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『集金旅行』 (1957)

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作品メモ

ひとつ前のエントリー『旅の重さ』は四国の西側が主な舞台のロードムービーでしたが、こちらもやはりロードムービー。
中国地方各地を転々とし、最後に徳島が登場します。

前田陽一監督の『神様のくれた赤ん坊』(1979)は確かこれのリメイクのはずですが、こちらも良い映画でした。
あの頃映画 「神様のくれた赤ん坊」 [DVD]

見たのは、『神様のくれた赤ん坊』 → 『集金旅行(井伏鱒二)』 → 『集金旅行(映画)』の順だったでしょうか。
どれもとても面白かったので、もう一回ぐらいリメイクしても見にいってしまうような気がします(笑)。

主人公が住むアパートの大家が女房に逐電されたショックで突然死。借金があったため住人たちはアパート差押えの危機に直面します。
調べたところどうやら大家は借りた金を人にまた貸ししていた模様。
その金や踏み倒された部屋代を集金して返済に充てればよいことに気づいた住人たちは、代表者を全国各地の集金旅行に送り出すことに……

その住人代表となった旗良平に佐田啓二。ちょうと勤め先が左前になり、ヒマをこいていたので白羽の矢が立ったのでした。
同行することになったアパートの住人小松千代に岡田茉莉子。かつてワケありだった男たちのもとを訪れて、慰謝料をふんだくろうという魂胆です。
大家の子供を母親のところに連れていくことになり、メンバーは総勢3人。
住人たちのアツい期待に満ちた万歳に送られて出発したものの、果たして首尾良く目的を達成できるでしょうか??
……といったお話。

その後の展開は、目的地への移動→ご当地案内&脇役登場→集金作業→次へ移動の繰り返しになり、出ずっぱりの主人公たち以外は皆そのご当地だけの出演(なのでキャストの紹介も以下のロケ地紹介と一緒にすることにします)。
典型的な串団子構造を持つロードムービーとなるわけですが、いろいろ工夫されていますし芸達者たちも登場するとあって飽きることがありません。
特にあっけらかんとしたラストの展開は、岡田茉莉子さんの魅力があって初めて成り立っているように思えます。
岡田さんは映画全盛期から数多くの作品に出演している大女優。その中で1本だけ選べと言われたら、シリアスな吉田喜重監督作品……ではなくて、この『集金旅行』を挙げたい気が……とか書いたら怒られるでしょうか。
そのくらいこの映画の岡田さんのコメディエンヌぶりは魅力的でした。

監督中村登、原作井伏鱒二、脚色椎名利夫、撮影生方敏夫、音楽黛敏郎。

ロケ地

手持ちはVHS。
ぼそぼそ画質ですが、いつものように特に資料は用意せず、画面とにらめっっこでチェックしていきました。

旅行前

競輪場

おそらく神奈川県横浜市鶴見の花月園競輪場。

一緒にいたのは、「望岳荘」の大家山本仙造(中村是好)。
帰り道大家が下着を買ったのは、競輪場に向う坂道の途中のこちら。

鉄道が走る切り通し

0:03頃。
列車が走る切り通し。そばにアパート「望岳荘」があります。

地形からみて東京都世田谷区の五島美術館近くかとすぐに思いましたが、SVで確認すると違っていたみたい……

調査中。

望岳荘の関係者は……
残された子供勇太に五月女殊久。
大家に金を貸していた香蘭堂に十朱久雄。
住人に桂小金治など。

岩国

ここでのターゲットは、それぞれ松平公夫(大泉滉)と松尾六造(伊藤雄之助)。

岩国駅

0:18頃
長旅の果てに到着したのは岩国駅。

錦帯橋

バスが到着したのは、錦帯橋Wの東側。

Wikimedia Commonsより(パブリックドメイン)
道を訊くところ

松平公夫(大泉滉)を探して、町の人に道を訊くところ。
そばにあるのは公園でしょうか。柵が特徴的ですね。
背後に立派な映画館が見えますが、看板は「 ?ニ劇場」と一部読めません。

