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『質屋』 The Pawnbroker (1964)

The Pawnbroker [DVD] [Import] (1965) /質屋

作品メモ

ひとつ前のエントリー『ミスター・アーサー』でアーサーの祖母を演じていたジェラルディン・フィッツジェラルドの出演作。
フィルモグラフィーをさかのぼって見たらこの作品があったので、ニューヨークつながり?でチェック。
同じニューヨークでも『ミスター・アーサー』とは別世界。60年代のイーストハーレムのディープな地区で、シリアスなドラマが展開します。

辛い体験によって心をかたくなに閉ざしている質屋の店主ソル・ナザーマンにロッド・スタイガー。この後『ドクトル・ジバゴ』(65)『夜の大捜査線』(67)と全然違ったキャラクターを演じ分けています。3本並べるととても同一人物とは思えません。
彼に支援を願いに来た地元ユース・センターの職員マリリン・バーチフィールドにジェラルディン・フィッツジェラルド。キャストの一番最後にクレジット。
ソルの店と頻繁に取引しているロドリゲスにブロック・ピーターズ。どうしても『アラバマ物語』を連想してしまいますが、ここではピカピカな暮らしをしている一方で裏ではあくどいことをしているという役。どうやらソルの店をマネーロンダリングに利用しているようです。
店の手伝いをしている若者ヘズス(Jesus=ジーザス)にハイメイ・サンチェス。すぐ近くに母親と2人で住んでいます。いずれ自分の店を持つつもりですが、悪い仲間がいる様子。いつも街を駆け回っていて、無表情で不動のソルとは対照的。

ソルは友人らしい友人もいない状態ですが、時折訪れる家があり、そこでは亡き友人の妻が義父の面倒を見ています。
父親はソルに悪罵を投げつけますが、ソルは感情を押し殺して黙って聞くだけ。
このメンデル(Mendel)役は、シドニー・ルメット監督の父親Baruch Lumet。

  • http://www.jewishfilm.org/archive/lumet.htm

貧しい地区にあるソルの店には、数ドルの現金を得るために様々な人々がやってきます。
出演者のリストを見ても覚えのある俳優さんはいませんでしたが、モノクロのカメラで切り取られた彼等の演技はとてもリアル。セリフの端っこと表情だけでもそのキャラクターが的確に表現され、ドラマに奥行きをもたらしています。

この他、IMDbの出演者リストによれば、モーガン・フリーマンが通行人として登場しているようですが、さすがにどのショットだかわかりませんでした。

監督シドニー・ルメット、撮影ボリス・カウフマン、原作エドワード・ルイス・ウォーラント(Edward Lewis Wallant)。

Pawnbroker/Deadly 音楽クインシー・ジョーンズ。
IMDbのフィルモグラフィーでは、”Pojken i trädet”(1961)という作品に続く映画音楽2作目。
“Soul Bossa Nova”も流れます。

手元にあるのは2011年にWOWOWで放送された時のものですが、日本ではソフト化されていないようで、そうなると見られる機会は非常に限られそうです。
『ミスター・アーサー』みたいにタブレット片手に寝っ転がって呑気に見る映画ではありませんが、こういった埋もれた旧作こそネット配信でもっと見られるようにしてほしいと思います。  

 
 
 

ロケ地

IMDbでは、

185 N Marginal Road, Jericho, New York, USA (house in opening scene)
1642 Park Avenue, Manhattan, New York, USA (Nazerman’s pawn shop)
116th Street, Manhattan, New York City, New York, USA
Hoyt-Schermerhorn Street Subway Station, Brooklyn, New York City, New York, USA (Subway scene)
Long Island, New York, USA
N Marginal Road & Route 106, Jericho, Long Island, New York, USA (opening scenes)
New York City, New York, USA
Park Avenue, Manhattan, New York City, New York, USA

質店はハーレムの高架線脇にあり、多くの場面がその周辺で撮影されているようです。

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

ソルの住まい

デ・パルマも顔負けのスローモーション場面に続いて映し出されるハイウェイ脇の住宅地。

185 N Marginal Road, Jericho, New York, USA (house in opening scene)
N Marginal Road & Route 106, Jericho, Long Island, New York, USA (opening scenes)

とIMDbでははっきり場所が書かれていますが、個人宅と思いますので、マップ表記はややあいまいに。

彼が一緒に住んでいるのは、妻の妹とその家族。
25年前に妻を亡くしていることが語られます。

タイトルバック

0:11
ソルがニューヨーク市内へ車を進めるショットが続きます。

映画タイトルがクレジットされる時に渡っているところ。
標識が”125 St NEXT RIGHT”とあります。

Harlem River lift bridgeW

“BROCK PETERS”

分離帯のある幅広い道路を横断します。
Lenox Aveを137th stが横切るところ。

“with TELMA OLIVER…”

ハンドルを切って高架沿いに進んでいくところ。

“with TELMA OLIVER…”が消える頃

番地標記が”1682″とあります。建物はもうありません。

高架下

左折して高架をくぐるところ。

高架下の次

建物の番地標記が”1674″とあります。
この建物はおそらく現存。

車を停めたところ

このあたりでしょうか?

