記事内の商品画像には広告リンクが含まれています

『わが青春のマリアンヌ』 Marianne, meine Jugendliebe (1955)

わが青春のマリアンヌ [DVD]

作品メモ

2つ前にとりあげた『アンリエットの巴里祭』(1955)のジュリアン・デュヴィヴィエ監督による同年の作品。
森の中の寄宿学校にやってきた少年と、湖の向こう岸に住まう謎めいた美女との幻想的な物語。
フランス映画……というよりはドイツ浪漫派的雰囲気が強く出ている映画です。

ペーター・フォン・メンデルスゾーンの原作をジュリアン・デュヴィヴィエが脚色し監督。
撮影レオンス=アンリ・ビュレル、音楽ジャック・イベール。

印象に残るのはやはり美しきヒロインで、マリアンヌ・ホルト(Marianne Hold)という女優さんが演じていました。役名と同じなので、これ一本で文字通り「わが青春のマリアンヌ」となった往年の映画ファンもいそうです。
(細かいことですが「ホルト」と読むのであれば「マリアンネ」と書いた方が正確かも。でも各映画サイトの表記は「マリアンヌ」となっています)

もうひとり、校長の親戚とかいう少女が、ちょっと小悪魔的役回り。こちらはイザベル・ピア(Isabelle Pia)というフランスの女優さんで、ドキドキっとする場面もこなしています。

一方男子は、後述のドイツ語版で(← 12/10/15追記)ヴィンセントを演じたのがホルスト・ブッフホルツ(Horst Buchholz)で、ほとんどほやほやの新人状態。単純計算で当時22歳でしょうか。

(12/10/15 以下一文追記)
フランス語版でヴァンサンを演じたのは、ピエール・ヴァネック(Pierre Vaneck)。

総じて生徒たちは学年や年齢不詳の世界となっていて、萩尾望都さんのギムナジウムものみたいなものを期待すると、ちょっとズレを感じてしまうかもしれません。

フランス語版とドイツ語版

この映画、キャストを替えてフランス語版とドイツ語版が同時に作られたそうです。
共通しているのはマリアンヌ(マリアンヌ・ホルト)とリーザ(イサベル・ピア)の2人だけで、男子は総入れ替え。
IMDbでは2本別々に項目が設けられています。

日本で公開されたのはフランス語版とのことですが、ビデオ(VHS)になったのはなぜかドイツ語版です(発売・販売ポリドール)。
今回これでチェックしましたので、このエントリーのタイトルもドイツ語原題を使用。
残念ながらAmazonで見るとすでに廃盤のようでプレミア価格。今から入手はむずかしいかもしれません。

日本語字幕がなくても良いのでしたら、フランスでDVDが出ています。
http://www.amazon.fr/Marianne-ma-jeunesse-Gil-Manfred/dp/B001D45C7S/

おそらく(当たり前?)フランス語版でしょうか。
ユーロがこのところ100円切っていますし、こちらをゲットするというのも選択肢として十分ありそうですね。

フランス語版は持っていませんでしたが、Youなんとかに一部アップされていたのでドイツ語版と比較してみたところ、演出や演技やカット割りはほぼ同一。ホントに男子だけが入れ替わっているだけというそっくりぶりで、これだったら声を吹き替えちゃえばいいのにと思ってもみたり。

考えてみたら2つの国はわずか10数年前には大変な状況にあったわけで、こんなふうにまとめて映画を作ることになったいきさつ等、詳しいところをもう少し知りたくなってきたのでした。

DVD

※15/3/29項目追加

わが青春のマリアンヌ [DVD] 一作年(2013年10月)DVDが出ていたようです。
全然知りませんでした……。内容未確認ですが、フランス語版のようです。

ロケ地

IMDbには記載がありません。
キネマ旬報DBによれば、

この幻想的な雰囲気を出すために、マリアンヌの住む謎の館にはオーストリア、フッシェル湖畔の旧家が選ばれ、少年達の屯する館には、バヴァリア地方に残っているリヒアルト・ワグナーに関係のある館を選んだ。

