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『アメリカ上陸作戦』 The Russians Are Coming the Russians Are Coming (1966)

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作品メモ

『午後の曳航』『いそしぎ』とジョニー・マンデル作曲の映画をチェックしてきましたが、もう一本。今度はコメディです。

舞台はイーストコーストに浮かぶ小島。
その沖合で、ソ連の潜水艦の艦長がアメリカ見たさについ近づきすぎて😅 座礁してしまいます。
引き船が必要となり9名の乗員たちがこっそり島へ上陸することになりますが、島民たちとあえなく遭遇、「ロシア人が来た!」と噂がまたたく間に伝搬し、島は大騒ぎ。
ボートを調達してすぐに退散するつもりだったロシア人たちも追い詰められていき、このままではアメリカ軍も出動してあわや第3次世界大戦の危機?? その時起きた奇跡とは??
といったお話。

1966年の映画ということで、東西冷戦がまだまだ続いている時代の産物ですが、コメディという装置を使うことでとてもお気楽に米ソの対立を楽しむ?ことができます。
もちろん現実がこんなふうになるわけありませんが、見終わった後、いいじゃないの映画の中ぐらい、というほろ酔い気分にさせてくれるハッピーな一本。

あちこちちりばめられている笑いの要素も、最初に子供が気づくものの大人は全然信じてくれないとか、耳が遠いお年寄りの背後で非常事態が展開しているとか、一緒に縛られてしまった者同士がくっついたままぴょんぴょん移動していくとか、危機そっちのけで若者同士がどっぷりロマンスにひたるとか、噂が噂を呼んで村人が暴走し始めるとか、お国の非常時に退役軍人がハッスルするとか……
もう「あるある」の連続で、ムチャクチャ楽しませてくれます。
さすがこの手のものを作らせたら安定のアメリカ製コメディ♪
文句なしに楽しく、しかも最後は思いも寄らぬ展開で感動すらさせてくれるという、とても良くできた映画となっています。

なのに日本ではVHSのみ。これはぜひDVD化プリーズ♪

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キャスト&スタッフ

主人公の家族は……
ニューヨークの劇作家ウォルト・ホイテッカーにカール・ライナー。新作を全集中執筆のため島の別荘に家族と来ているという設定。カール・ライナーはロブ・ライナーの父親。今年(2020年)6月29日に亡くなっていますが、奇しくも作曲のジョニー・マンデルも同じ日に逝去。98歳と94歳で、お二人ともきっと人生を満喫されたのでは、と勝手に想像。
その妻エルスパス・ホイテッカーにエヴァ・マリー・セイント。

潜水艦の乗員は……
上陸部隊の指揮を執るロザノフ副長にアラン・アーキン。これが劇場用映画の本格的デビュー作。
けっこうお茶目な潜水艦の艦長にセオドア・ビケル。
ホイテッカー家を見張るようにひとり残されたアレクセイ・コルチンにジョン・フィリップ・ロー。長身の二枚目ですが、『バーバレラ』の天使ですね。

島の住人は……
マトックス署長にブライアン・キース。底抜けの島民たちの中ではとてもまとも。ラスト近くたった1人で敵に向かう姿はしびれます。
署長の部下ノーマン・ジョナスにジョナサン・ウィンタース。
アメリカの危機に敢然と立ち上がる退役軍人フェンドル・ホーキンスにポール・フォード。
島の娘アリソンにアンドレア・ドロム。
空港の整備士にマイケル・J・ポラード。特徴的なルックスですぐにわかる俳優さんですが、まだ無名の頃でしょうか。クレジットなし。

原作ナサニエル・ベンチレイ。
監督ノーマン・ジュイソン、脚色ウィリアム・ローズ、撮影ジョゼフ・バイロック、音楽ジョニー・マンデル。

タイトル曲

『午後の曳航』『いそしぎ』では、ちょっとセンチでロマンチックな楽曲によって海辺の情景を描いて見せたジョニー・マンデルですが、この作品では同じ海辺の町でもがらりと曲想を変えて盛り上げてくれます。

