目次
作品メモ
フランソワーズ・アルヌールのシリーズ、手持ちほとんど書いてしまったのでこれにていったん打ち止めです。
取り扱った作品一覧は → タグ「フランソワーズ・アルヌール」
大運河といってもスエズやパナマではなく、舞台はヴェネツィア。
その網のように張りめぐらされた運河の一角に居を構えている謎のリッチな紳士が、実はかつてナチスが英ポンド紙幣を大量に偽造した事件(『ヒットラーの贋札』ですね)にからんでいた人物であった……といった設定で、その莫大な資産と一緒に住む若い女性をめぐってミステリアスなお話が展開します。
謎のドイツ人、エリック・フォン・ベルゲン男爵にO・E・ハッセ(Otto Eduard Hasse)。
フランソワーズ・アルヌールは、男爵と一緒に住んでいるフランス娘ソフィー役。情婦というわけではなくあくまで養女。男爵にとても大切に思われていて、欠かせない存在となっているようです。
やはり男爵の家に住んでいる若い男スフォルツィ(字幕ではスフォルジ)にロベール・オッセン。かつてソフィと付き合っていて、現在は他に恋人がいるのですが、男爵から資産についてとある情報を得たことにより……
ソフィに映画館で話しかけてきたフランス人写真家ミシェル・ラフォーリにクリスチャン・マルカン。男爵の家で彼女と一夜を過ごし、彼女から一緒に連れていって欲しいと頼まれるのですが……
以上のような男爵の周囲にいる様々な人間の様子をうかがう、これまた謎の男ブセッチにイタリアのフランコ・ファブリッツィ。
冒頭アニメを延々見せられるところからして、一筋縄ではいかない内容となっています。
メロやサスペンスも確かにあるのですが、この映画の魅力は上述の様々な人間たちが水の都でかもし出す不思議な時空間。ストーリーよりも、会話や映像や音楽にどっぷり浸っていたい映画といえましょうか。
これがヌーヴェル・バーグに含まれるのか、あるいは前史にあたるのかは知りませんが、カラーで撮影されていることもあり、「新しい波」のさらに未来を先取りしてしまったような、不思議な前倒し感を漂わせています。
原題は「誰にもわからない」(かな?……)、英題は”No Sun in Venice”。
原作脚本監督ロジェ・ヴァディム。
フランソワーズは無事?だったのか気になりますが(汗)、この時期はバルドーと別れた後、2番目の奥さんとなる女性とつきあっていたはず。それに歴代の奥様には共通の雰囲気があり、フランソワーズはその路線からははずれていたような……
製作ラウール・J・レヴィ、撮影アルマン・ティラール、ルイ・ネ、音楽ジョン・ルイス。
ジョン・ルイスといいますか、MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の音楽がとても印象的。
サントラアルバムは邦題『たそがれのヴェニス』。
モダンジャズが使われた映画となると『死刑台のエレベーター』をすぐ連想しますが、それより1年先駆けとなります。
ソフト化はされていますが次第に入手が難しくなっている状態でしょうか。
今回は手持ちのVHSでチェックしましたが、字幕がお粗末でびっくり。
ぜひきれいな画質かつきちんとした字幕で見てみたいものです。
タイトルの読み
最近悩むことが多いタイトルの読みですが、Allcinemaでは「大運河」と書いて「グランカナル」と読ませる表記になっています。
キネマ旬報データベースではタイトルそのものが「グランド・カナル 大運河」となっていて「ぐらんどかなるだいうんが」と読みが振られています。
手持ちのVHSではフリガナなし。AmazonなどでDVDの商品画像を見るとやはりフリガナはありません。この場合は普通に「だいうんが」と読んでしまうと思います。
当時のプレスシートで確認してみますと……(画像使用のためAmazonのアソシエイトを利用しています)
「グランド・カナル」ですか……う~む、フランス映画なら「グラン」の方が雰囲気出そう……
とりあえずこのエントリーでは、タイトルを『大運河(グランド・カナル)』とし、タイトルのフリガナ(皆さんには見えないところでフリガナをふっています)は「グランドカナル」、タイトルのカテゴリーは「く」の他「た」も加えておきました。
ヴェネツィアと猫
