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『蜜の味』 A Taste of Honey (1961)

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You need someone to love you
while you look for someone to love.

作品メモ

『長距離ランナーの孤独』(62 製作・監督)『土曜の夜と日曜の朝』(60 製作)とトニー・リチャードソンによるアラン・シリトーものをチェックしてきましたが、間にはさまるのがこの『蜜の味』(61 製作・監督)。
シーラ・ディレイニーの同題戯曲の映画化で、原作者とリチャードソン監督が脚色。

1960年のブロードウェイ版で作られた曲に歌詞が付けられ、様々なアーティストがカバーしています。
「蜜の味」といったら、とりあえずは映画や演劇より「あていすとおぶはに~~♪」のこちらかも。

映画版では実際の町中へカメラが出て行き、60年代初頭の大都市の空気感とその底で生きる人々の姿を、印象的なモノクロ映像におさめています。
描かれるのは、十代の妊娠や人種、同性愛、親子の関係など、今日にも通じるようなディープな題材。たっぷりKitchen sink realismWな映画となっています。

ヒロインの女子高生ジョー(ジョセフィン)にリタ・トゥシンハム。これがデビュー作。居場所がない感が半端ない孤独なキャラを、独特の目力で好演。カンヌ映画祭で最優秀女優賞受賞。
その母親で、夜な夜な出かけては酒場で男たちに囲まれて歌を歌い、ご機嫌となるヘレンにドラ・ブライアン。
この母娘のビシバシくるやりとりが見所のひとつになっています。

ヘレンの新しいお相手ピーターにロバート・スティーブンス。
ジョーがつかの間愛し合う黒人の船員ジミーにポール・ダンクア。
後半同居するゲイのジェフ(ジェフリー)にマレー・メルヴィン。難しい役柄を巧みに演じて、こちらもカンヌ映画祭で最優秀男優賞受賞。

撮影ウォルター・ラサリー、音楽ジョン・アディソン。

こちら↓は50周年記念(2011年)での、ジョー、(ひとり置いて)撮影監督、ジェフ。


こちら↓はTrailerとありますが、冒頭体育の授業のあとからタイトル直前までをまるっと。

※20/9/14追記
milouさんから、当時出ていた英和対訳のシナリオ本(南雲堂 1963年4月20日初版発行)の表紙画像を提供していただきました。

テーマ曲

トラディショナルな童謡が、タイトルバックの他、劇中やラストで子供たちによって歌われています。
知りませんでしたが、もともとこの地元の歌のようですね。

“The Big Ship Sails on the Ally Ally Oh”

ロケ地

IMDbでは、

Belle Vue, Manchester, Greater Manchester, England, UK
Barton Swing Bridge, Salford, Greater Manchester, England, UK
Blackpool, Lancashire, England, UK
Manchester Town Hall, Albert Square, Manchester, Greater Manchester, England, UK
St Mary’s Church, Stockport, Greater Manchester, England, UK (church)
St. Ann’s Square, Manchester, Greater Manchester, England, UK
Deansgate, Manchester, Greater Manchester, England, UK
Manchester, Greater Manchester, England, UK
Bradford Park, Bradford, Manchester, Greater Manchester, England, UK (girls playing “netball” at beginning of film)
Jean Cook’s Gresham Girls School – Johnson Street, Bradford, Manchester, Greater Manchester, England, UK (Jo’s school)
23 Larkhill Road, Stockport, Greater Manchester, England, UK (Jo’s first apartment)
Harding Street and Brindle Heath Road, Salford, Greater Manchester, England, UK (Jo’s second apartment)
Castleton, Derbyshire, England, UK (where Jo and Geoffrey go to the countryside)
Ashton New Road and Parker Street, Bradford, Manchester, Greater Manchester, England, UK (Jo works at a Timpson’s shoe store)
Manchester Art Gallery, Manchester, Greater Manchester, England, UK (where Jo and Geoffrey meet again at the parade)

日本語版WikipediaWを見たら「ロンドンの女子高生ジョー」とかありますが、舞台はマンチェスター。
ついでにWikipediaでは、ジェフリーが靴屋の店員になっちゃってます(靴屋の店員はジョーですがな……)

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

学校

OPの体育の時間。
IMDbのリストのこれらかと思いますが、確認できませんでした。

  • Bradford Park, Bradford, Manchester, Greater Manchester, England, UK (girls playing “netball” at beginning of film)
  • Jean Cook’s Gresham Girls School – Johnson Street, Bradford, Manchester, Greater Manchester, England, UK (Jo’s school)

