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『男と女 人生最良の日々』 Les plus belles années d’une vie (2019)

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«Les plus belles années d’une vie
sont celles que l’on n’a pas encore vécues»
    Victor HUGO

作品メモ

このところシチリアで撮影された映画を続けていましたが、先日(22/6/17)ジャン=ルイ・トランティニャンの訃報が伝えられましたので、急遽こちらを割り込みアップ。

『男と女 人生最良の日々』は、タイトル通りクロード・ルルーシュ監督の代表作『男と女』(66)の系譜に連なる作品。
類似タイトルは数あれど(後述)、あの2人が登場するいわば本家シリーズとしては、無印『男と女』(66)と『男と女II』(86)に続く3本目で、これにて最終編となっています。

ジャン=ルイ・トランティニャンとしても、IMDbのフィルモグラフィではこの後声の出演が一本あるようですが、姿を見せての演技はこれが最後の出演作。
堂々の主役で俳優人生を締めくくったことになります。
さすがに衰えは隠せませんが、むしろそれを生かすかの如く、記憶や認知が定かではなくなりつつある老人をリアルに演じていて、印象的。
ルルーシュ監督も最後に粋で素敵な機会を設けたものだと思いました。

映画の宣伝文には、「『男と女』のオリジナルキャスト&スタッフが三度集結」とあります。
主演2人ジャン=ルイとアンヌは、もちろんジャン=ルイ・トランティニャンとアヌーク・エーメ。
66年にそれぞれの子役(アントワーヌとフランソワーズ)を演じた、アントワーヌ・シレとスアド・アミドゥが同じ役柄で再登場。53年後の姿を披露しています。

スタッフの方は監督ぐらいしか再登場組を確認できませんでした。
なんといっても、フランシス・レイが故人になってしまったのが残念至極……

作品自体は、愛すべき小品といったサイズ感で、シンプルなシナリオや即興的な演出、感覚的な映像といった監督の持ち味がちゃんと出ていると思います。

監督、メイキングで曰く、

準備は52年
撮影はたった10日
全力疾走で撮り上げた

監督の場合、こんな風に勢いで撮ってしまった方が良いのかもしれませんね。
なぜかモニカ・ベルッチまで登場しますが、正直この場面は意味不明。でもこれも勢いのなせるわざでしょうか?

実はこの映画、ん十年前に『男と女』に魅了された身としては見る前非常に不安でしたが、見終わってみれば肩の荷が下りたと言いますか、ほっとしたような思い。
主演2人の姿を見て、自分もまた「人生最良の日々」はまだまだこれからと思うことができたような。
『男と女』と若い頃に出会えて良かった、そして、ん十年という歳月を経て、『人生最良の日々』と出会えて良かったかも、としみじみ思っているところであります。

字幕版は執筆現在Amazon Prime Videoで会員無料配信されていますので、プライム会員の方はどうぞ。(なぜか吹替え版は有料)

https://www.amazon.co.jp/dp/B09MPZJLTZ/

こちら↓は予告編。

タイトル

フランス語原題は、ヴィクトル・ユーゴーの引用のようでして、映画冒頭にテロップが出ます。

« Les plus belles années d’une vie
sont celles que l’on n’a pas encore vécues »
       Victor HUGO

DVDでは字幕が出ませんが、ネット配信では「人生最良の日々をまだ生きてはいない」、日本語版Wikipediaでは「人生最良の日々とは、まだ生きていない日々だ」と訳されています。
『熱愛』(75) で繰り返し引用されていた “Today is the first day of the rest of my life.” みたいで、とてもポジティブでよろしい表現ですね。

原題は「人生最良の日々」のみですが、邦題ではその前に「男と女」を追加。
まあ「人生最良の日々」だけではワケわかりませんから、そこに有名タイトルの暖簾をぶら下げるぐらいはOKかと。
「カジノロワイヤル」に「007」をつけちゃうみたいなもんでしょうか?(違)

男と女な映画

アヌーク・エーメとジャン=ルイ・トランティニャンが登場する正史?はこの3本(年度逆順)。

  • 『男と女 人生最良の日々』 Les plus belles années d’une vie (2019) ……本作
  • 『男と女II』 Un homme et une femme, 20 ans déjà (1986)  ……20年後の物語
  • 『男と女』 Un homme et une femme, 20 ans déjà (1966)

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この他、なんちゃって邦題を含む派生商品は、以下の如く。

  • 『続・男と女』 Un autre homme, une autre chance (1977)
    主演はジェームズ・カーンとジュヌヴィエーヴ・ビジョルド。
    アメリカの西部開拓時代に、それぞれ連れ合いに先立たれた男と女が出会い恋におちるという『男と女』そのまんまの内容。
    ジェームズ・カーンもつい最近(22/7/6)亡くなってしまいました……

  • 『男と女の詩』 La Bonne année (1973)
    主演はリノ・ヴァンチュラとフランソワーズ・ファビアン。
    内容は『男と女』とは無関係……ですが、実は『男と女』の映像が登場したりしますので、あながち無関係とも言えず。

  • 『男と女 アナザー・ストーリー』 And Now… Ladies and Gentlemen… (2002)
    こちらはルルーシュ監督ですが、音楽がフランシス・レイではなくミシェル・ルグラン。
    主演はジェレミー・アイアンズとパトリシア・カース。ここまでくるとだいぶ『男と女』からは遠ざかります。

