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『夕立ち(七月の雨)』 Июльский дождь (1966)

作品メモ

ひとつ前のエントリー『私は20歳』(1965)のマルレン・フツィエフ(Марлен Хуциев)監督の次作。
原題(イユーリスキイ・ドーシチ)の直訳は「七月の雨」。この邦題で上映されたこともあるようです。
第3回東京FILMeX映画祭(特集上映「知られざるロシア映画」)で上映された時は『夕立ち』でした(上映は2002年12月1日と6日)。

この時マルレン・フツィエフ監督が来場、ティーチインが行われましたが、残念ながら私は行けませんでした(代わりに?初日の『アカルイミライ』に行った覚えが……)。

『私は20歳』は3人の男たちの話でしたが、こちらはひとりの若い女性が主人公。オープニングで雑踏を行く彼女に文字通りフォーカスを当てた後は、モダンなカメラワークと編集で彼女の日常を綴っていきます。
たとえばこういった↓タッチ。セリフがなければソ連映画だと気づきません。

ぶっちゃけ前作に比べてぐっとヌーベルバーグに近づいたようにも見えますが、共時性ということばもふと浮かんだりします。
ラジオの音声を使ったり移動カメラを駆使しているあたりは前作の手法をより深化させているともいえますし、なにより長さが2時間未満というのが良いですね 😉

ヒロイン、印刷会社勤務レーナ(Лена)にエヴゲニヤ・ウラロワ(Евгения Уралова)。
その恋人ウォロージャ(Володя、ヴァロージャ)にアレクサンドル・ベリャフスキー(Александр Белявский)。

監督マルレン・フツィエフ(Марлен Хуциев)、脚本マルレン・フツィエフ、アナトリー・グレブネフ(Анатолий Гребнев)、撮影ゲルマン・ラブロフ(Герман Лавров)、音楽ユーリイ・ヴィズボル(Юрий Визбор)とブラート・オクジャワ(Булат Окуджава)。

日本ではソフト化されていないと思いますが、YouTubeのモスフィルムのチャンネルにアップされていますので、日本語字幕にこだわらなければそこで由緒正しく鑑賞することができます。

その他YouTubeで見られるモスフィルムとレンフィルムの主だった作品については、『戦争と平和』のエントリー内にまとめていますので、よろしかったらご利用ください。

これで『私はモスクワを歩く』『私は20歳』、『夕立ち』と3本続けて60年代の「らしからぬ」ソ連映画をチェックしてきましたが、3本とも街並みがとても魅力的にとらえれていて、「モスクワを歩く」気分に浸れました。願わくばすべて日本語字幕付きでソフト化されますように。

音楽

スウィングル・シンガーズ

映画中ほどで、なつかしい「だばだば」が流れたりします。

Jazz Sebastian Bach 1

『Jazz Sebastian Bach』(1963)Wから、「Partita No.2: Sinfonia」

ロケ地

IMDbには記述がありません。
モスクワであることはわかりますが、あとは『私は20歳』同様画面とにらめっこでチェックしていきました。
あちらのエントリーでは結局細かく見てしまいましたが、今回は難易度が高いのと目が疲れてきたのでホントに一部だけ。

OP

前作でも見られた右方向への移動撮影が延々続きます。
スタートはペトロフカ通りのこの位置で、以後カメラはひたすら南下。

絵を挟んだショット順で見ていきますと……

1ショット目

ちょうどタイトル«Июльский дождь»が消えたときに高いアーチが見えますが、ペトロフスキー・パッサージュW

2ショット目
3ショット目

ボリショイ劇場の東側。

背景にず~っと写っているのは、マールイ劇場(Малый театр)W
レーニンのこの有名な演説の画像で背景に写っている建物です。

当時群衆で埋め尽くされたボリショイ劇場前を、今や赤いフェラーリがぶいぶい走っているのでした。 😉

カメラ移動の最後に通りの奥に見えるのは、『私は20歳』の尾行の場面でちらりと写っていたルビャンカ広場のルビャンカ(КГБ、KGB)。

バスが並ぶ街角

0:19。
抱き合う2人を捉えたカメラがゆっくり上がっていくショット。
トロリーバスが並ぶ道の彼方に高い建物が見え、パンした後には教会の塔が見えます。
こんな風にランドマークが見えていれば場所の特定がはかどるのですが……

教会は、Yelokhovo Cathedral (Богоявленский собор в Елохове)W

高い建物はホテル・レニングラードW

なのでカメラ位置はここ。


大きな地図で見る

「だばだば」の街角

0:52。
前述スウィングル・シンガーズの「だばだば」が流れる場面。
いくつかピックアップ。

ペンキ塗り

街灯にペンキを塗っていたのはホテル・ナショナルWの角。

左折するトラム

立体交差

0:55。
馬を載せたトラックが潜っていくところ。
前作『私は20歳』で、3人の兵士が去っていった場所です。

ラスト

1:37。
レーナがやってきたのは、このあたり。

続いてボリショイ劇場正面へ。

集まっているのは退役軍人たちでしょうか。
彼らと真摯な眼差しの若者たちが交錯して、映画は締めくくられます。

ロケ地マップ

『私はモスクワを歩く』(63)『私は20歳』(65)『夕立ち(七月の雨)』(66)をまとめて。


より大きな地図で 60年代「新しい」ソ連映画 を表示

※16/5/27追記
その他の映画もまとめて。

 
 

資料

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更新履歴

  • 2022/05/30 動画リンク更新
  • 2016/05/27 「ロケ地マップ」追記

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