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『いそしぎ』 The Sandpiper (1965)

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作品メモ

ひとつ前のエントリー『午後の曳航』で音楽を担当していたのが、ジョニー・マンデル(Johnny MandelW)。
日本では日本語版Wikipediaに項目がないぐらいの知名度なのだと思いますが、『いそしぎ』のテーマ曲を書いた、と言えばぐっと親近感が湧きそう。
曲名としては、「シャドウ・オブ・ユア・スマイル」”Shadow of Your Smile”W

最初のタイトルバックでたっぷり流れ、劇中でもアレンジを変えて繰り返し登場。最後は歌詞が付いたバージョンでしっとりとしめくくるという、この曲なしではありえない映画。
米アカデミー賞歌曲賞やグラミー賞最優秀楽曲賞を受賞し、スタンダードナンバーとなりました。

オープニングの空撮とこの曲だけで、映画の世界へす~っと入り込むことができます。

おそらく今となっては、テーマ曲は聴いたことがあっても、映画本編の方はどんなんだかわからない、という方も多そう。
以前「曲だけ有名な映画」をいくつか取上げていましたが、これなども上位に食い込みそうですね。

主演は言うまでもなくエリザベス・テイラーとリチャード・バートン。[1]クレジットはエリザベス・テイラーの方が先
『クレオパトラ』(63)での共演がきっかけで親密な関係となりましたが、『いそしぎ』は結婚後の2人による初仕事、つまりは最初の夫婦共稼ぎ映画となっています。

2人の共演作はこちら↓のエントリーの「リズとリチャード」にまとめてあります。

ついでに、秋葉原でエリザベス・テイラーを見かけた話も書いときましたので 😅 、よろしかったらそちらもどうぞ。
だいぶ記憶が薄れてきましたが、入っていったのが確か照明で有名なお店だったので、きっと来日した際に自宅の電球が切れていたのを思い出して買いに来たのだと思います。😇

そんなことより、この映画。
ぶっちゃけ不倫もののメロなのですが、2人は当初ダブル不倫で世間を賑わせていたわけで、なかなか生々しいと言いますか、ちゃっかりした企画。
エリザベス・テイラーは、魅力たっぷりのシングルマザーという設定で、海辺の家に息子と住み、自由と自然を愛する画家(役名ローラ・レイノルズ)。
お相手のリチャード・バートンは、妻子ある聖職者でかつ校長先生という、不倫イケナイ指数を何ランクも上げてしまった状態(役名エドワード・ヒューイット)。
こうなると観客は、イケナイ関係にずっぽりひたるスター2人の濃密なメロとラブシーンを期待して入場券を買うわけですし、俳優たちはそれを承知の上での登板なのでしょうから、映画作りとはまことに因果な商売とも言えます。

お話の方は、息子の教育のことでこの2人が出会い、価値観の異なる者同士が影響し合い惹かれあっていくという展開となるわけですが、他の出演者を見ますと……

校長の妻クレア・ヒューイットにエヴァ・マリー・セイント。家庭を守り夫の仕事をサポートするというキャラで、ヒロインとは対照的。

ローラの友人で彫刻家のコスにチャールズ・ブロンソン。マジメな校長とは対極にいるような西海岸のアーティストで、校長を嫌っていることを隠そうともせず、つっかかるように議論をふっかけてきます。
「初対面だが俺はすでに君のことが嫌いだ(by 煉獄さん🔥)」てな感じ。校長の偽善をあっさり見抜き逆ギレさせたりします。

学校の理事ウォード・ヘンドリックスにロバート・ウェッバー。寄付による節税フレームワークを作り上げ、それにより金持ちを呼び寄せています。こちらは宗教も教育も呑み込まんとするマネーの力の象徴でしょうか。
実はかつてヒロインと関係を持っていたことがあり、彼の援助によって彼女は住まいを得、美術学校に通うことができたという過去もあったりします。マネーは男女関係をも呑み込んでいるわけですね。

といった具合に、キャラクターをうまく配して相互に浮き彫りにし、さらに世相を切り取って見せています。このあたりさすが脚本にダルトン・トランボやマイケル・ウィルソンが名を連ねているだけのことはあるような。

ヒロインも、自然への回帰や結婚観など、一見60年代の新しいムーヴメントに連なる女性像。それどころか、冒頭息子が事件を起こした時の判事や校長とのやりとりなど、「こじらせてしまった意識高い系」みたいで、むしろとても今日的と言えるかも?? 😅
それが校長との対話が進むにつれ、自身が承認欲求が強いことに気づき、心を開いていくあたりの流れも自然で丁寧に描かれていると感じました。

