目次
作品メモ
2010年8月3日深夜NHK BS2にて放映。
監督ピーター・ブルック、原作マルグリット・デュラス、脚本マルグリット・デュラとジェラール・ジャルロ、撮影アルマン・ティラール。
出演は、ヒロインのアンヌ・デバレードにジャンヌ・モロー。
製鉄所の社長夫人で、立派なお屋敷に住み、息子にピアノを習わせ、豪華なレストランでリッチな知人たちと会食を楽しむという何ら不満のないはずの生活を送っていましたが、とある事件をきっかけに夫以外の男に気持ちがゆらぎ……といった設定。
ゆらぐ相手の男ショーヴァンにジャン・ポール・ベルモンド。
映画は7日間にわたるこの2人の心理をじっくり描いていきます。
ジャンヌ・モローはこの演技でカンヌ映画祭の最優秀女優賞受賞。同時受賞は『日曜はダメよ』のメリナ・メルクーリ。
作品そのものもコンペティションで候補になっていましたが、受賞したのはフェリーニ監督の『甘い生活』。
そんな時代の映画です。
各映画サイトではフランス映画となっていますが、クレジットでは、
Une Co-Production Franco-Italienne
PRODUCTIONS iena – DOCUMENTO FILMS
(Paris) (Rome)
Dirigée par
ROGER DEBELMAS
モデラート・カンタービレ
映画の原題”Moderato Cantabile”は原作小説のタイトルをそのままとっています。
小説の方は『モデラート・カンタービレ』として翻訳出版されています。
別に雨が降っているわけでもなし、映画も原題のままでよかったかも?
セリフでもありますが、楽譜の指示で「普通の速度で、歌うように」の意。
小説もちょっと読んでみましたが、やはり冒頭子供のピアノのレッスンから始まっていて、「モデラート・カンタービレ」で苦労していました。
子供が繰り返し練習していた(練習させられていた)ピアノ曲は、ディアベリのソナチネ。
具体的には、ヘ長調作品168の第1番の冒頭部分です。
楽譜データベースIMSLPでチェックしていってわかりました。
こちら↓から楽譜のPDFをダウンロードできます。
ピアノ初級クラスでもなんとかなりそうなレベルですので、頑張って弾いてみてあの子の気持ちになってみましょう ……
ロケ地
IMDbのfilming locationsには記載がありませんでした。
あとは例によって映像をじ~っと見るしかありません。
町
キネマ旬報データベースの解説では、「ブレーはフランス西海岸のひっそりした田舎町である」とありますが、その「ブレー」ってどこでしょう??
Bourrée や Boulais のあたりをマップで見ても、しっくりきません。
映画の中で”HOTEL DU MEDOC”という看板が見えたので、Médocのあたりを見てみたら、やっと判明。
正解はボルドー市の北にあるこちら。
ブライ Blaye
マップ↓
- Google Maps
西側を流れる入り江のような川はジロンド川。
以下撮影場所をピンポイント的に見ていきますと……
カフェ
この↓画像を見る限り、今でもカフェやピアノ教室の建物は残っているようです。
- http://www.panoramio.com/photo/10451362
※SV(2011年8月追記)
お屋敷
調査中。
映画の時点でかなり痛んでいる様子。
果たして今もあるでしょうか?
船着き場
カフェの前の道を南へ行ったところ。
対岸の船着き場
おそらくこちら。
ここだとすると、映画に登場した朽ち果てた建物はもう無くなっているようです。
地名としては、Lamarque となります。
資料
関連記事
ジャンヌ・モロー関連作
- 『エヴァの匂い』 Eva (1962)
- 『デュラス 愛の最終章』 Cet amour-là (2001)
- 『ニキータ』 Nikita (1990)
- 『マドモアゼル』 Mademoiselle (1966)
- 『危険な関係』 Les liaisons dangereuses 1960 (1959)
- 『地獄の高速道路』Gas-Oil (1955)
- 『大列車作戦』 The Train (1964)
- 『天使の入江』 La Baie des Anges (1963)
- 『巴里の気まぐれ娘』 Julietta (1953)
- 『恋人たち』 Les amants (1958)
- 『愛人 ラマン』 L’amant (1992)
- 『撤退』 Disengagement (2007)
- 『死刑台のエレベーター』 Ascenseur pour l’échafaud (1958)
- 『現金に手を出すな』 Touchez pas au grisbi (1954)
- 『突然炎のごとく』 Jules et Jim (1962)
- 『雨のしのび逢い』 Moderato cantabile (1960)
- 『鬼火』 Le feu follet (1963)
更新履歴
- 2018/03/11 タグ「ジャンヌ・モロー」追加
コメント
「雨のしのび逢い」二十六歳のベルモントが好演。
もちろん主演のジャンヌ・もローは渋く巧い演技。フランス映画らしい繊細な心理描写がみごとだった。
「シェルブールの雨傘」と並ぶ傑作中の傑作ですね。
中年、老年になってもこの二作は、新鮮です。そのように感ずる方は、恋愛を知る方でしょう・・・
モデラート・カンタービレ「雨のしのびあい」
あの作品はよかったなあ・・。渋い恋愛経験ないと理解できない心理劇。
何と言っても、ジャンヌ・モローの雰囲気ある好演・・すごいと思いました。
一首献上。
会ふときのときめき鎮めみかはせる瞳のからむ夕日の街に 石塚邦男
モデラート・カンタービレ・・良かったですね。
男女の陰影みごとでした。
何度観てもその都度新鮮です。モローは雰囲気ある名女優でした。
昔池袋に「名画座」という3本立てで100円の映画館がありました。高校生の頃映画の楽しさ、外国の文化に触れたのはここでした。「雨のしのびあい」を見て、大人の愛を知りました。最後の場面で、男の去られ、ジャンヌモローが酒場で「ぎゃー」と泣いたのを鮮烈に覚えています。
矢上宗國さん、コメントありがとうございます。
池袋名画座ですか、池袋も時折見にいっていましたが、その名前の映画館は無くなっていたかと思います。3本100円となると、本当に映画が公開された頃なのでしょうね。
1960年代の初め、鹿児島の名画座で2本立で50円位でした。
高校の制服で行った私にとって、「初めて映画を見た」ような感動でした。
すべてのシーンが目に焼き付いています。
あの音楽も耳に残っています。いつか現地に行って、見てみたい…。
Biancaさん、コメントありがとうございます。
高校時代、ずいぶん大人の映画をご覧になっていたのですね。
そういえば自分も映画を楽しみながら海外のことや社会のこと、人の営みなどを見聞きし、少しずつ大人になっていったのかもしれません。
現地行き良いですね。是非是非実現してください 🙂