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ロケ地

IMDbでは、

Beaumont-en-Auge, Calvados, France
Hippodrome de la Touques, Calvados, France
Trouville, Calvados, France
Maison circulaire, Tourgéville, Calvados, France (retirement home)
Deauville, Calvados, France (seaside town where Anne and Jean-Louis felle in love 52 years before)
Hôtel Barrière-Le Normandy, 38 rue Jean Mermoz, Deauville, Calvados, France (hotel that once housed Anne and Jean-Louis’ love affair)
Suite 311, Hôtel Barrière-Le Normandy, 38 rue Jean Mermoz, Deauville, Calvados, France (hotel suite that once housed Anne and Jean-Louis’ love affair)
Beaune, Côte d’Or, France
Paris, France

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

2人が想い出の場所を辿るというストーリーですので、『男と女』のファンにとってはたやすいロケ地チェックとなっています。

ホーム

ジャン=ルイが入居中の施設。
« DOMAINE DE L’ORGUEIL(誇りの家) »という名前のようです。
IMDbのリストではこちら↓

Maison circulaire, Tourgéville, Calvados, France (retirement home)

まさに『男と女』のあの海岸の間近。
人生の「旅路の果て」にこんなところに入れたら良いかもと思いますが、お金はかかりそうですね 😇

この建物、今は違うようですが、どうやらルルーシュ監督所有の物件だったようです。

Claude Lelouch : Sa villa de Deauville à vendre (15 novembre 2014)
https://luxe.net/claude-lelouch-villa-deauville-vendre/

今もプライベートな物件と思われますので、マップでは略。
特徴的な形状をしていますので、ご興味がおありの方は頑張って探してみてください。

現在どういった状況なのか不明ですが、不動産のサイトでちらほら物件情報が出ています。
いっそ買い手となってアプローチしてみてはいかがでしょう?

こちら↓では750万ユーロ也で売りに出されています。

  • https://proprietes.lefigaro.fr/annonces/manoir-calvados-basse+normandie-france/40429127/

こちらは賃貸としての案内↓
週4,500~10,500ユーロ也。

  • https://www.sothebysrealty-france.com/fr/immobilier-luxe/ref-de2-009/vacances-maison-normande-tourgeville-8-pieces-5-chambres-14800/
  • https://www.deauville-sothebysrealty.com/en/our-properties/ref-de2-009/rental-norman-house-tourgeville-8-rooms-5-bedrooms-14800/

おひとついかが😇?

アンヌの店

IMDbのリストのこちらの町↓

Beaumont-en-Auge, Calvados, France

孫娘と話しているうちに、娘フランソワーズがやってきます。
映画で愛くるしかった彼女も、今では立派な大人の女性。獣医さんとして活躍しているようです。
さらにそこへジャン=ルイの息子アントワーヌ(・デュロック)が登場。

アントワーヌの願いに応じて施設へ赴くアンヌ。
アンヌは逆光できれいに撮られ、ジャン=ルイはピーカンで皺もくっきり浮き彫りになります。
ジャン=ルイはだいぶ女性関係が緩かったようで、それもまたかつての2人が続かなかった理由のひとつかと。
それを思えば会いに来てくれという息子の頼みもなんだか今さらで、2人の写し方にそんな差があっても、仕方ないかと思ったりもして。
とはいえこの場面、ジャン=ルイのおぼつかない記憶と言葉を、アンヌの微笑みが柔らかく包み込んでいき、二人の関係と半世紀という歳月を優しく穏やかに描いていて、印象に残ります。

動物クリニック

0:32
アントワーヌが迎えに来たところ。

門扉に« CLINIQUE VETERINAIRE»とありますので、娘の家兼動物診療所ということでしょうか。

この場面など、彼らの会話からフランソワーズやアントワーヌの過去が垣間見えますが、『男と女II』とつながるところがあり、なかなか面白いものがあります。

ホテル

0:54
『男と女』のあのホテル。

Hôtel Barrière-Le Normandy, 38 rue Jean Mermoz, Deauville, Calvados, France (hotel that once housed Anne and Jean-Louis’ love affair)

ご丁寧に部屋も書かれてあります。

Suite 311, Hôtel Barrière-Le Normandy, 38 rue Jean Mermoz, Deauville, Calvados, France (hotel suite that once housed Anne and Jean-Louis’ love affair)

セリフでは26号室。

ボードウォーク

1:01

「板張り道での運転は禁止ですよ」
「いつから?」
「50年前バカがマスタングで疾走を」

こちら↓はmilouさんご提供による画像で、『男と女』のエントリーで使わせていただいたものです。(いつもありがとうございます♪)
撮影は1986年とのことです。

milouさんは、これらの画像を含む旅行記を4travelに掲載していらっしゃいます。
ぜひご訪問ください。

4travel.jp > milouchatさんのトラベラーページ

雑貨店

1:15

店先にジャン=ルイが座っています。

ここで、「パリを200キロで走った」と回想する爆走シーンは、エントリー済みのこちら↓の短編映画。

『ランデヴー』 C’était un rendez-vous (1976)

実際にルルーシュ監督が走らせています。
コースその他詳細は同エントリーをご覧ください。

ロケ地マップ

クロード・ルルーシュ監督作品 ドーヴィルを中心に

資料

更新履歴

  • 2022/07/25 新規アップ

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