allcinemaによれば、

オーストリアのフィッシェル湖畔を舞台にした、青春のロマン溢れる佳作

これを手懸りにマップで探してみました。

OP&寄宿舎

霧に包まれた深い森。
鹿がいるのがまた『もののけ姫』っぽくて良さげな雰囲気。

ハイリゲンシュタットで
霧に包まれたあの夢の城で、僕らは出会った

とナレーションで言ってますが、「ハイリゲンシュタット」といってもベートーベンの遺書で有名な場所……のことではなさそうですので、手懸りにならず。

念のため書いておきますと、「僕ら」とは語り手であるマンフレットと主役のヴィンセントのこと。
マリアンヌとヴィンセントのことではありません。
「あの夢の城」は湖の向こうにあるマリアンヌの住まいのことではなく、最初から写るお城(=寄宿学校)。
その寄宿学校では、年齢不詳の少年?たちが、コマ数の少ない時間割であとは自由に遊んでいるという、ゆとり教育を享受中。
ヒマな時間に向こう岸の幽霊屋敷を探検しに行き、そこで取り残されたヴァンサンが屋敷に住むヒロインと出会うという展開です。

お城は、キネマ旬報の文章から「バヴァリア地方」(バイエルン)のあたりをチェックしていき、すぐに見つけることができました。

ホーエンシュバンガウ城‎ (Schloss Hohenschwangau)W
http://www.hohenschwangau.de/319.html

『ルートヴィヒ』でおなじみのノイシュヴァンシュタイン城はすぐ近く(東へ1km)。
そういえば『ルートヴィヒ』のエントリーを書きかけたとき、このお城もチェック済みでした。実際ルートヴィヒ2世が幼少の時に住んでいたところで、広いようで狭いロケ地の世界となっています。

何カットか写る山の上からの眺めはまさにこんな感じ。
眼下の湖はAlpseeW

Photo from Wikimedia Commons(public domain).

 

噴水のあたりから見上げたカットはこんな感じ。
アップで見るとなんだか小綺麗にメンテされてしまっていますね。
映画の方がずっと雰囲気あったかも……。
う~~ん、ちょっとガッカリ物件?

朝日新聞の記事(2012/10/15追記)

コメント欄で情報寄せていただきましたが、このロケ地、2012年10月13日の朝日新聞で取り上げられたようです。
(おかげで、このエントリーのアクセス数がここ数日凄いことに……)
いつまで読めるかわかりませんが、ウェブではこちらで見られるみたいです(私は会員ではないので中身は未確認)。

http://www.asahi.com/news/intro/TKY201210100211.html

この写真のアングル、まさに上で借用した写真と同じですね。
私もここへ行ったらこのアングル狙ったと思います(笑)。
こういうところに経費で行ける記者さんたちが羨ましい……

※13/6/2追記

milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影は1986年。

こちらは映画では登場していませんが、記事で少し触れた近くのノイシュヴァンシュタイン城。
望遠鏡は上記画像と同じもの、つまり同じ場所から向きを変えて撮影しているとのことです。
このあたりでしょうか?

2棟の赤い屋根やその奥の濃いグレーの屋根の家は、今でも確認できますね。

映画と同様雰囲気たっぷりの森。

湖畔の館

マリアンヌが住まうところ。
設定では湖をはさんだ向こう側。
キネマ旬報やallcinemaの文章が正しいとすると、実際の撮影場所はオーストリアのフシュル湖(Fuschlsee)Wとなります。
上記のお城からは東へ200kmほどワープ。

確かに湖畔の山並みは映画に登場した景色とぴったり一致。
特に湖の西岸にあるホテルの建物が映画の館と似ているので、おそらくこちらではないかと思われます。

Schloss Fuschl
Schloss Strasse 19, Hof bei Salzburg 5322
http://www.schlossfuschlsalzburg.com/

ホテルのサイトの沿革を見ると、ロミー・シュナイダー主演の『シシー』で使われたとのこと。
さっそく1作目の『プリンセス・シシー』(1955)をチェックしてみましたが、たしかに冒頭でシシーの実家として登場していました。
『マリアンヌ』と比べてみるとほぼ同一の外観。ただし『マリアンヌ』ではあった塔のような出っ張りがなくなっていて、現在と同じ姿となっています。
公開は同じ1955年ですが、同じ建物だとしても明らかに『マリアンヌ』の方が古い状態ですね。

資料

更新履歴

  • 2015/03/31 「DVD」項目追加

コメント

  1. BONNY より:

    私(高齢者)の生涯ベスト作品10のひとつ。DVD化されていないので残念。
    よくロケ地を探していただきました。スイスのほうに行きたいのでいっしょにご当地にもゆきたいです。
    ありがとうございました。

  2. inagara より:

    BONNYさん、いらっしゃいませ。コメントありがとうございました。
    生涯ベスト10のひとつですか。他のベストも気になりますが、この映画やはりとても印象に残る1本ですよね。おっしゃる通り、日本でDVDが出ていないのがとても残念です。
    ロケ地に関しては本文で足を引っ張るようなことを書いてしまったかもしれませんが、あたりの景観は(画像で見る限り)さすがに素晴らしく、足を運ぶだけの価値は十分にありそうですね。
    ご旅行実現された際は、ぜひ楽しまれてください!

