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『ドニー・ダーコ』 Donnie Darko (2001)

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Every living creature on Earth dies alone.

作品メモ

ひとつ前のエントリー『複製された男』は、ジェイク・ギレンホール主演の解釈が悩ましい映画でしたが、彼が主演で難解な映画といえば、やはりこの『ドニー・ダーコ』で決まりしょうか。
3つ前のエントリー『主人公は僕だった』のヒロイン、マギー・ギレンホールも、姉の役で登場。
2人がまんま姉弟を演じた珍しい共演作となっています。
似てるかな? と思う2人ですが、映画の後半テレビを一緒に見ている場面でのツーショットは、顎の線や口元がそっくりですね 🙂

Wikipediaを見ると2人は「ジレンホール」という表記になっていますが、昔から「ギレンホール」の方が一般的だったような。allcinemaやkinenoteでも「ギレンホール」。ですので拙サイトでもそちらで統一することにしました。

こちら↓は東京都飯田橋駅前の老舗名画座ギンレイホール。撮影は2013年7月。
(写真は本文と関係ありません)

そんなことよりこの映画、お話の方は『複製された男』以上にとてもシュールで不思議な味わい。
わかったようなわからないような、狐につままれたような内容で、確かに当時も見た後「ほへー??」という状態になりましたが、それが不満とかストレスにはならず、「こういう映画なんだー」と謎を含めてまるっと楽しんだように記憶しています。
今回見返してみても、それは同じ。
ガチガチの時間ものSFとしてストーリーを解明しようとしても良し、「走馬燈もの」や「実は……だった」系の世にも不思議な物語として余韻にひたっても良し、ちりばめられたメタファーを解析して深読みしても良し、学校や社会に適応しきれない繊細な若者の心理を描いた青春ドラマとして見ても良し。
作り手はきっちり説明のつく物語世界を隅々まで設定していてそれをチラ出ししていただけかもしれませんが、できあがったものについては見る人が自由に受け取れば良いのであって、『複製された男』同様あれこれ解釈の余地がある方がかえって面白みが増すような気がします。 (とワケわからなかったことを棚にあげようとする……)

もし難点があるとしたら、高所からジェット機のエンジンが落下したのに被害が一部屋で済むわけないとかいうあたりですが、これはもう野暮なツッコミでしょうか。 😇

キャスト&スタッフ

主人公の高校生ドニー・ダーコ(Donnie Darko)にジェイク・ギレンホール。
その姉でハーバードを目指しているエリザベス・ダーコにマギー・ギレンホール。
父親エディーにホームズ・オズボーン。
母ローズにどうしても『Major Crimes 〜重大犯罪課』を思い出してしまうメアリー・マクドネル。
妹サマンサにデイヴィ・チェイス。
可愛らしい転校生グレッチェンにジェナ・マローン。
どー見てもアヤしい自己啓発系の指導者ジム・カニンガムにパトリック・スウェイジ。
ジムを招いて生徒たちを正しく導こうとする体育教師キティ・ファーマー先生にベス・グラント。
ドニーに時空間についてレクチャーする物理のケネス・モニトフ先生に、どうしてもカーター先生と言ってしまいたくなるノア・ワイリー。
国語のカレン先生にドリュー・バリモア。この映画の製作も兼ねています。
ドニーがかかっている精神科医のリリアン・サーマンにキャサリン・ロス。

……と今から振り返るとなかなか豪華な出演者です。

他に、いじめを受ける生徒シェリータを演じて印象的だったのはジョリーン・パーディ(Jolene Purdy)。
昨今のハリウッド大作で見られる、ポリコレ的に仕方なく設けたようなアジア人枠ではなく、出身や容姿でいじめられ排除されるというリアリティを感じさせる役でした。
設定は中国系でしたが、リアルでは母親が日系3世とのことで、余計親しみがわいたりします。
この役どころも解釈に幅があり、あれこれ想像をめぐらしても面白そう。

それから”Grandma Death”(字幕で「死神オババ」)となかなかのあだ名が付けられてしまっていた老婆ロバータ・スパロウは、ペイシャンス・クリーヴランド(Patience Cleveland)という女優さん。2004年に亡くなっていますが、フィルモグラフィを見ると本作の後もテレビドラマに出まくっていたようですので、最後まで役者人生が充実していてきっと孤独な死(dies lonely)とは無縁だったことでしょう。

