目次
作品メモ
『太陽がいっぱい』のコメント欄で、『クレオパトラ』もイスキア島でロケしていることを教えていただきました。
実は以前も同様の情報をいただいていたのですが、あまりにもメジャーな映画で、どうせ他はチネチッタのスタジオ撮影だろうし……と敬遠気味にしていました。
ところが今回ちゃんとチェックしてみたらとても面白いことがわかりましたので、急いでエントリーを作成。
もっと早く見返していれば良かったのですが、なにせ4時間あるものですぐには着手できず、その点どうぞご理解をば。
この映画の製作にまつわるエピソードはあちこちに書かれているでしょうからパス。
今見返してもとんでもなくお金がかかった映画であることがわかりますが、どうしようもないウドの大作であるかといえば、決してそんなことはなく、見応えはそれなりにあるかと思います。
エリザベス・テイラーとリチャード・バートンの組み合わせについては、『夕なぎ』(1968)のエントリーをどうぞ。
監督脚本ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ。
まことにまことにお疲れ様でした。
ロケ地
IMDbでは、
Egypt
Ischia Island, Naples, Campania, Italy
Rome, Lazio, Italy
Almería, Andalucía, Spain
Anzio, Rome, Lazio, Italy
London, England, UK (studio) (Pinewood Studios {original location})
Malibu, California, USA
Cinecittà Studios, Cinecittà, Rome, Lazio, Italy
例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
DVDにはマーティン・ランドー達のコメンタリーが付いていて、これも参考になりました。
戦場
テロップによれば、シーザーがファルサロスの戦いでポンペイウスを破り、ローマへ凱旋する途中とあります。
オーディオコメンタリーによれば、完成して6ヶ月後に撮り直したもので(6時間を4時間に編集する際、内容をつなげるために必要だった)、場所はアルメニアだそうです。
リチャード・バートンは参加できず、登場していません。
アレキサンドリア
……という設定だと思いますが、エジプトの港とそれに面した宮殿。
最初に登場するのは0:09頃、ゆったりした左へのパンでこれでもかと威容が映し出されますが、その壮大さにビックリ。遠景はマットペインティングだということを差し引いても、凄すぎです。
またアップになってもセットというのが信じられないほど良くできています。
Wikipediaによるとこの映画は権利表記の関係でパブリックドメインとなってしまったようで、Wikimedia Commonsでもキャプチャー画像がアップされています。
それをおそるおそる使わせていただきますと……
気になる実際の撮影場所ですが、マーティン・ランドーがコメンタリーで「アンツィオ市の近く」と言っています。
Anzio, Rome, Lazio, Italy
セットはなくなっても地形は変わらないはずなので、海岸線などを注視しながらチェックしていったところ、まず日差しなどからアンツィオ市の東側の海岸線であろうことはわかりました。
さらに前半0:10頃、船上のルフィオ(マーティン・ランドー)等を捉えたショットで、背景に見える島の影はこういった感じ。
さらに、前半1:14頃左へパンするショットで写る海上の建築物が、アンツィオ市の市街地から10数キロ東南のこちらのように見えました(コムーネとしてはネットゥーノW)。
英語版Wikipediaには『クレオパトラ』の撮影地であったことが書かれていませんが、地理的にはこちらのように見えます。
Googleの画像検索をかけてみたところ、セットの画像がいくつか出てきましたが、これらを見ても場所はこちらのように思えます。
セットの空撮と現在の地形を照合すると、宮殿やその奥に伸びる回廊と門、左右のスフィンクスなどはもちろん、船着き場や水際に降りる幅の広い石段などもすべてセット。建築物は、セットでありがちな正面だけの平たいものではなく、3次元的に(笑)しっかり作られています。
海に出ている塔自体は昔からあるものですが、たっぷり擬装がほどこされています。
映画の中では遺跡ではなくピカピカでなくてはならないので当然の作業でしょうか。あるいは保護も兼ねていたのかもしれませんが。
現在はあたり一帯セットの痕跡は見当たらず、きっちり原状回復?されているようです。
地形を変えたままほったらかしの『ポンヌフの恋人』とは、さすがハリウッド、ちょっと違いますかね?
