作品メモ
WOWOWで現在放送中の石原裕次郎特集で初めて鑑賞。
海外だけでなく昔の東京も昭和の薫りがたっぷりで楽しめました。
主役2人が良いところの子女という設定なので、ヒロインの口からは、
「わたくし……」
「……ですわ」
「……ましたの」
という言葉がさらりと出てきます。
「ヤバい」とか「ちょー」だけの発話が氾濫する現代から見ると摩訶不思議なパラレルワールドとなっているのでした。
新進気鋭の建築家村岡雄二に石原裕次郎。
その兄村岡一郎に永井智雄。
一郎の妻村岡さち子に奈良岡朋子。
雄二と一郎の母、村岡信子に滝花久子。
雄二の恋人、野々村夏子に浅丘ルリ子。日活を支えた裕次郎との名コンビはこの映画からだとか。
その兄野々村欽也に葉山良二。
その妻野々村かおるに南田洋子。
スウェーデン在住の叔父村岡壮吾に清水将夫。
その妻村岡潤子に高野由美。
その息子、雄二の従兄弟にあたる村岡稔に二谷英明。
監督滝沢英輔。
原作は武者小路実篤の『愛と死』。
最後の展開が唐突すぎるかもしれませんが、原作通りですからしかたありません。
海外ロケ
タイトル通り、海外ロケが目玉のひとつ。
機体だけでなく至る所にSAS(スカンジナビア航空)のロゴが登場し、タイアップの濃密度がうかがい知れます。
これでスタッフ・キャスト・機材の旅費を浮かせたのでしょうけど、海外渡航自由化以前の日本で広告効果はどの程度見込まれていたのでしょう。
この年(1959)の暮れにようやく「兼高かおる世界の旅」がスタート。
海外渡航自由化はオリンピックの1964年のことで、庶民から見れば海外旅行は夢のまた夢でした。
ちなみに原作は船の旅。
ロケ地
東京、コペンハーゲン、ストックホルム、オスロ、パリといったところ。 1959年の夏公開ですから、撮影も同年と思われます。
どんな映画もそうですが、歳月が経てば経つほど当時の様子を知る貴重な記録映像ともなっています。
木の橋
野々村夏子の自宅の近くにある木製の橋。
これは世田谷区成城のこちら(富士見橋)。
今ではもちろん木製ではありません。
下を小田急線が走っていて、すぐ近くに成城学園前駅があります。
夏子の住まいは橋の北側のどこかという設定で、カメラ位置も大部分が北側。
さすが成城のお嬢様、あのような御言葉遣いも納得なのでした。
日本橋
都電が普通に走っている日本橋。
なんだかすっきりしているな~と思ったら、上に首都高が架かっていませんでした。
昭和34年ということで、リアル「続・三丁目の夕日」ですね。
SVではこんな感じ。今ですと首都高に隠れて背後の野村證券本社ビルは見えません。
丸善
旧日本橋店。日本橋高島屋の向かい。
現在は建て替えられ立派なビルとなっています。
昔山手線の東側で洋書を買うときは、ここか銀座のイエナだったような。
真ん中なら神保町、西なら洋書ビブロスや紀伊国屋。
大学
これは池袋の立教大学ですね。本館が登場しているのでわかりやすいです。
ただし、夏子が雄二を待っていたところは確認できていません。
手前の大谷石の塀に囲まれた建物はどこでしょう??
(おわかりになる方、ぜひ教えてください)
SAS
雄二が渡航の手配をしているところ。
外の通りがあまりはっきり写っていないため、場所は特定できていません。
調査中。
お堀端
背景に見えるのは毎日新聞社前の平川門。
その東側を歩いています。
海岸
調査中。
「一心荘」という建物も写りますが詳細不明。
空港
羽田の東京国際空港、とわざわざ書かなくてはならないくらい、現在とは全く違った外観。
ビッグバードの前に使われていたターミナルの初期状態ですね。
昔のターミナルは何度も行っているはずですが、展望デッキがあんなんだったかまでは記憶無し。
コペンハーゲン
羽田からプロペラ機でやってきました。
ここまで30時間(セリフから)。裕ちゃん、お疲れ様です。
当時ですからおそらくその前にアンカレッジにも降りていることでしょう。
ここからジェット機でストックホルムへ向かうという行程。
街角
SASのリムジンバスがとてもおしゃれ。
こちら↓のページの一番下。
http://www.bentseverindesign.com/BSD%20web/Furniture%20design/Furniture%2008.htm
ここにあるように、デンマークのBent SeverinWという会社がデザインしたようです。
バスが走っていくのはこちらのLangebroWという橋。
バスは西向き。
大通り
上記の橋をさらに進んだところ。
ここにも正面のビルにSASの看板が見えていて、徹底しています。
塔の下
雄二が歩く昔の建物。調査中。
雄二がうつむいて使っていたウェストレベルファインダーのカメラはゼンザブロニカ。
往年のカメラファンならおなじみの和製中判カメラで、ハッセルブラッドは欲しいけどちょっとお値段が……という人でも比較的手頃な値段で買うことができました(自分もそのひとり)。
今Wikipediaを見てみたら、1959年に初代が発売になったとのこと。
当時ばりばりの新製品なのでした。
広場
兵隊が行進していた広場。
アマリエンボー宮殿(Amalienborg Palace)W
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影は1993年とのことです。
噴水
※12/8/1 追記
こちらもmilouさんから画像を提供していただきました。
噴水の後ろ側からの撮影。
こちらも1993年とのことです。