監督脚本リチャード・ケリー、撮影スティーヴン・ポスター、音楽マイケル・アンドリュース。

ディレクターズカット版

「いろいろな受け取り方ができるから良い」みたいに書きましたが、ディレクターズカット版なるものが存在していまして、こちらはだいぶ説明や整合性が加えられています。具体的には、削除シーンをいくつか追加し、さらに劇中で登場した書籍『タイムトラベルの哲学』を要所要所で引用することでSF考証の筋が一本通っているようにみせる構成。長さも2時間を優に越えます。

海外ではDVDやBlu-rayがあれこれ出ていますが、日本ではソフト化はされていないはず。
わざわざ取り寄せなくても、バージョンの違いについては、IMDbではAlternate Versionsで詳しく取上げられているほか、Wikipediaでは単独項目となっていますので、これらで把握できるかと思います。

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個人的には、解釈の自由が失われ世界が少し窮屈になってしまった気がして、あまりピンと来ませんでした。
加えられたSF考証部分も、「マニピュレイテッド・デッド」だの「リビング・レシーバー」だの「水と金属がタイムトラベルの鍵」だの、なんだか怪しげな用語と機序を都合良く並べただけのような気がして、微妙な印象を抱いてしまいました。う~む……

このあたりの言わば作り手側からの正統的な注釈は、ディレクターズカット版が出る前にすでにオフィシャルサイトでも結構書かれていたのですが、もう今はサイト自体なくなっているようですね。
今から参考にするなら、英語版Wikipeidaにリンクがあったこちら↓など、よくまとめられています。

  • http://www.donniedarko.org.uk/

これは英語ですが、この他にも日本語を含めて様々なサイトやブログ等でネタバレ解説がなされていると思いますので、どうしても解釈が気になる場合はそういったものをご覧になるとスッキリできるかもしれません。

続編?

『ドニー・ダーコ2』は原題が”S. Darko” ということで、妹サマンサの7年後のお話。
日米ともに劇場未公開のDVDスルー。
サマンサ役のデイヴィ・チェイスがそのまま大きくなってヒロインを演じていて、同じように時間のねじれや登場人物の死が描かれますが、続編というにはこれまた微妙な内容。
個人的には一度見ただけでもういいかも、という感じでした。
スタッフも全然違いますし、そもそもこれなんで作られたのでしょうね。う~む……

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お役に立つ

今回久々に『ドニー・ダーコ』を見返してみましたが、NetflixのSFドラマ『Dark(ダーク)』がだいぶ影響受けているといいますか、なぞっているところがあることに今頃気づきました。自分的には大発見なので、とりいそぎこちらでメモ。あとで『Dark(ダーク)』の方も更新しておきます。

あちらも主人公の高校生が、心身ともに傷だらけになりながら、なんとか世界を、家族を、そして愛する者を救おうと、絶望的な時間の旅を続けるお話でした。
似てるかも?と思った箇所をメモしますと……

  • タイトル(DarkoとDark)
  • カウンセリングを受けている
  • 自分を犠牲にして皆を生かす
  • 行動する際にフードをかぶる
  • 野外に置かれたソファー(『ダーク』では洞窟入口脇)
  • パーティーが行われている家の2階で彼女と結ばれる
  • 上空に黒い影がもくもく広がる
  • 片目の男(『ドニー・ダーコ』ではフランク、『ダーク』ではヴェラー)
  • 時間旅行についての本(『ドニー・ダーコ』では『タイムトラベルの哲学』、『ダーク』では『時間の旅』)
  • (元)科学者の老婆(『ドニー・ダーコ』ではロバータ・スパロウ、『ダーク』ではクラウディア)
  • 地下室の扉(『ドニー・ダーコ』では国語の教師が書き残した言葉、『ダーク』では山小屋の地下室への扉)

