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『ガラスの城』 Le château de verre (1950)

ガラスの城 [DVD]

作品メモ

『鉄路の闘い』(46)『海の牙』(47)『鉄格子の彼方』(49)とルネ・クレマン監督作を続けてきましたが、もう一本。
1950年の作品で、リッチな家庭を持つ人妻が二枚目の色男によろめいてしまうという設定。
同じメロでも『鉄格子の彼方』とはだいぶ趣が異なります。
ネオレアリズモの雄ロッセリーニ監督は50年あたりから勢いを失っていきましたが、戦後の混乱が収まりつつあるこの頃ともなると、リアリズムだけではなくいろいろな趣向が求められるようになったのかもしれません。

冒頭、パーティーを抜け出しての密会場面、すごいアップも使いながら濃密に描いていますが、美男美女をアップでとらえて観客をウットリさせるという古典的な手法……ではなく、少し謎めいたセリフ回しとあわせて、心理サスペンスの世界を築こうとしていたようにも読み取れます。
人によってはルイ・マル監督の『恋人たち』(58)を連想するかもしれません。
筋書きとしては奥行きにとぼしいかもしれませんが、こうした心理描写や映像表現はそれなりに見応えがあるかと思います。

撮影ロベール・ルフェーヴル。

判事の妻としてリッチな生活を送るエブリーヌにミシェル・モルガン。『霧の波止場』のヒロインですね。
旅先で知りあった二枚目のレミにジャン・マレー。
夫ロオラン判事にジャン・セルヴェ。

他に気になるのは、レミの本来の恋人マリオンのエリナ・ラブルデット(Elina Labourdette)。
主役2人が硬めの鉛筆で描いたような線の持ち主なので、ふっくらした顔立ちが印象に残ります。

こちら↓はYouTubeにあった一場面で、中盤ヒロインが彼を追ってパリに来てしまったところ。
説明によると、5秒目と15秒目に彼女のうしろでウロウロしているメガネの若者は、当時19歳のジャン=リュック・ゴダールだそうです 🙂

 
 
 

IMDbのキャストを見ると、ジャック・リヴェットもどこかに出ているはずなのですが、もしやこの場面で、ゴダールが右手に消えた後ヒロインの後ろに現れるノーネクタイの若者でしょうか。
こんなところでもヌーヴェルヴァーグとのつながりがうかがえる 😉 映画なのでした。

ロケ地

IMDbには記載がありません。
例によってウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

キネマ旬報データベースの解説ではコモ湖W畔とあります。
実際に湖のショットはそちらのようにも見えますが、具体的な場所は不明。
(ストリートビューで探しかけましたが、霧が深いので止めました 笑)

そこはホテルのようですが、セットなのかどうか不明。

パリへ行くレミを見送りに来たところ。
場所は不明。 ホームまでクルマで乗り入れるのが面白いですね。

ベルン

判事夫妻がいるのはベルンという設定ですが、外観は全然写りません。

リヨン駅から

この画像はmilouさんのアルバムから。
何度か使わせていただいている人気物件?です 🙂
(いつもありがとうございます♪)

駅前でタクシーに乗ったレミ。
指示は字幕では「バッグ通り」ですが、着いたのはバック通り Rue du Bac。
恋人マリオンのアパルトマンでしょうか。

このタクシーは一方通行を逆走ですね。

続いてやってきたのはヴァンドーム広場の北側。
勤務先でしょうか。

※15/10/20追記
milouさんから画像を提供していただきました。
撮影はどちらも1977年7月とのことです。

リッツの前あたりから東方面。

北側の Rue de la Paix から

エブリーヌが到着した駅

0:47 上掲動画の場面。
おそらくパリ東駅。

構内はこの部分の意匠が特徴的。

※15/10/18追記
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)

撮影は86年7月とのことです。

※15/10/20追記
milouさんから他にも画像を提供していただきました。

こちらは2002年10月撮影。

「最上部にはSTRASBOVRG (Strasbourg) という文字が見えるが主としてドイツ方面に向かう駅」とのことです。

ベンチ

レミやエブリーヌの部屋の窓から見えるベンチ。
タクシーの中の会話や0:52頃の窓からのショットで、ようやく場所がわかります。

パレロワイヤル

パリ市内を散策

パンテオン

1:04頃タクシーを停めたのは北側のこのあたり。

※15/10/20追記
milouさんから画像を提供していただきました。

『ガラスの城』と同じようなアングルの画像をわざわざセレクトしていただきました。
撮影は2002年10月とのことです。

1977年7月撮影。
東北の角から、とのことです。

階段

これはモンマルトルではなく20区。現ベルヴィル公園Wのあたり。
上がりきったところは『赤い風船』(56)の最初のショットの場所。
二つの映画は、まったく同じアングルとなっています。
階段を上るレミの頭のあたりにある街灯は、『赤い風船』で風船がひっかかっていたところ。
『赤い風船』でチェックした通り、再開発で階段は無くなっています。

斜め渡り
スカーフ

※15/10/20項目追加
コメント欄でmilouさんから情報を提供していただきました。
上記斜め渡りの後は、マドレーヌ寺院の正面、つまり横断したまま矛盾なく Rue Royale を北へ。