象徴的なのがタイトル曲。

まず日本では「あーるーぷーすーいちまんじゃーく♪」でおなじみ、アメリカの愛国歌 「ヤンキードゥードゥル(Yankee Doodle)」Wが導入部で流れます。[1]これまでのエントリーで言えば、『東京ファイル212』で替え歌が登場。
そこへ、「ヴォルガの舟歌」Wが赤軍合唱団的に乱入。こちらはたいていの日本人は「えいこーらー~ えいこーらー~ もーひーとーつ~えいこーら~♪」と覚えているはず。 [2]「えいこーらー」はロシア語では«Эй, ухнем»(エイ・ウフニェム)。
その後「ヤンキードゥードゥル」に戻りますが、ロシア側は合唱団でハモるふりをして、時折「えいこーらー」でちょっかいをかけ、やがて歌声喫茶や歌謡曲でおなじみの「ポーリュシカ・ポーレ(Полюшко-Поле)」Wで大反撃するというしたたかさ。[3]その後ジョニー・マンデルのオリジナル曲が挿入されます。

その間、画面では星条旗と«鎌と槌»がめまぐるしく入れ替わったりしています。
冷戦当時もそれ以外でも、これほどソ連の国旗が出てくる映画のタイトルって、そうそうないのではないでしょうか。

……と下手な講釈より、実物をどうぞ♪

↑ 最後目玉が延々写りますが、これは潜望鏡を覗いている艦長の目です 😇

他にも、盗んだ車がガス欠で止まってしまってロシア人たちが港を目指して歩き出す場面では、「遥かなティペラリー (It’s a Long Way to Tipperary)」Wが赤軍合唱団調で歌われたりして。 [4]これまでのエントリーでは、『大いなる幻影』で登場。

そんなこんなで音楽だけでも楽しめるこの映画、今から聴くなら、例えばAmazon Musicでは

Unlimitedならそのまま全曲聴くことができます。

潜水艦と戦闘機

気になる小道具と言いますか大道具ですが、以下英語版Wikipediaの受け売り。
まず潜水艦は、アメリカ海軍からは撮影用に借りることはできず、『モリツリ/ 南太平洋爆破作戦』(1965)で使ったものを再利用とのことです。撮影用のモックですね。
ちなみに船首に艦名が«Спрут»(スプルート)とありますが、「タコ」の意。

戦闘機はこれは実際に海面すれすれに飛んでいますからホンモノのはず。
英語版Wikipeidaによれば、

The planes used were actual F-101 Voodoo jets from the 84th Fighter-Interceptor Squadron, located at the nearby Hamilton Air Force Base. They were the only Air Force planes that were based near the location of the supposed island.

ということで、空軍の協力は得られたようです。
F-101 Voodoo jetWとのこと。

ロケ地

IMDbでは、

Bodega Bay, California, USA
Nantucket, Massachusetts, USA
Fort Bragg, California, USA
Mendocino, California, USA
Caspar, California, USA
Westport, California, USA
Massachusetts, USA
Eureka, California, USA
California, USA
USA

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

今回は2011年にNHK BS2で放送された時の録画でチェックしています。

設定ではマサチューセッツ州のグロスター島(Gloucester)。潜水艦の海図に描かれたキリル文字では、«Глостер» 架空の名称です。
ロシア人たちがアメリカの地図を見て読みづらそうにしていましたが、おそらく”ces”のつづりのあたり。
日本人でもそのまま読んだら「ぐろうす……ぐろせっすたー?」とかなると思います。

設定は東海岸ですが、撮影は西海岸。
……ということで、ひとつ前のエントリー『いそしぎ』に続いて、こちら↓のサイトの出番です。

California Coastal Records Project
https://www.californiacoastline.org/

ご町内は主にIMDbのリストのこちら↓で撮影されているように見えます。

これまでのエントリーで言えば、ドラマの『ジェシカ叔母さん』の町でありますし、映画なら『おもいでの夏』の舞台となっているところ。

交差点

ロシア人たちが交差点を横切り、郵便局の前から車を盗もうとするところ。

警察署

こちら↓ですが、リアルでは地元消防団の建物のようですね。

港へ向かう島民たち

0:50
島民たちがわらわらと通りに出てきて港に向かっていくショットはこちら↓ 
カメラ南向き。

電話局の外階段

お店の2階にあるという設定の電話交換所。
一緒にくくられてしまった主人公と交換手が、協力して脱出を図ります。
室内はスタジオセットかもしれませんが、二人で降りて(落ちて?)行った外階段は、おそらくここ↓にあった建物のもの。

