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『ウィンディー』 (1984)

【映画チラシ】ウィンディー 原田真人 渡辺裕之 クリス レスリー・モルトン [映画チラシ]

スーホの白い馬

作品メモ

ひとつ前のエントリー『オン・ザ・ロード』で映画デビュー、白バイ隊員として見事に大型バイクを乗りこなしていた渡辺裕之さんが、今度はヨーロッパを転戦するオートバイレーサーを演じた映画。
日本と西ドイツ(当時)合作映画で、泉優二さんの原作を原田眞人監督がオールヨーロッパロケで映像化しました。

ウインディー (1) (角川文庫 (6506))

原田監督にとっては、『さらば映画の友よ インディアンサマー』(79)に続く2作目。 2作目にして、こんな風に世界を股にかけて海外のスタッフと映画を作り上げていくなんて、英語もろくすっぽ話せない自分などはそれだけですごいとか思ってしまいます。

レースにあわせてヨーロッパを転々とするお話ですので、これも一種のロードムービー。各地の景観が描かれるとともに、愛娘や周囲の人々との様々な出来事が綴られます。
レースの場面も、おそらく予算は限られていたかと思われますが、レース中にパドックで撮影したり、コースを走って撮った映像をホンモノのレースの映像に編集で織り込んだりして、臨場感ある映像を作り上げていました。
特にラストシーンは夢のようなカットで、強く印象に残ります。

先月原田監督の『さらば愛しき人よ』のエントリーを書いた際、この映画を見ようと思ったら手元になくあせりました。
名画座で見た他、地上波でも見て録画、それを変換したファイルをHDDに保存していたはずなのですが、検索しても見つからず。
確かVHSは出ていたかと思いますが、今からでは入手困難かと。
見られないとなるとさらに思いはつのるわけですが、なんとありがたや、Youなんとかに日本語字幕版が全編アップされていました ↓

https://youtu.be/eK7kw6ImDPI

拙サイトはできるだけ由緒正しいソースを使うようにしていますが、今回は他に手段がなくこれにてチェック。
良い画質でのソフト化、切に望みます。

他に吹替え版もアップされていました↓ 
少し時間が短いですし、私が見たテレビ放送も吹き替えでしたので、おそらくそのバージョンではないかと思います。

https://youtu.be/CXvDBVfzLpQ 

キャスト、スタッフ

主人公杉本ケイに渡辺裕之さん。11年前に大事故を起こしたものの、カムバック。しかしそのため妻と離婚し、夏の間だけ娘を預かっている、という設定。
渡辺さん、『オン・ザ・ロード』に比べると、だいぶ演技にゆとりが出てきたような。この映画、セリフは全部英語ですが、そつなくこなしています。昔何かのトーク番組でぺらぺら英語をしゃべっていたこともありましたが、『クライシス2050』の別所哲也さんと並び、若手の俳優さんで英語が話せる人として記憶に残っています。

娘アンナにクリス・アディソン(Chris Addison)。映画出演はこれ1本で、その後は他の分野へ進出。
別れた妻モニークにデボラ・サッソン(Deborah Sasson)。ピアニストという設定。出演作はこの他TV映画が1本のみ。
途中で加わったアメリカ人のメカニック、サム(サマンサ)にレスリー・モルトン(Leslie Malton)。ワシントンDC生まれでドイツ在住。主にドイツの映画ドラマで活躍しているようです。

各地のレースに現れては写真を撮るダフナー老人にパトリック・スチュアート。フィルモグラフィーを見てもまだキャリアの最初の方。当時は名前も知らず、その後の『デューン/砂の惑星』や『スペースバンパイア』でようやく覚えたかと思います。今見返すと、渡辺さんの他に唯一俳優名が浮かぶキャスティングですね。

元選手のジム・ゲインズにディーン・リード。ケンのことも何かと気にかけてくれるのですが……
ゲインズのチームのエース、ブルースターにスチュワート・ヴォルフェ。ケンのことをすっかり見下しています。当然最後は2人のバトルですね♪
ケン同様個人で転戦しているレオにクラウス・ゲオ・ゲルトナー(Claus Theo Gärtner)。
その妻バーバラにバーバラ・シュタネク(Barbara Stanek)。
ケンの女友達だが、アンナには気に入られていないデニスにオリヴィア・パスカル(Olivia Pascal)。
……とこのあたりは日独合作だけあってドイツの俳優さんがずらりと出ているようです。

