『鉄格子の彼方』Le mura di Malapaga (1949)

鉄格子の彼方 [DVD]

作品メモ

ひとつ前のエントリー『海の牙』に続けてルネ・クレマン監督作。
こちらはフィルモグラフィー的にも次作、1949年の作品です。

イタリアはジェノバにやってきたワケありの男ピエール(ジャン・ギャバン)と、町のレストランで働く女マルタ(イザ・ミランダ)のつかの間の物語。
マルタにはひとり娘チェッキーナ(Cecchina ヴェラ・タルキ)がいますが、別居中の夫が隙あらば引き取ろうとちょっかいを出してきます。
そんな母娘のもとに身を寄せたピエールは次第にマルタと気持ちを通わせていきますが、とある事情があり警察の手がすぐそこまで伸びてきているのでした……
……といったお話。

ジャン・ギャバンで切ない港の物語とくるとどうしても『望郷』(36)を連想しますが、他にタイトルだけでも『霧の波止場』(38)、『夜霧の港』(42)、『港のマリー』(49)があり、こう並べるとどれがどれだかわからなくなったりします。
『鉄格子の彼方』はタイトルにこそ含まれていませんが、れっきとした「港町もの」。もっと他にもありそうですね。

イザ・ミランダは当サイトでは『旅情』のホテルの主人役でチェック済み。日本語版Wikipediaでは「(ピエールが)町の娘マルタ(イザ・ミランダ)と恋に落ちるドラマ映画」とありますが、娘という範疇ではないような……。
それはともかく『旅情』同様人生にいろいろ授業料を払ってきた風の大人の女性を好演しています。

原題はイタリア語で「マラパガの壁」。マラパガってなんでしょう??
イタリア語版Wikipediaでは「マラパガの壁 現在」というキャプションで、港に近いPorta Siberiaの画像が掲載されています。
フランス語タイトルは«Au-delà des grilles»で、邦題はこちらから。

監督ルネ・クレマン、撮影ルイ・パージュ、音楽ロマン・ヴラド。 1949年のカンヌ国際映画祭でクレマンが監督賞、ミランダが女優賞を受賞。1951年の米アカデミー賞で外国語映画賞名誉賞を受賞。
日本での公開は1951年5月8日。公開時タイトル『鐵格子の彼方』。

今見たらYouなんとかに全編アップされていますが、手持ちのVHSよりずっとクリアかも。

 
 

Youなんとかは主役2人などフランス語中心にしゃべり、登場人物によってはイタリア語となります。
VHSはほぼイタリア語となっていて、チェッキーナの「私フランス語できるの」というセリフまでイタリア語。
その直後の強引な物売りも、ピエールがフランス語で悪態をついたからフランス語で話しかけてきたので、これがイタリア語ではおかしいことになります。
この点でもYouなんとかの方がよろしいですね。とほほ……

ロケ地

IMDbでは、

Genoa, Liguria, Italy
Titanus Studios, Rome, Lazio, Italy (studio)

舞台はジェノバ。
意外にも、今回初めのチェックでした。

資料的な手掛かりはほとんどなく、港を囲む東半分が歴史的な地区Wのようなので、そのあたりを中心にひたすらウェブマップで追っていきました。
路地とか好きなのでSVでウロウロしてとても楽しめましたが、これほどあちこち警官が写っている町は初めてで、気になりました。

港の出口

ゆるゆるのゲートを抜けて«鉄格子の彼方»へ出て行ったのはこのあたり。
今では高速道路が上に架かっています。

線路が手前にあるショットで、右端にかろうじて写っていた建物は、Palazzo San Giorgio(サン・ジョルジョ宮)W

出た時のショットで背景に写っている塔は、Torre dei Morchio

広場

トラムが左へカーブを切る広場。上記の場所からそのまままっすぐ進んだところ。

Piazza CaricamentoW

彼方に上掲の像が見えますが、Raffaele RubattinoWという人物のようです(誰?)。

歯科医を探して

港沿いの商店街?を西へ移動。
最後に右に曲がりますが、それはこちら。

来た方向にはアーチが架かっているはずですが、現在は確認できません。

高速道路建設の際に解体されたのかもしれません。

店がある広場

坂の途中にマルタが働くトラットリアがあり、もう少し上ると警察があるという設定。

前項目のあたりをウロウロして見つけることができました。
ウェブマップではこういった名前になっています。

Piazza Truogoli di Santa Brigida

というわけで、トラットリアは実体がなく、普通の通路をふさいで店先を擬装していたのでした。
店の前にあるのは井戸のようで、囲いの装飾は映画と全く同じ。これを発見できただけで十分満足♪

警察から出ていくときのアングル。
映画はモノクロでしたが、実際にはこんなにカラフルな街♪

こちらは19世紀の写真のようです。
何も変わっていないですね 🙂

歯医者の後

0:14頃、歯を抜いた後チェッキーナと歩く狭い路地。
こちらかもしれません。

ここだとすると、この↓窓から身を乗り出して撮影していたことに。

夫の尾行

最初の広場でトラムがやってきた通りへ入っていきます。

その先争った場所は不明。

マルタの住まい

セリフで元修道院(convent)に住んでいることがわかります。
戦争で廃屋になったと言っていますが、実際そうした建物を撮影に使ったのかもしれません。
あちこちブラブラしたところ、外観に関してはそれらしいところがありましたのでメモ。