※20/9/26追記
コメント欄(2020年9月16日 20:24)で、milouさんから昔のBradford Parkの画像が掲載されているページの情報を寄せていただきました。

https://modernmooch.com/2020/04/17/a-taste-of-honey/
https://modernmooch.com/2017/02/11/barmouth-street-bradford-manchester/

マップではこちら↓になるようです。

昔の空撮画像(1927年)ではこちら↓

右上の四角く空いた区画ですが、だいぶぼやけているので映画との照合は難しいでしょうか。

最初の住まい

0:02
家賃を滞納して(昼だけど)夜逃げしたところ。

23 Larkhill Road, Stockport, Greater Manchester, England, UK (Jo’s first apartment)

坂道

0:03
その後、スタコラ降りていったのは、住まいの向かいにあるこちらの坂道。
今では緑が生い茂り、眼下の景色が見えません。

タイトルバック

バスから見る景色。

a taste of honey
広場と銅像

Manchester Town Hall, Albert Square, Manchester, Greater Manchester, England, UK

こちら↓のウィリアム・グラッドストンWの像を右手に見ながら、マンチェスター市庁舎前のアルバート広場を半周します。

※20/9/18追記
milouさんから市庁舎の画像を提供していただきました。
映画とは反対側になる東側三角の頂点 Cooper Street の方で、1999年撮影とのことです。
現在のSVとは少し様子が異なるでしょうか。

milouさんはこの画像を含むマンチェスターの旅行記を4travelにアップされていますので、ぜひごらんください。

右手を挙げた兵士の像

ボーア戦争のメモリアルで、掲げているのは帽子。

背景の建物は、同じような意匠で少しモダンに建て替えられているようです。

2人の兵士の像

IMDbのリストのこちら↓

St. Ann’s Square, Manchester, Greater Manchester, England, UK

これもボーア戦争のメモリアル。

 

※20/9/18追記
こちらもmilouさんから画像を提供していただきました。

座像

こちら↓にある、ヴィクトリア女王の像。

SVでは女王の顔にボカシ入れてますね(汗)

新しい住まい

0:06

Harding Street and Brindle Heath Road, Salford, Greater Manchester, England, UK (Jo’s second apartment)

とのことで、バスを降りたのはマップではこちら↓

Brindle Heath Roadがバス通り。
0:32や0:52ではバス通りからまっすぐ延びている道の彼方に鉄道のガードが見えますが、この道がharding Street。
今ではバス通りから1ブロック分が少し狭くなり木々の中を通る小径となっています。

アパートのあったあたりは、こぎれいな宅地として再開発された模様。
映画の面影はまったくなく、痕跡も見つけられませんでした。

バス通りから見上げると、こういった↓感じ。



※20/9/18追記
こちらもmilouさんから画像を提供していただきました。
リバプールから行く途中の Salford の標識で、撮影は1999年とのことです。

左側の標識は、Salford, Trafford Park, A5063 と読めます。
マップではこのあたり↓ですね。

この先のジャンクションで、左側のレーンの左側を進むとSalfordへ左折していく感じでA5063を北向きに進むことになり、その先で一度左折した後道なりに行くと、引越し先のあたりにたどりつけますね。
左側のレーンの右側は右折するように南側に出てTrafford Rdを南下すると、「別れの旋回橋」としたTrafford Bridgeに出ます。
ちょうどバッチリの道路標識、ありがとうございました♪