驚いたことに、錦帯橋の近くにこの柵がある公園が見つかりました。
(※14/01/11 本編と同じ位置でSVが使えるようになっていたので変更。それに合わせて文章も修正)


大きな地図で見る

上のSVが佐田さんが道を訊いていたところ。
路地側の柵はもうなくなっていますが、表通り側の柵は映画と同じ形で今でも残っています。
背景に映画館があるはずですが、残念ながら姿はなし。現在「中央フード」というスーパーとなっています(中央フード銀座店、岩国市岩国1丁目17−17)。

映画館が気になったので、もう少し調べてみました。
「中央フード 映画館 岩国」で画像検索して(汗)、こちらのページを拝見することができました。

http://kintaikyou.blog.ocn.ne.jp/blog/2011/05/post_f68e.html

お~まさにこの映画館。その名もずばり「錦帯橋劇場」と言うようです。
しかもこの建物のまま、昭和51年当時ですでにスーパーになっていたということまでわかりました。

映画の中で「?ニ劇場」となっているのは、おそらく「㐧二劇場」と思われますが、引き続き調査中。

松平公夫の住まい

川縁の邸宅。

山口

ここでのターゲットは、藤沢庫吉(市村俊幸)。
その妻に沢村貞子。

山口駅
公衆電話と橋

0:30頃。
「早間田案内所」とありますので、おそらくこちら。

山の上の公園

亀山公園W
近くに見える2つの塔の教会は、公園の南側にある山口サビエル記念聖堂W。焼失前の姿。

五重塔

瑠璃光寺Wの五重塔。

県庁前

というわけで2番目の地ではともにミッションに失敗した2人でした。

山口からバス移動。
ここでは山口で与えられた「産婦人科医とお見合いをする」というクエストをクリアしなければなりません。
産婦人科医官次を演じるのはトニー谷ざんす。
さらにキャバレーの女の子愛ちゃん(瞳麗子)も加わって、賑やかになるざんす。 

木橋

0:37頃。
ボンネットバスで渡る木橋。
さすがに場所不明。

大きな橋のたもと

0:38頃。
3人がバスから降りたところ。

おそらく橋本川にかかるこちらの橋(橋本橋)。

お寺

0:41。
鳥居が立ち、石灯籠がずらりと並んでいるのは、毛利家菩提寺東光寺W

松下村塾

055頃。

松下村塾W

ここではピンポイント的にSVが使えます。

萩の城址

萩城W

ここでもピンポイント的にSVが使えます。

秋吉台
萩駅

0:56

萩駅W

この駅舎の外観は今でも変わらず、内部は鉄道博物館になっているようです。

松江

トニー谷さんが引き続き参加。
暑い夏がよりいっそう暑苦しくなります。

松江での宿

宍道湖と松江大橋の眺めが楽しめる宿はこちら。

皆美館
島根県松江市末次本町14
http://www.minami-g.co.jp/minamikan/‎

映画でど~んと名前が出ている臨水亭は皆美館の料亭。
そこからのライブカメラ。

http://www.rinsuitei.jp/live/index.html

石灯籠のある庭園は今でも健在。
http://www.minami-g.co.jp/minamikan/niwa/index.html

ボートに降りていく階段はこちら。

ボートでくぐる橋

松江城のこちらでしょうか?

ホントにボートでここまでたどり着けるかは不明。

ラフカディオ・ハーンの住まい

▼21/2/21 追記
『集金旅行』とは直接は関係ありませんが、こちら↓はmilouさんにご提供いただいたラフカディオ・ハーン(小泉八雲)のニューオーリンズでの住まいだったところ。
撮影は1994年7月とのことです。

確かに516 Burbon St.ですとこの画像の中央の建物ですね。
小泉八雲Wによると、1877年から87年までニューオーリンズに住み、1890年に英語教師として来日して、松江をはじめ各地に住んでいたとのこと。
このご縁で、松江市とニューオーリンズは友好都市(姉妹都市)となっています。

milouさんは、こちらの画像を含むニューオーリンズの旅行記を4travelに掲載していらっしゃいますので、ぜひご訪問ください。

4travel.jp > milouchatさんのトラベラーページ

尾道(13/8/1追記)

