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『マレーナ』 Malèna (2000)

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作品メモ

『カオス・シチリア物語』(84)『父 パードレ・パドレーネ』(77)『サン★ロレンツォの夜』(82)『グッドモーニング・バビロン!』(87)『笑う男』(98)と、タヴィアーニ兄弟監督作を続けて取り上げましたが、ロケ地としてはシチリアに始まりシチリアで終わっていたことになります。
そこで今度はシチリア島で撮影された映画をピックアップ。

同地を好んで撮影に使った監督と言えば、やはり同島出身のジュゼッペ・トルナトーレ監督。
代表作『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)はエントリー済みですので、まずは『マレーナ』から。

戦時下で夫が帰らぬ人となった美しい女性に憧れる少年のお話。
イタリア版『おもいでの夏』とか言ってしまうと身も蓋もありませんが、イタリア映画ということで言えば、『青い体験』の血統も入っているかもしれません。
ヒロインの趣も少々異なり、ジェニファー・オニールが楚々としていたの対し、モニカ・ベルッチ演じるマレーナは町中の男がいっせいに振り返るほどの引力を発揮しています。
いつも表情を変えずにツンと前を向き、まるで自らの重力によって相対論的に時間の流れを遅くしてスローモーションで歩いていくような印象がありますが、同じ頃の『マトリックス2・3』もそんな演技でしたね。

最近Netflixでフランスのドラマ『エージェント物語』を見ていますが、モニカ・ベルッチもS3E2に登場。相変わらずの美しさで画面いっぱいに魅せてくれました。
この『エージェント物語』(Netflix IMDbWikipedia)、パリのエージェント事務所が舞台のコメディなのですが、毎回有名俳優さんが本人役で実名登場して、それだけでも眼福となります。
フランソワーズ・ファビアン、ナタリー・バイ、イザベル・アジャーニ、ジュリエット・ビノシュ、イザベル・ユペール、シャルロット・ゲンズブール等々……知らない俳優さんも結構いますが、1つの番組でこれだけの俳優さんが出てくれれば満足というもの。
こういうのがタブレット片手に寝っ転がって鑑賞できるというのがまたネット配信の良いところです。

……というわけで主演女優さんのことばかり書きましたが、映画全体としては第2次世界大戦開戦の日から戦後にかけて、シチリアの世相や風俗が描かれていて興味深いですし、美しく捉えられたシチリア各地の景観も堪能できるかと思います。

ただ、少年たちが見守る中、マレーナがツンとすまして歩いていく海沿いの道は、シチリアではないんですよね 😅

監督脚本ジュゼッペ・トルナトーレ。
撮影ラホス・コルタイ、音楽エンニオ・モリコーネ。

ロケ地

IMDbでは、

Morocco Syracuse, Sicily, Italy
Noto, Syracuse, Sicily, Italy (Castelcuto)
Messina, Sicily, Italy
Taormina, Messina, Sicily, Italy
San Domenico Palace, Taormina, Messina, Sicily, Italy
Ruderi di Poggioreale, Trapani, Sicily, Italy

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

『おもいでの夏』は舞台となる小さな町を雰囲気含めてそのままうまく活用していましたが、『マレーナ』はシチリア全体から良さげな場所をピックアップし、編集によって監督が抱く町のイメージを作り上げている風ですね。
あちこち散らばっている分、ワープの連続で、ロケ地チェックもやりがいがありました。

タイムスタンプは日本公開版。

OP参戦の日

0:01

設定ではカステルクトという町。
架空の名称で、撮影場所はIMDbのリストではノートWが示されていますが……

Noto, Syracuse, Sicily, Italy (Castelcuto)

上述の通り、実際にはノートに限らずシチリア各地を組み合わせているようです。

路地

最初のショットは、路地のような狭い道を、ファシスト政府の車がムッソリーニの演説を告知しながら進んできます。
これはおそらくノートの町と思われますが、さすがに具体的な場所は不明。

