作品メモ
『ブルークリスマス』に続けて、岡本喜八監督作品をもう一本。
破天荒、あるいはハチャメチャといった表現がぴったりの異色ミュージカルコメディ。
組をのっとられた親分が、復讐のために万年筆型の爆弾を仕込んだものの、次々人手に渡ってしまい大慌てとなる顛末を描きます。
音楽がいわゆる洋物ミュージカル的なものだけではなく、能楽や宗教の太鼓などからも自由自在に採られているのが特徴的。
開巻いきなり囃子が鳴り「けいほうだいにひゃくごじょう~~」と刑法の文章が謡曲として謡われ、それに合わせて伊藤雄之助さんが牢屋の中で能楽を演じるという、度肝を抜く展開となります。
『肉弾』で岡本監督が好きになり、せっせと名画座へ通って見続けた中で最大の収穫がこの作品。
次にこんなウキウキ感を味わったのは、『鴛鴦歌合戦』のリバイバル上映の時になるかと思います。
Wikipediaによると、併映は勅使河原宏監督の『砂の女』だったそうですが、ホントだとしたらいったい東宝の編制はナニを考えておったのか。
いやそれより当時2本ともご覧になった方の感想をぜひ聞きたいところ。
3年ぶりに出所してきた親分、大名大作(おおなだいさく)に伊藤雄之助さん。
その子分田ノ上太郎に砂塚秀夫さん。
すっかり宗教にハマってしまっていた妻梅子に越路吹雪さん。
組をのっとり市議会議員に立候補しようとしているかたき役矢東弥三郎(やとうやさぶろう)に中谷一郎さん。
運転手椎野武三に沢村いき雄さん。
その妻に本間文子さん。
他に有島一郎さん、桜井浩子さん、二瓶正也さん、天本英世さん等々
映画からは信じられませんが、原作はコーネル・ウールリッチの「万年筆」(早川書房ポケットミステリー『ぎろちん』に収録)。
監督・脚本岡本喜八さん、音楽佐藤勝さん、撮影宇野晋作さん。
ロケ地
昔名画座で見ていて、「あそこかも?」と気づいた場面がありました。
当時はそれきりでしたが、今回、ん十年ぶりかで確認できてスッキリ。
街路
息せき切って駆けてきたものの、ヨロヨロしはじめたところ。
「木月2-6」の表示が見えます。
川崎市中原区、駅で言えば東急東横線の元住吉駅近く。
このあたりは個人的に多少なじみがありますが、変わりすぎていてまったくビビッときません。
あくまで推定でこのあたり?
- Google Maps(SV)
- Wikimapia
- 地理院地図・電子国土Web(1961-69)
- 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス MKT636-C16-9(1963/06/26)
- 同・画像直リンク
映画館前
大名がベンチごと運び出されたところ。
「あそこかも?」とビビっときたのがここ。
映画館そのものは写りませんが、周囲の様子から。
向かいに交番がやや斜めにあり、バキュームカーが向かう先に「北沢~」というゴルフ練習場が見え、右カーブの内側に病院、カーブを曲がった先が高架ということで、映画館はこちら。
- Google Maps(SV) ……現在(建替後)の姿
- Google Maps(SV) ……同、建物側からの眺め
- Google Maps(45°) ……全体の俯瞰
- Google Maps(SV) この先を右へカーブ
- Bing Maps(概観図)
- Wikimapia
- 地理院地図 GSI Maps(1961-69)
- 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス MKT666X-C7A-12(1966/11/04)
- 同・画像直リンク
バキュームカーが曲がるのは、現在「ザ・スズナリ」があるカーブ。
カーブの内側に「福原外科」とありますが、現在の下北沢病院。
曲がった先に見える高架は京王井の頭線。
確認できてスッキリ♪
商店街
調査中。
ロケ地マップ
岡本喜八監督作
資料
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岡本喜八監督作
更新履歴
- 2022/06/16 各マップ情報更新
- 2014/11/30 新規アップ
コメント
よくロケ地まで調べられてご苦労様でした。おかげで、この不思議なカイ(怪・快!?)作が
より身近に感じました。
マキコ・ヨシマルさん、コメントありがとうございます。
これ本当に快・怪作ですよね。ロケ地ネタがなくてもとりあげたかった一本ですが、ネタもあってよかったです。下北沢は若い頃は時折出歩いていましたが、もう長いことご無沙汰で、映画館の脇の踏切が地下化でなくなってしまったことも気づいていませんでした。
アマプラでレンタルしました。
「松原とうちゃん、消ゆるかあちゃん♪」、子供の頃、この替え歌をよく歌っていた友だちがいまして、この映画が発祥だったのですね。「鴛鴦歌合戦」といい、これといい、楽しい映画を名画座で観られたとはヒジョーにうらやましー。
中谷一郎がこんなに面白いとは意外でしたし、彼をガードするのにゾロゾロ男たちが出てくるシーンはウェストサイド物語みたいでおかしいし、雄之助と越路吹雪がお経合戦をやってるうちにお互いのお経が入れ替わっているのがおかしいし、銀行で10円足らないのミュージカルもおかしくておかしくて、あと、イデ隊員とフジアキコ隊員も見れましたし、WBCロスも吹っ飛んでいく大満足の作品でした。
原作がウールリッチですかぁ、私はドヌーヴとベルモンド共演の「暗くなるまでこの恋を」が気に入ってるので、「暗闇へのワルツ」(アイリッシュ名義)が好きでした。
ほりやんさん、コメントありがとうございます。
よかったです、WBCロスが吹っ飛ぶぐらいお気に召していただいて。
久々にこのエントリー読み返してみましたが、下北沢の地名で、岡本監督作の常連(本作はフィルム出演)佐藤允さんを下北沢でお見かけしたのを急に思い出しました。
あとは天本英世さんもどこかでお見かけしましたが、背が高く眼光鋭い方でしたので、雑踏の中でもえらく目立っていました。
……そんなことより、『暗くなるまでこの恋を』いいですよね。
同じアイリッシュだかウールリッチだかの『黒衣の花嫁』は下書きまでは書いていますので、一緒に仕上げてアップしたくなりました。
自分はご多分にもれず『幻の女』あたりでハマったくちですが、かんじんのオチが映像表現しづらいので、これについては原作の勝ちのような気がします。
やっぱり東京は見かける人が違いますね。大阪では吉本芸人(チャーリー浜とか)をたまに見かけました。
私も「幻の女」からハマりましたが、映画のほうは観たことがなかったので、アマプラを探してみると、有るじゃあ~りませんか。
シオドマク監督と言えば「らせん階段」もアマプラにありますね。VHS から復活させたジャクリーン・ビセット主演の「らせん階段」を久しぶりに観たので、本家ドロシー・マクガイア版をすぐにでも観たいのですが、今はW雅子(和泉雅子&太田雅子)にハマっているので後まわしになりそうです。和泉の「非行少女」の演技も凄かったですが「私は泣かない」には泣かされました。太田の「太陽が大好き」も素晴らしい作品でした。それにしても浜田光夫はいい役者ですね。