目次
作品メモ
ひとつ前のエントリー『天使の入江』に続けてさらにジャック・ドゥミ監督作を……と思いましたが、手持ちは残りあとわずか。
この映画はどうしようかと迷いましたが(汗)、ロケ地的には興味深いところもありましたので、やはり取上げてみます。
原作漫画や宝塚のステージを見たことがない人でもタイトルやオスカルぐらいならみんな知ってる「ベルばら」の実写映画版。
当時映画製作業を始めたばかりの山本又一朗プロデューサーが単身フランスへ乗り込み、『モン・パリ』(73)以来メガホンを取っていなかったジャック・ドゥミ監督を引っ張り出してホンモノのベルサイユ宮殿で撮影、音楽は名コンビ、ミシェル・ルグランに依頼、スタッフキャストは全員外国人という、スケール感満載の1本です。
同氏は同じ年に『太陽を盗んだ男』も製作しているというタフネスぶりでした。
主演オスカルを演じたのはイギリスのカトリオーナ・マッコール(Catriona MacColl)。次にエントリー予定のジャック・ドゥミ監督『想い出のマルセイユ』にも登場しています。
他にどんなの出ていたのかな~とAmazonあたりでその名前をクリックすると、ルチオ・フルチの一連の映画がずらっと出てきてビックリするのでした。
幼なじみアンドレにバリー・ストークス(Barry Stokes)。こちらもイギリスの俳優さんのようです。おそらくオスカルは誰がやっても不満が出たかと思いますが、このアンドレはイメージに結構近かったような?
王妃マリー・アントワネットにクリスティーネ・ベーム(Christine Böhm)。公開年の8月5日に事故で亡くなっていて、劇場用映画としては本作が遺作。
スウェーデンの貴族フェルゼンにジョナス・ベルクシュトローム(Jonas Bergström)。
今回初めて知りましたが、クリスティーネ・ベームはオーストリア出身、ジョナス・ベルクシュトロームはスウェーデン出身ということで、キャラクター設定通りの出身地となっていたのですね。
しかしながらそんな細かいキャスティングの気配りにもかかわらず、全員セリフは英語でした。
製作山本又一朗、監督ジャック・ドゥミ、撮影ジャン・パンゼル、美術ベルナール・エヴァン、音楽ミシェル・ルグラン。
今から見るとなると、案外難しいものがあるかもしれません。
DVDも出ていたようですが、Amazonではプレミアム価格。レンタルはされていないようです。
今回は地上波(たぶんローカルUHF)で放送された時の録画があるのでそれにてチェック。
CMもカットせずに丸ごと焼いていて、もしかすると「二度と見ることないよ」的気分だったのかもしれませんが、久々に再生してみるとヴェルサイユ宮殿の場面など思わず見入ってしまいました。
一度はぜひHD画質で見てみたいものだと思います。
※2014/06/26追記
壮麗なテーマ曲も、今となってはこういった形でしか入手できないようです。
この「ミシェル・ルグラン=ジャック・ドゥミ作品集」には、今回当サイトでとりあげた映画がみな収録されていますね。
※2014/06/28追記
「今から見るとなると案外難しい」とか書いちゃいましたが、Youなんとかにいろいろアップされていました。
テーマ曲は1分15秒頃から。
とりあえずこういったメディアでチェックして、お気に召したらぜひきちんとしたソフトでお楽しみください。
ロケ地
IMDbでは、
Auditel – 12 avenue du Maine, Paris 14, Paris, France (studio)
Jossigny, Seine-et-Marne, France (castle scenes)
Senlis, Oise, France (storming of the Bastille scenes)
Studios Layout, Paris, France (studio)
Versailles, Yvelines, France (palace and gardens)
オスカルの実家
OP「1755」のテロップとともに登場するジャルジェ伯爵家の立派なお屋敷。
IMDbのリストにあるこちら。
Jossigny, Seine-et-Marne, France (castle scenes)
画像はたとえばこちら。
- http://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Château_de_Jossigny
- http://www.panoramio.com/photo/27024891
- http://www.panoramio.com/photo/54177321
- http://philippecachau.e-monsite.com/album/chateau-de-jossigny-seine-et-marne/
OPでどーんと写るのは、東側から見たアングル。
その後の雪景色は、西側正門から見たところ(上掲SV)。
室内(階段のあるホールなど)もここのようですね。
ヴェルサイユ宮殿
0:08に初登場。
いろいろ言われているこの映画ですが、海外での撮影に関しては当時の日本映画として頑張っていたかと思います。特にこのヴェルサイユ宮殿の撮影はさぞ苦労したのではないでしょうか。
最初のショットは呆れかえるぐらいの壮大な宮殿と庭園をパンで捉えますが、カメラ位置はこちら。
続く王妃たちがいた部屋も同宮殿内と思われます。
おそらく中庭に面したこのあたりの2階。残念ながらインドアストリートビューは使えません。
フェルゼンが馬に乗っていたのは窓のすぐ下。
0:18頃オスカルが左から右へ歩いて行き馬車に乗り込むのも同じ場所。
馬車が走り去るまでワンショットで撮られていますが、ここだけでもきれいな画質で見てみたいです。
なお映画とは直接関係ありませんが、宮殿の経年変化といいますか増改築の様子はこちらのCGがとてもわかりやすいです。
ジャンヌとロザリーが住む通り
庶民が住むエリア。
IMDbのリストにサンリスの名がありますのでそちらかと思いましたが、場所は特定できませんでした。
サンリスは当サイトのエントリーで言えば、『まぼろしの市街戦』や『いつも2人で』などで登場しています。
四阿
0:40頃。
王妃とフェルゼンの密会の場。
ベルサイユ宮殿の敷地内、プチトリアノンの池の縁にあるこちら。
泉
0:45頃。
オスカルが馬でやってきてフェルゼンに怪文書を見せるところ。
広~い森の中にあるように見えて、やはりヴェルサイユ宮殿の庭園のごく一部。
舞踏会
1:05頃。
馬車が次々やってくるのは宮殿のこちらから。これだと庭園から入ってきていることになりますね。
その後オスカルたちが上っていくのは、王妃の階段(Escalier de la Reine)でしょうか。
夜の噴水
舞踏会の夜、アンドレがオスカルにキスを迫るところ。
この場合オスカルは女装と言うべき 🙄 ?
