その少年はただ答えた
「極東の町スーチャンから来た」
作品メモ
これまでソ連・ロシア映画を続けてきましたが、年代順にあと数本取上げる予定ですので、よろしくお付き合いください。
『私はモスクワを歩く』(63)、『私は20歳』(65)、『夕立ち(七月の雨)』(66)は、60年代のモノクロ映画でしたが、こちらは同じモノクロでも80年代の最後、ソ連邦崩壊間際の一本。
第2次大戦後のソ連極東の炭坑町に住む少年の姿を描きます。
街は貧しく収容所ともなっていて、非常に厳しい環境。
少年は悪戯に走り、事態はまずい方へまずい方へと傾いていきます。
そんな彼を喧嘩しながらも見守り、時には手を差し伸べる少女。
少年はとうとう街を出てウラジオストクへ行きますが……。
絶えず動き回っている少年のエネルギーが伝わったかのように、カメラは揺れ続け、映画の枠を越える表現まで出てきます。
人によっては『大人は判ってくれない』あたりを連想するかもかもしれません。
あちらはカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞していますが、こちらは約30年後の第43回(1990年)同映画祭でカメラ・ドール受賞。
原題の読みは「ザームリ・ウームリ・ヴァスクレースニ」でしょうか(すみません、自分用のメモです)。
少年ワレルカ(Валерка)にパーヴェル・ナザーロフ(Павел Назаров)。ストリートキッズの中から監督にスカウトされたとか。映画出演は三部作だけのようです。
少女ガリーヤ(Галия)にディナーラ・ドルカーロワ(Динара Анатольевна Друкарова, Dinara Drukarova)。この映画がデビュー作でしょうか。他の映画であの顔のまますっかり大人になった彼女の姿を見ることができますが、なにかほっとしたものを感じてしまいます。
監督脚本ヴィターリー・カネフスキー(Виталий Евгеньевич Каневский)、撮影ウラディミール・プリリャコフ(Владимир Брыляков)、音楽セルゲイ・バネヴィッチ(Сергей Баневич)。
今から見るとなると、『動くな、死ね、甦れ!』、『ひとりで生きる』、『ぼくら、20世紀の子供たち』の三部作的作品が収録されたDVDボックスセットが発売中。
http://www.espace-sarou.co.jp/kanevski/story/
また、YouTubeのレンフィルムのチャンネルに由緒正しくアップされていて、(日本語字幕はありませんが)いつでも見ることができます。
毎度書いていますが、YouTubeで見られるモスフィルムとレンフィルムの主だった作品については『戦争と平和』のエントリー内にまとめていますので、よろしかったらご利用ください。
ロケ地
面白可笑しくロケ地を探すような映画ではありませんが、モノクロで描かれた荒涼たる光景がどこで撮影されたものなのか、思わずチェックしてしまいました。
IMDbでは記載がありません。
炭鉱町
字幕で「スーチャン」と表される街。«Сучан»(Suchan、蘇城)でしょうか。
現在のパルチザンスク(Партизанск)W。
位置としてはおおよそこのあたり。
実際にこちらで撮影されたのかどうかは確認できませんでした。
灯台
1:30頃。
2人で逃げるところ。
ウラジオストク(Владивосток)、アムール湾(Амурский залив)東側のこちら。
- WikiMapia
- https://ssl.panoramio.com/photo/30282608
- https://ssl.panoramio.com/photo/42514186
- http://vladivostok-city.com/places/all/all/883
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