階段

次は、兵士が駆け下りながら呼びかけるショット。
これはノートの町で、東西に伸びるこちら↓の通りのほぼ中央。

Via Camillo Benso Conte di Cavour

自転車屋

路地が広がったような小さな広場では人々がラジオに聴き入ろうとしています。
窓の向こうに山が見えますので、これもノートでしょうか?
粘ればわかるかも。

この場面、「新品を買うゆとりなんかないよ」と父親が両手を前に出して嘆くジェスチャーを披露。
『モンタルバーノ』で感情がたかぶった時に登場人物がよくやる仕草ですが、これだけでなんとなくご当地の雰囲気が出ていますね 🙂

自転車で走り抜ける広場

ここはシラクーザにワープしています。ノートから見れば北東へ約30km。
南東に突き出たオルティジャ島。

Morocco Syracuse, Sicily, Italy
シラクーザ大聖堂Wが面するドゥオモ広場

群衆シーンは迫力ありました。
この広場は、その後劇中何度も登場。

その後アーチをくぐり抜けますが、すぐ後で少年たちがマレーナを先回りして待っていたのも同じ場所。
そちらの方が手がかりが多いので、メモはそちらで。

マレーナとの出会い

海沿いの道、マレーナの家

0:05

マレーナの家が面した通り。海沿いに伸びていて、彼女が歩いていくのを少年たちが待ち受けています。

これはシチリアではなく、IMDbのリストにあるモロッコ。
具体的には、背景に昔の要塞が見えますので、それが手がかりになりました。

大西洋に面したアル・ジャディーダ(El Jadida ポルトガル語でマサガン Mazagan)W。カサブランカの南西90km。

背景の要塞は、ポルトガル人が築いた要塞都市で、Cité portugaiseWとして世界遺産となっています。
映画で写っていたのは、北東の角の部分。マップでは、Bastion Saint-SébastienWと示されています。

「海辺の道」はその北側。

少年たちが並んで座っていたのはおそらくこのあたり↓

  • 33.260133,-8.502699

現在は向かい側の道路間際に建物が建っていますが、Google Earthの時間スライダーでできるだけさかのぼりますと、2002年4月29日時点ではその建物は見られません。

マレーナの家はおそらくこの↓あたり

切妻屋根の建物は、大木がある緑豊かな庭を含めておそらく全体がセット。
右隣の寄棟屋根の家も同様。
その先に大きな広告だかスローガンのようなものが掲げられていますが、おそらく奥の建物の壁を利用したもの。
その他道路沿いの建物も、屋根が斜めになっているなど、あれこれ擬装されているようです(モロッコなら陸屋根)。

自転車で追いかける道

城壁の上のような通路で、話しながら自転車を走らせる場面。
上述要塞の南側のこのあたり↓

映画では背景の建物の屋上に洗濯物がひるがえっていますが、それだけでなぜか急にイタリア的雰囲気となりますね 🙂

町の門

マレーナがやってくるのを先回りするところ。
石造りの門で、バカボンやハジメちゃんのような渦巻き模様がはいっているのが特徴的。
少し前に自転車で走り抜けている他、後ほどマレーナの夫が戻ってきた際もここをくぐります(1:17)。

調査中。
周辺の景色から、少なくともモロッコではなくシチリアにワープしていると思われますが、地形的にIMDbのリストのどの場所とも違うような気がします。
門に至る道には両脇に石垣がありますが、これも、『カオス・シチリア物語』で学んだように、「ムーロアセッコ」と呼んでよいのでしょうか?

