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『ジェニーの肖像』 Portrait of Jennie (1948)

ジェニーの肖像 [DVD]

Where I come from nobody knows
and where I am going everything goes.

作品メモ

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
辰年の今年、スタートはベタに『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』で行こうかと思いましたが、前のエントリー『麗しのサブリナ』からのつながりでこちらの映画をセレクト。

繰り返しますと、『麗しのサブリナ』を翻案した少女漫画が水野英子さんの「すてきなコーラ」。
それが収録されたマーガレットコミックス『すてきなコーラ』のもうひとつの中編「セシリア」がこの『ジェニーの肖像』の翻案でした。

ニューヨークに住む貧しい画家と、逢うたびに大きくなっていく不思議な少女との物語。
小説でいえばジャック・フィニーやロバート・F・ヤング、映画でいえば『ある日どこかで』あたりの世界に通じる淡く切ない夢のようなラブストーリー。
「時間ものの胸きゅんファンタジー」とでも言えるジャンルの代表的古典であり、特に「逢うたびに大きくなっている少女」という点では、これがオリジナルかと思います。

ジェニーの肖像 (創元推理文庫) 原作ロバート・ネイサン。
何度か翻訳されていて、現在入手しやすいのはこの創元推理文庫版。
その前はハヤカワ文庫NVで出ていて、私が買ったのもそちら。
同文庫でネイサンの『夢の国をゆく帆船』も持っていたのですが、プレミアが付いているとは知らずに去年バラして自炊してしまいました……

SF・ファンタジー映画の世紀 (別冊宝島 1596 カルチャー&スポーツ) 映画の方は今ではDVDが出ていますし、2年前に出た別冊宝島『SF・ファンタジー映画の世紀』の付録DVDにも収録されています。
以前に比べると見ること自体はそう難しくなくなっていますので、未見の方はぜひ一度ご覧になってみてください。

キャスト

時を越える不思議なヒロイン、ジェニー・アップルトン Jennie Appleton にジェニファー・ジョーンズ。
少女時代も演じた彼女、当時単純計算で29歳。大河ドラマ『江』とどちらが凄いでしょうか??
貧しい画家イーベン・アダムズ Eben Aadmsにジョゼフ・コットン。ベネチア国際映画祭主演男優賞受賞。
画商スピニー Spinney にエセル・バリモア。
画商マシューズ Matthews にセシル・ケラウェイ。
修道院のマザーにリリアン・ギッシュ。
友人ガス Gus にデイヴィッド・ウェイン。
レストランの主人、ムーア Moore にアルバート・シャープ。

キャストについては他にもメモっておきたいことがありますが、ラストに関わることなので、このエントリーの最後に書くことにします。

スタッフ

製作デイヴィッド・O・セルズニック。
監督ウィリアム・ディターレ。

当時としてはかなり頑張って視覚効果を駆使し、幻想的な雰囲気をかもし出していました。
アカデミー賞特殊効果賞受賞、撮影賞(白黒)ノミネート。
撮影のジョセフ・H・オーガストはこれが遺作。

音楽ディミトリ・ティオムキン。
ドビュッシーの曲(「牧神の午後への前奏曲」「アラベスク」「亜麻色の髪の乙女」)が多く使われています。

音楽は最初バーナード・ハーマンが担当。途中で降りていて、IMDbのトリビアによると、ジェニーの歌だけがバーナード・ハーマンの手によるものだそうです。
また実際に肖像を描いたのはRobert BrackmanW
この2人の名はエンドクレジットでメトロポリタン美術館と並んで記されています。

Grateful acknowledgments to
BERNARD HERRMANN, ROBERT BRACKMAN
   and the
METROPOLITAN MUSEUM OF ART

エンドクレジットと書きましたが、オープニングクレジットが無いのが特徴。
タイトルの”Portrait of Jennie”ですら、ナレーションで済ませています。

公開時タイトル『ジェニイの肖像』。

「セシリア」

すてきなコーラ・表紙 Wikipediaによると「セシリア」が収録された『すてきなコーラ』は集英社マーガレットコミックスで最初に発行された3冊のうちの1冊らしいです(1968年)。もはや完全に昔話……
この本はだいぶ前に処分してしまいましたが、我慢できず数年前に古書を買い求め、以後は手放さずにいます(右はその表紙の極小紹介)。