監督原田眞人、脚本泉優二、原田眞人、菊地昭典、ダー・ソレル F・L・ホーン、 撮影ウィトルド・ソボシンスキー。

音楽井上鑑さん。
昔も今も、可憐なアンナのテーマが印象的。

 

白い馬

ダフナーが子供たちに語って聞かせるのは、大塚勇三さんの『スーホの白い馬』。

スーホの白い馬 (日本傑作絵本シリーズ)

ロケ地

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

空港

ケイがアンナを迎えに来たのは、ベルリン・テーゲル空港W

カフェ

0:05
青空の下、親子でかみあわない会話をするところ。
ベルリンのどこかなのでしょうけど、調査中。

ゾルダー・国際レース

0:13

ゾルダー・サーキット (Zolder)W

0:19頃、サムがゲインズに怒るのはおそらくこのあたり↓

レースの場面も、ここで実際に走って撮影したものと、ホンモノの競技の映像を組み合わせているように見えます。

0:25頃通過する歩道橋は

39番ケイは1周もたずあえなくリタイア。

勝つことが仕事であるファクトリーと違って、俺たちは生き残るのが大事だ、と語るレオに、ケイは答えます。

生き残るだけなら苦労はしない
俺は勝ちたい

通過する町

0:27頃ケイ、ダフナー、レオが連なって通過する町。
不明

アンナとカスパー(レオの長男)が会話するカフェも不明。

ケンは4日後スパ(・フランコルシャン)とのこと(キャンプの夜、サムとの会話から)。
レオ一家はレオの故郷であるローゼンハイムへ(カスパーのセリフから)。
サムは行き先未定のまま去り、アンナはがっかり。

スパへ向かう途中

0:39
キャンプの後ケイのトレーラーがやってきたところ。
おそらくこちら↓

リエージュW

コインランドリーの表記がフランス語だけですね。

俯瞰

トレーラーがやってくるショット。左へパンして町を俯瞰します。
調査中。

アンナを探して

ケイが道を渡って通行人に尋ねたのはこのあたり↓

背景のドームは、 Église Saint-André de LiègeW

アンナが陶器の人形を見ていた店はもう少し右側のこちら↓

この後スパに行ったという設定ですが、映像はなし。
セリフによる情報として、ケイはそこでも完敗。でもアンナの嫌煙バッジは完売♪

オランダ ツァントフールト 国内レース

0:41

ザントフォールト・サーキットW

コース脇のレストラン

0:42

スタート

0:45

レースの場面は、ここで実際にコースを走って撮影したものは含まれていないように見えます。

サムがメカニックとなったこのレースは、見事3位♪

海沿いのレストラン

0:48
調査中。

ダフナーの町

0:49
サムにじゃんけんを教えながらやって来た町。
ダフナーの招待を受けての来訪です。
実はワイナリーを持ち大きな屋敷を構えるリッチな人。

橋が特徴的でしたので判明しました。
ドイツのこちら。

トラーベン=トラーバッハ (Traben-Trarbach)W

トレーラーがくぐったのは、橋の南側(右岸)。川はモーゼル川。

「ドラキュラの館よ」

河畔の塔

0:58
ダフナーがアンナに息子の話を聞かせた直後。
河畔にある遺跡のような塔の下を、列車が左手へ走っていきます。

これはダフナーの町とは別。5,60km東へ行ったところで、川はライン川。

オーバーヴェーゼル(Oberwesel)W

このあたりは、ラストに向けてアンナがひとりで列車に乗って移動している場面でも登場しています。

ニューブルグリング 8時間耐久レース

1:01

ニュルブルクリンク(Nürburgring)W

背景の山上に見える塔は、

ニュルブルク城(Nürburg Castle)W

「ニュルブルク城」と書くと、「ポンヌフ橋」と書いてしまっているような……

レースは8時間耐久レース。北コース(Nordschleife)を走ります。
ケンは37番。赤いスーツ。指示に従わなかったサムを叱責、サムは去ります。
レオは、入賞できなければレースをやめると誓いを立てていたのですが……。 