劇場
1:24頃。
ベルサイユ宮殿の敷地内、プチトリアノンにある王妃の劇場。
- Google Maps(SV)
- Bing Maps(概観図)
- WikiMapia
- http://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Théâtre_de_la_reine?uselang=fr
国民衛兵隊
近衛隊から転属したオスカルが部下のいやがらせにあうところ。
ヴェルサイユ宮殿のこちら。
首飾り事件
ジャンヌがVの字の焼きごてを当てられたのは、サンリスWのこちら。
ここはラストで群衆が蜂起する場所でもあります。
リアルでは教会(Église Saint-Pierre de SenlisW)の前の広場となっていて画面右端に入口部分が写っていますが、この教会は『まぼろしの市街戦』でひとりがちゃっかり司祭になりすましてしまったところ。
『まぼろしの市街戦』の記事を書く際しつこくサンリスの街をチェックしたので、この場所もビビっときました。
鏡の回廊
宮殿内を撮影しまくっている印象がありますが、最後の方では鏡の回廊も登場しています。
カメラ位置はこのあたり。
あれ、でも映画では豪華なシャンデリアが写っていなかったような……
※2014/06/27追記
©1986 milou アルバム「パリ近郊」から |
milouさんから画像を提供していただきました(いつもありがとうございます♪)。
撮影は86年7月とのことです。
やはりシャンデリアはぶら下がっていますよね……
1789 JULY 14(14/6/27追記)
いよいよその日。
民衆の蜂起の直前、なにやら水辺の村のような場所が写りますが、これもヴェルサイユ宮殿内。
©1986 milou アルバム「パリ近郊」から |
こちらも、milouさんから画像を提供していただきました。
この場面、興奮したように何かを知らせて回っている村人たちが描かれ、直後にバスティーユに押し寄せる人々のショットとなるので、普通に解釈すればそこはどこか一般の村という設定なわけですが、実は撮影場所はヴェルサイユ宮殿のごく一部であったというトリビア……
民衆の蜂起
民衆が集まってきたのは、前述のようにジャンヌが焼きごてを当てられたサンリスの広場。
オスカルとアンドレが群衆とともにやってきたのはマップで北側Rue Saint-Pierre(サン=ピエール通り)と書かれたこちらの道から(カメラ向き逆)。
その前にロベスピエールが人形を焼いていたのは、同じ通りのこちらのT字路。
……となると、行く手にそびえるチェスのルークのようなバスティーユの牢獄は、セットということになります。凄い♪
群衆が押し寄せるショットではこういったアングル↓もありました。
大砲を奪うショットでは背景に教会もはっきり写っていますが、こういったアングル。
なので撮影場所はここで間違いないかと思われます。
膨大な原作を2時間少々で描くのはやはり無理があり、バスチーユ牢獄襲撃もはしょりすぎでなんだかよくわからないクライマックスになってしまっています。
オスカルとアンドレ、それぞれの運命をもし原作通りに描くことができたのなら、例えモブシーンがショボくても、きっと作品の評価はかなり変わっていたはず……それを思うとまことにもったいない気がしました。
ヴェルサイユ宮殿参考画像(14/6/27追記)
※以下はmilouさんから提供していただいた画像を参考画像としてアップさせていただきます(撮影はすべて1986年7月とのことです)。
©1986 milou アルバム「パリ近郊」から |
南の花壇から宮殿西側。
カメラ位置とアングルが少し違いますが、映画で最初に宮殿が写るショットと同じ花壇ですね。
©1986 milou アルバム「パリ近郊」から |
前庭から大運河方面。
©1986 milou アルバム「パリ近郊」から |
上の画像の奥に見えるアポロンの泉から大運河方面。
©1986 milou アルバム「パリ近郊」から |
広大な庭園、みなさん結構フリーダムに利用しているようです。
©1986 milou アルバム「パリ近郊」から |
すいている宮殿内。
©1986 milou アルバム「パリ近郊」から |
ここもガラガラです。
©1986 milou アルバム「パリ近郊」から |
時計だけがチクタクと……。
©1986 milou アルバム「パリ近郊」から |
マンサール設計の王室礼拝堂。
ロケ地マップ
ヴェルサイユ宮殿
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資料
関連記事
ジャック・ドゥミ監督作
- 『エヴァの匂い』 Eva (1962)