瀬戸田に渡る前にこちらで一泊。
最初の俯瞰ショットはこんな感じ(実際にはカメラ位置はもう少し西寄り)。

瀬戸田(13/8/1追記)

逃げ出した大家の女房が相手の実家に来ているという設定。

大家の女房浜子に小林トシ子。
相手の若い男、克三に北原隆。
乱暴者だけど実は……というその兄に西村晃。

船着き場

生口島のこちら。

お寺

耕三寺W

徳島

ここで登場するとっておきの大口ターゲット津村順十郎に花菱アチャコ師匠。

鉄橋(13/8/4追記)

1:26頃。
おそらく吉野川に架かる高崎線の鉄橋。

阿波踊り

最初のショット(昼間)は駅前の大通りとは思いますが(カメラ南向き)、建物が皆変わっていて厳密な場所は特定できませんでした。

今やストリートビューは阿波踊りのまっただ中まで突入しています。
実はこのエントリー、これがやりたくて作ったとか……


大きな地図で見る

資料

更新履歴

  • 2021/02/21 「ラフカディオ・ハーンの住まい」にmilouさんの画像を追記 マップのリンクを更新
  • 2014/08/16 国土情報ウェブマッピングシステムのシステム変更に伴い、リンクを削除
  • 2014/01/11 「岩国・道を訊くところ」ストリートビューの位置を変更

コメント

  1. Dougさむっ より:

    本日神保町シアターで本映画を見て感激しこのサイトにたどり着きました。これ程岡田茉莉子さんという女優さんが魅力的とは思いもよりませんでした。ショートヘアーで細身でスタイル良くお洒落で本当に言うことありません。今から63年も前の映画の女優さんにこれ程魅せられるとは信じられません。当時は着物姿も普通だったのですね。その着物もデザインが本当に素晴らしかったです。洋装(この言葉も死語かも知れませんが)もしなやかな体の線に合っており実にファッショナブルでした。
    映画の詳細なデータ有難うございました。御礼申し上げます。今日は良い1日でした。

  2. 居ながらシネマ より:

    Dougさむっさん、コメントありがとうございます。
    神保町シアターで上映されているのですね。私はVHSでしか見たことがないので、大きなスクリーンでの岡田さんはまた格別魅力的だったことでしょうね。本文でも書きましたが、岡田さんはシリアス路線だけでなく、こういうコメディでも魅力をキラキラッと放っているようで、個人的にはこの映画を強く推しているところです。
    佐田啓二さんとの組み合わせもとても良く、ふたりがくっつきそうでそうならないのがまた面白いですよね。もし二人が結婚していたら、小津監督の『秋刀魚の味』みたいな感じになっていたのかな、と思ったりもしました。

  3. サトシ より:

    大阪にあるミニシアター「シネ・ヌーヴォ」でたった今、見終わったところです。
    初見ですが主演のお二人がすごく魅力的ですし、中村登監督の洒脱な演出はビリーワイルダーのようでした。(個人的には伊藤雄之助さんや西村晃さんの期待通りの怪演が一番のツボでしたが。)

    初めてこのサイトに来させていただきましたが、映画ファンにはたまらない詳細なデータの数々に感服しました。

    蒸気機関車には乗れませんが、このままのルートを一度旅してみたくなりました。

  4. 居ながらシネマ より:

    サトシさん、コメントありがとうございます。
    劇場でかかったのですね。シネ・ヌーヴォのサイトを見てみましたら、松竹映画メロドラマの系譜特集だったようですが、ちゃっかり「集金旅行」も入れてしまっているのが良いですね 🙂
    本当に楽しい映画で、おっしゃるとおりこのままたどって旅行してみたくなります。

    拙サイトも楽しんでいただけたのでしたら幸いです。
    へんてこりんなサイトですが、今後もたらたら続けていくと思いますので、またぜひお越しください。ありがとうございました。

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