レースの場面も、ここで実際に走って撮影したものと、ホンモノの競技の映像を組み合わせているように見えます。

アムステルダム

トレーラーを停めた橋

1:20

叔母の家はそのすぐそば。

去って行くケイ

アンナを置いて去って行くケイのトレーラーは、この橋を渡っていきます。

ケイはひとりイギリス、シルバーストーンへ。

新聞を読むところ

シルバーストーンの映像は無く、アンナが読む新聞で5位であったことが報じられます。
場所は調査中。

AMSTERDAM DIAMOND CENTER

1:27

現在は違う店名になっています。

アムステルダム中央駅

列車移動

川に浮かぶ城

1:33
背後を、アンナが乗る列車が通過していきます。

プファルツ城 (Pfalzgrafenstein)W

前述「河畔の塔」からわずか4,5km上流。
アムステルダムからホッケンハイムへ、ということで、アンナの列車はライン川をさかのぼっています。

本編は、城→列車へズームアップ→ズームバックして遊覧船 と凝ったカメラでしたが、この画像も凄いシャッターチャンスですね 😮

山上の城

1:36

ネズミ城(Burg Maus)W

「川に浮かぶ城」から10kmほど下流。
なのでリアルでは順番が逆。

ついでに、ネコ城は3kmほど上流のこちら↓

マンハイム駅

1:38

ここで乗り換えのはずなのに、眠って乗り過ごしてしまった駅。

降りた駅

設定ではマンハイムより先のどこか。
撮影場所は不明。

トラックから降りたところ

場所不明。
少女をひとり乗せてぽつんと降ろす運ちゃんも凄いです。

ホッケンハイム 西ドイツ・グランプリ

1:32

ホッケンハイムリンクW

ここはF1で何度も走ったことがあるコースです。もちろんゲームで 😛
映画の時点では昔の森の中を走る超高速コースであったかと思います。
本編でも森の中のコースが描かれますが、やたらうねうね左右にカーブしていて、これはどうもホッケンハイムではないような……

観客席やパドック、ホンモノのレースの映像はホッケンハイムでしょうけど、映画のためにコース上で車載カメラで撮られたショットは別のサーキットのように見えます。おそらくこれまでのゾルダーやニュルブルクでの撮影したものを組み合わせているのではないかと思うのですが、レースに詳しい方、教えてください。

それはともかく、クライマックスだけあって、迫力有るレースシーンがたっぷりと展開。
当然ブルースターとの対決となり、手に汗握ります。
同じスーツでわかりづらいですが、先頭を行く19番の青いヘルメットがブルースター、それを追ってぐんぐん順位を上げていく39番の黄色いヘルメットがケン。
なので最後の抜きつ抜かれつは、39番を応援しましょう♪

出入り口

1:42頃
アンナに気づいたジムが駆け下りてきて、近くの若者からスクーターを拝借したところ。
おそらくホンモノのホッケンハイムで、南の角のこちら↓

陸橋

とぼとぼやって来たアンナをジムが迎えにきたところ。
おそらく上記出入り口近くのこちら↓

パドック

ジムがアンナを乗せてやってきたところ。
パドックやピットレーンもホンモノのホッケンハイムのように見えます。

コース

少し検証してみますと……

1:44過ぎ、「ANNA→」のサインボードの直後の俯瞰(ホームストレート後の右カーブ)は、実際のホッケンハイム。
その後のうねうね左右にカーブする箇所(車載カメラ)は、ホッケンハイムではないので、たとえばニュルブルクとか。
「NOCH 2 RUNDEN(あと2周)」のサインが出た後の右カーブから入るストレートは、もしかするとゾルダーのバックストレート。
SACHS-KURVEとあるのは、ホッケンハイムのホームストレート直前。
でもその後のうねうねカーブ(コーナーにMarlboroの広告)はやはりホッケンハイムではないですね。

ゴール

チェッカーフラグを受けるショット。振り上げた拳がなんとも爽快。
これはホッケンハイムではなく、今までのサーキットで言えばゾルダーが近そう?

最後のカット

オーラスのワンカットは今見てもしびれます。

この撮影場所もホッケンハイムではないような。
最初のサーキット、ゾルダーのレースで上り坂の最後で通過する歩道橋(Shellの広告)を逆向きに撮っているように見えますが、どうでしょう?

