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『複製された男』 Enemy (2013)

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カオスは未解読の秩序である
Chaos is order yet undeciphered.

作品メモ

『主人公は僕だった』『もう終わりにしよう。』とタイトルが妙に具体的なのに中身は結構ややこしい作品をチェックしてきましたが、こちらも同様。
わかりやすい邦題がつけられているのに、SFともファンタジーとも心理サスペンスともつかない、実に摩訶不思議な世界を持った映画で、こじらせ具合では3作の中でこれが一番かも。

主人公は地味めな歴史の講師。
同僚に薦められて映画を見始めたのですが、そこで自分そっくりの俳優を見つけたのがことの始まり。どうしても気になってしまい、エンドクレジットから名前をたぐっていき、ストーカーまがいの調査を進めてとうとう自宅まで突き止めてしまいます。
怪しまれつつ相手とコンタクトをとることに成功しますが、いざ会ってみると、ルックスも声も傷跡も誕生日も、何から何まですべて同一ということで、お互いにびっくり仰天。講師は怖くなりぴゅーっとその場を退散するのでした……

と、これだけですとまるで宇宙人にコピーされてしまう『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』ですが、途中で『ミスト』の後半で出てきたような高層ビル並に大きい蜘蛛が都市を闊歩したり、そっくりさん俳優の方は講師の恋人にムラムラっときて講師になりすまして接近しようとしたりと、物語はSFというよりはどんどん非現実的であらぬ方向へと展開していきます。

思わせぶりの描写の連続でモヤモヤっとしたまま放置プレイとなり、凡俗としてはツンとした美人さんたちが出ているので、仕方なくそちらに呼吸を全集中してしまうという、このあたりズラウスキーといいますかイザベル・アジャーニの『ポゼッション』に近いかも。
最後まで到達したところで振り返ってみると、「なるほどー」と一応は納得できるのですが、まあ疲れる映画ですね~ 😅
もちろんそれとて正解とは限らず、人によっていかようにも解釈できると思いますので、たとえワケわからなくても悩まないのが吉かもしれません。

ところでつまらないツッコミですが、自分とそっくりさんが映画の端役で写っていたからといって、気づくものなのでしょうか?
少なくとも私は、そんなに毎日自分の顔をしげしげと見つめませんし、おそらく家族や知人ほどには顔認識細胞に記憶されていないと思います。たまに自分を含めた勢揃い写真を見ても、「はーこれが自分か~ 歳取っちゃったな~」みたいにしか感じません。それこそ他人事。そっくり人間が現れてまずびっくりするのは、自分ではなく自分以外の身近な人たちではないでしょうかね。それならビデオを薦めた同僚が先に気づいてよさそうなものなのですが。

キャスト&スタッフ

歴史の講師アダム・ベルにジェイク・ギレンホール。
映画のビデオで見つけたそっくりさんの俳優アンソニー・クレア(芸名ダニエル・セント・クレア)とあわせて一人二役。性格が異なる人物を巧みに演じ分けています。『戦慄の絆』のジェレミー・アイアンズに匹敵?
アダムの恋人メアリーにメラニー・ロラン。
アンソニーの妊娠中の妻ヘレンにサラ・ガドン。
厳しそうな母親にイザベラ・ロッセリーニ。

原作はジョゼ・サラマーゴの«O Homem Duplicado»(2002)。そのまま『複製された男』という邦題で翻訳本も出ています(彩流社)。
「彼がオリジナルで、自分が複製された男なのか!」って、書籍の帯もけっこう攻めてますね 😇

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監督ドゥニ・ビルヌーブ。好みの監督さんですが、フィルモグラフィーを振り返ると、この作品以後はSF大作が目立ちます。リメイク版『DUNE』を期待と不安をもって待っているところ。
脚本ハビエル・グヨン、撮影ニコラ・ボルデュク、音楽ダニー・ベンジー、ソーンダー・ジュリアーンズ。

ロケ地

IMDbでは、

Toronto, Ontario, Canada Mississauga, Ontario, Canada
University of Toronto Scarborough, Scarborough, Toronto, Ontario, Canada (university)
74 Victoria Street, Toronto, Ontario, Canada (model agency)
Rose Avenue, Toronto, Ontario, Canada (video store)
3650 Kaneff Crescent, Mississauga, Ontario, Canada (Anthony’s condo)
666 Ontario Street, Toronto, Ontario, Canada (Adam’s apartment building)
130 Adelaide Street W, Toronto, Ontario, Canada (Mary’s workplace)

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

撮影はトロントとそのお隣ミシサガ。

トラムの街角

トラムの架線が印象的なショット。

キャンパス

University of Toronto Scarborough, Scarborough, Toronto, Ontario, Canada (university)

時折登場する丸みを帯びた校舎の角はこちら↓ 

0:38頃ヘレンが訪ねてくるのもここ。

アダムの住まい

666 Ontario Street, Toronto, Ontario, Canada (Adam’s apartment building)

0:07頃アダムが歩いてくるのはここの前↓

0:11
ビデオショップは、その先建物をくぐって左折。

0:56頃メアリーが歩いていくのをバイクに乗ったアンソニーがストーカーするのはこちら↓

ビル街俯瞰

0:23 Yonge St.のこのあたりを北向きで捉えています。

面白いことに、2012年あたりのSVでは、映画で写っていたクレーンと同じものを確認できます。

俳優の事務所

0:23

74 Victoria Street, Toronto, Ontario, Canada (model agency)

設定上は「ボルガ事務所」で、キャラハン通り74番地 74 Callaghan Lane。
リアルではVictoria st.で、番地はやはり74。

アンソニーの住まい

入り口

0:26

リッチなマンション。
事務所同様、通りは架空ですが番地はリアルと同じ。

3650 Kaneff Crescent, Mississauga, Ontario, Canada (Anthony’s condo)

よじれた高層マンション

0:27
移動中にインサートされる特徴的なタワマン。
アンソニーのマンションとは敷地が別で道路を挟んだお隣。

Absolute WorldW

独特のスタイルが目を引きますが、『THE BRIDGE/ブリッジ』のタイトルバックに登場するスウェーデン、マルメのターニング・トルソWを連想しますね。
実際構造設計は同じ会社が担当しているそうです。

駐車場

アンソニーの部屋を確認するために、駐車場に車を停めます。
こちら↓の駐車場の東南側の突き当りまで進んで映画のように右手を見ると、目的のマンションが丸見えとなりますので、映画の位置関係は実際の地理と一致しています。

ホテル

待ち合わせたところ。
設定では「ブリーズウェイ・イン」。

メアリーの勤務先

0:58
アンソニーがあとを付けていったところ。

130 Adelaide Street W, Toronto, Ontario, Canada (Mary’s workplace)

資料

更新履歴

  • 2021/02/08 新規アップ

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