現在はその建物だけがぽつんと残っている状態です。

ここで悠然と姿を現すビヒモスと、逃げ惑う人々。エキストラさんたちの迫真の演技もあり、見応えのあるシーンとなっています。

通りのショットをSVで無理矢理再現すると↓

人々を蹴散らすようにビヒモスが進んできたところで、右手から軍隊の車両が来ますが、これは先ほどの細長い建物のすぐ右隣にある建物の前なので、とっくにビヒモスくんは通り過ぎているはず……

続く、パブのある角では、ぼ~っと見ていたおじさんたちが残念なことになります。
おじさんたちを正面からとらえたショットで、背景に教会の尖塔のようなものが見えていますが、おそらくこちら↓

パブがあったと思われる場所に現在もお店がありますが(Mucky Pubs)、建物や道路構成が変わっていて、現在の様子からはもはやカメラ位置を厳密には特定できません。
Google Earthの時間スライダーで1945年にさかのぼってみますと、現在のパブから北北東に向かう道が、昔は(映画のように)遠くまで延びているのが確認できます。やはりここが正解ではないでしょうか??

ロケ地マップ

イギリスを舞台にしたすべての映画をひとつのマップに入れるのは難しそうなので、とりあえずSFファンタジー映画に絞って作ってみました。

 
 
 

資料

更新履歴

  • 2016/09/07 新規アップ

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