作品メモ
ひとつ前のエントリー『恋するガリア』同様、監督・脚本ジョルジュ・ロートネルで、ヒロインがミレーユ・ダルクの作品。
こちらはメロというよりは、ぐっとシリアスなサスペンスとなっています。
フランス語はとんとわかりませんが、原題は「氷の胸」で良いのでしょうか。
seinは複数形のようですから両のバストを指しているのかもしれませんが、ウェブ辞書をひもとくとseinは男性名詞になっています。フランス語ワケわかりません。
それはともかく、原題はおそらくヒロインを表現しているのかと思われますが、邦題はアラン・ドロンと共演していることもあってか、かなり商魂たくましいものに(汗)。
ドロンは当時とっくに離婚していますから、ふつうに「恋人関係」じゃないの?と思ったりもしますが、なぜかこのふたり、「長らく愛人関係にあり」とか書かれちゃいますね。
いつも憂いを秘めた美女、実は夫を殺してしまったものの精神鑑定で無罪となった過去を持つペギーにミレーユ・ダルク。
彼女を見守るリッチな弁護士マルク・リルソンにアラン・ドロン。
ペギーに一目惚れした放送作家フランソワにクロード・ブラッスール。開巻しばらくはドロンの代わりに延々出続けるので、ビデオを間違ったのではないかと不安になります。
原作リチャード・マシスン、撮影モーリス・フェルー、音楽フィリップ・サルド。
この映画は内容が重苦しい上にミレーユ・ダルクも無表情でいることが多く、全体にどこか物足りなさを感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、さすがフィリップ・サルドの音楽には外れなし。
当サイトのこれまでのエントリーで言えば『すぎ去りし日の……』、『離愁』、『夕なぎ』、『帰らざる夜明け』、『夏に抱かれて』。
こうしてタイトル並べるだけで、哀愁ということばがぴったりのサルド節?がどこからか聞こえてきて、人気のない海岸をコートの襟を立ててトボトボと歩きたくなるのでした。
ロケ地
IMDbでは、
Villeneuve-Loubet, Alpes-Maritimes, France
Col de Turini, Alpes-Maritimes, France
Antibes, Alpes-Maritimes, France
Nice, Alpes-Maritimes, France
例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
この映画についてはやはり最初と最後が気になりますので、そのあたりを重点的にチェックしました。
OP海岸
ヒロインがひとり歩く冬ざれの海辺。
IMDbのリストのおそらくこちら↓
Antibes, Alpes-Maritimes, France
設定はニースのようですが、撮影はぐっとカンヌ寄りのアンティーブでした。
具体的にはこのあたり↓でしょうか。
※16/4/5追記
コメント欄でmilouさんから情報寄せていただきました。
階段を上がったのは、上記SVより少し進んだ現La Bretagne Beach あたりではないかとのことです。
無断乗車
その後バイクでやってきて、ペギーのクルマにちゃっかり乗り込んでしまったのは、やはりアンティーブのこちらの交差点。
道ばたで寝そべって居たのは、通りの出口のこのあたり。
※16/3/5追記
コメント欄でmilouさんから情報寄せていただきました。
ペギーが出てきた書店は、Librairie Du Casino。
クルマは海岸の方へ向かいますが、実際には一方通行逆走。
電話番号の場所
※16/4/5追記
ということで強引にゲットした電話番号を頼りにやってきたところ。
一線越えてストーカーのような気もしますが、それはさておき、ノーヘルのバイクでやってきたのはこの交差点のあたり(カメラ南向き)。
カンヌの北、ル・カネ(Le Cannet)という都市。
すぐ近くに彼女が住んでいる(という設定の)高級物件があるわけですが、プライベートな物件でしょうから詮索はここまでということで。
断られた部屋
※16/3/5追加
コメント欄でmilouさんから情報寄せていただきました。
ImdbのリストのVilleneuve-Loubet、エンドクレジットのImmeubles les commores。
クルマを停めたのはこのあたり。
峠の道
台詞で「彼らはチュリニ峠に向かう」とあります。
Col de TuriniW, Alpes-Maritimes, France
