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『ひとりぼっちの青春』 They Shoot Horses, Don’t They? (1969)

ひとりぼっちの青春 [DVD]

彼らは廃馬を撃つ

作品メモ

前のエントリー『チャイナ・シンドローム』に続いて、ジェーン・フォンダ主演の社会派ドラマをもう1本。
1932年、大不況時のアメリカ。優勝賞金1500ドルを目当てに耐久ダンスマラソンに参加した人々の絶望的な様を描きます。

原作は1935年に書かれたホレス・マッコイの『彼らは廃馬を撃つ』(英題同じ)。
確か角川あたりで文庫で出ていました。映画のことは知らずに、タイトルに惹かれて読んだ記憶があります。
謎めいたこのタイトルは登場人物のセリフから。
それに合わせるためか、映画冒頭で馬の映像が登場します。
なんだか無理やりといいますか説明的といいますか、まるで『ティファニーで朝食を』の冒頭でタイトルに合わせるためにティファニーの前で食事する場面を入れてしまったようなちぐはぐさを感じてしまいました。
英語版Wikipediaによると、ホレス・マッコイは実際にサンタモニカ桟橋で用心棒として働いていたことがあり、その経験が原作の元ネタになっているとのこと。

このダンスマラソンWは1920年代から30年代に実際に流行していたもの。
映画で描かれたのは、2時間に10分だけの休憩で勝者が出るまで延々踊り続けるという過酷なサバイバルゲームです。
しかも司会も兼ねた主催者があの手この手で出場者に試練を与えて、観客をいやが上にも盛り上げようとするのです。
いわば現代のえげつないリアリティ番組の先駆けのような企画。
人権無視もはなはだしいと感じてしまいますが、そこは大不況のまっただ中、コンテストに参加している間は食べる物と寝るところが保証されるという、キビしい現実があります。

主演ロバートにマイケル・サザラン。これで英国アカデミー賞の「最も将来が期待される新人」にノミネート。つまり若手のホープだったわけで、個人的にも『さらば青春の日』『黄金の指』『リーインカーネーション』など70年代の出演作が印象に残っています。残念ながら今年4月に死去。70歳でした。
パートナーとなるヒロイン、グロリアにジェーン・フォンダ。
それまでのロジェ・ヴァディム監督との共稼ぎ映画でコケティッシュな魅力を振りまいていた彼女は、この作品あたりからシリアスな路線に転身。初めてアカデミー賞候補となっています。その後ベトナム反戦運動にも傾倒しやがて監督とは別れることになりますが、この映画に出ることをアドバイスしたのは監督自身なので、ちょっと皮肉めいたものも感じてしまいます。
くたびれた水兵にレッド・バトンズ。この時50歳、華麗なステップは見事でした。
売れない女優アリス・ルブランにスザンナ・ヨーク。
妊娠しているルビーにボニー・ベデリア。そのパートナーにブルース・ダーン。
鬼の主催者ロッキーにギグ・ヤング。この演技でアカデミー賞助演男優賞受賞。代表作はやはりこの映画でしょうか。1978年に5回目の結婚、3週間後に妻を射殺して自殺という人生の幕切れ。

監督シドニー・ポラック。
作品賞にはノミネートされなかった最多ノミネート数(9)記録という、ちょっとややこしい記録を持っています。

ロケ地

IMDbでは、

Santa Monica Pier, Santa Monica, California, USA (carousel scenes)
Stage 15, Warner Brothers Burbank Studios – 4000 Warner Boulevard, Burbank, California, USA

とありますけど、”carousel scenes”ってありましたっけ??

ダンス会場(外観)

物語は大半がダンス会場の中で繰り広げられ、外の場面はごくわずか。
冒頭の海辺の施設は、IMDbのリストを見る限りこちらのようなのですが……

Santa Monica PierW, Santa Monica, California, USA (carousel scenes)
http://www.santamonicapier.org/

どうも映画に登場した桟橋とは違っているようで、しっくりきません。
西海岸ですので、例によってこちらのサイトでチェックしてみますと……

……桟橋の外観や建物の位置関係など、やっぱりしっくりきません。

当時ここから2kmほど南西に行ったところにも大きな桟橋があり、Pacific Ocean ParkWという遊園地がありました。
当サイトで言いますと、『ハリーとトント』のラストで背景に見えていた桟橋で、テレビシリーズの『逃亡者』最終話が撮影されています。
現在は遊園地も桟橋も完全に姿がなくなっていますが、解体は70年代に入ってからなので、『ひとりぼっちの青春』の撮影時にはまだ建物は残っていたと考えられます。

現在のマップではこのあたり。

昔の画像を見てみると、桟橋根本の南東側にある建物が映画に登場したものと似ていることがわかりました。

http://www.flickr.com/photos/huffstutterrobertl/3808248550/

こちら↑の画像から、Aragon Ballroom↓という名前であることが判明。

Wikipedia(英語) Aragon Ballroom (Ocean Park, Sant Monica, California)

1970年に火災で焼失とありますので、撮影には間に合います。
というわけで、おそらくこの建物だと思いますが、映画の本質とは関係ないところでしつこく調べてしまいました。
例によって間違っていたらごめんなさい。

桟橋物語

昔の桟橋の写真を検索していたら、こんな俯瞰画像を見つけました。

http://countyrecurrent.blogspot.com/2011/11/between-piers-by-cal-porter.html

西海岸のこのあたり、サンタモニカからベニスビーチに至るわずか数kmの範囲に、20世紀の初頭からデベロッパーたちの手によって大きな桟橋が次々作られ、それぞれ遊園地やダンスホールなど遊興施設がひしめきあって、大変な賑わいを見せていたようです。

それにしても作りすぎ……。
上記の俯瞰画像で 位置関係を見てみますと……

手前(南側)から、サンセット桟橋、ベニス桟橋、オーシャンパーク桟橋(とリック桟橋)、サンタモニカ桟橋。
サンタモニカ桟橋を除いて今は跡形もありませんが、往年の映画には時々舞台や背景として登場しています。
参考までに、以下ざっくりまとめてみました。
(以下の表はまだ製作中につき、随時更新します)

Santa Monica Pier Ocean Park Pier
/ Lick Pier
Venice Pier
(旧Abbot Kinney Pier)
Sunset Pier
マップ Google
Bing
Wikimapia
Google
Bing
Wikimapia
Google
Bing
Wikimapia
沿革 2つの桟橋が並んでいた。
1974-75の冬に解体。
1905.7.4 ヴェニス オープン。
1920 旧桟橋Abbot Kinney Pier焼失。
1921.5.28(正式には7.4)~1946.4.20
1921.7.4~1927
1930.4.12~ 市営施設
遊園地 Pacific Park Pacific Ocean Park (P.O.P.)W
1958.6.28~1967.10.6
ダンスホール La Monica Ballroom
~1962
Aragon BallroomW
1970.5.26 焼失
1921~1927
映画 IMDbのリスト
スティング
フォレスト・ガンプ
IMDbのリスト
ひとりぼっちの青春
ハリーとトント
逃亡者(TV)
資料 公式サイト
Santa Monica PierW
Looff HippodromeW
THE UNDERGROUND WEB SITE OF P.O.P
westland.net
ヴェニス_(カリフォルニア州)W
Abbot KinneyW
westland.net
westland.net
資料(全体) http://www.westland.net/venice/history.htm
http://www.westland.net/venicehistory/
サンタモニカ・ピアの画像(12/6/18追記)

milouさんからサンタモニカ・ピアの画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
いずれも撮影は1996年とのことです。

これが『スティング』で登場したメリーゴーランドですね。

資料

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