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『危険な関係』 Les liaisons dangereuses 1960 (1959)

危険な関係 Blu-ray

復讐よ

作品メモ

ジャンヌ・モローものに戻って……
前回のエントリー『地獄の高速道路』(55)の後は、エントリー済みの『死刑台のエレベーター』(57)『恋人たち』(58)など映画史に残るような代表作が目白押しの50年代ですが、そのしめくくりがこの映画。

原作はコデルロス・ド・ラクロの危険な関係W
文庫だけでも、岩波、新潮、角川で出ています。 危険な関係〈上〉 (岩波文庫)

映像化作品も多数ですが、このロジェ・ヴァディム監督版が最初の映画化のようです。
舞台を現代に置き換え、タイトルも« Les Liaisons Dangereuses 1960 »と1960をつけてモダンな感じを演出。
フランスでの公開はIMDbに拠れば1959年9月とのことで、翌年の年号を付けていることになります。
日本の邦題は単に『危険な関係』ですが、1995年のリバイバル時には『危険な関係1960』だったとのこと。

外交官夫妻という人もうらやむハイソなカップルが、陰では人の心をもてあそびながら危険な恋愛ゲームをどっぷりと楽しんでいるという設定で、巻き込まれた善男善女にとっては災厄でしかない(でも本人たちは気づかない)お話が展開します。
完全上メセの二人の行為は健全なモラルの持ち主なら眉をひそめるたぐいなのかもしれませんが、困ったことにそういう背徳や退廃にこそ人はアヤしい引力を感じてしまったりするもの。
最後は天罰が下るかのような締めくくりですが、今回久々に見返してみて、二人がそのまま暴走し続けても面白かったのではと思っちゃったりしました。

手持ちのDVDは画質がわびしいですが、今年(2018年)に入ってデジタルリマスター盤が出たようでして、さらにジャンヌ・モロー追悼企画として恵比寿ガーデンシネマで上映もされたようです(知らなかった……)。

http://www.cetera.co.jp/gp/

キャッチコピーが

フランスの至宝が豪華共演 早すぎた奇跡の傑作

ジャズの名曲とシャネルが彩る
恋愛映画の金字塔

世界一の美男子ジェラール・フィリップと
大女優ジャンヌ・モロー
夢の共演作がスクリーンに蘇る

いつまであるかわかりませんが、YouTubeでの予告篇。

 
 
 

ジェラール・フィリップについて「図らずも本作が遺作となった」とありますが、公開日を基準にするなら遺作は『熱狂はエル・パオに達す』。
遺作がルイス・ブニュエルというのがとても渋いですね。
彼の出演作を振り返るとただの美男子俳優ではないとすぐにわかりますが、ところで「世界一の美男子」ってどこかで選手権でもあったのでしょうか 😉 ?

チェス盤を使ったオープニングクレジットは、クイーンのジャンヌ・モローが先に写され、続いてキングのジェラール・フィリップ。
その他の共演者の中では、アネット・ヴァディムが先頭。嫁さんを出演させてラブシーンをこってり撮るという監督お得意のスタイルで、これが映画初出演。
続いて、マドレーヌ・ランベール、ジャン・ヴァレリ、ニコラス・ヴォーゲル。

ジャン=ルイ・トランティニャンが堅物の数学者として登場しますが、監督とは数年前にあれこれあったはず。
映画を地で行くような危険なゲーム性を感じてしまいますが、監督にとっては済んだことなのか、あるいはそうしたスキャンダルを重ね合わせて楽しみたがる観客がいることがかえって創作の糧となるのか、ここらへんは監督みたいにモテたことがないので、わかりません 😉

他に目を惹くキャストとして、作家のボリス・ヴィアンがプレヴァン役で出演。
冒頭のパーティーで「ジュリエット冷たいな」と声をかけてきた男です。

監督ロジェ・ヴァディム、撮影マルセル・グリニョン。

音楽

チェス盤を使ったオープニングクレジットが実にクール。

Les Liaisons Dangereuses 1960 ここでのピアノはセロニアス・モンク。
こちらのアルバムに収録の”Crepuscule with Nellie”

「危険な関係」オリジナル・サウンドトラック でもこの映画なら真っ先に浮かぶのはアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ(他)による一連の曲でしょうか(作曲デューク・ジョーダン)。