- 『シェルブールの雨傘』 Les parapluies de Cherbourg (1964)
- 『ベルサイユのばら』 Lady Oscar (1979)
- 『モン・パリ』 L’événement le plus important depuis que l’homme a marché sur la Lune (1973)
- 『ロシュフォールの恋人たち』 Les demoiselles de Rochefort (1967)
- 『ロバと王女』 Peau d’âne (1970)
- 『ローラ』 Lola (1961)
- 『天使の入江』 La Baie des Anges (1963)
- 『想い出のマルセイユ』 Trois places pour le 26 (1988)
更新履歴
- 2014/06/28 動画埋め込み。
- 2014/06/27 milouさんの画像を追加。「1789 JULY 14」「ヴェルサイユ宮殿参考画像」追加。
- 2014/06/26 CD情報追記。
コメント
>DVDも出ていたようですが、Amazonではプレミアム価格。レンタルはされていないようです。
すでにご存じかもですが、今年の1月にデジタルリマスター版のDVD(BD)が発売されました。
ttps://www.amazon.co.jp/dp/B076H31TSQ
価格はややお高めですね。
私もこの映画観まして、かつて記事を書いたことがあります。
ttps://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/4a1df89a0d79544e07a0f77588b8c13e
ttps://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/f533cf0b11a65f90b24f3db13cdc4b55
個人的には、(1)でご紹介した工場での写真にはかなり笑っちゃいました。これは、こういう写真を対外的に発表する側の問題ですね。
>ホンモノのベルサイユ宮殿で撮影
これはたぶん、ジャパンマネーの力だけでなく、ドゥミ監督の名声も、撮影を勝ち取れた大きな要因でしょうね。
>最初のショットは呆れかえるぐらいの壮大な宮殿と庭園をパンで捉えますが
ヴェルサイユには、私も行っているのですが、フィルム撮影でデジタルデータ変換をしていないので、協力できません。変換したら、またご連絡しますので、使える写真がありましたらまたお願いします。
映画についてはラストシーンがしょぼかったのと(え、こういうラストなの? とけっこう本気で驚きました)、あとオスカルのヌードシーンが印象に強いのですが、個人的にはマッコール嬢はそんなに男っぽくない普通の女性に見えてしまいました。
なお、ヴェルサイユとシェーンブルンに行くと、ほかはしょぼく見えてしまいます。この2つに行った後ポツダムのサンスーシ宮殿に行きましたが、残念ながらしょぼく見えてしまいました。世界中いろいろなところに行って見聞を広めるのはいいことですが、やはりちょっとやそっとのことでは驚かなくなるというのも確かに事実です。
Bill McCrearyさん、デジタルリマスター盤出ていたのですね。
買うかと言ったら別ですが(汗)、どこかで放送してくれないかと期待してしまいます。
ブログ記事拝見しました。工場の写真ウケました 😆
当時彼女は結構コマーシャルに出ていた記憶があります。
実際にスクリーンで見たのは少し後、二番館か名画座だったと思いますが、広告通りのきれいな人でそれはそれで満足。ただ映画そのものがいろいろ難を抱えていたこともあり(汗)、その点は少し可哀相でしたね……
はじめまして
よろしくお願いいたします
素敵な記事をありがとうございます
興味深く読ませて頂いております
テレビ放送と映画(館)
での上映
DVD・BDでは違うところがある(ノーカット版ではない)とお聞きします
ご存知であれは
お教えくださればさいわいです
ぽんさん、コメントありがとうございます。
> テレビ放送と映画(館)
> での上映
> DVD・BDでは違うところがある(ノーカット版ではない)とお聞きします
とのことですが、テレビ放送、映画館、DVD・BDの3者の違いということでしょうか?
私が持っているのはUHF局の放送録画(字幕版)だけで、現在比較する手段がありません。
Wikipediaによれば日テレで吹き替え放送されたようですが、AmazonのBlu-ray盤の記載を見ると、収録された日本語音声はテレビ放送時のもののようで、一部音源がない旨書かれてあります。
つまり、吹き替え放送版は一部カットされていたということですね。