ホテルへ向かう途中、«COL DE TURINI 9»の標識があるところを左折しますが、標識と背景の山並みから場所がわかりました。
ホテル
二人が泊まろうとしたホテルはお城のような外観ですが、こちら↓でした。
- http://www.panoramio.com/photo/94551783
- http://freerider06.over-blog.com/article-les-bisons-de-la-suisse-grassoise-53239359.html
場所は上記左折の位置からほんの1,2kmですが、プライベートな物件のように思えますので、マップでは大ざっぱに示すだけにします(Panoramioの位置はだいぶずれています)。
展望台
クライマックスの展望台。
かなり苦労しましたが、地形等からようやく判明。
峠のホテルから東へ4,50kmワープ。
Peïra-CavaWというアルプス=コートダジュールにある山上の村でした。
その西端に今でも映画そのままに残っているようです。
マップではこちら↓
これだと正解かどうかわかりませんが、奇特な方がパノラマ画像をアップしてくれたため、その場に立ってみることができました↓ (モバイルではご覧になれないかもしれません)
私高いところが苦手なので、このパノラマ画像だけでもうダメです……
これを斜め後ろから見たのがこちら↓の画像。拡大してご覧ください。
上下では中央、左右では左1/4ぐらいのところにあるのが、映画に出てきた展望台。
左1/3ぐらいのところにある、少し高い部分が、おそらくフランソワが立っていたところと推定されます
(画像のほぼ中央にあるさらに高い部分はもう一つの展望台ですが、こちらは映画には登場していません → 参考ページ)。
フランソワ目線では、こういった↓感じ
そこに置かれた臼のような展望図はこちら↓
展望図(と日本語で言うのか知りませんが……)フランス語ではtable d’orientationと言うようですね。
1912とありますので、きっとその年に設置されたのでしょう。
こういった↓昔のポストカードにも登場しています。
- http://www.delcampe.net/page/item/id,65412734,var,PEIRA-CAVA-Alt1500m-La-table-dOrientation-Station-dete-ideale-et-sports-dhiver-EdBernard-Tabacs-Peira-Cava,language,F.html
- http://www.ebay.es/itm/CR-NEW-CPA-06-PEIRA-CAVA-LA-TABLE-DORIENTATION-1936-Collection-E-/301571779953
手すりないし、怖すぎ。
資料
ロケ地マップ
南仏が舞台となる映画のロケ地マップを用意してみました。
まだ内容はこれだけですが、やはり作品別より地域別の方がお役に立ちそうなので、これまでのエントリーからもピックアップしてこちらに追加していこうと思います。
更新履歴
- 2016/04/05 「OP海岸」「無断乗車」追記 「電話番号の場所」「断られた部屋」項目追加
- 2016/03/31 新規アップ
コメント
時間の余裕ができたのでロケ地チェックを再開しようと思うが、その前に…
> 原題は「氷の胸」で良いのでしょうか
もちろん映画は公開時に見ているが内容も覚えていないしタイトルの les seins de glace に裏の意味があるかは分からないが、文字ではなく音で聞いた場合、フランス人なら絶対に les Saints de glace だと思う。フランス Wiki の映画紹介でもトップに Ne doit pas être confondu avec Saints de glace. とまったく同じ発音のSaints と混同しないようにと注意書きがあるほどで明らかに意識的に100% 同じ発音のsein を使ったのだろう。
聖性じゃないがピンク映画などで時に感心するほどうまい言い換えがあるが…
Les Saints de glace (Ice Saints)とは5月の11~13 の3日間のことで、しばしば遅霜があり、そのあと本格的に暑くなるとされ中世から作物を植え始める基準として祝う日。天気も安定し結婚シーズンだそうです。日本の“暑さ寒さも彼岸まで”のような感じ?