ラストもこのくらいが妥当なところでしょうか。
今ならSNSであっという間に情報が拡散し、集中砲火を浴びた校長が記者会見で「この度は……」と深々と頭を下げたりするハメになるわけで、半世紀以上の時を経て果たして人類が進化したのか滅びに向かっているのか、ふと疑問を抱いてしまいますが、まあそんなのおかまいなしに、近所の商店街では今日も有線のBGMで「いそしぎ」が流れていたりするのでした。

監督ヴィンセント・ミネリ、撮影ミルトン・クラスナー、音楽ジョニー・マンデル。

こちら↓は予告編。

ロケ地

IMDbでは、

Big Sur, California, USA
Nepenthe Restaurant – 48510 California State Route 1, Big Sur, California, USA Paris, France (interiors)
Point Lobos State Natural Reserve, California, USA
San Dimas, California, USA (Campus)
Pebble Beach, California, USA
West Covina, California, USA (additional scenes)
Pomona, California, USA (California State Polytechnic University campus)
Monterey, California, USA
Carmel, California, USA (the Doud Estate)
Pfeiffer Beach, Big Sur, California, USA (Burton and Taylor)

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

浜辺を含む主な舞台は、映画の中でも地名が出ていますが、カリフォルニア州のビッグサー (Big Sur)W

カリフォルニアの海岸線ということで、久々にこちら↓のサイトの出番です。

California Coastal Records Project
https://www.californiacoastline.org/

タイトルバック

主な舞台は上掲タイトルバックに写っています。

EVA MARIE SAINT
THE SANDPIPER

↑どちらも微妙に違うような……

CHARLES BRONSON/ROBERT WEBBER

タイトルバックの他幾度か登場する印象的な橋。

Bixby Creek BridgeW

タイトルバックの空撮↓

0:10頃のアングル↓

IRENE SHARAFF

衣装デザイナーがクレジットされる、ほぼ真下を向いた空撮。
左側の岬はマップではCooper Point(クーパー・ポイント)とあります。

DALTON TRUMBO/MICHAEL WILSON

脚本家がクレジットされる夕焼け。 

この浜の東南端から西向きで撮っている感じですね。

浜辺

ヒロインと子供が住むところ。
住まいが崖の途中にひっかかっているように見えるのが面白いですね。
セットでしょうけど、印象的な造りです。

場所はおそらくこちら↓

SVでうろうろできるのが良いですね 🙂

車に乗せて貰うところ

編入先の学校へ向かう途中、コズたちの車に乗せて貰うところ。
直後、タイトルバックの橋を渡ります。

学校

設定では聖公会のサンシメオン学校。
駐車スペースの向こうに教会が見えます。

撮影場所はIMDbのリストのこちら↓

San Dimas, California, USA (Campus)

具体的にはこちら↓ 映画と異なり仏教系の施設ですね。

Buddhist Tzu Chi Foundation (慈济基金会)

ゴルフ場

NHK BSの字幕では出ていませんが、台詞として「ペブル・ビーチ」と言っています。
地名としてはIMDbのリストのこちら↓

Pebble Beach, California, USA

ゴルフ場はこちら↓

Pebble Beach Golf Links

2人だけの浜

狭い入り江からしか入ってこられないという設定の浜辺。
海に突き出た岩山の洞穴が特徴的。

家のある浜辺から東南へ約4kmのこちら↓。
タイトルバックで脚本家のクレジットが出た夕景の浜辺ですね。

Pfeiffer Beach, Big Sur, California, USA

洞穴のある岩場は、GoogleマップではKeyhole Arch at Pfeiffer Beachと記されています。

こちら↑のSVでもみなさんカメラを低く構えて、良いアングルを狙ってますね。

高台のレストラン

<NEPENTHE>とありますが、実在するお店。
わざわざ名前について会話がありますが、タイアップの一環?

Nepenthe Restaurant – 48510 California State Route 1, Big Sur, California, USA

同レストランのサイトでも、映画のことが触れられています。

港のレストラン

IMDbのリストのこちら↓の波止場でしょうか?

Monterey, California, USA

位置的にはこのあたり↓と思われます。

しかし店内でこの2人がうっとり手をとり見つめ合っていたら、目立ちすぎますがな。
全然隠し事になっとらんです。

ロケ地マップ

資料

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更新履歴

  • 2020/12/17 新規アップ

References

References
1 クレジットはエリザベス・テイラーの方が先

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