milouさんはこの画像を含むマンチェスターの旅行記を4travelにアップされていますので、ぜひご覧ください。

下校

0:17
階段でこけて、足を引きずりながら歩くコース。

学校前

不明。

運河沿いの道

背景に煙突が建つビル。
後の方で出てくる「どぶ川」の建物を反対側から捉えているように見えますが、よ~く見ると少し違ってもいるような……
要確認かも。

旋回水路橋

0:17

バートン旋回水路橋(Barton Swing Aqueduct)W

世にも珍しい運河の立体交差&旋回橋ですね。
映画でもジョーの背景で回転していますが、近くで見るとこういった感じ↓ 

なんだかサンダーバードのテーマ曲が似合いそう 😉

映画では左側少し高い位置に歩行者用の通路があり、ジョーが歩いてきますが、今はなくなっています。
こちら↓は、その通路がまだある頃の画像。

こちら↓はさらに昔。映画とほぼ同じように手前に通路のでっぱりがありますね。

西側に並行して架かる道路用の橋も旋回しますが、これは映画の中程、ジミーの乗った船を見送る場面で登場します。

行き止まり

次のショットで、行き止まりのようになっていて、対岸の奥にクレーンが並んだ船着き場が見えます。
これは前のショットから旋回橋を背にそのまま進んでいったところ。

こちら↓の画像の左下、凹んだようになっている部分の手前のところ。

1929年の画像で、こちら側(南側、左岸)の施設群はまだありませんが、対岸の船着き場とクレーンは確認できます。

ジミーに声を掛けられたところ。
おそらくこのあたり↓

ブラックプール

Blackpool, Lancashire, England, UK

ブラックプールタワーW

桟橋は↓

Central PierW

ガスタンク

0:40
夜ジミーと過ごすところ。
後半に出てくる「教会」の背景に見えていたものかと思いましたが、違うようです。

後述「どぶ川」の近くでこちら↓を見つけましたが、

これだとしたら、ここ↓

西側にあった背が高い方は撤去済み。

別れの旋回橋

0:43
夜をともにしたジミーとさよならしたところ。
橋を順にチェックしていきましたが、おそらくこちら↓

Trafford Road Bridge

2人がいたのは北側で、この↓空撮では右側。

その後、奥(この↑画像では手前)にあるドックの閉鎖に伴い、回転は不要となり固定。
隣にも橋を架けて車線を増やし、今では普通の橋となっています。

この場面、係員が「急げ」と催促しますが、橋が回っている間は向こう側に行けないのですから、急いで乗ったところであまり意味がないじゃん、とか一瞬ツッコミたくなったりして。
とはいえ、柵の上から手を振るジョーの姿はもの哀しいことこの上なく、光の中に消えていくジミーといい、別れの演出としてとても胸に迫ってきますね。

船の見送り

その後ジミーが乗った船が運河を進んでいくのを見送るショットは、上述の旋回水路橋の南側あたりからとなりの旋回道路橋を見ています。どちらの橋ももちろん開いた状態。

こちらの場所は1:28でジェフリーと会話する場面でも登場。

背景に見える塔はこちら↓の教会のもの。

All Saints Roman Catholic, Barton on Irwell

靴店

Ashton New Road and Parker Street, Bradford, Manchester, Greater Manchester, England, UK (Jo works at a Timpson’s shoe store)

これは確認できませんでした。

借りた部屋

0:54
週30シリング。
高校中退の店員さんのお給料で払えるものなのか、不明。

パレード

0:55

柱が並んだ大きな建物は、

Manchester Art Gallery(マンチェスター市立美術館)W, Manchester, Greater Manchester, England, UK (where Jo and Geoffrey meet again at the parade)

靴からジェフリーを見上げていくショットはとても良かったですね 🙂

その後ジョーの部屋に来て、ジェフリーが同性愛者であることがわかりますが、この時代のイギリスではまだ違法のはず。
この場面、VHSの字幕ではジョーのセリフが「お願い ホモって興味があるの」となっていますが、実際には「あなたみたいな人」と言ってるので、ちょっと意訳しすぎのような……
(どちらにせよジェフにはキツいですが)

橋の下

1:05
ジェフリーが探しに来たところ。
逆Uの字のアーチとなっていて、レンガ造りの橋脚に見えます。

手を取って降りていくショットでは下界がかなりはっきり写るため、場所が判明しました。

2人を追ってカメラがティルトダウンするときに、右上に見えるアーチは

バスに乗るために駆け下りてきたのはこのあたり↓

こちら↓は1931年の空撮画像ですが、右側の鉄道高架の上端、高くなっているあたりが2人がいたところ、

現在もある道路が通過するアーチの右側に、少し幅の狭いアーチが2,3見えます。こちらではないでしょうか。
そのままアーチをくぐって左側に出て、「田舎へ行こう」と斜面を駆け下りていくように見えます。

田舎

Castleton, Derbyshire, England, UK (where Jo and Geoffrey go to the countryside)

腰を下ろした眺めの良い場所は、地形的にはこのあたり↓

キスする2人の脇を指笛ならして駆け抜けた子供も、もう還暦過ぎているはず。

鍾乳洞

1:08

おそらくすぐ近くにマップされているこちら↓と思われます。

Blue John CavernW

どぶ川

1:12



臭うしfilthyと言われてしまった運河、VHSの字幕では「どぶ川」と訳されていますが、自分も60年代に工場が並ぶ地域にいたので、なんだか懐かしい景色であったりします。

それはさておき、背景の煙突が立っているビルは、現存するこちら↓にそっくりです

Victoria MillW

geographの説明によると、もともとは1960年代まで操業していたVictoria Millという織物工場。1990年代にリノベートされ、現在アパート、成人向け学習センター、NHSのオフィスが置かれているとのこと。

こちらで正解だとすると、マップでは↓

運河はRochdale Canal。

教会

1:16
産婦人科で人形をもらったジェフリーがジョーと待ち合わせたところ。

St Mary’s ChurchW, Stockport, Greater Manchester, England, UK (church)

何かが書かれた石版が敷き詰められていますが、”IN MEMORY OF”とか書かれているので、もしや墓碑銘?