ちなみに聖人暦といって365日毎日聖人の名前が与えられ(実は365人以上なので同じ日に複数あり国や地域によって違う) 生まれた子供の洗礼名に採用されることが多い。5月11~13日は St.Mamert, St.Pancrace, St.Servais 今日4月1日はSt.Hugues (エイプリル・フールだけど本当です)。
milouさん、コメントありがとうございます。
なるほど、本来はLes Saints de glaceという言葉があって、それと発音上はまったく同じであり、ひっかけているわけですね。
これでスッキリしました。「愛人関係」のかわりにうまい邦題考えてみたいですね 🙂
公開時にご覧になっているとのことですが、私は70年代後半に名画座で見たのが最初だったでしょうか。内容覚えていなかったのは同じです……
サイトの方ですが、マップについて作品別より地域別にまとめた方が役立ちそうですので、整理しつつ過去の記事もマップを差替えたりしていくつもりです。
またそのついでに過去の記事で不明だったところを再チェックしてみようかと思っていまして。
なので「最近の更新」リストに昔のエントリーが次々出てくるかもしれませんが、おそらくそういった更新内容が多くなるかと思います。
以前ほど新しいエントリーは増えないかもしれませんが、昔のエントリーへのツッコミや新発見など、ぜひぜひまたご協力ください。
映画のエンドクレジットに撮影場所が
LA VILLE DE NICE
a MARINA BAIE DES ANGES
VILLENEUVE LOUBET
AEROPORT DE NICE COTE D’AZUR
IMMEUBLES LES COMMORES
PLAISANCE-ANTIBES
et a HOTEL NEGRESCO
と列挙されている。
トップシーンの海岸がニースでないことはすぐ分かる。なぜならニースは砂浜ではなく石浜だから。しかしニースでも撮影され Hotel Negresco まであるが弁護士の家はかなり立派なので室内場面のどこかで使っているのだろう。
記載された海岸のSVは、ほぼ間違いないだろうが
☆海岸にLA BRETAGNE、Pourquoi Pas、Juan-les-Pins などの店の看板が見えるが、すべてビーチの名前で現在はプライベート・ビーチになっているようだ。ただ Bretagne 1つ手前のL’ALPE a HUEZ は実際の地名だがAntibes から車で4時間半も離れた山中なので海岸の店名としては不思議…
階段を上がるとき左の壁にRestaurant という文字が見えるが、これは少し前に見えた La Grande Bleue という店のもの。ただ映画ではBretagne から東にかなり歩くようだが道路の曲がり具合から見れば記事のSVより少し進んだ現 La Bretagne Beach あたりではないかと思われ、しかも La Grande Bleue の先に店はないようなので現 Bretagne Beach が Grande Bleue あるいは場面とは矛盾するが逆方向で Bretagne の西隣に Grande Bleue があったのかもしれない。
ちなみにアンチーブにも行ったことはあるが数時間歩いただけで特に記憶には残っていない。
☆もちろん交差点は正解だが Le Crystal やPAM PAM という店が50年経った今も存在するのは驚き。バイクを降りた場所は Bd.Edonrd Baudoin を海岸近くまで行った現 Maison HAVACOA の左隣の店が入口のウィンドウのカーブやHAVACOA との間の白い柱(?)も同じに見えるのだが車が走りだすとき残されたバイクの場所は少なくとも端からずっと手前で丸窓から5,6軒手前のようなので現 Vis Romana あたりかもしれない。駐めた車の後ろには左折禁止の標識が見え(多分またしても一方通行逆走) ペギーが出てくる店はゆるい角度の角店で現(多分当時も) Librairie Du Casino という本屋なので後者のほうが確率が高い。あるいは『勝手にしやがれ』のようにバイクの場所が駐めたときと走り出したときと変わっている可能性も否定できない。
☆ペギーを連れて宿泊を断られるレシデンスは Imdb にあるVilleneuve-Loubet でクレジットのリストにあるImmeubles les commores 。駐めた車のバックに見えるレストラン La Flibuste (Martin’s) は今も健在。ちなみにこのあたりも“天使の入り江”と呼ぶようでフロント(?)のガラスにも Marina baie des Anges と書かれている。
milouさん、エンドクレジットに記載ありましたか…… orz
詳細ありがとうございました。
本日は時間がとれませんが、明日ぐらいまでには本文へ反映させていただきます。