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『軌道からの帰還』 Возвращение с орбиты (1983)

映画チラシ 「ソビエトSF映画祭」不思議惑星キン・ザ・ザ//軌道からの帰還//テイル・オブ・ワンダー 他

作品メモ

またまた更新が滞ってしまいました。
ソチ冬季オリンピック開催中にせっせとソ連・ロシア映画を取上げて便乗しようかと思っていたのに~(汗)。
仕事の関係でテレビも映画も見ている時間がまったくなくなり、気づいたらオリンピックもパラリンピックもとっくに終わってしまっていました。
レコーダーはあっさり満杯、宅配レンタルしたDVDもそのまま返却という有様。サイトの管理もほったらかしになってしまって、すみません。
この間、コメントやメールをくださった皆様、本当にありがとうございました。

というわけで、オリンピックはほとんど見ていませんが、開会式は録画してあったのでまた見ることができました。
五輪旗が登場した場面でひときわ高い歓声が起こったのがテレシコワさん。
世界初の女性宇宙飛行士として国家的英雄となり、その後も輝かしいキャリア。体制が変わった今でもこの人気というのはやはり彼女は別格なのでしょうか。Wikipediaを見てみたら現役政治家ということで、ちょっとびっくりしました。

『軌道からの帰還』は彼女の宇宙飛行からちょうど20年後の映画。
ふたつ前のエントリー『シャーロック・ホームズとワトソン』でワトソンを演じたヴィターリー・ソローミン(Виталий Соломин)も出ている、宇宙飛行士たちのドラマです。

宇宙飛行士の医者 [DVD] 実はソ連宇宙開発史がらみで『宇宙飛行士の医者』をとりあげようと思ったのですが、ロケ地がまったくわからなかったので、かわりに(?)恐ろしく地味でおそらくほとんど知られていないこの『軌道からの帰還』をご紹介。
荒唐無稽なSFスペースアクションではなく、トラブルで軌道上から戻れなくなった飛行士たちの救出劇です。

宇宙からの脱出 [DVD] 事故そのものは架空の設定ですから、アメリカ映画で言えば、『ライトスタッフ』や『アポロ13』ではなく『宇宙からの脱出』(1969)みたいな立ち位置でしょうか。
とはいえ何せこの時代のソ連映画ですから、ハリウッド映画のように手に汗握るサスペンスで盛り上げるわけでもなく、お金を払ったお客さんを楽しませようというサービス精神にあふれているわけでもありません。
ビジュアル的にも限りなく地味……と思いきや、訓練の様子や実物大のステーションを使った宇宙遊泳の場面も登場、さらにはホンモノの発射台でのロケなど、特に宇宙開発ファンなら楽しめるのではないかと思います。

ロシア語原題はそのまま「軌道からの帰還」の意。
原題風に”Return from the Orbit”と英題がつけられていますが、IMDbでは英語表記のタイトルは見られず、年代も東独公開時の1985となっています。
(ふだんはIMDbの表記に倣っていますが、これに関しては1983年を採りました。)

allcinemaやKINENOTEでのデータで公開日が1989/06/27となっていますが、東京の池袋文芸座で開かれた「ソビエトSF映画祭」のこと。『不思議惑星ギン・ザ・ザ』も上映された、マニア?垂涎の催しでありました。
一般劇場公開はおそらくなかったかと思いますが、幸いその後バンダイからVHSが出ていますので、今でもかろうじて見ることができます。

キャスト&スタッフ

ようやく打ち上げメンバーに選ばれたВячеслав Мухин(スラーバ)にヴィターリー・ソローミン(Виталий Соломин)。ハッチの不具合で軌道上から帰還できなくなり、救助を待ちます。
ともに厳しい訓練を受けてきたПавел Кузнецов(パーシャ)にユオザス・ブドライティス(Юозас Будрайтис)。打ち上げ直前に妻を亡くしメンバーからもはずれて辞表を出しましたが、軌道上で事故が発生し急遽救助ロケットに乗り込みます。
訓練チームの頼りになるボス、Алексей Евгеньевич Свиридов(アリョーシャ)に、アレクサンドル・ポロホフシコフ(Александр Пороховщиков)。パーシャを救出に送り出したものの、なんとその宇宙船までもが流星雨にやられて酸素不足に陥る事態に……。
スラーバの恋人サーシャ(Саша)にタマラ・アクロワ(Тамара Акулова)。

監督アレクサンドル・スリン(Александр Сурин)、撮影セルゲイ・スタシェンコ(Сергей Стасенко)、音楽エドゥアルド・アルテミエフ(Эдуард Артемьев)。

ロケ地

IMDbには記載がありません。
いつも通り画面とにらめっこでチェックしていきましたが、あまり解明できませんでした。

この映画、御世辞にも編集やら見せ方やらがうまいとは言えません。
久々に見返してみたらまったくお話が頭に入ってこなかったので(汗)、シーンをいくつかピックアップして整理してみました。