腰を下ろしたり人形をたたきつけたりした台?はこちらでしょうか?

  • 53.411497,-2.155239

柩かもしれないですね……

背景に(おそらく発電所の)冷却塔が見えますが、撤去済み。
あったのはこのあたり↓

ガスタンクも冷却塔の右側に一部分が写っていますが、こちらは痕跡が残っています。

ラスト

ラスト、子供たちが「ガイガイ」言いながら燃やしているのはガイ・フォークスの人形。

Guy Fawkes NightW

こちらは以前milouさんに提供していただいた画像を集めたアルバムです(1999年11月5日の夜)

milouさん ガイ・フォークス・ナイト

※20/9/26追記
milouさんは4travelでも旅行記をアップされていますので、ぜひごらんください。

ロケ地マップ

資料

更新履歴

  • 2020/09/26 「学校」「ラスト」追記
  • 2020/09/18 「広場と銅像」「2人の兵士の像」「新しい住まい」にmilouさんの画像を追記
  • 2020/09/14 「作品メモ」にmilouさんの画像を追加
  • 2020/09/12 新規アップ

コメント

  1. milou より:

    振った以上(?)チェックしないわけにはいかないのだが…
    imdb に比較的細かい記載があり、ほかのロケ地サイトを見ても正解だと思われる。しかし残念ながら風景が現在とは激しく違うので確定的に言えない気もするが…
    例えば最初の学校が Bradford Park なのは間違いないようだが、現在は映画のように周囲に煙突のある建物は皆無で公園のどのあたりか想像も出来ない。
    しかし見つかった Bradford Park の古い写真を見ると、確かに周囲には似た建物があるし先生が笛を吹いた直後の高い煙突のある同じ建物が確認できた(その写真左には Bradford Park の表示がある)
    https://modernmooch.com/2020/04/17/a-taste-of-honey/

    ひとまずこれだけで、以下は余談…
    シェラ・デラニーは映画と同じサルフォード出身だが5つ年下のマイク・リーもサルフォードで育った。家は労働者階級の住む地域だったが父が医者なので比較的裕福ではあったが患者や友人たちは労働者階級の人ばかりで彼らの生活をよく知っていたと言っている。

    Manchester & Liverpool という有名な歌もあるが両市は1時間足らずで行ける隣町でトゥシンハムもジムもリバプール出身。ちなみにビートル・ジョンの奥さんシンシアはブラック・プール出身です。
    記載の 50周年記念の映像は 2011年だが、直後にトゥシンハムが他界してるんですね…)
    映画を見ていて、まったく関係のないローラ三部作を連想した。ヘレンもジョーも若い未婚の母になる…

    なお僕は 1999年にビートルズ・フェスティヴァルを見にリバプールに3泊したが、バスの日帰りでマンチェスターにも行った(途中にサルフォードを通る)。
    たまたま Lesbian & Gay Mardi Gras という祭りの期間中で町中に同性愛者が溢れていた。
    ジェフリーが同性愛者であることに特別な意味があるか分からないがマンチェスターは One of the world’s leading gay-friendly cities. で市庁舎前には宣言文があり上の祭りも City Council が Proud to Support していたほど

  2. 居ながらシネマ より:

    milouさん、コメントありがとうございます。
    遅くなりましたが、校庭についていただいた情報をもとに追記しました。

    『蜜の味』は当初まったく歯が立たないかと思いましたが、IMDbのリストが詳しかったことや、Britain From Above(https://britainfromabove.org.uk/)という昔の空撮画像をマッピングしたサイトを見つけたこともあり、けっこう楽しんでついつい追究してしまいました。
    (とはいえレンガ造りの階段とかは全くわかりませんでした……)

    紹介いただいたサイトの最後に原作者の画像がありましたが、これ映画で引越し先へ上っていく石段ですよね(背景の煙突が同じ)。
    わざわざこの場所を選んで撮影したのでしょうけど、撮影者がアーノルド・ニューマンというのが凄いです。私はリアルタイムでは知らないので感覚的にわかりませんが、彼女はもう時代の寵児的みたいな存在だったのでしょうか。

    多くの画像も提供していただいてありがとうございました。
    milouさんのことですからリヴァプールは当然行ってらっしゃるとして、マンチェスターもいらっしゃっているのですね。
    道路標識があまりにもぴったりだったので受けてしまいました。そのまままっすぐ行くとマンチェスター市内へ出るわけですね。

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