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『父 パードレ・パドローネ』 Padre Padrone (1977)

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皆より先に大人になるだけよ
立派な羊飼いになってね

作品メモ

少し間が空いてしまいましたが、予定通り4つ前のエントリー『カオス・シチリア物語』からのつながりで、タヴィアーニ兄弟の監督作品をいくつか続けようと思います。
まずは、『父 パードレ・パドローネ』。

幼い頃から羊飼いとして父親に厳しく鍛えられ、読み書きもできないまま育った若者が、苦学して自立していく様を描いています。
なにせこのオヤジ、冒頭いきなり授業中の小学校へ乗り込んできて、羊を見張らせるためだと息子を連れ出してしまうのですから、なかなか強烈なキャラ。冒頭に引用したのはその時の教師のセリフですが、幼い教え子が連れ去られようとしても、彼女とて貧しい家の事情は十分わかっているわけですから、そう言って少年を励ます他ありません。

観客は主人公の目を通して、家父長としての父親の存在をいやというほど意識することになります。
タイトル通り、パードレ(父)であり、パドローネ(主人)。
時には厳しい折檻も加えられ、主人公はいくつになっても畏怖の念をぬぐいきれません。
それでも軍隊への入隊をきっかけに少しずつ自立していく主人公は、やがて進学を志し、父親と真っ向からぶつかりあうことになる……そんなお話です。

原作はガヴィーノ・レッダの自伝『父パードレ・パドローネ―ある羊飼いの教育』(朝日選書 1995年。旧版は平凡社1982年)。

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映画の最初と最後に原作者本人が登場し、カメラに向かって自身や父親のことを語ります。
そのあたりを含めて、映画は原作にはない味付けが加えられていて、父親と息子の複雑な関係をうまく表現していました。
ちなみに翻訳本に収録された現地レポートにも原作者がたっぷり登場しています。これだけ原作者が身近に感じられる映画化や翻訳本は珍しいかも 🙂

おそらくほとんどのセリフがサルデーニャ地方の言葉で語られているはずですが、悲しいかな自分にはイタリア語との区別がつきません。入隊してからイタリア語が話せない主人公が全く周囲についていけず悶々とするあたり、なかなか実感として迫ってこなかったのが残念でした。

監督パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ、撮影マリオ・マシーニ、音楽エジスト・マッキ。

父親を演じたオメロ・アントヌッティは、これまでのエントリーで言えば『エル・スール』の父親。
『カオス・シチリア物語』では、エピローグで原作者ピランデッロを演じていました。
タヴィアーニ兄弟監督作品の常連。

なおDVDの商品解説で

ノーベル文学賞作家の原作を壮大なる映像叙情詩として映画化した「父 パードレ・パドローネ」。

とあるのは『カオス・シチリア物語』のこと。
そちらのエントリーでも書きましたが、DVDボックスセットで、説明文が入れ違いになっています。

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1977年第30回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞、1982年に初めて日本で公開された名作「カオス・シチリア物語」。
……
ノーベル文学賞作家の原作を壮大なる映像叙情詩として映画化した「父 パードレ・パドローネ」。

というわけで『父 パードレ・パドローネ』は、1977年第30回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞、1982年に初めて日本で公開された名作となっとります。

ロケ地

IMDbでは、たったこれだけ。

Sardinia, Italy

原作通り、サルデーニャ島で撮影。
日本語版WikipediaWに「主撮影地:サルデーニャ州サッサリ県カルジェーゲ」とあります。

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

羊飼い

0:12

バケツをかつぐ直前のロングショット。
カメラ位置はこの↓SVからもう少しバック。カメラ北々東向き。

  • Google Maps(SV)
  • 40.6724787,8.6262813 ……円錐形の小屋はこのあたり

0:15
待ちきれずに駆けていく少年の背景。

村の俯瞰

0:31

カルジェーゲ(Cargeghe)W

西側の高地からの眺め。

アコーディオン弾きが通り過ぎたところ

0:33

和解の場

羊飼いの仲間セバスティアーノが、トラブルのあった家と手打ちするところ。
一緒に羊の毛を刈って和解するというのがいかにもですが、その後の展開にびっくり……

撮影場所は、こちら↓の教会の前。

Chiesa di Santa Maria ‘e ContraW

この後セバスティアーノの妻から「父」がオリーブ畑を譲り受けるわけですが、和解の場面を含めて、どうも映画では流れが唐突な印象があります。
原作でも和解の場面はありますが、昔いたジョンマリーア叔父という親戚のエピソードとして語られていて、(現在の)オリーブ畑の話とは無関係。オリーブ畑は原作では「父」がこつこつ開拓していたことになっています。
2つの異なるエピソードを映画では現在進行形でひとつにまとめているわけですね。

教会

1:03
葬列が向かった教会。

Basilica di Saccargia(サッカリア教会)W

カルジェーネの東6,7kmほどのところ。

ピサ

1:16

軍隊に入ったものの、サルデーニャの方言しか話せず、読み書きもできないガヴィーノは苦労が絶えません。

こちら↓は以前milouさんからご提供いただいた画像ですが、ガヴィーノが腰掛けていたの左右のアングル的にはまさにここ。おそらく階数はひとつ下かと思います。
つるっと滑って落ちていきそうですが、さすがに直には座らず何かサポートする台の上に乗っている……と信じたいショット。

その後、「エディコラの下の扉までたどり着いたら、イタリア語の特訓をしてやるよ」と言われて歩いていくのがこちら↓

再会

1:28
父と再会する村の広場。
カルジェーネのこちら↓

ラスト近く、村を去る場面での移動カメラも、向きは逆ですが同じ場所。

映画では広場の中央にオベリスクのようなものがありましたが、SVでは見当たりません。セットだったのでしょうか?
『サン★ロレンツォの夜』のラストの村にも見られましたが、何でしょうこれ??

それはさておき、ラスト、原作者ガヴィーノが再び登場している最中に、この広場がインサートされます。
今度は村人たちが大勢たむろっていて、撮影中のひとコマのような雰囲気。
おそらく原作者同様リアルの世界を表現しているのでしょうけど、なんだかNG集でも始まるのかと思ってしまいました。

資料

更新履歴

  • 2021/10/03 新規アップ

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