セシリア (珈琲文庫 (7)) 収録作のうち、「すてきなコーラ」はそのまま埋もれてしまったようですが、「セシリア」はこういった漫画文庫で再出版されています。
小説や映画とはまた別の魅力がありますので、こちらもぜひご一読を。

ローマの休日 (Feelコミックス ロマ×プリコレクション) 水野英子さんは他にもいくつか洋画を素材にした漫画を描いていますが、どれも独自の表現と面白さにあふれていて、安直な翻案とは一線を画しているのはさすがですね。

もちろんオリジナル作品も粒ぞろいで、ロシア革命を背景にした大作『白いトロイカ』や演劇の世界に材をとった『ブロードウェイの星』、ロックバンドを描いた『ファイヤー!』など、様々なジャンルの作品を楽しませていただきました。

またそうした代表作とは別に、「グラナダの聖母」のような映画舞台裏ネタの作品もあり、勝手な想像ですが、やはりとても映画がお好きだったのだろうなあと推測する次第。

チラ裏メモ

山田太一『飛ぶ夢をしばらく見ない』(同題映画も)、F・スコット・フィッツジェラルド『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(同題映画も) 『ある日どこかで』 石ノ森章太郎「昨日はもうこない、だが明日もまた」、萩尾望都「マリーン」

ロケ地

IMDbでは、

Boston Harbor, Boston, Massachusetts, USA
Boston, Massachusetts, USA
Central Park, Manhattan, New York City, New York, USA
Manhattan, New York City, New York, USA
New York City, New York, USA
The Cloisters Museum, West 193rd Street, Fort Tryon Park, Manhattan, New York City, New York, USA

主なロケ地はニューヨーク市で、一部ボストン。
IMDbのリストを手懸りに、画面とにらめっこでチェックしてみます。

OP 美術館

The Metropolitan Museum of Art メトロポリタン美術館
http://www.metmuseum.org/

今ではインドア・ストリート・ビューで館内を巡ることができます(後述)。
えらい時代になったものです。

銅像

セントラルパーク。
イーベンが通り過ぎる銅像はたぶんこちら。

Robert Burns
セントラルパーク公式サイト内Robert Burns

背景の高層ビルはHampshire House と エセックス・ハウス Jumeirah Essex House W

ジェニーと初めて会ったところ

全体が写りませんが、柱や手すりの感じからこちらだと思います。  

ジェニーの肖像 ジェニーと出会ったところ The Dairy
セントラルパーク公式サイト内Dairy

スケート場

背景のビル(Hotel Pierre等)のアングルなどから、セントラルパークの南端の池のあたりであると思われます。
当時はこんな感じで凍った池の上を自由に滑っていたのでしょうね。

スケートリンクの場面のアングル 正面の高い建物がThe PierreW
右側がSherry Netherland HotelW
ジェニーが現れる時と去る時、この2つが背後にそそり立っています。

現在のセントラルパークのスケートリンクWはこの池の北側にあり、翌1949年にオープンしています。

※12/6/5追記
milouさんからウールマン・リンクの画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)

このようにこのリンクから見ると、映画より左側にパースが寄っています。
映画では上のFlickrから拝借した画像のように、2棟のビルのちょうど間ぐらい、ザ・ピエールの右側(南側)の壁が見える位置にカメラがあります。

スキッパーのダッシュ(12/6/6追記)

コメント欄でmilouさんから情報寄せていただきました。

マシューズとスキッパーが上ってくる階段は、Bethesda Terrace の西側の階段(カメラ東向き)。

当サイトでいいますと、『ナタリーの朝』で登場しています。

その後、スキッパーがダッシュするのは、ちょっとワープしてこのあたり(カメラ東向き)。

階段のカットで遠くの方に見えていた高層ビル(カーライル・ホテル Carlyle Hotel)が、このショットではだいぶ近くなっていて先端が見えないほど。

最後にまたワープしてイーベンが居眠りしているベンチにたどりつきますが、おそらくこのあたり。

レストラン

IMDbのリストにあるこちら?(未確認)

Tavern on the GreenW
Central Park West at 67th Street

※12/6/5追記
やっぱり違うみたいです(コメント欄をご覧ください)。

修道院

IMDbのリストにあるこちら。

ジェニーの肖像・修道院 The Cloisters MuseumW
West 193rd Street, Fort Tryon Park, Manhattan, New York City, New York, USA