「危険な関係のブルース」(上掲予告篇1分14秒から)は、本編ではジャンヌ・モローが夫の顔をなでながら「復讐よ」と言ったとたんに流れ始めます。
このときのジェラール・フィリップの表情は絶妙。
やっぱ世界一の美男子、ええわ~♪

ロケ地

IMDbではスタジオだけ記載。

Paris Studios Cinéma, Billancourt, Hauts-de-Seine, France

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

スキー場のホテル

0:19
「モンブラン・ホテル」とはっきり言っていてホテルの前も写りますが、こちらでしょうか?(未確認)

Hôtel Mont-Blanc
29 Rue Ambroise Martin, 74120 Megève

スキー場

おそらくムジェーヴ(Megève)Wでの撮影。
『シャレード』の冒頭のスキー場ですね。

0:25頃マリアンヌとのことを知らせる場面で、切妻屋根の右側が大きく流れている建物が写っています。
背の高い三角形の標示は、« HOTEL PYLONE I »でしょうか?
おそらくこちら↓

チャペル

0:29
マリアンヌと訪れたところ。

Chapelle du Maz
http://megeve.com/noesit/!/fiche/chapelle-du-maz-876294/

 
 

 

リゾート街角

0:35
ムジェーヴの町の中心の広場。

広場に面した教会は、

Église Saint-Jean-Baptiste de MegèveW

雪の公園

1:19

ジャン=ルイ・トランティニャンがいたベンチ。
さすがに手がかり少なく、調査中。

海岸近くの十字架

1:21

その前に「ノルマンディーに行く」というセリフがありましたので、探してみました。

海岸

ロングショットで二人でたわむれるところ。
これは『男と女』の海岸でしょうか。
直前でジャン・ルイ・トランティニャンがしおしお状態で登場しているので、結構おかしいです。

以下は『男と女』のエントリーで使わせていたいたmilouさんご提供による画像です。
撮影は1986年とのことです。

マリアンヌの住まい

1:23 1:41
字幕では「ドービル ロワ旅館」。
特徴的な外観ですが、場所不明。

資料

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更新履歴

  • 2018/05/24 新規アップ

コメント

  1. ほりやん より:

    久々に観ましたが、シネフィルWOWOWのリマスター版なので映像はもちろんきれいですが、えげつなさも倍増しているように感じました。

    (トランティニャンがいたベンチ)

    ジャンヌ・モローが彼と話し合った後、歩いて行く前方にパンテオンのドームらしきものが見えるので、ここはリュクサンブール公園だと決めつけて、公園内を目がしょぼしょぼするまで、とぼとぼ探し回りました。下の長いアドレスをクリックしたら、SVを回転してください。すると、あのベンチが現れます。その背後にはブランコも見えます。ベンチの形が映画のにそっくりですし、斜めに横切る道が前方にあるのも映画と同じです。残念なのは葉が茂っていてパンテオンが見えないことです。

    https://www.google.com/maps/@48.8463467,2.3353831,2a,75y,142.74h,97.48t,354.75r/data=!3m6!1e1!3m4!1sPsKCh9kAJaB9RBiVUYOqpw!2e0!7i13312!8i6656?entry=ttu

  2. 居ながらシネマ より:

    ほりやんさん、返信遅れてすみません。
    これは大正解ですね。
    このあたりSVのリンクを取得しても正しく再現できないようで、情報を共有するのに一苦労ですが……
    おそらくベンチはSVでベビーカーの母子がいるベンチかと。
    座標で示しますと↓
    https://goo.gl/maps/Vm2YfGZcYTKf7cZi7

    最初2人が様子をうかがっていたのはこのあたり↓(カメラ北東向き)
    https://goo.gl/maps/B8QTqPag7ddhXuDF9

    ジャンヌ・モローが去っていくのはベンチの北側の道で、確かにSVではパンテオンは見えませんが、北側にあるきのこの山のような建物は、ベンチに座った2人をカメラがぐるりと回るカットで写っています。
    https://goo.gl/maps/5yk9YdJgjL7cMwmP7

    というわけで、お見事大正解♪
    目をしょぼつかせて一人とぼとぼ、お疲れさまでした。行き倒れにならず何よりでした 🙂

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