『津軽じょんがら節』 (1973)

B07MNP5HNG

あんた、良かったわね
ふるさとが見つかって

作品メモ

ひとつ前のエントリー『夜叉ヶ池』までは、『竹山ひとり旅』『はなれ瞽女おりん』と見てきましたので、今度はこちら。斎藤耕一監督の『津軽じょんがら節』をチェック。

『竹山ひとり旅』でもちらりと書きましたが、1973年といえば「ジァン・ジァン」での高橋竹山さんのライブなどで津軽三味線が注目されていた頃かと思います。ブームが映画のきっかけであったかどうかはわかりませんが、クレジットの音楽で竹山さんの名前もありますし、おそらくは時系列的にそうなるのではないでしょうか。

タイトルバックで流れる三味線がその「津軽じょんがら節」で、それに聴き入る目の不自由な娘に哀しい過去が去来するというのが冒頭のつかみになっています。
主役は娘ではなく、故郷の村へ戻ってきた女と連れのヒモっぽい若い男。毎日ブラブラしていた男が娘と知り合い、やがて気持ちを通わせ、村での生活にもなじんでいくのですが、その一方で年上の女とはぎくしゃくし始めるという展開とあいなります。
さらに男は都会で何かしでかしたようで、次第に追っ手の影が迫ってくるという、これはもうフラグが立ってしまった状態でしょうか。

『おりん』や『竹山』と比べて、意外にも雪深い景色は登場しませんが、荒々しい津軽の海を背景に、ままならぬ男女の姿が望遠レンズで捉えられ、津軽三味線の音色が鳴りひびく……そんないかにも斎藤監督らしい雰囲気優先の叙情的な作品に仕上がっています。

キャスト

若い男を連れて故郷に帰ってきた中里イサ子に江波杏子さん。接客を伴う飲食業の雰囲気を濃いめに漂わせています。
故郷に居所がなくなり男の気持ちもつなぎとめられない年上の女を好演して、キネマ旬報主演女優賞受賞。
一昨年亡くなられたとき、どうしても女賭博師シリーズが代表作に挙げられてしまっていましたが、個人的に任侠ものはあまり好みではなく、まずは『津軽じょんがら節』の赤いコート姿や白いセーター姿が思い出されました。

連れのチャラチャラっとした岩城徹男に織田あきらさん。クレジットでは<新人>と添えられていますが、戦隊ものならレッド間違いなしのイケメンくんですね。
地元の娘杉本ユキに中川三穂子さん。
村の若者赤塚豊に寺田農さん。体を悪くしていて、出稼ぎにも出られないという設定です。
漁師塚本為造に西村晃さん。その息子は以前イサ子とともに村を出て行ってしまい、今は行方知れず。ということで、イサ子に対しては言いたいことが山ほどあり、イサ子は為造と目を合わせられません。
イサ子が勤めることになる飲み屋のオヤジ金山繁一に佐藤英夫さん。
そこで働く晴美に富山真沙子さん。金山の口車に乗せられてやってきたものの、話が違いすぎていて不満たらたら状態です。

他に特別出演として上村一夫さんや高信太郎さんなど人気漫画家の方たちが名を連ねていますが、これは花札賭博の面々ですね。
上村さんなど座の中心に居て、台詞がちゃんとあります。
多忙の方たちがロケ地に集合できるとは思えないので、東京あたりのスタジオ撮影だろう……と思いきや、現地で撮影されたとのことで、これにはビックリ。
それにしても、上村さんは早すぎましたね……

スタッフ

製作斎藤プロとATG。
監督斎藤耕一、脚本中島丈博・斎藤耕一、撮影坂本典隆、音楽高橋竹山他。

斎藤監督の70年代前半のフィルモグラフィを見ると、『東京⇔パリ 青春の条件』(70)、『旅路おふくろさんより』(71)、『内海の輪』(71)、『喜劇 花嫁戦争』(71)、『めまい』(71)、『約束』(72)『旅の重さ』(72)、『喜劇ここから始まる物語』(72)、『花心中』(73)、『津軽じょんがら節』(73)、『無宿』(74)、『再会』(75)と、日本映画の公開本数が転がり落ちていく中で作品を連打。しかも大半がスター俳優を配しての作品なので、これはもう人気があり大手(松竹)や芸能プロダクションから重宝されていた監督さんといっても良さそうです。
その中で、松竹や芸能プロではなくATGと組んだ『津軽じょんがら節』はちょっと立ち位置といいますか出発点が違っているかもしれませんね。

