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『上海の女』 (1952)

決定盤 李香蘭(山口淑子)大全集

作品メモ

日本映画専門チャンネルの「李香蘭、そして山口淑子」特集に合わせて、もう一本。

http://www.nihon-eiga.com/osusume/sengo70/rikouran.html

これで同特集に合わせた拙サイトの記事はこういったラインナップとなりました(年代逆順)。

日本映画専門チャンネルでは引退記念作品『東京の休日』(1958)も放送されていますが、こちらはロケ地的な興味はあまりわかない作品なので、拙サイトの特集もこれにておしまい。
この他これまで山口淑子出演作は、

も記事をアップしていますので、よろしかったらそちらもどうぞ。

『上海の女』は戦後の東宝映画。
終戦間際の上海を舞台に、日本政府、南京政府、重慶政府の特務機関員たちが抗争を繰り広げる中、恋に落ちてしまった日本の諜報員(三國連太郎)と中国の歌姫(山口淑子)の運命を描きます。
出演は他に荒木道子、二本柳寛、加東大介、沢村貞子等。
中国人役も全部日本の俳優ですが、場面に応じてきちんと日本語と中国語が使い分けられているようです。

監督稲垣浩。山口淑子で続けて3本撮っていて、前後が『戦国無頼』『風雲千両船』の時代劇。
撮影玉井正夫、音楽団伊玖磨。

この映画は『東遊記』あたりとは違っていろいろな映画サイトに資料が載っていると思いますので、詳しいことはそちらをご覧ください。

ロケ地

設定は上海ですが、撮影は日本国内ですね。
ぱっと見すぐにわかったのが横浜で、見覚えのある場所が上海に見たてられて登場します。

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

上海

OPの説明書きに続いてホンモノの上海の外観が数ショット登場しますが、これは『蘇州夜曲 (”支那の夜”より)』で使われたフィルムの使い回しかと思います。

交差点

主役2人が知りあうきっかけともなる事件が起きるところ。
(日差しから)おそらく南からやってきた車は、右折して去って行きます。
数車線分の広い道で、両側には2,3階建ての煉瓦作りのビルが連なっています。

撮影場所はちょっと迷いましたが、煉瓦作りの建物がヒントとなりました。
昔の空撮画像で、東京丸の内のいわゆる三菱村のあたりを重点的にチェックした結果、こちらだと判明。

車は丸の内仲通りを南からやってきて、現ブルックスブラザーズの角を右折していきます。
あたり一帯は60年代にオフィスビルが建てられ、さらに昨今再開発されているので、当時の面影はまったくありません。
今このあたりで煉瓦造りの建物といえば、再開発とともに復元された三菱1号館ぐらいでしょうか。

ブルックスブラザーズが入っているビルは「丸の内パークビルディング」。
昭和の時代、三菱地所が手がけた物件は「ビルヂング」と表記されていましたが、いつのまにか「ビルディング」となっています。

丸の内仲通りは現在ブランドショップがずらりと並び、休日も人が大勢歩いています。
今ならここでこうした大がかりなロケを行うのは難しいかもしれません。
当時としても(おそらく休日を利用したのだと思いますが)都心の一等地での撮影は大変だったことでしょうね。
『東京ファイル212』Tokyo File 212 (1951)の東京駅前の場面を連想しましたが、こちらはそれ以上の迫力で、つかみは十分の場面に仕上がっていると思います。

ナイトクラブ

“百楽門 PARAMOUNT”   セットでしょうか。

序盤、登場シーンで歌うのは「春風春雨」。
0:40頃、圧巻のショータイムで歌うのは「夜来香」と「ふるさとのない女」。

 
 

「ふるさとのない女」で日本語に切り替える演出はお見事。
三國連太郎さんでなくても、とろけてしまいます。

李莉莉のアパート

“華盛公寓”
これもセット?

公園

0:30
真鍋が李親子と歩くところ。
並木道が印象的。中国風の建物も見えます。
場所は調査中。

中華料理店

0:34
店主が気を利かせてかけたレコードは、『白蘭の歌』でも流れた「何日君再来」W
その記事でもちらりと触れたように、この時代はこういう扱いとなっていたようです。

 
 

車から目撃

0:37
店を出た後2人で歩いているところを、車中の劉(加東大介)が見つけるところ。
撮影場所は横浜地方裁判所W前です。

たまには自前の画像をば。
先月横浜をブラブラした時のものです。

建物は2001年に建て替えられていますが、低層部分は以前の姿が復元されていますので、映画とほぼ同じ。
映画ではその後ろに神奈川県庁の特徴的な建物(キングの塔)が見えていますが、今は間にビル(横浜地方検察庁)が建っているため見通しが悪くなっています。

こちらが神奈川県庁本庁舎「キングの塔」。

直後のショットで、来島たちの車が右折するのはやはり同じ場所。

散策

その後2人が話しながら歩くのを移動カメラで撮る場面は別の場所かと思われますが、調査中。

夜の公園

0:47
これもセットでしょうけど、シルエットで和平女神像(欧战纪念碑)Wとおぼしき像が浮かび上がっていて、上海的雰囲気を盛り上げます。
大きさはだいぶ違っているようですが……

ホンモノはこういった様子(1928年)。

こちら↓は、『上海グランド』でもチェックした上海影視楽園(上海影视乐园)Wにある像。

公園のベンチ

1:01
莉莉が養父李克明と話すところ。
撮影場所は横浜の山下公園で、『愛染かつら』で冒頭母子が座っていたあたりが背景に写っています。

一段下がっているところは1938年の『愛染かつら』では水辺(船着き場)となっていましたが、52年のこの映画でも同じように見えます。

先月山下公園にも足を伸ばしてみたら、花壇のそばに案内板が立っていました。
その解説では55年頃に埋め立てられたとあります。

クリックするとPicasaウェブアルバムに移動します。
そこでさらに右上の虫眼鏡アイコンをクリックすると、画像を拡大して見ることができます。

パブリックドメインで全然構わないのですが、Picasaウェブアルバムの設定ではCC BYより緩くはできないので、CC BY 3.0としました。

孤児院

設定では、徐家匯にある「○西孤児院」(○は「濾」に似た字)
セットではなくロケに見えますが、場所は不明。

ラスト

どこぞやの廃工場か倉庫かと思いますが、突き止めるのはほぼ無理かと。

資料

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更新履歴

  • 2022/06/16 各マップ情報更新
  • 2015/03/21 「関連記事」項目追加
  • 2015/02/07 新規アップ

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