ロケ地マップ

こうしてマップにまとめてみると、撮影範囲は案外コンパクトで、さすがドイツとの合作映画、とても合理的に撮られていたことがわかります。

 
 
 

アムステルダムで撮影された映画のロケ地マップ↓

 
 
 

資料

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海外ロケを行った日本映画

更新履歴

  • 2019/04/30 新規アップ

コメント

  1. Sai より:

    はじめまして。

    『ウインディー』情報、ありがとうございます。
    原作の泉優二氏にはまっていた時期があり、氏の作品は単行本ですが今でも持っています。
    映画は一度だけ観たことがあり、もう一度とおもい、いざDVDを探しても、、、なかなか見つかりません(YoY)

    おかげて、また観ることが出来ます、感謝(^^)d

  2. 居ながらシネマ より:

    Saiさん、コメントありがとうございます。
    動画サイトへのリンク、まだ生きているようですね。拙記事がお役に立てて良かったです。
    ただやはりもっときれいな画質や音質で見てみたいので、ソフトの発売やHD放送に期待したいですね。 🙂

  3. より:

    クリスが可愛かった。
    可愛い歌を1曲出しているけれどもう一度聴きたい。ソバカスがキュート!

  4. 居ながらシネマ より:

    龍さん、コメントありがとうございます。
    たしかにクリスといいますかアンナは可愛らしかったですね。
    渡辺さんと同じぐらいほぼ出ずっぱりで、撮影はさぞ大変だったかと思います。
    何歳という設定だったかはわかりませんが、ひとりで長距離を移動するのはちょっと無理があり(だからドラマになるわけですが)、トラックから降りてとぼとぼ歩いていくところなど、レース場面よりハラハラしてしまいました。

  5. 高橋 より:

    今日、久し振りに改めて観ました。バイクやレースの雰囲気も、役者さんも懐かしく、当時の事を思い出しました。因みに渡辺さんの名前がエンドロールで Yuki Watanabe となっていましたね。原田監督も今では凄い映画人になられて・・・

    この映画は渡辺さんにとっても原田監督にとっても極々初期の作品(2作目?)ですよね。渡辺さんが亡くなられた事、本当に残念でなりません。ご冥福をお祈りいたします。 合掌

  6. 居ながらシネマ より:

    高橋さん、コメントありがとうございます。
    Kei YUKI WATANABE 見ました。これはこれで格好いいですね。
    今回本当に残念ですが、でも最後のガッツポーズのように、映画の中でこれからも永遠に輝いていてくれると思います。
    監督は2作目ですが、渡辺さんは『オン・ザ・ロード』の次が『だいじょうぶマイ・フレンド』で、こちらもVHSのみだったと思います。
    こういった昔の作品はなかなか見る機会に恵まれませんが、今は配信があるので、簡単にアクセスできる方法でみなさんが鑑賞できるようになると良いですね。

  7. 蘇るヒーロー より:

    公開当時は高校生で、田舎住みで映画館が無く、25キロ離れた街までバスで見に行きました。マニアックなレース映画のため一緒に見に行ってくれる友人はいませんでしたねぇ…
    事前に小説も読み、大変感動して2回見ましたが…映画は3本立て。
    残り2本も見ないともう一度ウインディーは見れない…計4本もの映画を見て頭痛で苦しむ羽目に。
    何が悲しかったって、こんなに感動した映画なのに、周りにこの感動を共有出来る人が1人もいなかった事…
    まぁ、感動を共有するには、前知識としてまず小説を読んでからじゃ無いといけないので、さらにハードルは高いんですけどね…

  8. 居ながらシネマ より:

    蘇るヒーローさん、コメントありがとうございます。
    おー、当時リアルタイムでご覧になったのですか。見たい映画のために離れた町へ出かけ映画館で半日過ごすのって、若い頃の特権かもしれませんね。

    > 何が悲しかったって、こんなに感動した映画なのに、周りにこの感動を共有出来る人が1人もいなかった事…
    > まぁ、感動を共有するには、前知識としてまず小説を読んでからじゃ無いといけないので、さらにハードルは高いんですけどね…

    そのあたりのん十年越しの熱い思いや記憶を、コメントに書いてくださってありがとうございます。
    自分は原作読んだわけではありませんでしたが、当時たぶん公開1,2年後の名画座で見てけっこう盛り上がりました。
    原作を知っていれば、さらにまた格別なのでしょうね。

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