手元にあるのは、2013年に放映された日本映画専門チャンネルの<日本映画100選>特集での録画。
品田雄吉さんが解説を寄せていて、それによれば当時ATGの企画委員だった品田さんが、12月中に公開してキネ旬ベストテンの対象作とさせようと多賀祥介氏(ATGの製作者)と作戦を練ったとか。
結果見事日本映画第1位の他、監督賞、主演女優賞を受賞しています。
独立プロにとっては、受賞は名誉だけでなく興行や営業に大きく関わってくることでしょうから、この作品なら行けると、重点的にプッシュしたのかもしれませんね。

撮影監督の坂本典隆さんは、『約束』(72)『旅の重さ』(72)からスタートして、以後斎藤耕一監督作品の常連。
『竹山ひとり旅』『はなれ瞽女おりん』はスタンダードでしたが、こちらはシネマスコープ。
望遠で捉えた津軽の海は、シネスコスクリーンで見ると小ぶりの名画座でも十分迫力ありました。毎日映画コンクール撮影賞受賞。

ロケ地

ロードムービーではなく、設定上はひとつの漁村でお話が進みます。
そのため同じ場所が繰り返し登場。

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

長い木の橋

タイトルバックの他、徹男があやしい車にゆっくりと追い抜かれる場面や遠景など、幾度も登場。
イサ子が勤め始める飲み屋がたもと近くにありますが、そこからの眺めではぐいーんと途中で大きくカーブしています。

これは津軽半島の十三湖に架かっていた十三湖橋。『竹山ひとり旅』でも登場していましたね。
その後西側に十三湖大橋が架かり、こちらは撤去されています。
住所としては五所川原市十三でしょうか。

最後に掲載したロケ地マップへ、おおよその形と位置を示しておきました。

漁村

イサ子の故郷であり、主な舞台となる村。
ここは、十三湖から2kmほど北へ行った磯松(五所川原市)という地区で、景観や道路構成から判明しました。
新藤兼人監督の「撮影日記」に拠れば『竹山ひとり旅』でも撮影に使われているようですし、林隆三さんが草野大悟さんに殴られた脇元はすぐ北側のお隣。
季節の違いはあれど、荒ぶる波や雪囲いの家々など、景色は似通ったものがあります。

以下ピンポイントでわかるところだけメモしていきます。

海辺の道

0:03
冒頭ふたりがバスから降り、歩き始めるところ。
何かの看板(裏側)や木製の電信柱が立っています。
背景に荒々しい波が押し寄せていて、一見T字路の突き当たりですが、実際には海沿いの道が少し内陸側に曲がっていくところを超望遠で捉えているようです。

看板は後ほど出稼ぎのバスが出発する場面(0:59)で、海水浴場の案内と判明します。
そこで位置関係を確認すると、電信柱と看板は10m近く離れているように見えますから、望遠レンズの圧縮効果恐るべし。
斎藤監督はホントに望遠が好きですね。

リヤカー

0:09
江波さんがえっちらおっちらリヤカーを引いて、徹男はそのとなりをただ歩いているだけという、このあたりも男のチャラっとした感じが良く出ています。
場所は「海辺の道」と同じ道。現存している家もあるようです。

ラーメン拾った寺田農さんに呼び止められる時の背景↓

為造の船

0:19
船着き場で船を勝手にいじっていて為造に叱られたところ。
1:02頃の場面で十三湖橋が写っていますので、位置がわかりました。
十三湖橋北端の西側。現在の大橋の東側。

後半のシジミ採りも、その前あたりかと思います。住所としては十三。

鳥居

0:26

位置や形は違いますが、十三湖の南に位置するこちら↓の神社のものかも?