0:43、0:53等で白昼写る石段の出入口は、こちらのように見えます。

0:53の時は、その前の通りも写りますが、こういった感じで、ほぼ間違いないかと。

ウェブマップによれば、こちらは現在ジェノヴァ大学の建築学部となっているようです。

https://architettura.unige.it/

母娘が横切る広場

0:43頃マルタがチェッキーナと歩く広場。
背景に東屋のような小さな施設が見えます。

モーロ(Molo)地区WにあるSarzanoWという広場。

背景にあるのは井戸のようですね。
その東側を横切っています。

ATTENTION PIERRE

チェッキーナが懸命に知らせようとするところ。
階段はわかりませんが、壁の方はこちらの山といいますか丘の中腹で書いています。

この道ではSVが使えないので、山の上(CastellettoW))まで行き、近いアングルを探してみました。
このあたりだと遠くのビルなどのシルエットが、映画と同じように見えます。

このSVのカメラ位置の一段下のところで、警告を書いています。

左手下に見えていた塔。
ちょうど反対側からみたアングル。

この塔の下の部分はmilouさんのアルバムに収録されていました。

カメラ位置は大分下ですが、背景の丘の東側(右側)が、警告メッセージを書いた坂道があるところ。

ロケ地マップ

 
 
 

資料

更新履歴

  • 2015/10/10 新規アップ

コメント

  1. ほりやん より:

    この映画は初めて観ました。アマプラのおかげです。

    Google Scholarで調べていると、ある本の索引に、Malapaga (debtors’ prison in Genoa)の記述があり、イタリア語版Wikiの写真は「債務者監獄」の壁だったのですね。

    Via Mura di Malapaga, Genova

    伊英辞書によるとmaleはbadly、pagaはpayですから、malapagaは「支払いの悪い」という意味になり、まさに名は体を表わす壁だったのですね。
    映画のタイトルは、ロケ地がムーラ・ディ・マラパガ通りの内側にあるから付けられたのでしょうか。ただ、このタイトルを付けたからにはギャバンに無銭飲食してもらわないと付けた意味がないですね。

    ディケンズは小説「リトル・ドリット」で債務者監獄を描いていますが、実生活でも彼の父親は借金のためにマーシャルシー債務者監獄に入れられていました。むかしロンドンに行った時、その監獄跡地を探すのにウロウロしまして、歩いている人に尋ねても誰も知りません。やっと小さな公園の中に塀らしきものが見えたので近づいていくと「Marshalsea Prison」のプレートがあったのでした!

    この少女の演技は素晴らしいですね。ギャバンも食われていました。
    そんなギャバンさん、危機が迫っているのも知らずに母親と寝そべっていますが、この演出は「太陽がいっぱい」を先取りしてますね。

  2. 赤松幸吉 より:

    居ながら&ほりやん様

    ラストシーンが「太陽がいっぱい」の設定に似ているということで、幸いに、アマゾンプライムで字幕版があったので早速見てみました。

    成る程、主人公が幸福の絶頂期に逮捕される点は同じような演出でした。
    これ以外には事件らしい事件は起こらず、淡々と男と女(あるいは子供を含めて三人)との交流を描いている「いい映画」でした。

    「トラットリアの店の前の井戸」(← 行きたい)の風景は当時、あるいはそれよりずっと以前とほとんど変わっていないのを知って驚きました(居ながらさんの画像より)。

    『狼は天使の匂い』 のほりやんさん

    ロバート・ライアンは日本の俳優・水島道太郎に似ていると思いませんか。
    あの「わし鼻」なのだ!!

  3. ほりやん より:

    赤松幸吉様
    ロバート・ライアンは、あまりバタ臭い顔をしてないなぁと思っていたので、なるほど道太郎さんに似ていますね。そうなると山形勲さんにも似ていることになりますかね。

  4. 居ながらシネマ より:

    ほりやんさん、コメントありがとうございます。
    おおっ、債務者監獄の壁でしたか。そう思って見るとそう見えてくるから不思議です。この中には入れられたくないものですね…。アマプラで『パディントン2』の楽しい刑務所を見たばかりなので、よけいそう思いました(汗)
    ともかくまたまたおかげさまでスッキリしました。感謝感謝です♪

    これアマプラでも見られるのですね。
    少し見てみましたが、イタリア語にはフランス語字幕が付けられていて、これがいちばん主人公の目線となって自然かも、と思いました。
    画質はもう少し頑張ってほしいところですが、それでも手持ちのVHSを動画化したものよりはずっと良いです。

    赤松幸吉さん、コメントありがとうございます。
    本当にヨーロッパの町並みの保ちの良さには毎度驚かされますね。
    おそらく契約されていないかと思いますが、昨年AXNミステリーで放送された『失踪者捜索人マサントニオ』と『警察実習生ブランカのデコダージュ捜査』がどちらもジェノバが舞台で、どちらもこの「店がある広場」のあたりが登場していました。
    旧市街的な雰囲気があるところとなると、どうしても撮影ポイントが限られてしまうのでしょうね。

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