ローマ入城
エリザベス・テイラー版『クレオパトラ』……といいますか、ハリウッド映画のスペクタクルシーンといったらこれ的な、度肝を抜かれる場面。
セットと言うにはあまりにもボリュームがあって、ホンモノ感がしっかりと伝わってきます。
比べてしまうと、どうしてCGはいくら良くできていてもCGって気づいてしまうのでしょうね??
撮影はチネチッタのスタジオ(のはず)。
コメンタリーによると、お天気が期待できないイギリスのパインウッドからわざわざチネチッタにスタジオを替えたのに、予想外の雨で撮影はたびたび中断されたとか。
またクレオパトラと息子が乗る巨大なスフィンクスは、電動では無く本当にエキストラたちが引っ張っていたそうです。
参考までに、現在のチネチッタのオープンセットをウェブマップで見るとこういった感じ。
お~、きっとこれは『テルマエ・ロマエ』でも使われたセットですね。
タルソスの城
後半 0:06
山上の城。
アントニー(リチャード・バートン)がルフィオにハッパをかけられていたところ。
タルソスという設定のはずですが、撮影場所は調査中。
海辺の村
後半 0:09
クレオパトラの船を見送るエジプトの村人たち。
設定はエジプトのはずですが、船の背後に見える島がイスキア島(後述)の東側に見える島に似ています。
プロチダ島に隣接するヴィヴァラ島W。
なので、撮影場所はおそらくイスキア島(の東側)。
具体的にはおそらくこのあたりの入江と思われますが、確証はありません。
クレオパトラの船が入ってくる港
クレオパトラの船が入ってくる様子をアントニーとルフィオが高いところから見ています。
可愛らしい船かと思いきや、桟橋からはみだすほどの大きさにびっくり。
この桟橋こそまさしく『太陽がいっぱい』で幾度か登場したイスキア島の桟橋です。
『スカンポロ』で使った画像を再掲しますと、
アラゴネーゼ城(Castello Aragonese)W からの眺めです。
『クレオパトラ』や上の画像では大きな桟橋がひとつしか見えませんが、『スカンポロ』(58)と『太陽がいっぱい』(60)ではとなりに短い桟橋がもう一本見えます。
短い桟橋は、『クレオパトラ』の撮影前にすでに無くなっていたことになります。
アクティウムの海戦
後半1:02
クレオパトラが輿に乗ってやってくる高台。
周辺や左手にマットペインティングを加えていますが、リアル部分は先ほどの桟橋のわずか数百メートル南側、アラゴネーゼ城の南西側を使っています。
先に「とても面白いことがわかりました」と書いたのはこのことで、これだけの大作なのに全然違う場面のロケを隣接する場所で行うというのが意外だったのでした。
後半1:06頃、盾をたたき檄を飛ばすアントニーの背景のアングルは、こちら↓のもう少しアラゴネーゼ城寄りでしょうか。
実際に海上で撮影していたことがわかります。
Screenshot of Richard Burton from the trailer for the film Cleopatra. via Wikimedia Commons (public domain) |
後半1:07頃、御座船に光で情報を送るハイテクなことをしていたのは、このくらいのアングル。
資料
ロケ地マップ
イスキア島で撮影された映画。
更新履歴
- 2015/08/09 新規アップ
コメント
居ながら様、
先日、たまたまクレオパトラを観る機会がありまして、たいへん興味深くルポ拝見致しました。大駄作と称する方々もいるとか。
そのような向きもなくはないのですが、
私は結構好きな映画です。
キンキラキンで入場してくるクレオパトラの
巨大な玉座、凄いですよね。
あのシーンを耐えられるのはエリザベス・テーラーしかいません。
テーマ曲も甘美ですばらしい。
ロケ地も知ることができて、なおさら楽しめました。ありがとうございます。
たかマックィーンさん、コメントありがとうございます。
まさかアレキサンドリアのセットの場所がわかるとは思わなかったので、自分でも調べていてとても楽しめました。
1本の映画としてもそれほどひどい出来とは思えませんが、なにせ4時間あると通して見るのが大変です。6時間あったというオリジナル版はどんな風だったのか、怖いものみたさ?でちょっと見てみたい気もします。