浜の明神(つがる市富萢町屏風山)

1:09
江波さんが歩く場面の背景はこういった↓感じですが、昔の空撮で鳥居は確認できません。

映画とは無関係のメモ書きですが、町内のこちら↓にも鳥居があったようですが、もうなくなっているようです。

荒波の岬

0:27頃
荒涼とした岬のロングショット。
これもやはり磯松からの眺め。

飲み屋

0:30 0:46
店名は<十美子>。
十三湖橋の北側。
ここ↓に斜めに道路が通っている跡がありますが、これが以前の橋につながっていた道で、お店の建物はそのすぐ傍。現存しているように見えます。

SVでは、橋があったあたりに何か碑文が見えますが、読み取れません。

出稼ぎのバス

0:59
出稼ぎの男たちを乗せたバスが走り出す場面。
停まっていたのは磯松のこちら↓

この場面で、冒頭二人がやってきた時の電信柱の位置がこのあたり↓と判明します。

  • 41.074294,140.323769

車内後部座席からの目線ではこういった↓感じ。

電信柱の手前左手に海水浴場の看板が見えます。「海辺の道」で突き当たりにその裏側が見えていました。
上でも書きましたが、このあたりの浜は、『竹山ひとり旅』の冬の場面で何度か登場しているはず。
今はテトラポッドで埋め尽くされ、海水浴場ではなくなっているようですね。

防波堤

1:12

徹男が走ってくる防波堤。
イサ子が手を振って迎えに行きます。

おそらく十三湖すぐ傍のこの位置。

ロケ地マップ

『竹山ひとり旅』と一緒のマップを作って見ました。

資料

更新履歴

  • 2020/11/24 新規アップ

コメント

  1. Bill McCreary より:

    どうもこちらの映画も取り上げてくださってありがとうございます。斎藤監督はほんと、「約束」での荒涼とした冬の日本海、「旅の重さ」での太陽がいっぱいの四国、日本海でも夏の日差しがまぶしい「無宿」(たしか京都の日本海で撮影しているはず)などロケに長けた方です。もっとも「無宿」は京都もよかったですが。

    特にこの映画はATGの映画なわけで、前にもコメントいたしましたように、ATGの低予算映画は、大島渚監督「少年」のように100%ロケみたいな映画もあり、ロードムービーとしてもすぐれていました。この映画はロードムービーではありませんが、ご指摘のように当時竹山が流行っていて青森の文化が見直されていたという背景もあろうかと思いますが、ほぼ移動しないでの撮影となると、予算面でも有利だったという側面もあるのかもですね。地方で滞在費も安いということもあったのかも。わかりませんが。

    >連れのチャラチャラっとした岩城徹男に織田あきらさん。クレジットでは<新人>と添えられていますが、戦隊ものならレッド間違いなしのイケメンくんですね。

    織田さんというと、個人的には「新幹線大爆破」を思い出します。彼も40になる前に芸能界を去ったと思いますが、クレジットで「<新人>」と表記されるくらい期待されたあるいは恵まれたデビューをしていても、なかなか芸能界で生き延びるのは難しいですね。最近の映画では、「新人」というのはあまり出てこないと思いますが、昔の映画を観ていて「新人」と出ている人が必ずしも活躍できなかったということを思うと、やっぱりちょっと残念です。

    たぶんこの辺りもいずれ行くと思いますので、写真が撮れればまたご協力させてください。

  2. 居ながらシネマ より:

    Bill McCrearyさん、コメントありがとうございます。
    おっしゃるとおり、この映画、低予算がうかがえますよね。
    それでも作品を量産していた斎藤監督が、その合間を縫ってあえてATGと組んで低予算で作ったというのは、思うところあってのことと思います。

    織田さんはもう芸能活動はやめられたのですね。実は失礼ながらお名前もあまりぴんと来ず、フィルモグラフィを見たら、やはり『新幹線大爆破』が目に付きました。

    写真撮られましたら、ぜひご協力ください。貴ブログとともに紹介させていただきます。

タイトルとURLをコピーしました