怪獣にとって我々は眼中にないのか
目次
作品メモ
『原子怪獣現わる』、『大海獣ビヒモス』ときたので、ユージン・ルーリー監督の怪獣映画3部作?をもう一本。
アイルランドの離島で捕獲した怪獣をロンドンへ運んできて見世物にしていたら、実はもっとどでかい親がいて怒って子供を連れ戻しにきた、というお話で、日活の『大巨獣ガッパ』Wのお役に立ったと言われています。
『原子怪獣現わる』は初代『ゴジラ』のお役に立ったと言われていますので、同監督は日本の怪獣映画と因縁浅からぬものがあるようです。
同監督作では初めてのカラー映画。
海外では珍しい着ぐるみで怪獣を表現、迫力ある映像を作り上げています。
映像だけでなく、怪獣映画で毎度ナゾとなる「なぜヤツらは大都会を襲うのか」についてちゃんと答えを示しているわけですし、親が子供の跡をたどることができた理由もきちんと説明されていて、物語の方も作りは結構しっかりしています。
親ゴルゴはいたずらに建物を破壊するのではなく、あくまで子供を連れて帰るのが目的。
怪獣の誕生そのものは核実験などとは関係なく海底火山の爆発によるもので、人間が引き起こしたことではありませんが、子供を連れてきてしまったのは金儲けのためなので、この災厄は核実験同様、人間の業の産物と言えます。
こうした文明批評的な世界観がラストに至るまできちんと保たれていて、好印象を残します。
製作ウィルフレッド・イーデス、製作総指揮フランク・キング、モーリス・キング、音楽アンジェロ・F・ラバニーノ、撮影フレディ・ヤング(クレジットはF.A.Young)、特殊視覚効果トム・ハワード。
出演は、サルベージ船トリトン号の乗員ジョー・ライアン(ビル・トラヴァース)、サム・スレイド(ウィリアム・シルヴェスター)
ゴルゴ
「ゴルゴ」という名前はサーカスがつけたという設定で、セリフにもありますがその由来は不明。
英語では”Gorgo”。ついでに「ゴルゴ13」は”Golgo13″。
地元の島の伝説では「オグラ(Ogra)」と呼ばれていて、それが海底火山の噴火でよみがえったという設定です。
体長は子供が65フィート、親は200フィート以上という設定。
『大海獣ビヒモス』ではたしか劇中の図面で70フィートと書かれていましたから、だいぶスケールアップしています。
ところで、各映画サイトで解説を読むと、どれも「母親」としていますが、どうやって母親だとわかったのでしょう??
おとーちゃんかもしれないのに……
その点『ガッパ』はわかりやすい家族構成でしたね 😉
ラスト
ラストについては、日本語版Wikipediaで、監督の娘が『原子怪獣現わる』の結末について「大いに不満をもらした」からこのようにしたとあります。なるほどなるほど。
IMDbのTriviaにも同様の記述がありますが、その映画は『大海獣ビヒモス』であり、ラストで娘が泣き出してしまったから、とあります。
「大いに不満をもらした」より、こちらの方がありえそう……
はじめは日本?
IMDbのTriviaによると、最初は日本を舞台に考えられていたそうで、次にパリが候補にあがるも、セーヌ川をそこまでさかのぼるのは無理があるということで、ロンドンとなったとか。
別のTriviaによると、その間オーストラリアも候補になったらしいですが、オーストラリアを怪獣が襲ったところで誰も気にしないだろう、ということで却下となったとか(汗)。
少年
島の少年ショーンを演じたのは、スコットランド出身のヴィンセント・ウィンター(Vincent Winter)。
子役で活躍していましたが、その後作り手の方にまわり、プロダクションマネージャーとして、『スーパマンII』『スーパーマンIII/電子の要塞』『007 ユア・アイズ・オンリー』『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』等にたずさわっています。
トム・ハワード
デヴィッド・リーン監督の『陽気な幽霊』(45)とジョージ・パル監督の『親指トム』(58)で米アカデミー賞受賞。
他に『未知空間の恐怖/光る眼』(60) 『たたり』(63)、『クロスボー作戦』(65)、『2001年宇宙の旅』(69)等。
ロケ地
IMDbでは、
Coliemore Harbour, Dublin, County Dublin, Ireland
London, England, UK
MGM British Studios, Borehamwood, Hertfordshire, England, UK (studio) (Studio Interiors, miniature and optical effects)
例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
島
設定ではナラ島。
撮影は、IMDbのリストにあるこちら↓
Coliemore Harbour, Dublin, County Dublin, Ireland
サーカスのトレーラー
実物大?ゴルゴを乗せて、ロンドン市内を練り走るトレーラー。
なかなかインパクトある絵です。
移動中ゴルゴの目が光るところなど、凝っていますね。
通過するのは、おなじみピカデリーサーカスや……
トラファルガー広場や……
ビッグベン前
この撮影自体が、映画の良い宣伝になったことでしょう。
最後はセリフ通り、バターシー公園へ移動。 公園内のこちら↓を通過しています
到着地点は厳密には不明。
クルマでやってきたところ
0:46
アドミラルティ・アーチのすぐお隣。
親ゴルゴの進路
ビヒモス同様、テムズ川をさかのぼってきます。
目指すは我が子のいるバターシー公園。
「ロンドンの象徴がマッチ棒のように折れました」と心が折れたアナウンサーが実況したのは、タワーブリッジ。
続いてビッグベンも粉々になります。
途中すべての橋が壊されたと思いますが、さすがにいちいち描かれていません。
ロケ地マップ
イギリスを舞台にしたすべての映画をひとつのマップに入れるのは難しそうなので、とりあえずSFファンタジー映画に絞って作ってみました。
資料
更新履歴
- 2016/09/09 新規アップ
コメント
舞台がロンドンで、ストーリーも良いので気に入ってます。ガッパは見ていませんが子供を取り返しに来るということで、ウルトラQのラゴンを思い出しました。
Bill Cooke の Gorgo という本をアマゾンのなか見!検索で読むと、「原子怪獣現わる」を観た監督の6歳の娘の記述があります。
She cried, “You are bad, Daddy, bad. You killed the nice beast!”
それゆえ本作では、怪獣は生かしておく、結末は「母」と子供が無事に海へ帰って行く、と決めたとのことです。
この本によると、ゴルゴという名は実在した恐竜Gorgosaurusとギリシャ神話のGorgonから来ています。
ほりやんさん、コメントありがとうございます。
ラゴン、懐かしいですね。思わず録画を見返してしまいました。ウルトラQは1本が短いのが良いです。子供の時は家の中に入ってくる場面がとても怖かったですが、今見るとただただ和みますね 🙂
卵だけでいきなり博士が「これは2億年前に地球を支配していた海底原人ラゴンだ」と言い切ってしまうのがステキですが、ラゴンってどこから来たネーミングなのでしょう。
ゴルゴはゴルゴザウルスとゴルゴンでしたか。
ガッパは現地の島で言い伝えられてきた固有語という設定なのでしょうけど、まあカッパですね(現地の少年も日本語ぺらぺらでしたし)。
怪獣の名前はへんてこりんなのがありますが、イカがでかくなったような怪獣がゲソラというのは、当時子供心にも「それはないな」と思いました。