The Philosophy of Time Travel

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Amazonにこんなんありまして、あやうくポチりかけました。
これ表紙は劇中の書籍『タイムトラベルの哲学』ですが、中身はなにもないノートですね。
悪ノリといいますか、やりすぎといいますか、レビュワーさんたちも皆さん怒っているのも当然?
善意に解釈すれば、難解な映画を書き留めるための書籍版「4分33秒」とか 😅

ロケ地

IMDbでは

Country Club Drive, Long Beach, California, USA
Long Beach, California, USA
4252 Country Club Drive, Long Beach, California, USA (Jim Cunningham’s house)
Burbank, California, USA
Loyola High School – 1901 Venice Boulevard, Los Angeles, California, USA
4225 Country Club Drive, Long Beach, California, USA (Donnie Darko’s house)
Aero Theatre – 1328 Montana Avenue, Santa Monica, California, USA
Calabasas, California, USA
Santa Monica, California, USA
Santa Clarita, California, USA
Los Angeles, California, USA
Angeles National Forest, California, USA

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

OP

道路に寝転がっていたドニー・ダーコが起き上がるところ。

Wikipediaに

The “Carpathian Ridge” scenes were shot on the Angeles Crest Highway.

とあります。
明け方である(=東向き)と信じて(笑)、東側が開けたカーブをチェックしながらひたすら周辺の道路をたどってみました。
SVが使える道路が限られていますが、こちら↓の位置で東の山の稜線が、ドニーがむくっと起きたときの背景とほぼ一致しているように見えます。

その後カメラが移動しながらゆっくり右へパンしますが、右手の景色はSVの方がやや低い気がします。
ということは、カメラ位置は少しバック(方角としては西へ)してより高いところ。 SVの道路はセンターラインがある片側一車線ですが、映画の道はもう少し細くてセンターラインはありません。
以上のことから、映画の場所は、このあたり↓のS字が続いているところの、東に向かって突き出ているカーブと思われます。

3Dで無理矢理再現すると、

これ以上は現地へ行かないとちと無理かと。

自宅

IMDbのリストにもろ書かれてありますね 😅

学校

0:16

Loyola High School – 1901 Venice Boulevard, Los Angeles, California, USA

カニングハムの家

1:03
財布を拾ったところ。

4252 Country Club Drive, Long Beach, California, USA (Jim Cunningham’s house)

映画館

1:06
グレッチェンと『死霊のはらわた』Evil Dead を見に来たところ。

Aero Theatre – 1328 Montana Avenue, Santa Monica, California, USA
https://americancinematheque.com/aero-theatre/

“HALLOWEEN FRIGHTMARE DOUBLE FEATURE”とありますが、併映は『最後の誘惑』。

1:38
雲を見て「帰ろう」というところ。

雲が竜巻か漏斗のようにすぼまって山に接しているところから手前の景色は、冒頭ドニーが起き上がる場面の2カット目、カメラが左から右へゆっくりパンする途中の景色と同一。
でもそれより遠景はパンのショットとは違っていますね

むしろ、もっと南向きのこのあたり↓と一致。

遠景は雲やレンズフレアのVFXを加えていることもありますので、遠景のみこちらからの合成かもしれません。

既存の曲が効果的に使われていますが、中でもエンディングに流れた”Mad World”(狂気の世界)のセレクションはとてもよろしかったかと。
『ドニー・ダーコ』といったらこの曲みたいなイメージがありますね。

元のティアーズ・フォー・フィアーズはいかにも80年代のサウンドですが、映画ではよりスローで静かなアコースティックにアレンジされています。歌っているのはゲイリー・ジュールズ Gary Jules という人。
今ではもうこちらのアレンジの方がなじみがあるかもしれません。

映画とは別に、この曲自体もMVがあるようで、けっこう印象的な造りとなっています↓


撮影場所が気になりますが、Mad WorldWによると

It was filmed at Hoboken Middle School (formally AJ Demarest School) in Hoboken, New Jersey.

ということで、こちら↓ 

カメラマンは完全に空中に出ていたことになります 😇

ティアーズ・フォー・フィアーズはもう一曲、最初の方で生徒たちが校舎へ入っていく場面で”Head over Heels”が流れていますが、こちらはオリジナルのまま。

資料

更新履歴

  • 2021/02/11 新規アップ

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