ロケット打ち上げ失敗

冒頭。
主演2人が一度打ち上げに失敗しているという描写でしょうか?
それすらもスッキリしない編集です……。

80年代前半をふりかえると、米ソの国家的威信をかけた宇宙開発競争は75年のアポロ・ソユーズのドッキングでひと区切りがつき、限られた国力をより実用的な方向へ注力してきた時期。

ソビエトは70年代は地球周回軌道上にステーション、サリュートを打ち上げて、軍事&科学実験を着々と遂行。80年代前半は第2世代のステーション、ミールへの準備期間となっていて、軌道上にはサリュートシリーズの最後、7号が上がっています。軌道との連絡は、今でもシリーズが続いているソユーズ宇宙船が担当。

一方のアメリカは、70年代のスカイラブ計画を経て、81年からスペースシャトルの時代が始まっています。

野原

野原でサッカーに興じる男たち。
車の中でそれを見つめる男の所に電話がかかってきます。
「オリガが死んだ」
何も知らず笑顔でサッカーしているボーダーシャツの男の妻のことのようです。
電話を受けたのは「アリョーシャ」と呼ばれる大佐。訓練センターの上官です。

実家

水辺の家。
小さい桟橋と向こう岸に教会。
場所不明。

Uターン

葬儀の後モスクワ市内に戻った車がUターンするところ。
ホテル・ウクライナの前。

その先川縁まで出ると、『ボーン・スプレマシー』のカーチェイスで登場した橋の下となりますが、映画ではそこまでは写りません。

恋人の住まい

0:12頃。
恋人サーシャの住まい。
アパートはともかく、周辺の建物が気になるのでそちらを調査中。

※14/4/14追記
判明しました。
翌日窓から見える柱が並んだ建物はこちらの教会。

Большое Вознесение (Greater Church of the Ascension)W

窓から見えたのは、この画像の反対側、北側の部分。

車から降りたのは教会の北側(右の画像の反対側)のこの位置。

車は教会のすぐ西側の道をやってくるように見えますが、現在は教会の増築部分でふさがれていて道はなくなっています。
撮影当時はこういった姿。

その前の車がやってくるショットで背景に見える建物はこちら。

ロケット基地

0:20頃。
おそらく現カザフスタン共和国のバイカヌール宇宙基地(Космодром Байконур)Wかと思われますが、確証はありません。
発射台はいくつもあるので、特定は無理。
それより今ではこの基地がウェブマップで普通に見られることに感動 🙂
一見の価値あります(このためにこのエントリー作ったようなもの……)

スラーバが無賃乗車で(笑)降ろされたところ。
夜空を見上げると、突然飛行艇が着水する場面となります。

「クズネツォフ大佐着任します」

つまりここは2人が出会ったところを振り返った回想シーン。
あまりうまい編集とは言えず、混乱してしまいます……

管制センター

ホンモノでしょうか。
迫力があります。

訓練

0:37頃。
パーシャが列車でうとうとしながら訓練を回想している場面。
この厳しい訓練は『ライトスタッフ』などでもおなじみ。体験したら耐えられるわけありませんが、見ている限りはカッコ良すぎで盛り上がります。

確証はありませんが、場所は「星の町」(Звёздный Городок、ズヴィヨードヌイ・ガラドーク)Wガガーリン宇宙飛行士訓練センターWではないでしょうか。

この遠心力でGを生む装置は、映画で登場したものと同じに見えます。
窓の形も同じ。

列車で相部屋となった医師が打ち上げのニュースを聞いた時のセリフ。

ソ連英雄のお定まりのコースですな。
順調に打ち上げ 順調にドッキング……
順調に帰還して順調に勲章をもらう

宇宙ステーション

この時期のソ連宇宙ステーションは、ミールシリーズの直前、サリュート(Салют)W7号。有人での行き来はソユーズを使います。

0:53頃ステーションの全容が写ります。
ミニチュアかと思いきや人間が一緒に写る場面もあり、大きさにびっくり。
訓練用の実物大モデルなのでしょうね。 少しわかりづらいですが、ちゃんと2機のソユーズが前後にドッキングしているようです。

救出にやってきたパーシャは、無事外側からハッチを開けることに成功。
意識を失っていた乗員(スラーバの相棒)を乗ってきた宇宙船に移すと、自分の相棒と一緒に帰還させ、パーシャはスラーバと軌道上にとどまります。
……と、このあたりもわかりづらいですが、おそらくそういった流れ。

流星雨

1:06頃。
一難去ってまた一難。
流星雨と遭遇することがわかり、ソユーズは地上へ帰還しようとします。
ところがサリュートから離脱した直後、運悪く流星が当たり計器が損傷。空気が流出して船体がくるくる回転をはじめ、酸素不足から残り12時間という事態に。

ここでさらにもう1基救助ロケットが打ち上げられることになりますが、乗員を買って出たのは訓練センターの上官。最初の野原の場面で電話をとった人物です。
12時間で打ち上げられるのかというツッコミはさておき、あっという間に軌道に到達する宇宙船。
果たして救助は間に合うのか、そして3人の運命は……??

資料

編集履歴

  • 2014/04/14 「恋人の住まい」追記

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