本編中でも猫が登場していますが、車がないヴェネツィアはニャンコの天国のようでして。
milouさんが寄せてくださった画像から、何枚かアップさせていただきます。
撮影は皆90年9月とのこと。どうもありがとうございました♪
©1990 milou アルバム「世界の猫」から |
運河の脇でゴロゴロしている猫様。
©1990 milou アルバム「世界の猫」から |
レストランでゴロゴロしている猫様。
©1990 milou アルバム「世界の猫」から |
たまには起きて歩く猫様。
街並みが良いので絵になります。
ロケ地
IMDbでは、
Venice, Veneto, Italy
IMDbを見るまでもなく、ヴェネツィアが舞台。
衛星写真で見ると本当に頼りなくて、海面が少しでも上がったらツバルとともに消えゆく運命にあることがよくわかります。
さすがGoogle先生、もはや当たり前のようにゴンドラに乗ってストリートビューを楽しめます。
ちょっと面白かったのが、一緒にゴンドラに乗っていた一般のお客さんがずっと映り続けていること。
もしかすると世界で最も数多くSVに収録された人たちかもしれません。
映画館の前の橋
上掲動画&プレスシートの橋。
ストリートビューのゴンドラに乗ってウロウロしていたら見つかりました。
シネマスコープ的ワイドなSVでどうぞ 🙂
Wikimapiaでは”Ponte del Teatro”とマークされています。
運河はRio de San LucaW
※2014/08/04追記
milouさんから情報と画像を寄せていただきました。
(いつもありがとうございます♪)
©1986 milou アルバム「世界の映画館」から |
映画館はCinema Rossiniというそうです。
画像は1986年7月のもの。
たしかに映画に登場したところですね。橋の手すりも、SVではなく映画と同じ。
映画では映画館名はフレームからはずれていますが、扉のところに「R」と見えます。
看板は現在スーパーマーケットのものになっているようですので、当時を振り返る貴重な画像ですね。
タイトルバック
CINEMASCOPEのクレジットが出るのはこちらの広場。
男爵の住まい
0:13頃、ゴンドラが到着するところ。
夜景なので自信はありませんが、おそらくこちら。
カ・ドーロ(Ca’ d’Oro)W
http://www.cadoro.org/
もう少しアップで。
さらにアップ。
映画に登場したのも、この扉と同じように見えます。
瀟洒な建物内部もこちらで撮影されたものかどうかまではわかりませんでした。
Carlo Nayaという写真家が撮った1870年頃の写真だそうです。
明治維新の頃ですね。今でも何も変わらないという……
0:30頃の窓越しのショットも、アングル的にはこの建物から撮られたものと思われます。
サン・マルコ広場
0:45。
ミシェルが三脚を構えていたところ&3人が鳩をかきわけ?歩き去ったのは一番奥のこの位置。
©milou アルバム「ヴェネツィア」から |
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
街角
0:56。
スフォルツィに呼び止められるところ。
葉が落ちた街路樹が並んでいます。
船着き場
1:03。
スフォルジが船長にミシェルの足止めを頼んだところ。
屋敷
1:21。
ブセッチがソフィーの後を追ったところ。
ニャンコが何匹も居て場所が気になりますが、不明。
ミシェルを訪ねて
1:23。
ソフィーがミシェルを探してやってきたところ。
アクションシーン
映画のクライマックスとなるアクションシーン。
屋根伝いに移動しているように見えますが、実際にはワープの連続。
探すのは結構大変でしたが、街並みが魅力的でしたのでチェックしていて楽しめました。
サン・マルコ広場の時計塔Wからスタート。
©milou アルバム「ヴェネツィア」から |
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
てっぺんのこの像のところに上ってきます。
この青い人がガ~ンと鐘を鳴らして時を知らせます。
©milou アルバム「ヴェネツィア」から |
同じくmilouさんご提供の画像。
足下かなり怖いです。