周囲の建物や地形、給水塔などから推定しました。
建物は改築か建て替えられていて、外階段はなくなっていますが、左側の建物とその後ろの給水塔は、今でも同じ姿で残っています。左側の空間にベンチがあるのも映画と同じですね。

この通りは、『おもいでの夏』で主人公が斜め渡りしたところ。

この場面、助けに来たオヤジが抱えていた猫様が、平然とその場を去って行くのが面白いです。

副長の脱出

副長がひとり車を盗み、ワンちゃんを追い出して走り去るのは、こちら↓の給水塔のある通り。
カメラ西向き。

猫様に続きワンちゃんも、東西冷戦には無関心。トコトコ走って行くだけです。

クライマックスシーンなどで舞台となる港は、同じMendocino郡のこちら↓で撮影。

Fort BraggW, California, USA
Noyo HarborW

ロシア人が様子をうかがうところ

最初にロシア人たちが双眼鏡で様子をうかがった時のロングショットは、このあたり↓

ちょうど川がUの字に蛇行している底のあたり(対岸)にロシア人たちは居ます。

映画では左手奥に外洋が広がっていますが、現在のSVで見ると、背景にハイウェイが通り、左側には小山がせり出ていて、全然海など見えません。
まあハイウェイは撮影後に出来たのかもしれませんが、地形は不思議。
場所を間違えたか、はたまた地形が変わってしまったのか、疑問符が舞いましたが、もしかすると左側はマットペインティングでしょうか。
そう思って見ると、遠景の左側は全然動きがありません。

陽動作戦

1:25頃
島民たちがロシア人の陽動作戦により、続々と海辺へ向かうショット。
背景の建物は今でもイタリアン・シーフードのお店として確認できます。

ここは最初にロシア人が対岸から様子をうかがったあたり。

潜水艦の停泊場所

潜水艦が停泊したのは、その建物に向かって左奥。

教会はお店のほぼ向かい。現在庭のようになっている角地にあったと思われます。後ほど活躍?しますが、セットだったでしょうか。

映画では教会の右側がBESS’S LOBSTERSというお店でしたが、現在グレーの建物。
その右隣は、映画でははっきり写りませんが、リアルでは現在NOYO FISHING CENTERというお店(NOYOはこのあたりの名称で、川の名前もノヨ)。
その右側が、アグネスのサイドカーが爆発音を立てながら曲がってくるカーブ。

この空撮は港の出入り口も含めて写っていますので、とてもわかりやすいですね(西向き)。
くの字に蛇行する川のへこんだところの右岸が、クライマックスシーンで舞台となるところ。

港の出入口

陽動作戦を行っていたロシア人たちが、首尾良くボートに乗り込み、島民たちが悔しそうにバンバン撃つところ。
その後潜水艦が出入りするのもここ。

実際にNoyoの港の出入り口となります。

教会

港へ向かうロシア人たちが通り過ぎたところ。
港に面した教会とは別。
アグネスのサイドカーが港に集結した島民たちを突破、その後Uターンするのがこの教会前。
ちょっとこのあたりの位置関係の設定がよくわかりません……
2つの教会は外観が全然違うので、まさか同じ場所という設定ではないとは思うのですが……

ともかくこちらの教会はNoyoではなくMendocino↓

Mendocino Presbyterian ChurchW

資料

更新履歴

  • 2020/12/18 新規アップ

References

References
1 これまでのエントリーで言えば、『東京ファイル212』で替え歌が登場。
2 「えいこーらー」はロシア語では«Эй, ухнем»(エイ・ウフニェム)。
3 その後ジョニー・マンデルのオリジナル曲が挿入されます。
4 これまでのエントリーでは、『大いなる幻影』で登場。

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