ストックホルム
空港
ブロンマ空港 (Stockholm-Bromma Airport)
2つの塔の教会
村岡稔が運転する赤いクルマが走ってくるところ。
背景の2本の塔を持つ教会は、ゼーデルマルム島(Södermalm)のHögalid ChurchW。
リーパパがカッコよく乗っているクルマは、地元のボルボやサーブではなく、ポルシェ356ですね。
俯瞰
トラムが走る広場と水辺の俯瞰。
ストックホルムのこちら。
ショッピングセンター
1:02頃。
モダンな建物と10階建てぐらいのマンションが並ぶいかにもニュータウン的街並み。当時の日本人の目には、まばゆく映ったことでしょう。
「2人の若い建築家が全て任されて作り上げた」と言っていますが、場所含めて未確認。
※13/8/8追記
場所がわかりました。
2人がいたのはSVのカメラ位置↓のもう少し後ろ。白い丸が並んでいる広場。
村岡一家の住まい
「メラレン湖畔の小公園の中」と言っていますが、場所は調査中。
お土産の「グローバル」というトランジスタラジオはこちら。
6石ラジオだそうです。
オスロ
ノルウェーのオスロとその近郊でも撮影されています。
彫刻のある公園
ヴィーゲラン彫刻公園(Vigelandsanlegget, Vigeland Sculpture Park)W
ヴァイキング船
雄二が船の前でコスプレするところ。
オスロにあるこちらの博物館。
ヴァイキング船博物館W
(Viking Ship Museum, Vikingskipshuset)
Huk Aveny 35, 0287 OSLO
http://www.khm.uio.no/vikingskipshuset/
半世紀経った今でも映画と同じように展示されているようです。
パリ
凱旋門、ノートルダム寺院、セーヌ川観光船と定番が続きます。
この頃のパリ、当サイトで近いところでは『パリの恋人』、『昼下りの情事』は2年前、『突然炎のごとく』は3年後。
「俺の巴里」なんて歌も出していたようですが、別に劇中で流れたわけではありません。
階段
『アンリエットの巴里祭』にも登場した、モンマルトルから下る階段。
能楽堂
新宿にあった観世会館の能楽堂。
現在は渋谷区松濤に移転しています。
行ったことがあるはずなのですが、ほとんど記憶になし。
ロケ地マップ
※13/8/8追記
より大きな地図で 海外ロケ を表示
資料
関連記事
海外ロケを行った日本映画
- 『さらば夏の光』 (1968)
- 『ウィンディー』 (1984)
- 『エスパイ』 (1974)
- 『ブルークリスマス』 (1978)
- 『モスクワわが愛』 Москва, любовь моя (1974)
- 『世界を賭ける恋』 (1959)
- 『坂の上の雲』 (2009-2011)
- 『小さい逃亡者』 (1966)
- 『最後の恋、初めての恋』 (2003)
- 『東京⇔パリ 青春の条件』 (1970)
- 『熱砂の誓ひ』 (1940)
- 『白蘭の歌』 (1939)
- 『蘇州夜曲 (”支那の夜”より)』 (1940)
- 『闘牛に賭ける男』 (1960)
- 『雨のアムステルダム』 (1975)
更新履歴
- 2018/09/16 「階段」SV更新
コメント
こんにちは。
この映画とあと次の記事の映画が、DVD発売されるようです。例によってご存知でしたら申し訳ございません。
https://publications.asahi.com/yujiro/#yujiroNav2
裕次郎の、日活と石原プロモーションの作品は網羅しているようですので、これは良さそうですね。別に裕次郎のファンではありませんが、北欧が好きですので、この映画の号は絶対買います。
ところで、こういう著名俳優や映画監督もそうですが、コンプリートものは、今までなかなかソフト化されなかった、されてもDVD化がされなかった作品が発売されるので、実は非常に貴重ですね。松田優作のコンプリートものに、原田美枝子のプレデビュー作にして日活児童映画が収録されたのに狂喜してしまい、おもわず購入してしまいました。これも、まさに貴記事で『恋は緑の風の中』の放送ををご教示いただいたからです。ほんと、貴サイトにはどれだけ感謝をしてもしきれません。本当にありがとうございます。
https://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/3cf9c3198b2cbfd1f864c8a97c1a8f85
それにしても原田美枝子の脱ぎっぷりの良さには圧倒されます。おもわずこんな記事まで書いてしまいました。
https://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/9ba98a46886bfaa8b5eda068c5bba11f
余談ですがその原田美枝子も出演していて、裕次郎の最後の映画となった『凍河』は、松竹制作なので、この企画には未収録ですね。でもこの映画も観なければです。
Bill McCrearyさん、コメントありがとうございます。
ひさびさにこのページ見ましたが、おかげさまでSVがずれているのに気づきました。
階段を上り下りできることに気づき、しばらく楽しんでしまいました。
『ともだち』は知らなかったですね。
あともう一枚のページもたいへん有り難く拝見しました。結構見覚えのあるグラビアがあり、なつかしさ満点でございました。