高いところが苦手なので、この画像だけでもうダメです。
鐘が鳴っている間にミシェルが歩いているのは、サン・マルコ広場の少し西側、こちらの教会前広場南側の建物の上。
どんぴしゃりのSVがありました。
建物は Bauers l’hotelのものでそのテラスと思いますが、ホテルはリノベートされているようですので、映画撮影時がこの状態だったかどうかまでは不明。
以下、マップ画像をいろいろ。
警察のボートが駆けつけていたのは運河のこちら。
ミシェルが危なっかしげに歩くビルの角は調査中。
最後はぴょんとワープしてこちらの建物。
ヴェネツィアでは珍しい陸屋根……と思ったら、大きなテラスとなっていて、最上階はやはり陸屋根ではありませんでした。
その背景に見えていた鐘楼は、San Salvador, VeniceWのもの
お向かいの屋上も健在。映画でも洗濯物がぶら下がっていましたが、ここは干すのに最適ですね。
ラスト
船はこちらの橋をくぐっていきます。またしてもワープ。
ラストのカメラアングル↓
ロケ地マップ
これまで取り扱った映画で、ヴェネツィアを舞台にしたものをまとめてみました。
より大きな地図で ヴェネツィアが舞台の映画 を表示
資料
関連記事
フランソワーズ・アルヌール出演作
- 『パリジェンヌ』 Les Parisiennes (1962)
- 『フランス式十戒』 Le diable et les 10 commandements (1962)
- 『ヘッドライト』 Des gens sans importance (1956)
- 『大運河(グランド・カナル)』 Sait-on jamais… (1957)
- 『女猫』 La chatte (1958)
- 『学生たちの道』 Le chemin des écoliers (1959)
- 『禁断の木の実』 Le fruit défendu (1952)
- 『過去をもつ愛情』 Les amants du Tage (1955)
更新履歴
- 2017/11/04 画像のリンクをPicasaからGoogleアルバムアーカイブへ変更
- 2014/08/04 「映画館の前の橋」追記
- 2014/08/03 新規アップ
コメント
今ならネットで映画館の場所どころか上映時間や料金まで日本で調べられるが当時の手段は、(あれば)現地のタウン誌や新聞ぐらいしかなかった。昔は普通の街なら情報がなくても歩いていれば何となく匂いがして映画館の場所が分かった。最近のシネコンは(日本でも)ビルやモール内が多く歩いていてもポスターなどに出会えず匂いがしない。ただしヴェネツィアは狭い路地ばかりで見晴らしが利かないので方角すら分からず、ほとんど映画館に出くわさなかった(総数も少ないが)。
だからヴェネツィアでは映画祭以外では2本しか見ていないようだ。この映画館も偶然見つけたが映画は見ていない。
現在の表はスーパーだが Cinema Treasures というサイトによると 映画館は3スクリーンの Multisala Rossini として今も同じ場所に存在する。ただし入口は運河側ではなく西側の裏手Calle della Mandola の突き当たりで1階がカフェで2階が映画館らしい。
ああ映画館や猫探しのサイトじゃなかったですね。
『大運河』はTVで見たのか、60年代後半ぐらい大阪にあった労映という組織の上映会だったかはっきりしないが内容も時計塔の格闘ぐらいしか覚えていない。
とにかく時計塔に登るのが一番の目的で行ったが、申し訳程度の柵しかなく本当に簡単に落ちることができます(??)
ちなみに橋のSV左端に見える白い物体が何か分かりますか?
ヴェネツィアは橋だらけだが階段なので老人など脚力の弱いひとには町歩きも重労働。そう金持ちの家にもありそうな1人乗り階段昇降機です。
多分90年代から徐々に設置されたと思うが使っているのを見たことはない。当時は珍しく写真も撮ったはずだが見つからない。
SVをアップにしてみるとMontascale (文字どうり階段登り)と書いてある。だから橋の両端に設置されているわけだが、わずか8段ぐらいの階段で1つの橋で2回も機械を操作することを考えたら時間も掛かるし…よほどでないと使う気にならないのかも…