Rue du Faubourg Saint-Honoré で左折して西に向かい Rue Boissy d’Anglais の角で小走りに横断した先がスカーフを買ったHermés。

ホテルを出て

1:29頃あわただしくホテルを出た後は、ほぼリアルな足取り。

HOTEL DU JARDINと描かれてあったのは、パレロワイヤルの北側、Rue de BeaujolaisW。カメラ西向き。

真正面から見ると、こういった感じ。

続いて駈けていったのは、西側のRue de Montpensier。

ここ↓へ出て道路を渡り……

噴水の前↓を通り……

タクシー↓に乗って……

Avenue de l’Opéra↓を北へ。

最後のロンポワンは、パレロワイヤルの近く(東側)のこちら。

ヴィクトワール広場(Place des Victoires)W

時計があったのは、西側の建物の北側。

空港

不明

ロケ地マップ

 
 

資料

更新履歴

  • 2015/10/20 「リヨン駅から」「エブリーヌが到着した駅」「パンテオン」にmilouさんの画像を追加 「スカーフ」項目追加
  • 2015/10/19 「エブリーヌが到着した駅」にmilouさんの画像を追加
  • 2015/10/13 新規アップ

コメント

  1. milou より:

    分かりそうな場所はほぼ完璧に記載されているので追加できることは少ないが比較的容易なのに漏れている(?)部分を補足すると
    ☆68分の斜め横断のすぐ後、向こうに見えるのはマドレーヌ寺院の正面、つまり横断したまま矛盾なく Rue Royale を北に向かっている。そして Rue du Faubourg Saint-Honoré で左折して西に向かい Rue Boissy d’Anglais の角、現LINVIN で小走りに横断した斜め向かいがスカーフを買った 今も同じ場所にあるHermés。一階部分は大きく変わっているがLINVIN の数軒向こう、現PRADA 2階部分の特徴ある装飾は今も確認できる。

    それにしても、このあたりは歩いた記憶がほとんどない地域…

  2. 居ながらシネマ より:

    milouさん、情報と画像ありがとうございました。
    スカーフ買うまでの通りはなかなかのお店が並んでいますね。
    その中でしっかりブランド名見せて買物しているわけですから、やはりタイアップでしょうか。
    このスカーフ中古なら今でも入手可能なようですが、お値段も素晴らしいのでヨメには教えないでおこうと思います。

  3. ほりやん より:

    この映画もアマプラのおかげで今回初めて観ました。単なる不倫映画かなと思っていたところ、終盤にショッキングなシーンがあり、やはりクレマンやってくれまんな。

    「階段」は、「赤い風船」と同じでした! 上がりきったところにいたのは犬でしたが、風船がひっかかっていた街灯まで登場するとなると…、パリの数ある名所の中でよりによってあの場所をロケ地に選んだラモリス監督は、クレマン監督に敬意を表するとともに、エブリーヌを翻弄するレミを「風船」に、翻弄されるエブリーヌを「少年」に見立てて「赤い風船」を撮ったんじゃなかろうかと思ってしまいます。子供もいるエブリーヌが、女友達から「おとなになりなさい」と注意されますが、エブリーヌは本当に子供でした。

    IMDbがその後更新されていますね。「空港」は、ル・ブルジェ空港でした。

    Aéroport de Paris-Le Bourget

  4. 居ながらシネマ より:

    ほりやんさん、コメントありがとうございます。
    前頭葉の制御が順調に溶けているようで、何よりです。

    これも現在アマプラで見られるのですね。
    監督名で検索したら、プライム会員向けが『ガラスの城』『鉄路の闘い』『鉄格子の彼方』『禁じられた遊び』、他に有料レンタルで『パリは霧にぬれて』『雨の訪問者』『狼は天使の匂い』『太陽がいっぱい』のようで、けっこう見られますね。
    『太陽がいっぱい』に至っては、スターチャンネルEX由来ですが、通常版、日曜洋画劇場版、ゴールデン洋画劇場版、水曜ロードショー版の各吹替え版がラインアップされていて、『太陽がいっぱい』がいっぱい。
    1週間は無料お試しできますから、きっと赤松さんなら悶絶されてしまうことかと思います。

    で、自分のサイトを検索してみたら、偶然でしょうけどこのあたりの作品はすべて取り上げていたようです。
    昔の記事はたいてい何を書いたか忘れていますが(汗)、『ガラスの城』は、若き日のゴダールが写っているのをYouなんとかの動画で知ったことと、階段が『赤い風船』と同じだと気づいたことで、なんとか記憶に残っていました。

    最近は昨日何食べたかもろくすっぽ覚えていませんが、一方で「あの映画とこの映画で撮影場所が同じ」てなことに気づく連想や記憶のメカニズムはどうなっているのでしょうね。
    いずれAIが進化すればすべての映像作品で照合が行われて撮影地ごとの完全なリストができあがってしまい、ChatGPTとかで訊けば即座に答えてくれるようになるのかもしれませんが、まあそれまではボチボチサイト作りを楽しんでいようかと思います。

    追加の撮影地情報もありがとうございした。
    他のエントリーもあわせて、週末に更新させていただきます♪

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