町の俯瞰

0:06

マレーナの後ろ姿を見送ったあと、学校の場面に移る前にインサートされる町の外観。

これはシチリア南部のシクリ(Scicli)Wにワープ。
こちら↓からカメラ南西向きでシクリの街全体を見下ろしています。

『カオス・シチリア物語』の第1話で、母親が坂道を登っていくロングショットもほぼ同じカメラ位置ですね。

白い海岸

0:07

悪童たちが比べっこしていたところ。
男子がアホなのは万国共通 (-_-;)

シチリア島南西部のこちら↓へワープ。

Scala dei TurchiW

マレーナへの手紙をしたためる場面(0:17)や、レコードを放り投げる場面(1:14)でも登場しています。

尾行

友人たちと離れ、ひとりで尾行する場面。

自転車を停めた角

0:18

坂道を降りてきて停めたのは、ノートのこちら↓

Corso Vittorio Emanuele, 72

扉の前の階段

見つからず石段に腰をおろした脇を、建物から出てきたマレーナが悠然と降りていきます。

場所は「自転車を停めた角」のすぐ先のこちら↓ですが(111 Corso Vittorio Emanuele)……

扉の前の階段はSVでは見当たりません。
周囲を見ても、ここの建物だけ床が立ち上がっているのは不自然ですから、3段の階段(と扉)はセットではないでしょうか。
「彼女を見失った少年ががっくりと腰をおろした脇を、彼女の美しい脚がかすめていく」てな絵を撮りたかったのでしょうね。

広場

その先は、シラクーザのドゥオモ広場にワープ。
南側から北へ向かって進んでいきます。

途中手にぶちゅ~っとキスをしたオヤジはどこかで見たことがあるのですが、思い出せず……

https://www.imdb.com/title/tt0213847/mediaviewer/rm3018168576/

マレーナが通っていた家

浮気相手?と思いきや、後ほど相手が誰だか判明します。
場所は不明。

校庭

0:25

水際の広々とした校庭で、体操の時間。
マレーナの夫が戦死したとの情報がもたらされます。

シラクーザが一番可能性が感じられたので、マップをぐりぐり回して見つけました。
オルティジャ島に隣接するこちら↓

教会内部

0:29
柱の聖職者の像に願い事をするところ。

シラクーザ大聖堂Wの内部ですが、SVで見る限り像は見当たりません。

自宅

0:35あたりではっきり写ります。
建物や坂道が特徴的でしたので、ノートの町を探して見つけました。
かつては修道院の建物で現在は学校のようです。

Via Antonio Sofia, 78

  • Google Maps(SV)
  • 36.893672,15.069398
  • https://it.worldorgs.com/Catalogare/noto/chiesa/chiesa-di-santa-maria-del-ges%C3%B9-e-convento

http://www.hdemiavaldinoto.com/ateneo-accademia-belle-arti-noto

噂をする広場

0:39

ひと騒動の後住人たちがそれぞれうわさ話を展開する広場。
これは「海沿いの道」のモロッコ、アル・ジャディーダ。

城塞内側の東の端で、マップでは「アシュミ・バオバ通り」とある通りが東側の城壁とぶつかるところ。
兵士の乗った軍用車はこの通りをやってきて右折、一緒にカメラが右へパンすると半円のゲートとスロープが写りますが、こちら↓のSVで確認できます。

通りをやってくる軍用車の背景に見えるのはこちら↓の建物。現在は教会ではないようです。

1:11

マレーナが町を去るところ。
後に夫が後を追う場面でも登場。

設定ではカステルクトの駅。
撮影はノートのノート駅をホームの東端から捉えています。

夫が戻ってきた広場

1:14

マレーナの夫ニノ・スコルディーアがバスで復員してきたところ。
戦火の跡が生々しい情景ですが、1968年の地震によって廃墟となったこちら↓の村をうまく撮影に利用しています。

Ruderi di PoggiorealeW, Trapani, Sicily, Italy

夫がからまれる教会前

1:17

シラクーザのこちら↓の広場

piazza San Giuseppe Siracusa

教会は

Chiesa di San Giuseppe Siracusa

市場

ラスト近くの市場。
ふたたびモロッコ、アル・ジャディーダで、「海沿いの道」が城壁に突き当たるあたり。

ロケ地マップ

資料

更新履歴

  • 2021/10/27 新規アップ

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