  3. 入谷 より:

    始めまして、十月十四日 朝日新聞日曜版にわが青春のマリアンヌが掲載されてました。懐かしくて偶然こちらでも、発見して嬉しくおもいました。本当に綺麗な映画でした。ただ主役の生徒のヴァンサンはホルストではなくピエール、ヴァネックです。彼も素敵でした。パリは燃えているかにいい役で出演していて嬉しく思ったものです。投稿なれないのでお見苦しいの点お許しください。

  4. inagara より:

    入谷さん、いらっしゃいませ。コメントありがとうございました。
    この映画が新聞で紹介されたのですね。それでここ数日このエントリーへのアクセスが急増していたのだとやっと納得できました。朝日は少し前にとるのを止めてしまったのですが、続けていれば良かったかも、と思っているところです。

    入谷さんも昔フランス語版の方でご覧になったのですね。
    記事内容はわかりませんが、これだけアクセス数が増えるところをみると、懐かしがっているファンの方が大勢いそう。
    これをきっかけにDVDが出てくれれば良いのにと思います。

  5. pomnyan より:

    この映画はたまたまNHKで見ました。幻想的なことを覚えています。
    そこで、レーザディスクでドイツ語版を手に入れました。
    そのご、友人にフランス語版を録画してもらいました。
    フランス語版はVHSでカビていましたが、何とか見れます。
    ロケ地を紹介いただき、ありがとうございます。

  6. inagara より:

    pomnyanさん、いらっしゃいませ。
    NHKで放送済み。それからレーザーディスクでドイツ語版が出ていた、ということですね。
    このあたり知りませんでした。情報ありがうございます。
    ゲットされたビデオ、再生装置と一緒に大切に保管しないといけませんね。
    昔からのファンの方も多くいらっしゃるようですし、今DVDを出せばそれなりに反応があると思うのですが、どこかで発売してくれないものでしょうか?

  7. オペラ好き より:

    私も、『マリアンヌ』を見ています。NHKでも見たので、よく覚えています。映像の美しさは忘れられません。  今回、所属する会の上映会で、私があらすじや、プログラムを書く担当になったのですが、資料がほとんどありません。超がつく映画ファンの友人に聞いても、見てないので、このサイトを見つけて、とてもありがたく思っています。  私には、ヴァンサンがギターを弾いて歌を歌うシーンがとても印象的です。あの曲は、ユパンキの『トゥクマンの月』と思っていたけれど、字幕もないし、さだかではありません。くわしい方にお聞きしたいと思っています。

  8. inagara より:

    オペラ好きさん、いらっしゃいませ。
    コメントありがとうございました。
    NHKでご覧になった方、結構いらっしゃるようですね。
    上映会をされるとのことで、ご盛会お祈りしています。

    ヴァンサンの歌ですが、確かに「トゥクマン」という地名も入っていますけど、違うような気がします。
    このあたりの音楽はよく知らないので、もともとあるフォークロアなのかジャック・イベールのオリジナルなのかはわかりませんが。
    どなたかご存知の方、ぜひフォローお願いします。

  9. あんくろ より:

    こんにちは、おじゃまします

    たまたま 知人に紹介されて「我が青春のマリアンヌ」を見ました
    冒頭で流れる曲は 「クランパハのビダーラ」
    劇中でギターを弾きながら歌う曲は 「Viene Clareando」 と言う
    どちらも 「フォルクローレ」 と言う分野に属する曲です
    「Viene Clareando」で検索するとたくさん上がってますので 聞いてみてくださいね!

  10. 居ながらシネマ管理人 より:

    あんくろさん、いらっしゃいませ。
    コメントありがとうございます。
    おかげさまでスッキリしました♪
    後で本文の方にも追記させていただきますね。
    ありがとうございました♪♪

タイトルとURLをコピーしました