画像は、2人が入っていくところ。

灯台

ボストン湾にあるこちら。

Graves Light The Graves LightW

ラスト(少しネタばれ)

以下ラストについてネタばれを含むことを書きますので、知りたくない人はパスしてください。

                   

           

撮影場所

撮影はホンモノのメトロポリタン美術館内。

前述のように同美術館は今やSV(インドア・ストリート・ビュー)で中を見ることができます。
ラストシーンの場所を探してみました。
正面吹き抜けホールの2階回廊部分右手、このあたりではないかと思います。

キャスト

上の方で書いたキャストに関するメモ。

この場面、ジェニーの肖像を見つめている3人の少女。
クレジットされていませんが、IMDbのキャストを見ると何気に豪華。

右側の子はアン・フランシス(Anne Francis)。
50年代の名作SF映画『禁断の惑星』のヒロインです。
実は去年彼女の訃報を聞き、IMDbの出演作をチェックしたら、最初の出演作が『ジェニーの肖像』だったことに気づき、それがきっかけでこの場面のキャストを知りました。昨年初めに訃報を聞いて以来1年ぶりにようやくこのことを書けたことになります。合掌。

真ん中の子はナンシー・オルソン(Nancy Olson)。
『サンセット大通り』の(若い方の)ヒロイン、ベティ。

左側の子はナンシー・デイビス(Nancy Davis)。
故ロナルド・レーガン元大統領の奥様。

(上記、立ち位置は顔を時間軸で演繹して推定。間違っていたらごめんなさい)

カラー

嵐の場面は、白黒フィルムを現像処理で着色。ワイドスクリーンで収録されていて、その場面になると劇場のカーテンが大きく開いて上映されたとのこと。
その後スタンダードサイズに戻り、ジェニーの肖像のショットではテクニカラーによるフルカラーとなります。

たしかにここだけ総天然色というのもわからないではないですが、「セシリア」の白黒で書かれた漫画の肖像の方が、ずっとインパクトあったかもしれません。マンガの表現力恐るべし……

資料

コメント

  1. milou より:

    アイススケートは当然ウールマン・リンクだと思っていたら
    1949年じゃあ無理ですね。NYCには3回行ったが92年と96年の
    2回はウールマン・リンクで滑りました。

    ロケ地に戻って
    犬のスキッパーが駆け上がるのは『身代金(96)』など
    色々な映画に出てきた Bethesda Terrace の西側の階段。
    ただ上がってからベンチまでの映像は現実と合わない。
    (現Terrace Dr.なら突き当たりにビルが見えるのは有り得ない)

    朝日を眺める橋はブルックリン・ブリッジの上から
    東のマンハッタン・ブリッジを見ている。

    屋根裏アパートから見える橋もマンハッタン・ブリッジか
    ジョージ・ワシントン・ブリッジだと思われるが背景が
    合いそうな映像にならない。

    レストランと書いているのはマイケル・コリンズの壁画を描き
    St.Patrick’s Day を祝うアイリッシュの店のことでしょうか?

    であるなら違います。
    入口までしか行かなかったが毎年ジョン・レノンがバースデイ・
    パーティに使った高級レストランで中は普通のレストランのような
    形状ではありません。2010年元旦を持って閉店しましたが…

    ちなみに映画ではこのとき1910年の新聞広告を見ますが
    大昔に録画したWOWOWの字幕ではアプルトンズの演目が
    空中ブランコになっているがHigh Wire Act とあり綱渡りのこと。
    空中ブランコはバート・ランカスターの映画タイトルでもある
    trapeze です。

  2. inagara より:

    milouさん、コメントと画像いつもありがとうございます♪
    私も最初当たり前のようにウールマン・リンクだと思っていたのですが、Google Earthの3Dモデルでパースをあわせたらどうやっても池の上に出てしまうので、これはおかしいと気づきました。
    ところでmilouさんって、ご専門はヨーロッパだけかと思ってました~ 🙂

  3. ななこはちこ より:

    tweetで紹介してしまいました。する前にお伺いしなければいけませんのに。申し訳ありません。

  4. 居ながらシネマ より:

    ななこはちこさん、いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。
    ご事情はわかりませんが、拙サイトはいわゆる「リンクフリー」ですので、承諾なしにリンクを張ることには全然問題はありません。

    どうぞそのあたりのことは気になさらずに、拙サイトを楽しんでいただければ、うれしいです。 🙂

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