あのビルはどこ?
作品メモ
ひとつ前のエントリー『小さい逃亡者』の宇野重吉さんが素晴らしかったので、ちょっと寄り道。
その8年前の作品ですが、こちらの方が年齢が上に見えたりします。
今年の頭ぐらいにNHKBSプレミアムで放送されたものを録画鑑賞。
建設中のビルをめぐり、陰謀と台風が渦を巻く(?)石原裕次郎のアクション映画です。
拙サイトで言えば、『世界を賭ける恋』(1959)の前年の作品。『闘牛に賭ける男』(1960)同様、共演は北原三枝さん。
宇野重吉さんは裕ちゃんの父親役です。
ケーブルテレビで何度か見ていましたが、以前からあの建設中のビルがどこなのかずっと気になっていました。
今回背景に目を凝らして見たら(笑)解明できたので、ざっくりご報告。
スタッフ、キャストやストーリーなど、資料的なことはいちばん下に挙げた資料サイトをご覧ください。
ロケ地
建設中のビル
地上6,7階の長~い直方体的ビル。
★ヒント
- 東京タワーがうっすら見えている。日差しから見てタワーの北側。
- 東京タワーの左側手前に鉄塔が見える。もしかすると愛宕山の放送塔?
- 眼下に緑がひろがっているところがある
- 眼下にカマボコ型の家がいくつも並んでいるところがある
- はす向かいに見える建物は赤煉瓦風の作り
- 隣かはす向かいの建物は茶色でやはり6,7階建て
こういった条件のうち、特にビビっときたのはすぐお隣の建物。
側面のパターンが、いわゆる桜田門の警視庁旧庁舎に似て見えました。
旧庁舎のすぐ南側の建物が、やはり同じような外観だったことがわかり、これでようやく建設中のビルが判明。
現在も建っている、外務省です。
最初に裕ちゃんが山登りの恰好でやってくるのは、この場所。
昭和38年の空撮では、まだ北側の棟しか見当たりません。映画で建設中だったのはこの棟で、その他は60年代に建てられているようです。
背景に見えるビルは、桜田通りをはさんだお向かいの農林水産省。
現在も同じ形を確認できます。
手掛かりとなった隣のビルや、はす向かいの赤煉瓦の建物はすでに建て替えられています。
赤煉瓦の雰囲気は、北側皇居寄りに今でもある法務省旧本館Wで味わうことができます。
駅前
0:21。
田園調布駅の昔の駅舎がはっきり撮し出されます。
高速出口
0:24。
高速の土橋入口ですね。
有楽町駅のすぐ北側。
背後を通過したのはオレンジと緑の東海道線のように見えます。
今は手前に新幹線の線路が通っています。
首都高がこの時代にあったのか一瞬疑問符がよぎりますが、ここは正確には首都高より前に開通していた東京高速道路W。
ここは道路の構成からいっても入口となるはずですが、映画ではクルマは出てきていますし、裕ちゃんはクルマから降りてしまいます。
今ならこんなムチャ許されませんが、もしかすると開通前だったので撮影に使えたのかもしれません。
マンション
0:24。
これは名前がはっきり写っていますので、書いてしまっても大丈夫でしょう。
三田東急マンション。
競技場前
0:28。
国立競技場のこちら。
夜道
1:03。
急な坂を上っていくところ。
立て看板に「山の上グリル」という文字が見えますので、もしかすると神田駿河台の山の上ホテルに向う坂道かもしれません。
川縁
1:17。
隅田川の墨田区側。
鉄橋は東武線で、その向こうに見える大きなビルは松屋浅草店。
『東京暗黒街・竹の家』で登場した屋上の乗り物(スカイクルーザー)も確認できます。
今では周囲のビルに隠れてしまっていますが、この時代は他にまったくビルらしいビルが見えません。
資料
更新履歴
- 2014/04/17 各項目でタイムスタンプ追加。
コメント
えぇ! あのビルは外務省の建物だったのですか? まさか55年後にあのビルが特定できるとは。
それにしても外務省がよくも撮影許可を与えたものだと思う。
この映画は、このビルが特定できただけで十分だと思いますが、「夜道」は私も神田駿河台の山の上ホテルだと思います。ここのロケーション付近はしばしば日活アクションで出てきたように記憶しています。
裕次郎映画としては凡作でしたが、主題歌がそれなりによかった。
後年、「風速75米(メートル)」(宇津井健主演)という全く同じようなストーリー・設定の作品がありました。こちらはロケ地を調べる気も起きないでしょうね。
赤松さん、コメントありがとうございます。
建物は間違いないと思いますが、ホントによく許可出たものですよね。
山の上ホテル、自信なかったので確認していただけてとても心強いです。よくロケ地になっていたのですね。知りませんでした。
『風速75米』はやはり日本映画専門チャンネルで見たことありますが、特撮はだいぶ頑張っていたような。今手元にないのでロケ地チェックの方は残念ながらできません~。
日本映画は時々取上げようと思っていますので、またよろしくお願い致します!