目次
作品メモ
ひとつ前のエントリー『動くな、死ね、甦れ!』はソ連邦末期の鮮烈な1本でしたが、こちらは崩壊後の作品。
ロシア語原題«Котёнок»(カチョーナク)は子猫の意。
主役?の猫に付けられた名前は«Тиграша»(チグラーシャ)で、字幕では「トラ猫」となっていました。
тигр(チーグル=虎)から来てるのでしょうか?
手のひらに載ってしまうくらい小さい子猫が、もらわれてきた家から図らずも出てしまい、冒険を繰り広げながら戻ってくるという猫好き萌え萌え必至の感動作?です。
某作家の人が監督した某日本映画が子猫の扱いについて都市伝説的にあれこれ言われたことがありましたが、この映画でも主役の子猫は信じられないアクションシーンをスタント無しで(ホント?)あどけない表情のままこなしています。
犬ならともかく、猫が長旅を経て家まで戻ってくるというのはあまり聞いたことがないような。
昔ディズニーで『三匹荒野を行く』(リメイクは『奇跡の旅』)というのがありましたが、あれはワンちゃん2匹が一緒にいたから為しえた偉業かもしれません……
猫に萌え萌えとなる映画には違いありませんが、一方でロシアの市井の人々が優しい眼差しで描かれているのも魅力です。冬の厳しさの中にぽっと灯りがともるような人肌のぬくもりと言いましょうか。
DVDの解説(=劇場プログラム記載)によると、この映画は94年末から96年にかけて監督の卒業制作として作られたとのこと。
ロシアではまだ資本主義社会へ移行した後の混乱が続いていた状態ですね。
体制が変わって得をしたのはオリガルヒのような一部の抜け目ない人間だけで、ソ連末期から続く経済低迷に加えて、価格統制がなくなったことによるハイパーインフレにより一般庶民は相当苦しめられていたはず。おそらくこの映画の制作も、相当苦労したことでしょう。
この後98年には財政危機によりルーブルが暴落。子猫とつかの間ふれあった街の優しき人々に、再び経済の低迷とインフレの波が押し寄せることになります。
スタッフ&キャスト
監督イワン・ポポフ(Иван Попов)。劇場映画監督作としてはこのあと1本(«Радости и печали маленького лорда» 2003年)で、他に脚本やテレビの演出の仕事をしていたようですが、2013年9月3日に亡くなっています。1960年生まれですからまだお若いのにと思います。
脚本イワン・ポポフとアレクサンドル・マリヤモフ(Александр Марьямов)、撮影ウラジミール・ファステンコ、音楽マルク・ミンコフ(Марк Минков)。
可愛らしい姉弟は、Маша и Саша Поповы (マーシャ・ポポフとサーシャ・ポポフ)とクレジットされていますが、やはり監督のお子さんとのことです。
アルベール・ラモリス監督の『赤い風船』を思い出して、これだけでほのぼのしてしまいますが、そういえばラモリス監督も若くして亡くなっていますね。なんとも残念ですが、たっぷりの家族愛は映画の中で永遠に生き続けるのでしょうね……
猫に囲まれたフェージン(Федин)役アンドレイ・クズネツォフ(Андрей Кузнецов)は本職は猫の調教師。オープニングクレジットでも«Андрей Кузнецов и Его Кошки»「アンドレイ・クズネツォフと彼の猫たち」となっています。
かんじんのチグラーシャは、5匹が演じ分けていたとのこと。
2年もかけたら大きくなっちゃいますね 😉
ロケ地
IMDbには記載がありません。
撮影はモスクワ。
いつものように画面とにらめっこでチェックしていきました。
雪景色
0:15。
川縁の雪景色。
モスクワ川沿いのこのあたり。
落ちたところ
上記雪景色のすぐそば。
幌の上に落ちたとたんサイズが大きくなったなんて気づいても言ってはいけません。
体を張ったのは5匹のうちの身体能力に優れた1匹(のはず……)。
信号待ち
0:19頃。
信号で止まっていたトラックが動き出したところ。
一瞬大きく揺れてチグラーシャが右腕(?)で必死にしがみつくところがはっとさせます。
場所は背景の道路標示でわかりました。
北向きで、このまま進むと(後ほど出てくる)救世主ハリストス大聖堂の前。
立体交差出口
0:20。
行く手に見える大きな建物は『ひまわり』に出てきた外務省。
通行人になでられる街角
0:25。
雪道に降りて通行人になでられるところ。
背景に教会の塔が見えます。
渡っていった橋
上記の場所の北側に架かるこちらの橋Wを南向きで渡っていきます。
渡っていった先がさきほどなでられた場所。つながりに関してはニチェヴォーで。
この橋は『夕立ち(七月の雨)』の「だばだば」で写っていたところ。
『ボーン・スプレマシー』で殺し屋のSUVが川縁に入ってきたショットでも写っています。
フェージンの住まい
0:37。
チグラーシャを守ってくれた猫「ワーシャ」が飼われているところ。場所は調査中。
頼りになるこのボス猫、フェージンを演じた調教師アンドレイ・クズネツォフのアパートの1階に住んでいた猫を、アンドレイがスカウトしたとのことです。ペルシャ猫などはアンドレイの飼い猫。
ドーベルマンはやはりアンドレイが飼っていた犬だそうで、あれはあくまで演技。ご安心を。
スタンド
0:45。
コカコーラが大きくアピールしているお店。
毛皮を羽織ったお姉さんが気になります。
背景に見えるのは再建中の救世主ハリストス大聖堂W。
場所は西側のここのはずですが、SVではスタンドらしきものは見当たりません。
新しい部屋
フェージンにあてがわれようとした高層アパート。調査中。
今までの住まいは「ЛИНПОПО(リンポポ、アフリカ南部の川の名)」というお店になりかけましたが、いったいどんなお店だったのでしょうね……
演奏会場
1:14。
窓から見える入口周辺の様子は、『小さい逃亡者』でチェックしたばかりのモスクワ音楽院Wのように見えます。
演奏会場の画像はたとえばこちら↓
演奏していたのはこちら↓
ヴィヴァルディ「フルート協奏曲集第2番ト短調≪夜≫ RV.439」W
こちらはフルートを奏でるお父さんの背後に見えるパイプオルガン。
映画とはレイアウトが全然違いますが、モスクワ音楽院大ホール完成前に1900年のパリ万博で展示されたときの姿だそうです。
ロケ地マップ
資料
更新履歴
- 2015/11/03 「ロケ地マップ」追加
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