質店

物語の中心にある店。
映画を通していろいろな角度から写されますが、ラスト近くの一連のショットがいちばん位置関係を把握できるかもしれません。

1642 Park Avenue, Manhattan, New York, USA (Nazerman’s pawn shop)

現在はこういった感じのところ。

お店があったとおぼしきあたりは、ストリートビュー(2014年9月)では4階建てのビルと空き地(右側)になっています。
4階建てのビルが質店があったところで、一度建て替え済み。

映画で質店の右側の建物(1階が教会)は最近まで建っていましたが、隣のもう一棟とともに、2014年3月12日のガス爆発事故により全壊しています。SV(14年9月)で空き地となっているのはそういう事情から。
この事故は日本でも報道されました。

ヘズスの一家の部屋があった建物はそのさらに右側でしたが、建て替えられているようです。
交差点に面した建物は建て替えがあったかどうか不明。
道路(116st)を挟んだ向かいのビルは今でも同じ姿で残っています。

※15/7/27追記
こちら↓は2007年9月のストリートビュー。
現在とは逆に、質店のあったところが空き地となり、右側の教会が入っていた建物が映画と同じように建っています。

公園のベンチ

0:50 (上掲動画10秒目)
向かい合って座ったショットの背景の建物はおそらくこちら。

なので、公園はおそらくこちら。
ストリートビューで見ると、入口に”HARLEM ART PARK”とあります。

ホテル

1:00
ヘズスが彼女に会いに駆け込んだところ。
看板が”PARK HOTEL”と出ています。 おそらくこちら↓の画像のもの。

  • http://weber-street-photography.com/2012/05/18/park-ave-hotel-1986/

このあたりにあったのではないかと思われますが、確証はありません。

さまよう夜の街

1:16

ロドリゲスにやり返されて、うちひしがれたソルがさまよう街。
細かいショットが重ねられますが、中にはぱっと見わかるところがありました。

アポロ・シアター

アポロ・シアターW

画像は1946~48年撮影。

リンカーン・センター

向って右側の、エイヴリー・フィッシャー・ホール(Avery Fisher Hall)W

ウエストサイドまで歩いてきました。アポロシアターからはかなりありますね。
62年にオープンとのことで、まだできたてです。

マリリンの住まい

1:18
大きな棟が並ぶ集合住宅。
リンカーン・センターの近く。

Lincoln TowersW

部屋はアオリのショットの行く手にある北側の棟の南側。
部屋からの眺めはこういった感じ。

設定は早朝で「朝の景色が素敵なのでここを選んだ」と言っていますが、眺めはハドソン川で、差しているのは午後の陽。
このショットで、現在川沿いに伸びている緑地はかつては線路であったことがわかります。

きちんと確認したわけではありませんが、この集合住宅エリアは『ウエスト・サイド物語』の冒頭、ちらりと見えるガスタンクがあったあたりではないでしょうか。

地下鉄駅

Hoyt-Schermerhorn Street Subway StationW, Brooklyn, New York City, New York, USA (Subway scene)

ハーレムではなくブルックリン。

マーケット

1:36
ヘズスが質店近くの交差点から高架沿いに1ブロックを駆け抜けて入る店。

出てきたのはその向かい。

その後悪い仲間と打ち合わせした建物は建て替えられています。

教会

1:38 ヘズスが駆け込んだところ。
位置としてはこのあたりですが、建物は周りの建物含めて建て替えられています。
カメラ南向き→西向き。

ラスト

資料

更新履歴

  • 2015/07/27 「質店」追記
  • 2015/02/15 新規アップ

コメント

  1. yuki より:

    昔の日本で撮影した映画を読みまして面白くて、あれこれ読んでいるうちにここに来ました。衛星放送でたまたま『ゴースト・イン・京都』を見まして、「何だこれは」と思ったことから始めてこのサイトを訪れました。当時京都に住んでいましたのでどのあたりの街並みか分かって満足です(京都と言いながらあまり街並みが出てこないのが残念)。
    『質屋』のほうは、以前これについて文章を書いたことがありこだわりがある映画でしたので、ロケ地の今が分かってこれまた満足しました。詳しい情報ありがとうございます。USJを訪れるたびに、街角にある質屋を訪れて懐かしく(?)思っていました。その建物が建て替わっているのは残念。隣の建物が爆発事故で崩壊したとは驚き。ラストシーンの場所がほとんど同じで感激。情報満載ですので、また訪れたいと思います。

  2. 居ながらシネマ より:

    yukiさん、コメントありがとうございます。
    なぜか『ゴースト・イン・京都』がムービープラスで放送されましたね。それで拙サイトに来てくだるというのもうれしいですが、コメントを入れてくださったのが『質屋』の方だったというのがまたとても有り難いです。
    お書きになったものがもしWebで読めるものでしたら、ご遠慮なくリンク張ってください。
    拙サイトはどうしてもロケ地関係に内容が偏ってしまっていますので、みなさんのご参考になるようなことなら何でも歓迎です。

    ところでUSJは行ったことがないので、質屋というのが気になります……きっと映像でよく見るお店が並んだ通りにあるのでしょうね

  3. yuki より:

    USJの街並みには色々な映画の舞台が再現されていますが、その中にあの質屋が並んでいます。映画を見てる人は少ないでしょうから、何の店なのか気づく人はほとんどないでしょうけど。
    撮った写真をコピーできたらいいのですが、ここにはできないですね。

  4. 居ながらシネマ より:

    そうだったのですね。それですと凄い地味目で誰も気づかないかもしれませんね。
    がぜんUSJに行きたくなってきました。
    画像ぜひ拝見したいところですが、(主にセキュリティ上のことから)コメント欄では画像添付機能をつけないようにしていまして……
    もしご面倒でなければ、管理人メルアドは、inagara.cあっとgmail.comですので(「あっと」はアットマークに直してください)、そちらへ捨てメルアド等から添付して送っていただけましたら幸いです。

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